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  国枝隆生第2句集『ひよんの笛』


                              角川書店

 この度、角川書店より、国枝隆生さんの第2句集『ひよんの笛』が上梓されました。平成16年から30年までの380句が収められています。
 句集名『ひよんの笛』は、栗田やすし先生につけていただいたそうです。

  句碑の師へ語るごと吹くひよんの笛 平成21年作:帯書き
  ひよんの笛風の音して欣一忌    平成27年作
  ひよんの笛吹いてふるさと遠くなり 平成29年作:自選句

 栗田先生の帯書きには、「国枝隆生氏の作品に底流するものは、師を偲び、故郷を懐かしむ優しさであろう。俳句の真意を知りつくした力強さと相俟って、爽やかに胸にひびく。」とあります。まさしくその通りであることがこの3句から伝わります。
 その他に師を想い、父母を想い、故郷を想う句を挙げてみます。

  麦秋の輪中を抜けてふるさとへ   平成18年作
  遠き日や綾子の庭の牡丹の芽    平成19年作:自選句
  伏す母に小春の空の青さ言ふ    平成19年作:自選句
  師の句碑を撫づるや桑の芽吹どき  平成23年作
  敗戦と言はざりし父敗戦忌     平成23年作:自選句
  
欣一忌手にころがせる蘇鉄の実   平成27年作:自選句

 句集を手にして表紙を捲ると、先ず冒頭の3句に衝撃を覚えます。広島平和記念公園での句ですが、胸に詰まるものがあります。

  被爆時計止まりしままの炎暑かな  平成16年作
  被爆画を見し眼に眩し雲の峰    平成16年作
  白百合の純白極む原爆碑      平成16年作

 その他の句を挙げてみます。被爆という緊張の中、ほっと一息つくことができる句もありますが、それでも悲しみは残ります。

  聖樹の灯揺らすさざ波被爆川    平成16年作
  爆心地木蔭の椅子に氷菓売     平成23年作
  火傷せしドームの庭に文字摺草   平成26年作
  被爆川ゆるき流れに鴨睦む     平成28年作

 作者は、あとがきで、「東日本大震災をきっかけに東北地方の句も多く、やや胸に澱がつかえたかのような句には自省の念もあります。しかし、この十数年間の私の思いでもあります。」とあります。

  地震の沼傾ぎし舟に厚氷      平成23年作
  夏草や金次郎像仰向けに      平成25年作
  なほ残る瓦礫覆ひて草いきれ    平成25年作
  鉄骨の飛び出す校舎夏燕      平成28年作
  鎮魂の鐘鳴らす浜行々子      平成28年作
  瓦礫なほ沈みゐる沖鰡跳べり    平成28年作

 被爆の句にしても、東日本大震災の句にしても、裏を返せば、かけがえのない命、いとおしむべき命が詠まれています。環境問題にも深い関心を寄せる作者ならではの思いに溢れています。

 以下に自選句を紹介します。(既出の5句を除く)

  ひと跳びで三輪山崩すあめんばう  平成18年作
  走り穂に風の渦巻く一揆の地    平成21年作
  どこまでも基地の金網花ゆうな   平成21年作
  寡黙なる二人に戻り七日粥     平成23年作

  黄八丈似合ひし人よかきつばた   平成29年作
  鵜の池のしろがねびかり寒明忌   平成30年作

平成311


発行所:公益財団法人 角川文化振興財団
発行者:宍戸健司
B5版  209頁
定価:本体2700円(税別) 





国枝隆生さん近影




ひょんの笛

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国枝隆生
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