この度、河原地英武主宰が、燦文舎より第3句集『虫売』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。この句集は、『火酒』『憂国』に続く句集で、2019年から2023年までの5年間に発表した句から304句を収めたものです。句集は新たにスタートした「伊吹嶺俳句叢書」第1篇として刊行されました。あとがきではコロナ禍の時期と重なっても、メールやオンライン等による句会を継続できたことで、俳句と真摯に向き合う時間が増えたとも述べておられます。句集名は句集中の2句、虫売の句から選ばれました。
虫売のピアス三連青光る 2019年
虫売の文士の如き丸眼鏡 2022年
自ら昆虫好きと仰るように、虫に関する句が34句あります。虫の他に守宮、蜥蜴、その他の動物の句、また植物の句とバラエティに富んでいます。よく観察された一物仕立ての作品が多いことも特徴といえるでしょう。生きとし生けるものへの温かい眼差しを感じ取ることができます。
玉虫の翅に灼熱いろの筋 2021年
柚子坊の玉とはなれず反り返る 2022年
つまみたる翅の震へや赤とんぼ 2022年
猫の子の薄くれなゐの鼻に土 2023年
ちぎれたる浦島草の糸の冷え 2023年
河原地主宰は国際政治学者として大学で教鞭をとっておられます。いまだ続く戦争を憂い、世界情勢への危機感がつのる作品群がありました。
難民の子の風船の萎びかけ 2020年
春浅しマトリョーシカの愁ひ顔 2022年
鰻焼くプロパガンダと砲撃と 2022年
風死せり本の表紙の少女兵 2022年
聖誕祭人類にまた呱々のこゑ 2023年
「聖誕祭」の句には、混乱と苦難の続く国々で生まれる赤子の泣き声に希望を見出したいお気持ちが伝わってきました。
忌日の句は即かず離れず学びとなる作品が多くあります。忌日の句や沢木欣一先生を偲ぶ句を紹介します。「伊吹嶺」の仲間への追悼句もしみじみと心を打ちました。
休館のホテルに明り草城忌 2021年
底ひまでうねる大河や寒明忌 2021年
誓子忌の海とほくまで火炎いろ 2022年
一群れの雲動かざり敗戦忌 2023年
先師恋ふ加賀の地酒を熱燗に 2023年
主宰は滋賀県にお住まいで、大学のある京都とを行き来しておられます。京の都や近江の風景が立ち上がる作品を紹介します。
色変へぬ松より低く京の山 2019年
草青むほどに近江の晴れ渡り 2022年
南座の明りとほくに浮寝鳥 2022年
梵字めく雲浮く冬の比叡かな 2022年
上賀茂や樽より酢茎鷲摑み 2023年
最後にご家族を詠まれた句を紹介します。主宰の優しいお人柄が伝わってきます。「室咲」の句は奥様への感謝を籠められて句集の1句目にされたものと拝察しました。『昆虫記』の句は、虫好きはお父様譲りということが覗えます。
室咲の増えたる二人暮しかな 2019年
母の日の宝石めきしチョコレート 2021年
京極や花びら餅をふたり分 2022年
満面の笑みや目覚めし生身魂 2022年
春動く父の蔵書に『昆虫記』 2023年
令和7年3月 伊藤範子記
発行所:燦文舎
発行人:廣中美知子
四六判 164頁(並製)
定価:1,100円(税込) |
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『虫売』

河原地英武主宰
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【申込み方法】
著者へ直接、葉書またはファックスでお申し込みください。
〒525-0027
滋賀県草津市野村5丁目26-1
河原地英武
FAX 050-3737-8623
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