この度、金原峰子さんが、角川書店より第1句集『花蜜柑』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。峰子さんは遠縁の鈴木みや子さんに誘われて俳句を始め、平成16年「伊吹嶺」に入会、栗田やすし前主宰、河原地英武主宰、鈴木みや子さんに師事され、蒲郡句会の諸先輩や仲間の方々と俳句を学んで来られました。句集は令和5年までの作品の中から369句を収めたものです。栗田先生は序文で、「峰子さんの作品は巧く作ろうとかよく見せようというような計らいがなく、やさしい心が息づいている」と述べておられます。句集名は、お住まいの蒲郡市や故郷の袋井市の、薫り高い蜜柑の花を詠まれた作品から採られました。
厨窓開くれば匂ふ花蜜柑 令和3年
句集は峰子さんのご家族や、亡き師鈴木みや子さんを詠まれた句に惹かれます。周囲の人への優しくあたたかな眼差しが伝わってきます。ご家族を詠まれた句を挙げてみます。
鶲来る遺影の父の見ゆる庭 平成17年 自選句
嬰の眼に映りてゐたり聖樹の灯 平成25年 自選句
亡母に似し観音探す小六月 平成30年 自選句
お住まいの蒲郡市や三河地方を詠まれた句を挙げてみます。感覚の効いた写生句を多く詠まれています。
潮の香や海中渡御の果てしより 平成18年
花祭髪の芯まで榾火の香 平成23年
夏あざみ雲湧き上がる狩場跡 平成24年 自選句
句会の吟行にも積極的に参加され、旅吟も多くあります。多くの地を訪ねられました。一部を挙げてみます。
陵にひびく法螺の音花会式 平成23年
梅花藻の茎の白さよ川涼し 平成27年
山頭火句碑のぽつんとしぐれけり 平成30年
お姑様の代で造り酒屋を閉じたことを詠まれた作品は伊吹嶺賞で高成績を収め、句集に6句選ばれています。そのうちの3句を紹介します。
惜別の蔵の白壁秋日濃し 平成21年
身に入むや両手で撫づる太柱 平成21年
祓はるる百年の蔵秋深し 平成21年
お嬢様ご家族がお住まいのフランスへも行かれた折の句です。
旅立つや鎧兜を手土産に 平成26年
リラ日和マルシェの並ぶ石畳 平成26年 自選句
青銅の天使の翼風光る 平成26年
峰子さんはあとがきで、句集出版は、ご主人様の喜寿、峰子さんの古稀を迎えて決意されたこと、亡き師鈴木みや子さんや先輩の方々に捧げたいと綴り、また栗田先生の「素直に学ぶ心を失わないように」という教えを心に刻んでいると述べておられます。最後に帯の自選句まだ紹介していない句を紹介します。
蹲踞に水打つ羽音夏きざす 平成18年
開かんとして笹百合の紅潮す 平成20年
雨漏りの土壁匂ふ太宰の忌 令和2年
花束の清しき香り古稀の春 令和5年
若竹の天へゆらげり師の忌日 令和5年
(鈴木みや子さん)
令和6年7月 伊藤範子記
発行所:角川書店
発行人:石川一郎
B5版 208頁
定価:本体2,970円(税込) |
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『花蜜柑』
金原峰子さん
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【申込み方法】
著者へ直接、葉書またはファックスでお申し込みください。
〒443-0057
愛知県蒲郡市中央本町9-2
金原峰子
FAX 0533-68-1248
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