辺戸岬の欣一句碑 陳 宝来
今回、吟遊の最初の目的地は、辺戸岬に建立された「欣一句碑」とまみえることでした。「伊吹嶺」が「風」の理念を基本に据え、継承していることがよく認識できた。斎場御嶽と受水走水(稲の発祥地)を訪ねて、いにしえの琉球に想いを馳せることができた。摩文仁の丘とひめゆりの塔への訪問は、戦争の悲惨さと平和の尊さを実感した。また、喜如嘉の芭蕉布、首里紅型工房、やちむんの里の焼き物などなど。沖縄の伝統工芸の美を鑑賞するコースは、参加者の沖縄への認識が深まったと思う。全コースの中で、私が唯一残念に思ったのが、料亭那覇の琉球料理でした。
最後に、参加者が満ち足りた様子でお帰りになったことに御礼申しあげます。
沢木先生の句碑に新酒を 砂川紀子
皆様をお迎えした那覇の空は生憎の曇天でしたが、皆、晴れ晴れとした笑顔で到着口から出て来られました。大会でお目にかかった方も大勢いらしてとてもなつかしく思いました。
途中、名護で昼食を取り一路バスは辺戸岬へと向かいましたが、沖縄らしい空や海を見て頂けず本当に残念でした。
辺戸岬では沢木先生の句碑に先生がお好きだったという日本酒を注ぎ、皆で碑に触れ合い、日本酒を口に含み「甘いね。」と言い合いながら先生をなつかしんでいる様子がとても心に残っています。きっと沢木先生もお喜びになった事だと思います。先生はお亡くなりになっても「伊吹嶺」の皆様の中心に沢木先生がおられるのだと改めて思わされた瞬間でした。
極楽色に輝いた三日間 河原地英武
生まれて初めて沖縄に行ってきました。しかも本島の北の端から南の端までを縦断するという何とも贅沢な経験をしてきました。11月も末だというのに、至るところに未知の花々が咲き乱れ、樹木は青々として、夏の虫も秋の虫も元気よく飛び跳ねていました。辺戸岬のみやらび句碑から始まり、芭蕉布の里、読谷村のやちむん(焼き物)の里、霊場である斎場御嶽、受水走水、守礼門等等ただ圧倒されるばかりでした。海軍指令壕やひめゆりの塔の衝撃も忘れることができません。俳句仲間とともに過したこの三日間は、いまも極楽色に輝いています。
芭蕉布の平良敏子さん 中野一灯
沖縄吟遊は盛沢山でどの一箇所にも一日は割きたい位でしたが私は芭蕉布、紅型の工房、特に芭蕉布の人間国宝平良敏子さんに深い感銘を受けました。芭蕉布、紅型の再評価には柳宗悦の民芸運動が大きな影響を及ぼした。芸術至上主義の流れの対立軸として「生活の美」、「用の美」を提唱した柳は沖縄では紅型と芭蕉布を再発掘した。この柳の着眼は時代が下って沢木欣一師の俳句における風土性の追及と軸を一にしていて師の沖縄吟遊集に結集されている。
ひめゆりの学徒たちの悲劇に先立ち芭蕉布の人間国宝平良敏子さんは紡績挺身隊として本土に渡り倉敷紡績で勤労奉仕に明け暮れた。幸いそこで民芸運動家木村吉之助の指導を受け倉敷紡績の創業者大原総一郎の激励によって芭蕉布を後世に伝えるという強い使命感を持って戦後の沖縄に帰った。十代の少女だった平良さんは今年八十四歳、矍鑠として芭蕉布の継承指導にあたり、その革新に余念がない。小柄で物静かな、謙虚な語り口、誠実さにはその作品とともに句友一同深い感銘を受け辺戸岬における佳句が生まれることとなりました。
心に残る沖縄の旅 鈴木 みすず
待ちに待った沖縄吟遊の旅、あいにくの曇天続きでしたが、それでも沖縄の魅力は尽きないものがありました。大自然の美しさ、そして辛く重い歴史を潜り抜けてきた沖縄の方々の明るさ、のびやかさにも、心を打たれました。
私がこの旅で印象深かったのは、辺戸岬のみやらび句碑と、旧海軍司令部壕でした。句碑では、栗田先生ご夫妻や先輩たちの万感籠る思いのお顔を拝見して、欣一先生の俳句が脈々と受け継がれてきたことを想い、お会いすることの出来なかった欣一先生を、本当に身近に感じることが出来たことを、とても嬉しく思いました。
また旧海軍司令部壕では、迷路のようなその地下壕の広さに驚き、そこに残された戦争の悲惨な現実に胸がいっぱいになりました。四千人が手榴弾で自決したという、弾痕の飛び散った壁、兵士たちが立ったまま眠ったという狭い穴、住民だけでなく、兵士たちも凄惨な犠牲を払わされたのだと知りました。壕を出て目にした、沖縄の海がきらきらと眩しかったこと、南国の赤い花が目に沁みるほど美しかったことを、今でも思い出します。沖縄戦では20万人が亡くなられたと聞きます。戦争を二度と起こしてはならないと強く思わされた旅でした。
今回の旅を企画して下さった栗田先生ご夫妻、いろいろお手伝い下さった堀さんや先輩の方々、そして温かく迎えてくださった砂川紀子さん、陳宝来さんに心より御礼申し上げます。
守礼門の前で |
みやらび句碑を囲んで |
句碑に新酒をかけたり、撫でたり |
「夕月夜みやらびの歯の波寄する」 |
芭蕉布の説明を聞く |
御穂田で見ているの何? |
他の人も熱心に見る |
斎場御嶽の気根 |
「爺婆と踊る宴や花梯梧」 |
バスの中まで島踊り |
こんな楽しそうな旅だったら、行きたかった |
やちむんの里の井 |
壺屋から移った登り窯 |
ひめゆりの塔を見ているのか? |
平和祈念公園 |
平和祈念公園の人間魚雷 |
公設市場で買い物より、俳句 |
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