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  鈴木英子第1句集『京泊り』


                              角川書店

 この度、鈴木英子さんが、角川書店より第1句集『京泊り』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 英子さんの俳句との出会いは、今から21年前、俳人協会主催の「教員のための夏季俳句指導講座」に参加したことによります。そこで講師の栗田やすし先生に再会しました。英子さんは当時高校教師で、栗田先生はかつての同僚でした。その栗田先生の勧めで、「伊吹嶺」に入会しました。そして、英子さんのお住いの近くにある「知立句会」に入会しました。

 この句集は、「伊吹嶺」誌に掲載された句を中心に、650句の中から河原地主宰に351句を選んでいただきました。それに作者の思い入れのある句を加えて、全部で365句を収めた句集となっています。そして、句集名『京泊り』は、
   ガラス戸を時雨打つ音京泊り   平成28
   句会果て今日も時雨るや京泊り  平成30年自選

から河原地英武主宰が採ったものです。

 標題句もそうですが、この句集には京都・奈良の吟行句が多く見られます。というのも英子さんは、池坊の最高職位「
総華督・蘊奥相伝」の資格をお持ちで、京都に宿泊して、生け花の研修を受けています。そのときに京都句会の人たちと一緒に吟行しているのです。
   宵祭祇園の灯影華やげり     平成15
   友と来し寺町通り時雨れけり   平成16
   本能寺翁静かに落葉掃く     平成16
   どこかから水音響く京の秋    平成18
   祭り衆榊の枝をはちまきに    平成24


 この句集には、家族に材を取った句が多く見られます。中でも亡くなったご主人を詠んだ句の数々は、英子さんの心情が流露した絶唱ともいうべきものですが、静かな俳句の世界に置かれています。
   手に重し夫採りくれし富有柿   平成20
   凍てつきし闇の底より救急車   平成25
   夫の手の冷たくなれる寒夜かな  平成25
   寒晴や夫の遺影を胸に抱く    平成25
   夫逝きて熱燗一合呑み余す    平成27


 英子さんは華道だけでなく表千家の講師の資格もお持ちです。しかし、句集には、生け花や茶の湯の句はほとんど見られません。俳句は俳句と一線を画しているのでしょう。とは言うものの学校に関わる句は十数句ありました。英子さんは、高校と大学で教鞭を執っておられました。
   教室に子の声弾け秋うらら    平成17
   会議果つ教員室の冬灯      平成17
   キャンパスの空若竹の伸び揃ふ  平成19
   学生と相席で飲む温め酒     平成27
   盆層は教へ子なりや声若し    平成28


 最後に句集の帯に載っている自選15句のうち、5句を紹介します。

   笊一杯七草摘みて夫帰る     平成23
   菊坂の路地の奥処に金魚売    令和元年
   鎮もれる大和三山夏衣干す    令和元年
   亡き夫のレコード数多太宰の忌  令和2
   霜月のベンチに座せば森の声   令和2


      平令和3年11月        新井酔雪



発行所:公益財団法人 角川文化振興財団
発行者:宍戸健司
B5版  213頁
定価:本体2,970円(税込) 

京泊り」



鈴木英子さん

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〒473-0918
愛知県豊田市高美町3−31
鈴木英子

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