わが町蒲郡では4月26日が浅蜊の口開けの日であった。「口開け」とは漁場の解禁日で、地元の人たち、遠方からの家族連れで賑わう日でもある。大潮は新月と満月の前後に生じる、干満の大きい潮のことを言う。潮干狩りのシーズンでもいつでも浅蜊が掻けるわけではない。大潮で干潟が大きくなった時である。竹島の大干潟を思いながら、4月25日の藤前干潟での「自然と親しむ吟行会」の報告をさせていただく。
暖かな日和に恵まれ、主宰・副主宰をお招きして、今年の「第5回自然と親しむ吟行会」が開催された。名古屋駅からあおなみ線にて野跡駅で下車。ひと駅向こうの金城ふ頭には今年4月にオープンしたばかりの「レゴランド」がある。車内は「レゴランド」の宣伝と思われるポスターが張り巡らされていた。
野跡駅前で、国枝部長から簡単な挨拶と注意点などが説明された。指導者と一緒に受付された方が多くてすぐさま定員の44名を超えたとのこと、句会場の人数制限があるため、先着優先とした。
「ラムサール条約」の目的は水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守るというもので、「ラムサール条約湿地」として登録されているのは日本全国で50か所である。その中でも藤前干潟はシギ、チドリなどの渡り鳥の中継地として知られている。他にもサギ、カモなども238ヘクタール(東京ドーム50個分)のこの大干潟に集まっていた。また巣作りのため干潟の泥を銜えて燕が飛び交う様子も見て、あちこちから歓声が上がっていた。
主宰の双眼鏡で中洲の鳥たちをじっと観察されている様子に、「見る・よく観る・一歩下がって観る」という吟行の心得を示していただいたような気がした。
約一時間半の吟行のあと、稲永ビジターセンターでの句会にそなえ、ネット部の環境Gでの会場準備、投句受付・弁当の配布など準備万端整った。短い時間ながら皆さんの観察力と作句力に圧倒され、急ぎ投句用紙に書き込んだ自分の句は見直す間もなく、句会の始まりとなった。
司会は環境Gの熊沢和代さん、披講は松井徒歩さん・国枝洋子さんで、主宰・副主宰の特選句あり、との紹介に皆さんの気持ちも引き締まったように思えた。
披講も順調に進み、お二人の特選が会員さんの句から選ばれて、会場を沸かせた。主宰が「吟行句は、皆さんが気づかないハッと思う句をいただく」といわれたことを胸に、次回の「自然と親しむ吟行会」に向けて精進を重ねて行きたいと思った。副主宰の特選句は主宰も選ばれており、会員さんの新しい感覚が光った俳句会だったといえよう。潮風と茱萸の花の香りの中で、木の階段に座り行われた反省会もなかなかおしゃれな感じだった。そして、新樹光と心地よい潮風の中での俳句会が、大変充実した句会であったことを報告して、「第5回自然と親しむ吟行会」の成功に感謝したい。 (内田陽子記)
|