この度、小島千鶴さんが、角川書店より第1句集『夏帯』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。千鶴さんは、昭和48年に東海学園女子短期大学の国文学科に入学し、専任講師であった栗田やすし先生と出会います。その後の昭和50年、「風」の中部俳句大会に友人の武田明子さんと参加し、平成3年に「風」に入会しました。そして、平成10年「伊吹嶺」創刊と共に入会し、平成16年に同人となりました。
この句集は、平成14年から令和3年まで「伊吹嶺」誌に掲載された句の中から345句を栗田顧問に選んでいただいたものです。そして、句集名『夏帯』は、
夏帯に金魚の根付揺れてをり 平成15年 10選
から採ったものです。
表題句もそうですが、この句集には着物に関わる句が多く見られます。と言いますのも千鶴さんは、装道礼法きもの学院名古屋校で助教授を務めているのです。着物に関わる句が多いことが、この句集の第一の特色と言えるでしょう。着物や帯、足袋、友禅染、機織りの句などなど多数詠まれています。
京舞を見に友禅の秋袷 平成16年
手火鉢に翳し色挿す友禅師 平成17年
足袋替へて講義始むる久女の忌 平成28年
装束の絹のひも引く音さやか 令和3年
鶏頭の手描き帯締む綾子の忌 令和3年 10選
この句集には、身近な人を詠んだ句が多くあります。これが第二の特色だと思います。ご家族を詠んだ句では、特にご両親とお身内のお子さんと思われる句が多く見られました。そして、それらの句は日常の素材と結びついて、生き生きとした句になっています。
背のまるき祖母庭先で小豆干す 平成14年
入院の子に飾りやる紙雛 平成15年
父の骨抱きて夏の古都離る 平成19年
ベランダに母咲かせたり桜草 平成20年
離乳食の児に新米の粥少し 令和2年
千鶴さんには、ご家族ではない身近な方がいます。それは千鶴さんが「師」と呼んでいる方です。俳句では栗田やすし・せつ子両先生。もう1人は、千鶴さんの着物の着装や礼法の師匠となる方です。師への思いは、千鶴さんの行為として表現されています。
添書を幾度も読めり師の賀状 平成17年
師の句碑に置く節分の豆一つ 平成23年
夏帯をきりりと締むる師を祝ぐ日 平成26年
師と見上げをりお台場の寒の月 平成26年
小粒枇杷貰ひ綾子師偲びたり 令和3年
最後に句集の帯に載っている栗田やすし10選句のうち、まだ紹介してない8句を紹介します。
本郷の駄菓子屋のぞく秋うらら 平成19年
うららかや島にきものの洗ひ張り 平成20年
春日差す小屋の仔牛の長まつげ 平成23年
正倉院曝涼の太刀光りをり 平成23年
ぼうたんを庭にさかせて友禅師 平成26年
石一つ選び来て母門火焚く 平成26年
妹の背を亡母かと思ふ冬菜畑 令和3年
背に名札つけ入園の一歳児 令和3年
平令和4年9月 新井酔雪記
発行所:公益財団法人 角川文化振興財団
発行者:石川一郎
B5版 198頁
定価:本体2,970円(税込) |
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「夏帯」
小島千鶴さん
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小島千鶴
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