この度、小田二三枝さんが伊吹嶺叢書第58篇として句集『花の宿』を上梓されました。心よりお喜び申し上げます。
二三枝さんの俳句との出会いは、自らが勤めていた蒲郡市文化協会が主催した「初心者のための俳句教室」です。その講座の受講者の方に誘われ、平成4年に「三河」に入会しました。その後、平成14年に牧野一古さん、内田陽子さんに誘われ「伊吹嶺」に入会しました。そして、鈴木みや子先生より即物具象の俳句の基本を教わりました。
この句集は平成4年から令和2年の間に詠まれた約1000句の中から336句を精選したものです。
そして、句集名『花の宿』は、
嫁ぐ子の寝息穏やか花の宿 平成20年
から採ったもので、作者が生け花「池坊」の中央研修学院の学生のとき、結婚間近なお嬢さんとともに定宿に泊まったときの句です。
表題句のようにご家族を詠んだ句が多く見られました。どの句も物や季語に思いを託しています。それだけに作者の思いがしみじみと伝わります。中でもご主人を詠んだ句からは、互いを思いやるご夫婦の姿が浮かびました。
帰郷の子風筋選び大昼寝 平成7年
病む母の部屋に豆撒く声ひそめ 平成9年
胎動に添へし手のひら聖五月 平成22年
手の窪に夫捕りくれし螢這ふ 平成23年
咳込める背に夫の掌あたたかし 平成27年
この句集には吟行句がたくさんありました。この句集の特色と言えます。中でも行事を詠んだ句は、どの句も迫力というか臨場感があります。対象を的確に捉えているので、作者の思いは書いてなくても感動が強く伝わります。
どよめきて竿灯二百立ち上がる 平成4年
どんたくを待つ人垣のふくれ来る 平成13年
灯の入りて万燈武者の眼の涼し 平成16年
松明を畦に叩きて虫供養 平成20年
鞍の鈴鳴らし駆け出す秋の駒 平成25年
最後に上記の句以外に、わたしが心惹かれた句を紹介します。どの句も即物具象の写生句となっています。
腰に差す竿灯弓なり天を突く 平成4年
凍つる夜の肩に置かれし掌の温み 平成8年
真つ白に鵜綱乾けり今朝の秋 平成14年
稲束を膝に打ちては括りをり 平成18年
赤ん坊の睫毛に消ゆる初の雪 平成24年
紐引けば軋む木偶の手炉火明り 平成27年
島宮に父の遺墨や秋日濃し 平成29年
胸うすき埴輪色なき風まとふ 平成29年
2020年11月
発行所:豊文社出版
発行者:石黒智子
新書版 181頁
頒価1000円 |
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【申込み方法】
著者へ直接葉書あるいは電話によりお申し込みください。
〒443-0031
蒲郡市竹島町26-14
小田二三枝
電話 0533-69-4564
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