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 環境と俳句
   この度、「伊吹嶺」において「俳句と環境」と題して、環境問題を俳句の側面から会員皆さんの思いを書いて頂くコーナーを設けました。
 地球環境については気候変動の悪化、生態系の破壊などいろいろな問題を抱えています。一方私達俳人は豊かな気候、生物多様性のおかげで日本の豊かな四季に恵まれ、俳句の材料にもこと欠きません。
 また俳人協会にても「環境委員会」を立ち上げて、俳人の立場で環境問題に取り組んでいます。
 このような状況から「伊吹嶺」でも環境問題を取り組んできました。
 これまで「伊吹嶺」誌に「環境と俳句」として掲載し、
HP以外でも環境問題を考えて句作の実践を行う「自然と親しむ吟行会」も実施して来ました。
 
この度、平成30年よりさらに「伊吹嶺」誌の「環境と俳句」をさらに充実させていきたいと思います。合わせて隔年に行ってきている「自然と親しむ吟行会」も企画していきたいと思います。

なお2017年までの「環境と俳句」は【こちら】をクリックして下さい。
 
是非皆さんもこのコーナーに訪れて頂きたいと思います。

                       「伊吹嶺」環境担当  国枝 隆生
 

 
 
 
 平成30年1月
光害
 国枝 隆生
 




宇宙から見た夜の世界地図
       
写真 NASA


    天の川柱のごとく見て眠る    沢木欣一
    九頭龍の洗ふ空なる天の川   細見綾子


 いずれも星がよく見えた戦前の句である。沢木先生の句は、柱が立つように見えたところが眼目で、それは現実に見た天の川の 実感であったと思う。また細見先生の句は、「夜の九頭龍は空をも洗い、銀河のまたたきが分かるほどだった」と呟かれたのも実 感であろう。
 近年、天の川どころでなく、一等星、二等星ぐらいしか見えなくなってきているのが現実である。
 これらの原因はほとんどが光害によるものである。一般的な「公害」と区別して「光(ひかり)害」と呼んでいる。このひかり害 を定義すれば「過剰なまたは不要な光による公害のことである」とある。ひかり害の実感として最初にあげた天の川で言えば、世界 の36%、日本の70%で、天の川を見ることが出来ないとしている。
 もう一つの実態として宇宙ステーションから送られてくる地球の夜景写真を見ると顕著である。この写真では日本列島がはっきり と写し出されている。そして世界中で日本が光害の「重要被疑国」と言われている。余談だが、北朝鮮の夜景は暗黒で、陸地と海と の境界も見えない。(写真1)
 このようなひかり害を起こす原因には実に様々である。人口密集地域、工場、街灯、道路などの照明、ネオン、パチンコ店のサー チライトなどの無駄な光によるものである。果ては日本海などの烏賊釣り船の照明は宇宙からもよく見えるという。一番や分かり易 い例で言うと、不適切な形態の街灯があげられる。例えば光源をただのガラス球で覆ったような街灯は光があらゆる方向に発せられ るが、上の方向は全く無駄である。横方向の光はグレアとして運転者の目をくらませる原因となる。
 これらの原因に対して、ひかり害の影響は単に星が見えなくなるだけでなく、夜空が明るくなることから、天体観測に障害を及ぼ したり、生態系を混乱させたり、あるいはエネルギーの浪費の一因ともなっている。こうしたエネルギーの浪費が地球環境温暖化の 直接要因ともなっている。
 私たちに身近な生態系への影響を考えると、まず地球の自転や公転によって作り出される昼と夜、日の長さに対応してきた動植物 が照明によってリズムを崩されている。例えば夜に開花する花を受粉させる蛾の飛行能力を妨害しているとか、明るい街灯のそばで 夜間も長時間光を浴びて続ける街路樹に紅葉遅れの異常が起こる。稲の場合、穂が出る一ヶ月前からの期間が重要で、このとき過剰 な夜間照明によって出穂の遅れや稔実障害の発生が報告されている。
 他にエネルギー資源への影響は容易に考えられることで、過剰な照明使用や空に向けて光が漏れることなどのエネルギー浪費であ り、国際エネルギー機関の2006年発表では、現状のまま不適切な照明が続けば、2030年には照明に使われる電力は80%増加するが、 適切な照明利用を行えば、2030年でも現在と同等の消費電力に抑えることが出来るという。
 では光害対策はどうかと言えば、環境省から「公害対策ガイドライン」(平成18年改訂)による指導、啓蒙行われている。
 屋外照明設備の不適切事例で前述したが、街灯の上方光束を遮って安全を保ちつつ、下方光束に限定した街灯構造にするだけで達 成出来る。(写真2)
 また自治体事例では、岡山県美星町で「光害防止条例」制定により過剰な照明を制限している。そしてこの町は町名どおり「星降 る里」として全国の天文ファンでは有名になっている。
 以上幅広い内容をかいつまんで説明したが、俳句を作る者にとってもひかり害に興味を持って、澄みきった星空を詠む楽しさを体 験して欲しい。(「伊吹嶺」2018年1月号加筆)


 
(了)



 





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