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  栗田やすし 第6句集『萬謝』  小学館スクウェア
                                  


  この度、栗田やすし先生が小学館スクウェアより第6句集『萬謝』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
 この句集は、栗田先生が米寿を迎えられた記念として上梓され、平成30年~令和6年までの作品176句を、「Ⅰ 一期 平成30年~令和2年(88句)」「Ⅱ 一会 令和3~令和6年(88句)」と2部構成にされています。各部の句数が88句なのは、栗田先生の米寿にちなんでのことです。
 句集名『萬謝』の由来は、あとがき「俳句を始めて60余年、私がこのような俳句人生に恵まれたのも、ひとえに年来、親しくしていただいた方々のお陰であり、感謝の意味をこめて、句集名を『萬謝』としました」にあります。

 この句集は、灰色の布張りのハードカバーでケースに入っています。初めて手にしたとき、装丁は地味ですが上品な句集だと思いました。そして、普通は1ページに2句、多いときは3句ですが、この句集は1句仕立てになっています。それもおしゃれに思いました。句集をめくっていくと、所々2句になっているページがあります。それは、吟行や出来事の連作となっています。

 この句集には、ご両親、恩師、奥様、ご友人を詠んだ句が多く掲載されていました。言わば人恋いの句で、この句集の特色になっていると思います。では、ご両親を詠んだ句を紹介します。
 小夜時雨旅先で見し母の夢    平成30年
 夢に押す花見の母の車椅子    平成31年
 ちちははの墓訪ふ坂や日脚伸ぶ  令和2年 自選句
 初夢の母に叱られゐたるかな   令和3年

 秋燕や三河訛りの母なりし    令和4年
 対岸は父の故郷風薫る      令和5年


 続いて沢木欣一先生、細見綾子先生を詠んだ句を紹介します。お二人の先生と栗田先生は、俳句では師弟関係にありますが、実際はそれ以上の関係を結んでこられました。
 冬晴の一日さづかる欣一忌    平成30
 初富士を師と眺めゐし夢の中   令和2年 自選句
 師の句碑の辺に佇めば秋の声   令和3年
 灰皿に山栗三つ欣一忌      令和4年 自選句
 まなうらに朝焼けの富士欣一忌  令和5年
 去年今年書棚に綾子師の笑顔   令和6年


 奥様のせつ子さんを詠んだ句もたくさんあります。奥様の仕草や所持品をさりげなく詠まれていて、栗田先生の優しさが伝わります。お二人の歴史の深さを感じました。
 ペン皿に妻の指輪と桜貝     平成31
 長城や妻が指さす秋つばめ    令和元年
 勿忘草咲きしと呼ばう妻の声   令和2年
 浴室の守宮を妻と逃がしやる   令和3年
 薄氷に触れんと妻が屈み込む   令和4年
 秋草を活け退院の妻迎ふ     令和5年 自選句


 栗田先生は長年中日俳壇の選者を務めておられました。その関係で、8月15日の中日新聞の「平和の俳句特集」に、栗田先生のお写真と記事が大きく取り上げられました。先生のお父様は職業軍人で、先生が2歳のときに日中戦争で亡くなっておられます。この句集には、鎮魂と平和への祈りの句が多くみられます。
 洞窟の壁に触れて冷たき自爆痕  令和元年
 本棚に白き折鶴広島忌      令和2年 自選句
 敗戦忌父の遺髪と遺書二通    令和3年
 雨音を独り聞きゐる開戦日    令和3年
 目瞑れば鐘鳴り止まず長崎忌   令和4年
 干し布巾白旗めきし終戦日    令和5年


 
最後に句集の帯の14句のうち、まだ紹介していない句を紹介します。
 石一つ積む梅雨寒の恐山     令和元年
 碧叱る子規の書簡や寒明忌    令和2年
 春を病む花のゴルフを約せしに  令和3年
 犬連れて敬老の日の六千歩    令和3年
 奥三河土産に鮎の一夜干し    令和4年
 ふるさとの山を映して水ぬるむ  令和5年
 太宰忌は我が誕生日メロン食ぶ  令和5年
 余生なほなすこと多し獺祭忌   令和5年
 うかうかと米寿の春を迎へけり  令和6年 最終句


     令和6年8月    新井酔雪記

発行所:小学館スクウェア
編集者:石井隆司
四六判:174頁
定 価:3,000円(税込) 


『萬謝』



栗田やすし先生


栗田やすし先生ご夫妻


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愛知県名古屋市緑区滝ノ水3-1905-2
栗田靖(栗田やすし)
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