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伊吹嶺自註俳句シリーズB


 『藤田岳人集』
             

 この度、藤田岳人さんが伊吹嶺自註俳句シリーズBとして、句集『藤田岳人集』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 岳人さんの俳句との出会いは、平成13年に伊吹嶺に入会したことに始まります。きっかけは会社の山の仲間に誘われてベートーベンの第九を歌う会に入り、そこのソプラノの女性に俳句をやらないかと誘われたことです。
 この句集は平成13年から令和2年の間に詠まれた句の中から301句を精選したものです。
 そして、この句集の第一の特色は、『伊吹嶺』に連載された「岳人日記」と「農日記」が掲載されていることです。そして、山の句と農業の句が多く見られます。

 山登りの愛好家のことを「岳人」といいます。俳号の由来はここにあります。ですから句集に掲載されている俳句も、遠くから眺めた山の句ではなく、自際にご自身が登った山、体験した山の句となっています。
   雲迅し紐締め直す登山帽     平成17
   山小屋の夜具の重さや梅雨に入る 平成19

   霧襖一万尺の嶺隠す       平成20
   山小屋に薪割る音や桃の花    平成21

   登山靴脱ぎて踊りの輪に入れり  平成22
   そそり立つ岩場の鎖灼けゐたり  平成26
   秋澄むやあれが槍よと杖で指す  平成29

 自らの体験に基づいた農業の句も多く、精魂込めて作物を育てている作者の姿が浮かびます。育てている作物は、苺、茄子、トマト、胡瓜、西瓜、南瓜、ピーマン、オクラ、里芋、ゴーヤ、稲、薩摩芋、冬瓜など種類も多彩です。
   施肥の紐食ひこむ肩や油照    平成17
   春浅し余白の多き農日記     平成19
   春の日を独り占めして畝立てり  平成20
   地下足袋の小鉤の固き冬初め   平成22
   受粉せし西瓜に日付札添ふる   平成24

   指で摘まむトマトの脇芽匂ひ濃し 平成26
   皺のまま乾く野良着や冬日濃し  平成29

 家族を詠まれた句、特にお母様と奥様の句が多く見られました。家族思いの作者の人柄が窺がえます。

   妻に買ふ干支のお守り旅初    平成15
   喪疲れの母の居眠る炬燵かな   平成15
   極月の暦に妻の走り書き     平成20
   食細き母へ土産の白子干     平成21
   春風邪の母に手渡す置き薬    平成22
   鍔広帽母に持たせる炎暑かな   平成23
   夏服を腕まくりして旅の妻    平成23年

 
発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
小B6判  249頁
頒価1000円  





藤田岳人さん

【申込み方法】
著者へ直接葉書あるいはメールによりお申し込み下さい。
〒480-0125
丹羽郡大口町外坪3-129-2
藤田岳人
Email:8ru4m5@bma.biglobe.ne.jp
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