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この度、荒川英之さんが、ふらんす堂より第1句集『夜学の灯』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。この句集は平成22年から令和7年までの「伊吹嶺」と一部俳句誌掲載句の作品から河原地主宰選の340句が収められています。主宰は序文で「苦楽の一つ一つが純化され、珠玉の俳句に結実した」と述べておられます。句集名は夜間定時制高校で勤務されていた頃の「夜学」に関する作品から選ばれました。句集名に関連した夜学の句を紹介します。
おはやうと声かけあへり夜学生 平成26年 帯の句
夜学教師夕桜見に校庭へ 平成28年
菜の花や夜学教師を勤め上ぐ 令和5年
荒川さんは中学校で教鞭を執った後、夜間高校の教師として、そして現在高校の教頭を務めておられます。学校に関する句は80句ほどありました。そのどれもが目に浮かぶ情景であり、体験に基づいた驚きや感動が伝わってきます。
教卓の雪のうさぎに画鋲の目 平成23年
星涼し一人で走る陸上部 平成26年
校庭の静かに暮れて蚊喰鳥 令和2年 帯の句
ご家族の句を紹介します。一人息子さんや奥様、そしてご自身を詠んだ句は60句ほどありました。息子さんの幼少期から学ランの似合う生徒になった成長ぶりが伝わり、家族日記と言っても良い句集と思いました。
児の指に粘土の匂ひ春深し 平成24年 帯の句
姿見の妻と目の合ふ秋の朝 平成27年 帯の句
サイダーで吾子と乾杯妻の留守 平成29年
子と並び妻の指示聞く土筆摘み 平成30年
冬浅し子の学ランに日の匂ひ 令和2年
荒川家は動物好きで、犬を飼い、インコも飼っていました。ペットがもたらしてくれる心温まる句の他に、生き物にも繊細な観察の眼をもって詠まれた句があります。インコの死には母と子で涙される心優しいご家族です。
猫の背の波打つ歩み夏の月 平成23年 帯の句
犬小屋に古着敷き詰む雪明り 平成27年
兜虫尿飛ばしてたたかへり 平成30年 帯の句
(尿:いばり)
残り湯に柚子を浮かべて犬洗ふ 平成30年
進むとき殻立て直す蝸牛 令和2年
てのひらにインコを看取る寒さかな 令和5年 帯の句
折々に忌日の句を詠んでおられます。これは河原地主宰や栗田顧問の薫陶の賜物ともいえるでしょう。一部を紹介します。
窓際の書物のぬくみ獺祭忌 平成27年
英国のドロップ小粒敗戦日 令和元年 帯の句
ウヰスキー舐め胸熱き欣一忌 令和元年
寒明忌瞬き強き一つ星 令和6年
金沢、近江、京都などでの吟行句の佳句もありますが、本句集はご自身の生活の周辺の作品群が多いことが特徴です。物に即し繊細な気付きを詠まれた句に惹かれました。
地球儀の海に濃淡初明り 平成27年
羽島の鍛冶屋
打つほどに赤らむ刃春の闇 令和2年
書初の筆打ち込んで墨散らす 令和3年
高みより紅葉散りをり京都御所 令和6年
酒蔵にくろがねの錠冬に入る 令和6年
帯の句でまだ紹介していない句です。
文豪に未完の一書花吹雪 令和4年
屠蘇くむやポニーテールの弟と 令和7年
荒川さんは、教育者として、また編集長としてご多忙な中、沢木先生の俳句研究に傾注し、第2回俳人協会新鋭評論賞受賞、『沢木欣一の百句』の執筆、第37回俳人協会評論賞を受賞の後、待望の句集を上梓されました。職場での日々、またご家族との大切な時間を真摯に過ごしていらしたことが心に響く句集です。あとがきの「私にとってすべてともいえる家族にこの句集を捧げたい」との一文にも感銘を受けました。
皆様ぜひお申し込みください。
令和8年9月 伊藤範子記
発行所:ふらんす堂
発行人:山岡貴美子
四六判 196頁
(フランス装カバー掛グラシン巻)
定価:本体3,080円(税込) |
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『夜学の灯』

荒川英之さん
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