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伊吹嶺叢書第59篇


 奧山比呂美句集『婚の鐘』
             

この度、奥山比呂美さんが伊吹嶺叢書第59篇として句集『婚の鐘』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 比呂美さんの俳句との出会いは、平成9年に学校事務員として勤めていた職場で、都合ナルミさんから声を掛けられたことに始まります。その年の11月、ナルミさんの「藤が丘句会」に参加し、そして10年「伊吹嶺」、12年「風」に入会しました。さらに「中日俳句教室」に参加し、栗田先生からも俳句の基礎を学んでいます。
 この句集は「風」と「伊吹嶺」で詠まれた1137句より339句を精選したものです。
 そして、句集名『婚の鐘』は、
   
婚の鐘響く岬や鷹渡る      平成26
から採ったものです。「鷹の渡る伊良湖岬の青空に鳴り響く祝婚の爽やかな鐘の音が作者にふさわしい」と、栗田やすし先生による命名です。

 この句集の特色は7割ほどが吟行句だということです。これは吟行を大切にしていたナルミさんと行動をご一緒にしていたためと思われます。そして、確かな写生でその行事や祭のポイントを捉えています。
   
お捻りを掃き寄す黒子村芝居   平成12
   のけ反りて太刀振る僧や竹伐会  平成13
   松明の火のちぎれ飛ぶお水取   平成18
   神の火を鉾で散らせり榊鬼    平成19
   味噌樽に賽銭弾む地蔵盆     平成21
   風の盆闇に真白き指反らし    平成24

 次に行事や祭以外の吟行句を紹介します。奥山さんの句は即物具象の写生句です。そして、切り取った景の写生が的確なので、読む者に発見の驚きや強い感動を与えます。
   
藁運ぶ羽搏き強し巣組みの鵜   平成12
   去り状に虫喰ひの跡春深し    平成21
   渡り初む鷹海光に見失ふ     平成24
   綾子亡き姫鏡台に冬の塵     平成24
   肩で鑿押す硯師のちやんちやんこ 平成26
   板干しの漉き紙剥がす木綿針   平成26


 最後にご家族を詠んだ句を紹介します。どの句も奥山さんの温かい視線を感じます。そして、二人のお母様の句が多く見られました。
   
初詣母の歩幅に合はせけり    平成13
   嫁ぐ娘に長き文書く春月夜    平成17

   くしやくしやの母の笑顔や春近し
 平成19
   
指太き夫の間引きし貝割菜    平成21
   母の咳ひびく窓辺に小雪舞ふ   平成26
   膝に抱く赤子這ひ出す花筵    平成26


       2021年4


発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
新書版  188頁
頒価1000円  





奥山比呂美さん近影

【申込み方法】
著者へ直接葉書あるいは電話によりお申し込みください。
〒487-0033
春日井市岩成台5-4-1
奧山比呂美
電話 0568-91-2687

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