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2022年10月号 俳日和(57)
 
  英訳やすし百句

                             河原地英武

 本誌の2004年6月号から2014年12月号まで、栗田先生の俳句の英訳を連載していた。足掛け11年、毎号4句ずつ載せていたので、合計すると508句になる。そのなかから先生ご自身が100句を選び、さらにわたしが先生の近作の英訳を数句付け加え、英訳『栗田やすし百句』を豊文選書の第Ⅷ篇として刊行する予定である。

 7月に初校が上がってきていたので、本来ならばそろそろ完成の時期なのだが、1ヶ月近く校正に時間を費やしてしまい、現在は再校ゲラ待ちの段階である。初校の校正に手間取ったのは、次々直したい箇所が出てきて、結局ほぼすべての英訳に手を入れることになったせいである。いくつかは新訳に差し替えた。

 わたしの翻訳の腕が上がったわけではないけれども、拙訳の掲載終了後も折に触れ英語俳句に親しんできたので、いろいろ気づくことはあった。今回、旧稿を改めるにあたり、次の点に留意した。第一に、形だけは3行に分かち書きしていても、一文になってしまうような訳は極力避けた。英訳でも切れは大切なのである。第二に、文法にとらわれないことだ。いわゆる学校英語では、文法のミスが厳しく咎められ、試験で容赦なく減点される。その影響で、文法問題は強迫観念のようにいつまでもわたしに付きまとってきた。今頃になって、ようやくそこから解放された気がする。定冠詞や不定冠詞にこだわらない。できるだけ主語を省く。動詞、殊にbe動詞も省略する。前置詞も律義に置かない(そのまえにダッシュ「—」を入れ、切ってしまえばいいのだ)。

 原句と英訳では趣が異なる。英語という言語に移し替えることにより、日本語では見過ごしがちな点がクローズアップされるのだ。しかしそれも先生の句に内在する魅力なのである。拙訳がそれを少しでも引き出し得たとすれば訳者冥利に尽きる。