この度、伊吹嶺叢書第49篇として牧野一古さんの句集『三光鳥』が上梓されました。平成4年から28年までの310句が収められています。
以下栗田主宰の序文を抜粋して掲載します。
句集の題名『三光鳥』は
雨に舞ふ三光鳥の嘴青し
他2句に依ったものである。
本句集には時鳥の7句をはじめ、五位鷺、駒鳥、大瑠璃、雪加など34種の鳥が詠まれていて、圧倒される。その中から若干を挙げれば、
駒鳥の胸ふるはせて高鳴けり
翡翠の魚をしとめし水の音
凍鶴の尾羽ばかりが吹かれをり
駒鳥の句、〈胸ふるはせて〉、翡翠の句の〈水の音〉、凍鶴の句の〈尾羽ばかりが吹かれ〉は何れも一古さんの確かな眼で捉えたもので、何れも鳥に関する豊かな知識と確かな観察力から生まれた佳句である。
私の好きな句は多い。
手作りの雛菓子持ちて母見舞ふ
獅子舞の前足は吾子里祭
土筆煮て母八十の誕生日
十年日記果てゝ残りし夫婦かな
片足で立つてみせる児春隣
生身魂透けしブラウスよろこべり
初めてとつぶやく夫や土筆摘
膝折つて遠まなざしの孕鹿
うしろより母に傘さす墓参
この他にももちろん佳句は多いが、一古俳句に見られるやさしさは一古さんの好日志向と生来の明るさから生まれるものである。
(句集あとがきより)
若い頃の私は、いろいろな趣味を持っていましたが、俳句には全く無縁でした。・・・・
転機が訪れ、私が師と仰ぐ鈴木みや子様に出逢ったのは49歳、みや子様69歳でした。すぐ「伊吹嶺」に入会し、直に「風」にも入れていただきました。それからというもの俳句の基礎からご指導を賜り、俳句の楽しさ、奥深さをお教えいただけましたことはこの上ない幸せでした。・・・・
さまざまなことを学ばせていただきましたのに、今年の4月、みや子様は87歳でご逝去されてしまいました。深い哀しみと淋しさからいまだに抜け出すことができない日々ですが、拙いながらも俳句を詠み続けていくことが、ご恩に報いるひとつになるのではないかと思っています。
平成28年初秋
発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
新書版 164頁
頒価1000円 |
|
|
沖縄吟行での牧野一古さん
|