この度、新しい企画として、「伊吹嶺自註俳句シリーズ」が始まりました。その先陣を切って、『栗田せつ子集』が発刊されました。早速頂いて一気に読みました。これまでは俳人協会で自註現代俳句シリーズで発行されていましたが、それと全く同じの装丁で始まりました。
本書にはこれまでの句集『富士近し』『山の日』『鵜の川』に収められ作品句とそれ以降の作品から300句を抽出して、それぞれ2,3行の自註が付けられています。
せつ子さんの句集は生活句、吟行句が中心ですが、吟行句であってもそれぞれの生活の見える親しみやすい句集です。生活が見えるということはせつ子さんの人柄、人生までも見えてきます。
読めば読むほど味わいが出て来ます。
せつ子さんの誰にも親しまれ、生活感豊かな句集をお勧めします。是非皆さんのご購入をお願いします。(隆生)
昏れゆくや白木蓮に富士近し
風同人総会が伊豆の大仁ホテルで行われた。
ホテルから真正面に富士山が裾まで晴れて輝いていた。
蘇鉄の実貰ひし旅や辺戸岬 昭和55
秋鯖を断ちて包丁曇りたり 昭和58
合格の子にパン焦げて跳ね上がる 昭和62
雪解富士昏れて水音残りけり 昭和62
鮫皮で研ぐ疲れ鵜の嘴の尖 昭和63
水平線傾げて突けり大海鼠 平成2
穂絮飛ぶ臨港線の行き止まり 平成2
カンツォーネ聴きタンポポのサラダ食ぶ 平成3
ひめゆりの献花より蜂とび出せり 平成6
掌に乗せて螢の息を感じをり 平成8
薄氷の下に金魚の紅動く 平成9
遠伊吹風が痛しと蜆選る 平成9
綾子亡しあまりに紅きななかまど 平成9
八千草を活け病室に野の匂ひ 平成11
干若布片寄せ婚の荷を通す 平成12
滝水を使ふ暮しや種浸す 平成13
負牛の倒れて暑き土ぼこり 平成16
熊蝉の声張る島へ赤子見に 平成17
虫の夜船長帽を遺し逝く 平成19
母の眼に生きる力や石蕗の花 平成19
葱提げて老人海を見てゐたり 平成20
リヤカーの寝釈迦この世の光あぶ 平成21
自転車を止めて黙祷慰霊の日 平成21
師の声を聞かんとしやがむ牡丹の芽 平成22
師弟句碑つなぐ白砂や風薫る 平成23
秋の宴師の帯締をしかと結ひ 平成24
青空は綾子の形見燕去る 平成25
逝き給ふ木槿もつとも白き朝 平成26
風木舎あとに屈めば初の蝶 平成27
(自註句集あとがきより)
本書の300句は、句集『富士近し』『山の日』『鵜の川』に収められた作品と、その後の作品から自選しました。
自分の俳句に註を付すことは忘れていた過去が懐かしく思い出されて自分の歩んで来た道を振り返る良い機会となり楽しい作業でした。
この度、伊吹嶺自註俳句シリーズの一冊として刊行できることを幸せに思います。
また校正を助けてくださった倉田信子さんに心より感謝します。
出版のお世話をして下さいました豊文社出版社長石黒智子様にお礼を申し上げます。
平成28年5月吉日
発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
新書版 150頁
頒価1000円 |
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平成28年関東支部新年俳句大会にて
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【申込み方法】
著者へ直接葉書、FAXのいずれかによりお申し込み下さい。
〒458-0021
名古屋市緑区滝ノ水3丁目1905の2
栗田せつ子
FAX:052−896−8689
頒価は一部当たり1000円です。
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