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選句結果
     
第296回目 (2024年5月) HP俳句会 選句結果
【  国枝隆生 選 】
  特選 葉桜の日の斑啄む土鳩かな 雪絵(前橋市)
   のどけしや手挙げて止まる村のバス 原洋一(岡山県)
   稚児歩む蒲公英の絮散らしつつ      直樹(埼玉県)
   木々すでに濃き影を持つ愛鳥日 石塚彩楓(埼玉県)
   海光やみかんの花の香る島 まこと(さいたま市)
   鉄線や風柔らかき小京都 佐藤けい(神奈川県)
   暗闇に笛の高鳴り薪能 町子(北名古屋市)
   母の日やケーキにジュース肩たたき 麻里代(和歌山市)
   師の句碑の文字くつきりと新樹光 蝶子(福岡県)
   色違え若葉重なる山眩し 美由紀(長野県)
【  関根切子 選 】
  特選 暗闇に笛の高鳴り薪能 町子(北名古屋市)
   のどけしや手挙げて止まる村のバス 原洋一(岡山県)
   夏柳川辺に沿ひてなまこ壁      康(東京)
   触れ太鼓ひびく名古屋の街薄暑 水鏡(岐阜県)
   海光やみかんの花の香る島 まこと(さいたま市)
   三歳と指で答へて風薫る まこと(さいたま市)
   鉄線や風柔らかき小京都 佐藤けい(神奈川県)
   草笛を生徒に習ふ赴任先 惠啓(三鷹市)
   師の句碑の文字くつきりと新樹光 蝶子(福岡県)
   スカイツリーより新緑のひとかけら 櫻井 泰(千葉県)
【  松井徒歩 選 】
  特選 朝涼や和讃の鈴の響き合ふ 雪絵(前橋市)
   制服の紺きらめくや花吹雪 みぃすてぃ(神奈川県)
   葉桜の日の斑啄む土鳩かな      雪絵(前橋市)
   稚児歩む蒲公英の絮散らしつつ 直樹(埼玉県)
   留守電に無沙汰一と言夏に入る 福山三歩(栃木県)
   土鳩の日の斑啄む薄暑かな 正憲(浜松市)
   暗闇に笛の高鳴り薪能 町子(北名古屋市)
   芍薬や花びら一片立ち初め 町子(北名古屋市)
   箒目の砂に新し花あふち 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   教会に尖塔二本夏つばめ 蒼鳩 薫(尾張旭市)
【  玉井美智子 選 】
  特選 夏めくやつるんと剥けるゆで玉子 小豆(和歌山市)
   稚児歩む蒲公英の絮散らしつつ 直樹(埼玉県)
   触れ太鼓ひびく名古屋の街薄暑      水鏡(岐阜県)
   海光やみかんの花の香る島 まこと(さいたま市)
   足で漕ぐスワンボートや風光る 飴子(名古屋市)
   暗闇に笛の高鳴り薪能 町子(北名古屋市)
   賓頭盧の膝の円みや坂薄暑 椋本望生(堺市)
   英会話楽しむシニア柿若葉 小豆(和歌山市)
   師の句碑の文字くつきりと新樹光 蝶子(福岡県)
   ひと潜り川鵜の嘴に小鮒跳ぬ 野津洋子(瀬戸市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、町子さん(北名古屋市)でした。「伊吹嶺」5月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


        2024年5月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

 沢山の御投句ありがとうございました。

1	O君のカーネーションの白なりき

O君に俳味を感じるので、どういう人なのかの想像を楽しむことができれば成功なので
すが・・・。

2	マンションの梯梧の花を見に行かむ

1番のO君と同様にマンションが漠然としているように思います。。

3	だんご虫同じ目線で夏迎ふ

 <同じ目線>がよく分かりませんでした。

4	目標のひとつに卒寿夏帽子

<ひとつ>と言わず<目標>と断言したほうが良いと思いました。

5	本降りに雀騒がし薔薇繚乱

本降りと雀の関係がよく分かりませんでした。分かれば分かったで理屈になるような・・・。

6	葉桜や宴の後のハーモニカ

 「葉桜」と<宴の後>は即きすぎのような気がしました。

7	初鰹老僧買ふや般若湯

「初鰹」のあとに<を>が省略されていると解釈すれば良いのですが、上五で切れてい
るように見えます。中七でも切れていますので三段切れですね。

(国枝評)中七が「買ふや」と終止形で止めていますので、三段切れの印象でした。
「初鰹老僧買うて般若湯」と弱い切れにすれば、違和感はないと思います。

8	街薄暑通いしビルは今低く

ビルが低くなったというのは建て替えたのでしょうか?

9	制服の紺きらめくや花吹雪

「花吹雪」が効いていますね。新入生でしょうか。

10	硝子戸に春来たるらし聴竹居

<らし>ではなく断言したほうが良いと思いました。

11	ほほえみに隠す本心蛇苺

上手く季語を合わせたと思いますがもう少し実体がほしいですね。

12	のどけしや手挙げて止まる村のバス

時間がゆるやかに進む田舎の生活が目に浮かびます。

国枝隆生氏評===============================

類句がありそうですが、こんな生活もよいですね。

======================================

13	柿若葉かくれんぼした幼き日

良い季語が付いていますが、<した>という口語のせいでしょうか、過去の報告のよう
な気がしました。

14	葉桜の日の斑啄む土鳩かな

<日の斑啄む>が見事な写生ですね。

国枝隆生氏評===============================

鳩が土を啄んでいるかと思えば、日の斑を啄んでいるように見えたということですね。
明るさに満ちた句です。同じ「土鳩」を詠んだ句が43番にもありますが、この句の方が
調べがよいと思いました。

======================================

15	朝涼や和讃の鈴の響き合ふ

鈴の音と相まっていかにも涼し気な句ですね。上五<や>で強く切れていますので下五
は連用形でも良いかなと思いました。

16	デパートのお子様ランチこどもの日

お子様ランチと「こどもの日」では即きすぎだと思います。

17	夏柳川辺に沿ひてなまこ壁

なまこ壁の倉庫でしょうか。柳とはよく似合いますね。

18	葉桜の糸ひく虫や風さわぐ

予選で頂きました。発見の句ですね。

19	山脈の稜線極む五月晴

 山脈と稜線は言葉が被っています。山脈は省略するか、<山稜>としてはどうでしょ
うか。

(国枝評)「稜線」と言えば、「山脈」にダブり感を持ちました。

20	孔雀の羽根競ひ開いて風薫る

中七は<て>ではなくはっきりとした切れを入れたほうが良いと思います。

21	満席の鈍行列車養花天

 鈍行が満員というところに俳味を感じました。

(国枝評)鈍行というと通勤列車でなく、旅行に出かける印象でした。そうすると「満
席」から人気ある旅行先が想像され、のどかな印象も感じました。

22	霾れり父軍服の写真かな

言葉の運びがすっきりしていないように感じました。余計なお世話かもしれませんが、
私ですと「軍服の父の写真や・季語」とします。

23	軍服の影見え隠れ昭和の日

戦争への警告としては「昭和の日」は即きすぎでは・・・。

24	夏立つや太めになりし腹回り

俳味は買いますが季語が効いているかどうか。

25	日溜まりの在り処教へるいぬふぐり

<教へる>が理屈っぽいと思いました。

26	稚児歩む蒲公英の絮散らしつつ

よく観察していると思いました。

国枝隆生氏評===============================

一面蒲公英に満ちている広場が見えてきます。稚児の笑い声が聞こえてきそうです。

======================================

27	山若葉にれかむ牛のまなこざし

口か目かどちらかに集中して詠んだほうが良いと思いました。

28	見渡せる代田にまざと会津富士 

「まざまざ」ではなく「まざ」だけの用例は見当たりませんでした。

29	霾天や余生気長に漢方薬

季語が効いていないように感じました。

30	留守電に無沙汰一と言夏に入る

仲の良い友人関係を感じました。<一と言>の<と>は要らないとおもいます。漢字が
続くので入れたのでしょうか。

31	両隣もらふ竹の子余りけり

<両隣>には助詞が必要だと思います。

32	里山の吹かれ舞い飛ぶ藤の花

<里山>は使い勝手の良い言葉ですが、この句からは「藤の花」以外の景色が浮かんで
きませんでした。

(国枝評)「里山の」は「藤の花」に掛かると思いますが、一寸離れすぎの印象です。
「里山に」でもよかったと思います。また「舞い飛ぶ」は藤の花がちぎれて飛んでいく
のでしょうか?

32	逝く春の一期一会の人行きて

句中に切れが無くて「て」で終っていますので、連句での平句のようです。俳句は連句
の発句が元ですので何処かに切れが欲しいです。

33	逝く春の珈琲店に海眺め

この句も連用形で終っていて切れがありません。「逝く春や」か「海眺む」とすればよ
いと思いますが。

34	竹の秋振り子時計の鐘の音

竹林の見えている、間口の広い縁側のある夏屋敷を想像しました。

36	木々すでに濃き影を持つ愛鳥日

時の移ろいの早さを感性で把握。私にはちょっと真似にできません。

国枝隆生氏評===============================

五月に入り、春から夏に移る頃はますますみどりが濃くなります。それを「濃き影」と
詠んだのがよかったと思います。

======================================

37	卯の花腐し白檀香の燃え残る

そんなに離れている季語だとは思いませんが、<白檀香〜>との兼ね合いが、よく分か
りませんでした。

38	触れ太鼓ひびく名古屋の街薄暑

 名古屋場所でしょうか。

39	梅雨晴間デイサービスの来る時間

報告気味の句のように思いました。

40	追はれつつ子を待つ鳩や春のひかりに

下七を推敲してください。

41	海光やみかんの花の香る島

 そつなく出来ている句だと思いました。

国枝隆生氏評===============================

「みかんの花咲く丘」の童謡のオマージュでしょうか。明るさに満ちています。

=====================================

42	三歳と指で答へて風薫る

 指で答えるところにはにかみを感じて微笑ましいですね。

(国枝評)幼子とのやりとりが「薫風」にふさわしいと思いました。

43	土鳩の日の斑啄む薄暑かな

 14番と殆ど同じ句ですが、作者から取り消しの要望を頂きました。自動で受け付け
ていますので取り消しは不可となっています。同時発表とみなし、私は両方ともいただ
きました。
 
44	憧れは太陽の塔葱坊主

 憬れの理由がよく分かりませんでした。

45	千枚の鏡鎮もる植田かな

広い景が良いですね。

(国枝評)類句がありそうですが、広々とした千枚が一望出来る棚田が見えてきました。

46	掌でなおもあぎとふ香魚かな

 <なおも>は言いすぎているように感じました。

47	さみどりの光あまねく若楓

悪くない句だと思いますが、季語の解説のような感じがしました。

48	水馬の手足支える笹の舟

 面白い発見ですね。

49	青葉なる堤防道や遠息吹山(いぶき)

堤防道に<や>があるのでここが句の中心ですね。景色は良く見えるのですが、伊吹山?
があまり効いていないように思いました。

50	とりどりの夏服駅に四連休

やや報告でしょうか。

51	二階より豆腐屋止むる夕薄暑

二階から屋台のラーメン屋を止めた記憶が蘇ってきました。

(国枝評)二階で家事をしていると豆腐屋がやって来た。そんな情景がよく見えてきま
した。ただ「止むる」でなく、単純に「豆腐屋呼べり」でよいと思いました

52	改札を抜ける半袖夏めきぬ

半袖が季語の説明のように感じました。

53	足で漕ぐスワンボートや風光る

仲睦ましいカップルでしょうか。名古屋市の某公園の池では別れてしまうという言い伝
えがありますので、恋の成就を切に願います。

54	熊ん蜂騒ぎひとは静かに藤廻廊

上八?中十? 表現にあれこれ規制を掛けると詩が細るという意見もありますが、でき
るだけ定型を守ってほしいです。

55	夏浅しオフイス街の昼休み

肝心の人の動きが見えてこないです。

56	相槌を打ちつつ食ふや豆御飯

「豆御飯」ですからご夫婦の食事風景でしょうか。省略が良いですね。

(国枝評)「相槌」から静かな二人暮らしを感じました。この「豆御飯」も庭からの採
集の蚕豆のようにも見えてきました。

57	母の日や痴呆の母の下着干す

<痴呆>という直裁的な言葉にどきっとしました。

58	焼香を終へて寺町夕薄暑

季語が程よく付いていますね。

59	ささやかな吾の遺品なり梅漬ける

まだご存命なのに遺品というのはどうでしょうか。
 
60	葉の使途を思案して食む柏餅

 <思案>に理屈を感じました。

61	青鷺や喉は脱出シュートめき

飛行機からの脱出シュートでしょうか。伸びているところを表現したのかもしれません
が、俳味としても無理があるように思いました。

62	鉄線や風柔らかき小京都

 古民家の裏路地ででしょうか。

国枝隆生氏評===============================

「小京都」で優しさに満ちた風がふさわしく感じられます。ただ「小京都」がやや漠然
としており、具体的な場所を特定すると、「鉄線」が活きてくると思います。例えば
「古都の路地」など。

======================================

63	憲法記念日国旗掲げし家2軒

 数字は漢数字の方が良いと思いました。

64	暗闇に笛の高鳴り薪能

「薪能」に暗闇の句は良く見かけますが<笛の高鳴り>が発見ですね。

国枝隆生氏評===============================

 最高得点でした。実際には暗闇でなく、篝火の明るさが見えますが、笛が闇から響い
て来る印象でした。

======================================

65	芍薬や花びら一片立ち初め

中八ですね。(自信はありませんが)<一片>は<ひとつ>では駄目でしょうか?

66	賓頭盧の膝の円みや坂薄暑 

勉強不足で「坂薄暑」のイメージがよく分からないのです。。

67	万緑の昏きを抜けて息苦し

<息苦し>はその理由が?でした。

68	箒目の砂に新し花あふち

いただいたのですが、<砂の新し>と勘違いしていたので自信が持てなくなりました。

69	教会に尖塔二本夏つばめ

<尖塔二本>で印象鮮明。

70	母の日やケーキにジュース肩たたき

国枝隆生氏評===============================

母の日のプレゼントに「肩たたき」が入っているのが温かく感じます。でもこの肩たた
きは子供でなく作者が老いた母にプレゼントしているようでした。そこに明るさも感じ
ました。

======================================

71	母の日や祝ひ祝はれ泣き泣かれ

<泣き泣かれ>に戸惑いました。もう少し分かりやすい俳句にしてほしいです。

(国枝評)リフレインはリズムをよくすることと対比による写生に効果的だと思います
が、一句の中にリフレインが複数あると一寸うるいさい感じでした。

72	年下となりたる妣の日を修す

感慨無量ですね。私も父の歳(81)が一応の目標ですが余り自信はありません。

73	草笛を生徒に習ふ赴任先

<赴任先>ですから新任の先生でしょうか。

74	夏めくやつるんと剥けるゆで玉子

既視感のある句ですが、初夏の雰囲気はありますね。

75	英会話楽しむシニア柿若葉

 いつまで経っても楽しみは見つけたいですね。

76	麦秋や一両電車夕日浴び

句の姿も整っていて美しい景色なのですが、使い勝手の良い言葉が並びすぎているよう
に思いました。

77	師の句碑の文字くつきりと新樹光

先生の句碑の前で、緑に囲まれて心が洗われるようですね。

国枝隆生氏評===============================

どなたの句碑か分かりませんが、「くっきりと」に彫りが深く、明るい夏の日ざしが見
えてきます。

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78	ひと潜り川鵜の嘴に小鮒跳ぬ

中七以下は申し分ないのですが、上五が説明のようで惜しいと思いました。

79	松ヶ枝に鳶の羽撃ちやごめ渡る(日御碕・経島)

鳥が二種類出てくるのはどうでしょうか。実景であったとしても一種類に絞った方が良
いと思いました。

80	色違え若葉重なる山眩し

若葉の緑も一様ではなくさまざまな色合いですね。

国枝隆生氏評===============================

奥深い山が想像されます。若葉にも濃い薄いがあるところに勢いよさが感じられます。
なお文語で書くなら「違へ」ですね。

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81	若葉風木陰でつきぬ立ち話

あるある感はありますが、若葉風の気分の良さは伝わってきませんでした。

82	スカイツリーより新緑のひとかけら

スカイツリーを樹木と見立てたのかと思いましたが、国枝さんの評で納得しました。

(国枝評)小さく見える新緑を「ひとかけら」と見たのがよかったと思いますが、
「摩天楼より新緑がパセリほど 狩行」の類想感がありました。

83	MRIの筒の中なる大昼寝

剛気な方ですね。私でしたら緊張で固まってしまいます。




第295回目 (2024年4月) HP俳句会 選句結果
【  酒井とし子 選 】
  特選 床磨く四月の風を滑らせて 雪絵(前橋市)
   本寄せて飾る紙雛新所帯 みぃすてぃ(神奈川県)
   囀や父は子を空高く挙げ      田中由美(愛知県)
   ふはと来て老師にとまる春蚊かな 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   鳥雲に平家ゆかりの鎧塚 ワ コ(港区)
   土までもやさしと言はれ能登は春 ワ コ(港区)
   つくしんぼかつてこの地は保育園 惠啓(三鷹市)
   前脚は字余り蝌蚪の水濁る 椋本望生(堺市)
   一斉にめくる楽譜や春の声 かよ子(和歌山市)
   山若葉新車のナビの良く喋る 櫻井 泰(千葉県)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 傘寿かな秘蔵の酒と木の芽和 岩田 勇(愛知県)
   本寄せて飾る紙雛新所帯 みぃすてぃ(神奈川県)
   母逝きし頃は無医村やまざくら      大原女(京都)
   飛花落花山懐の外湯の灯 美佐枝(千葉県)
   うららかやお日様のせて観覧車 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   展望台天辺に据ゑ花の山 正憲(浜松市)
   背なの子も眠りに落ちて花疲れ ようこ(神奈川県)
   俎板にとびちる鱗桜鯛 小豆(和歌山市)
   きらめける車窓の海や穴子飯 伊藤順女(船橋市)
   菜の花や母の歩みに合わす旅 蝶子(福岡県)
【  武藤光リ 選 】
  特選 つくしんぼかつてこの地は保育園 惠啓(三鷹市)
   本寄せて飾る紙雛新所帯 みぃすてぃ(神奈川県)
   よべの雨観音像の花ごろも      のりこ(赤磐市)
   坂道の多き島道焼栄螺 梦二(神奈川県)
   飛花落花山懐の外湯の灯 美佐枝(千葉県)
   五箇山の水ある暮らし黄水仙 正憲(浜松市)
   俎板にとびちる鱗桜鯛 小豆(和歌山市)
   きらめける車窓の海や穴子飯 伊藤順女(船橋市)
   菜の花や母の歩みに合わす旅 蝶子(福岡県)
   新緑や子授樟の幹の洞 櫻井 泰(千葉県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 山若葉新車のナビの良く喋る 櫻井 泰(千葉県)
   傘寿かな秘蔵の酒と木の芽和 岩田 勇(愛知県)
   本寄せて飾る紙雛新所帯      みぃすてぃ(神奈川県)
   床磨く四月の風を滑らせて 雪絵(前橋市)
   囀や父は子を空高く挙げ 田中由美(愛知県)
   訝しく空見る猫や春の雷 比良山(大阪)
   五箇山の水ある暮らし黄水仙 正憲(浜松市)
   きらめける車窓の海や穴子飯 伊藤順女(船橋市)
   菜の花や母の歩みに合わす旅 蝶子(福岡県)
   通学路馴染んで来し子花は葉に 蝶子(福岡県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、みぃすてぃさん(神奈川県)でした。「伊吹嶺」4月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2024年4月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

1	傘寿かな秘蔵の酒と木の芽和

 木の芽和の滋味がわかるようになるまで齢を重ねて来られたのですね。秘蔵の酒で舌
を洗い、目を細めておられる様子が浮かびます。

 奥山ひろ子氏評===============================

80歳おめでとうございます。節目の年を迎えられての感慨と、ご自身をねぎらうお気
持ちが「秘蔵の酒と木の芽和」に込められていますね。「秘蔵の」が殊に節目の年を迎
えたら飲もうと、楽しみになさっていた感じにあふれいい表現だと思いまました。「木
の芽和」の季語は豪華ではないけれど季節のご馳走で、作者のお人柄を感じました。

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2	春は何処春はいつから春嵐

 「春」のリフレインがリズミカルですが、ちょっと奇を衒い過ぎた感じを受けました。

3	本寄せて飾る紙雛新所帯

 狭いアパートから二人の新生活をスタートされたのでしょう。「本寄せて飾る紙雛」
がリアリティがあって良いですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

「本寄せて」にそれほど広くない雛飾りのためのスペースを想像しました。「紙雛」は
折紙でおられたものでしょうか。まだお若くて初々しい「新所帯」ならではの、ほのぼ
のとした幸福感をお裾分けして頂きました。

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4	舟運ぶ線路の遺跡花の雲

 「舟が、線路の遺跡を運んでいる」のか、「舟を運ぶための線路の遺跡」なのか、ど
ちらにしてもあまり日常では見かけない光景で、具体的なイメージが湧きませんでした。

5	床磨く四月の風を滑らせて

 ドアや窓を開け放って床掃除をされているのだと思います。「風を滑らせて」で、磨
き上げられた床が浮かんできますが、春塵が舞い込んで来ないかちょっと気になりまし
た。

6	いつしかに花閉づ雨意のチューリップ

 夜や雨の日には花を閉じるというのはチューリップの特性ですが、それをそのまま言っ
たのでは、報告や説明の域を出ないと思いました。

7	鳥獣戯画は漫画のルーツ笑う山

 鳥羽僧正の鳥獣戯画が漫画の元祖だという説は有名ですが、それをそのまま言っても
詩になりません。

8	比良晴れてえりさす湖の波しずか

 晴れ渡った琵琶湖に、比良山地が映る景が見えて来ます。「えり」は魚偏に入の漢字
が出ないのかもしれませんが、「えり挿す」と表記した方が良いと思います。

9	酒の名は「酒呑童子」ぞ山笑ふ

 酒呑童子という日本酒のネーミングには、それほど意外性を感じず、句材として面白
いとは思えませんでした。

10	覚めがたき春の眠りや朝厨

 「覚めがたき春の眠りや」は、有名な漢詩の「春眠不覚暁」をそのまま言っただけで
すね。下五は、台所で寝ているように思えました。

11	母逝きし頃は無医村やまざくら

 単なる花(桜)ではなく山桜であるところに、鄙びた村の様子が察せられます。また、
「やまざくら」と平仮名とされていることで、お母様のふんわりとした優しさを偲んで
いることが感じられました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 お母様とのお別れの頃に思いを馳せられているお気持ちと、「やまざくら」の季語が
春の憂いのような、切なさを伝えています。今は医師がいて安心なのではと拝察しまし
た。
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12	滅びゆく我が身愛しや花は葉に

 上五中七が観念的で、読者は取り残されるように感じました。季語も付き過ぎに感じ
ます。

13	マリンライナー走る大橋薄霞

 瀬戸大橋線のマリンライナーですね。旅心が掻き立てられます。

14	よべの雨観音像の花ごろも

 花衣は、花見に着て行く女性の衣装のことですが、この句の場合は、花びらが雨で観
音像に貼りついていることを言ったのでしょうか?

15	花冷や邪鬼踏み付くる四天王

 季語の選び方が上手と思いました。ただ、四天王や仁王が邪鬼を踏みつけているのは
当たり前ですので、もう一歩踏み込んだ観察、写生が欲しいと思いました。また、四天
王では四人を漠然と見ているような感じですので、一人に絞った方がイメージがより鮮
明になると思います。例:花冷や邪鬼の顔踏む多聞天

16	花散らす風の夜道を急ぎけり

 急いでいる理由が察せられると良いですね。

17	頬こけしガザの子眠る春の闇

 ネットで調べたら、パレスチナにも四季があるそうですね。眠っているときだけでも、
安らいで欲しいと思います。

18	囀や父は子を空高く挙げ

 季語が活きて、高いたかいをして(されて)いる様子が見えて来ます。破調ですが十
七音に納まっていますね。

19	どくだみをむしれば強き怒りの香

 どくだみが強い臭いを持つのは自明ですが、あれが怒りの香であるという見立てがユ
ニークですね。

20	生き生きと老いゆく夫婦花は葉に

 老いるということはいろいろな意味で衰えるということでもありますが、それでも日々
生き生きと過ごされているのは素晴らしいです。季語も良いですね。

21	過ぎ易き日々はため息竹の秋

 過ぎ易い日というのはどういう日なのでしょう? 句意がつかめませんでした。

22	夫逝きて雨に悩める牡丹の芽

 雨に悩んでいるのは作者?牡丹の芽?

23	見て見てと妻呼ぶ所つくつくし

 最近は、土筆もとんと見かけなくなりましたね。久しぶりに土筆を見つけてはしゃぐ
奥様の気持ちもわかります。

24	平凡な僕も今日から花粉症

 平凡だから花粉症になってしまったのか?平凡なのに花粉症になってしまったのか?

25	雁帰る天に一声残しつつ

 「雁帰る」という季語を見ると、読者はその声までイメージしますので、所謂「季語
の説明」の句と感じました。

26	満開の花に紅さす今朝の雨

 「満開の花に紅さす」の意味がわかりませんでした。雨に濡れると桜の花が紅くなる
のでしょうか?

27	真似る子の声と一つの初音かな

 可愛らしい景ですが、鶯の声と一つになるようにタイミング良く真似ることができる
のかな?と、理屈っぽく考えてしまいました。

28	坂道の多き島道焼栄螺

 「道」の重複が気になります。坂の道端で焼き栄螺を売っているのでしょうか?

29	恋敵となるかもしれぬ花筵

 花筵は花見の宴に使う筵のことで、転じて花見の宴そのものも花筵と言います。それ
が恋敵になるとは、どういう意味でしょうか?

30	つばくらや落暉に映ゆる虫籠窓

 虫籠窓の傍に燕の巣があるのでしょうか? 伝統ある街並みの夕景ですね。

31	飛花落花山懐の外湯の灯

 リズムも良く、景も良く分かる句です。ただ、飛花も落花もそれぞれ独立した季語な
ので、それを重ねた「飛花落花」という言葉には、以前より疑問を持っています。
飛花落葉という言葉があるので、誰かがそれと混同して使い始めたのかな?等愚行して
いますが、本当のところはわかりません。ちなみに、私の持っている歳時記には、一番
大きな講談社のカラー図説日本大歳時記を含め、飛花落花という季語は載っていません。

 奥山ひろ子氏評===============================

 花が散っている山の湯に灯りが灯っているという、なんとも風情のある景色ですね。

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32	湖は萠葱色して黄水仙

 萌葱色は、青み掛かった濃い緑色だそうです。湖がこの色になるのは、藻などが繁殖
しているのでしょうか? ちなみに、同じもえぎでも萌黄色は、春先に萌え出る若葉の
ようなさえた黄緑色とのことです。

33	春日傘運河に架かる橋の上

 景が見える句ですが、「運河に架かる橋の上」は「運河の橋」で分かりますから、も
う一工夫できそうです。

34	ふはと来て老師にとまる春蚊かな

 春の蚊は、越冬したアカイエカが多いそうで、それが老師にとまるとは相見互いのよ
うで俳諧味がありますね。

35	うららかやお日様のせて観覧車

 童謡のようなほのぼのとした句ですね。お日様に顔が描いてあるようです。

 奥山ひろ子氏評===============================

 「お日様乗せて」が面白い表現。観覧車一つ一つに太陽が映っているということでしょ
う。よくご覧になっていますね。

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36	山祇を囲みて里の山笑ふ

 「山祇を囲みて」も「山笑ふ」も観念的な印象です。

37	暮れなづみ笑ひの山も鎮もりぬ

 夕暮れになって、新緑の山が闇に沈んで行く様子を「鎮もりぬ」と表現されたのが上
手いですね。

38	鳥雲に平家ゆかりの鎧塚

 平家一族の栄枯盛衰に思いを馳せているのでしょう。ただ、平家にゆかりのある鎧塚
についてネットで調べてみましたが、それらしいものは見つかりませんでした。栃木県
に平家塚というのがあるようですが、そのことでしょうか?

39	土までもやさしと言はれ能登は春

 能登の句だと、地震に関係あるのかと思いましたが、「土までもやさしと言はれ」の
意味がわからず、句意がつかめませんでした。

40	蜆汁野暮用済むや振舞はる

 野暮用とは、つまらない用事や仕事関係の用事のことを言いますが、そうした用事が
済んだ人に、誰が何故蜆汁を振舞うのでしょうか? 状況がよくわかりませんでした。

41	海浜に思はぬ出逢い旅うらら

 「海浜に思はぬ出逢い」の状況が良くわかりませんが、旅先で何か心が明るくなるよ
うなことがあったのでしょうね。

42	むらさきのしづく滴る藤の房

 季語の説明に感じました。

43	河に花城にも花の郷土かな

 郷土には、自分が生まれ育った地という意味と、地方・田舎という意味がありますが
前者の場合は故郷とした方が意味がはっきりしますので、この句では後者の意味かと思
います。そうすると、上五中七の具体的な景に対して、下五が漠然とした説明に感じら
れます。

44	訝しく空見る猫や春の雷

 突然の雷に驚いた猫の、可愛らしい仕草が見えて来ます。

45	ゴーグルとマスクに吠ゆる犬黄砂

 ゴーグルとマスクの主は作者でしょうね。俳味のある句ですが、黄砂→ゴーグルとマ
スクで防ぐ→犬が主人とわからず吠えると、説明臭さも感じました。

46	童心へ誘ふ土手の鼓草

 蒲公英を見て、幼少の頃の思い出がよみがえってくるというのは、多くの人が持つ自
然の感情だと思いますので、それだけでは句材として弱いです。土手に生えているとい
うのも、蒲公英にはありがちな景です。

47	草萌や犬に譲らむ狭き道

 季語が活きていないように思いました。また、道を譲ると言えば、狭いとは言わなく
ても良いと思います。

48	山笑ふ口はさしづめ仁王門

 山笑ふと言う季語は、「春山澹冶(たんや)にして笑ふが如し」から来ているのは周知
の通りで、春の山の明るい様子を言ったものであり、実際に表情を持っているわけでは
ありません。仁王門を口に見立てるよりも、この季節に似合うような仁王門の特徴を発
見して、取り合わせの句とした方が良いと思いました。

49	花束のやうに抱かるる朧かな

 句意が掴めませんでした。花束のように抱かれるのは朧?作者?他の何か?

50	前倒しとなる退院日朝桜

 良かったですね! 作者の気持ちが季語から伝わってきます。

51	敦煌を襲ふ端くれ黄砂の来

 句意が掴めませんでした。何の端くれが敦煌を襲うのでしょうか?

52	ぺんぺん草雑草ほどに抜かれたり

 ぺんぺん草は雑草だから引き抜かれたという当たり前の事実は、どう詠んでも詩には
ならないと思います。

53	そっと踏む若草痛み覚ゆける

 若草が痛みを覚えたのかと思いましたが、それでは意味が通らないので、作者が足裏
に傷みを覚えたということでしょうね。事実なのでしょうが、若草の小ささ、柔らかさ
と反するような印象を受けました。また、「覚ゆける」という表記ですが、けるは連体
形なのでここでは使えません。終止形のけりを使って「覚えけり」とした方が良いと思
います。

54	一本の桜華やか村はずれ

 「華やか」のような主観的な言葉はできるだけ避けた方が良いと思います。「満開」
や「花吹雪」「桜咲く」等、具体的な景を詠めば、華やかと感じる想いは読者に伝わり
ます。

55	吹く度に数変はりたる石鹸玉

 確かにその通りですが、当たり前のことをそのまま言っただけの句と感じました。

56	暖かや読経の音吐朗々と

 音吐朗々は読経の形容としてはありふれているように感じました。また、季語が動く
ようにも思います。

57	五箇山の水ある暮らし黄水仙

 「水ある暮らし」が良いですね。山懐に抱かれ、豊かな雪解けの水が迸る里の様子が
見えて来ます。季語も引きたっていますね。

58	展望台天辺に据ゑ花の山

 この展望台から見下ろす花の山は見事でしょうね。

 奥山ひろ子氏評===============================

「天辺に据ゑ」という大胆な表現から、「花の山」のダイナミックなスケールを感じま
した。

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59	背なの子も眠りに落ちて花疲れ

 背なの子"も"とあるので、他にも眠っている人がいるのだと思います。誰でしょう?
また、花疲れをしているのは誰でしょうか?子ども?作者?

 奥山ひろ子氏評===============================

 自分も疲れたけれど背の子も疲れているという、子を思いやる親心。子供が眠ると、
更に重たくなって、作者はますます大変です。『背』は『せな』と読みます。眠りに落
ちたのはお子さんであるので、「背の子も」は「背の子は」でいいかと思います。

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60	城壁を隠すが如く飛花落花

 城を背景に飛び舞う花吹雪の様子が目に浮かびます。「飛花落花」については、31の
句で述べた通りです。

61	春日射二すじ三すじ蜘蛛の糸

 春日射は「はるひざし」と読むのか「はるにっしゃ」と読むのかわかりませんでした。
また、季語は蜘蛛の糸(夏)でしょうか?

62	雨のあと薄くれないの桜道

 桜道以外に季語と思えるものがありませんが、これは季語にならないと思います。

63	春月の半分マリアの火傷痕

 春の月の半分が、聖母マリアの火傷の痕のようだという句意かと思いますが、意味が
わかりませんでした。

64	初蝶や再入場のもぎり券

 取り合わせの句として形はできていますが、何の施設の再入場券なのか等状況がわか
らず、景が浮かびませんでした。

65	つくしんぼかつてこの地は保育園

 少子化または過疎化で無くなってしまった保育園の跡地に立ち、街(村?)に子どもが
沢山いて賑やかだった昔を懐かしんでいる・・・というのは、深読みし過ぎでしょうか?

 武藤光リ氏評================================

かって子らの声で賑やかだった保育園も今はない。少子化が進み、無くなってしまった
のだ。そしてその地には、痩せ地に生えるつくしんぼうが、子らを偲んで生えている。
この時勢は何とか替えねばならない。

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66	桜散る負け碁を並べ直しをり

 私は碁をやらないので、負け碁を並べ直すということがわかりませんでした。申し訳
ありません。

67	燕来る父の安否を告ぐやうに

 通信手段の発達している現在、あまり現実的な感慨には思えませんでした。

68	前脚は字余り蝌蚪の水濁る

 前脚は字余りの意味がわかりませんでした。

69	スーパーの入り口近くツバメの巣

 とりたてて珍しい景ではなく、句材としては感興に乏しいように思いました。

70	黄砂ふる大陸からの白い使者

 季語の説明に感じます。

71	俎板にとびちる鱗桜鯛

 俎板に鱗ちりしく桜鯛 正岡子規 の句を思い出しました。有名な俳人の句と似た句
を作ったということは、実力がついてきたということですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 大胆に捌く様子が「俎板にとびちる鱗」でうまく表現されています。「桜鯛」の季語
の斡旋も春らしくてとてもいいと思います。

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72	四匹の子犬も花見仲間かな

 子犬を四匹も連れていては、忙しくて花見どころではないのでは??と、余計な心配
をしてしまいました。

73	夜桜やほつこりと裸電球

 このままでも17音に収まっていますが、中七と下五を入れ替えた方が、リズムが整
うと思います。

74	我が畑のとうに縄張揚雲雀

 揚げ雲雀の鳴き声は縄張り宣言であることはよく知られていますので、季語の説明に
感じました。

75	際やかに古き団地に春の虹

 古い団地と虹の対比が良い感じです。「際やかに」が主観的・説明的ですので、もう
一工夫欲しいと思いました。

76	きらめける車窓の海や穴子飯

 瀬戸内海を見ながらの列車の旅でしょうね。私も旅に出たくなりました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 列車での旅のお楽しみ、駅弁の御句ですね。海岸線の旅で「穴子飯」なんて羨ましい
です。春の海のキラキラした様子が、伝わりました。

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77	アーケードの風を待ってる鯉のぼり

 アーケードに吊るされた鯉幟は、風に泳ぐこともならず、垂れ下がっているばかりな
のでしょう。哀愁を感じます。

78	映画終わり駅ナカカフェのレモン水

 映画の帰りに駅の中のカフェに寄り、一緒に行った人と一緒に感想を言い合って余韻
に浸っているのでしょう。上五は「映画観て」「映画果て」等、字余りにならないよう
にすることは難しくないと思います。下五のレモン水は、現在は実際に見ることはほぼ
無いと思いますので、レモネードやソーダ水等にした方が現実的かと思いました。

79	菜の花や母の歩みに合わす旅

 お母様に寄りそう優しい気持ちに、菜の花がよく似合います。

 奥山ひろ子氏評===============================

 優しい作品ですね。作者のお母様への心遣いと、「菜の花」の取り合わせが、優しさ
を倍増しているようで、共感いたしました。「合わす」は「合はす」で頂きました。

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80	通学路馴染んで来し子花は葉に

 子の成長は目覚ましく、ついこの間は不安そうに歩いていた通学路にもすぐに慣れま
すね。

81	高窓の春日に浮かぶフレスコ画

 高窓から差し込んだ光が壁のフレスコ画に当たり、絵を浮かび上がらせているのでしょ
う。春夏秋冬あり得る景と思いますが、例えば冬日とした方が清澄な透明感が増して、
フレスコ画がある場所を思い描き易くなるようにも思いました。

82	もの思ふ乙女たたずむ花の下

 絵になる風景ですが、「もの思ふ」は作者がそう思ったのでしょうから、もっと具体
的な写生の方が良いと思いました。

83	一斉にめくる楽譜や春の声

 「春の声」はヨハンシュトラウス2世による楽曲のことかと思いますが、それですと
季語にはなりません。ちなみに、「秋の声(秋声)」という季語はありますが、春の声、
夏の声、冬の声という季語はありません。

84	子の先に逝きにし母よ桜散る

 悲しい句ですが、季語が付き過ぎに感じました。また、「逝きにし」という日本語が
正しいのか疑問ですので、「子に先に逝かれし母よ」等推敲したいと思いました。


85	山若葉新車のナビの良く喋る

 目の付け所がユニークですね。新車でのドライブは気持ち良いでしょう。

86	新緑や子授樟の幹の洞

 明るい新緑の季節には、樟の古木の洞がより黒々と見えるのでしょう。

87	春風や見送るあとの泣き笑い

 新たな旅立ちを祝う気持ちと、離れ離れになる寂しさとのせめぎ合いでしょうか?
「見送るあとの」が日本語として変な感じですので、「見送りし後の」等、推敲されて
は如何でしょうか。

88	待ちわびる花には花の時があり

 主観的で、読者に何を伝えたいのかがわかりませんでした。

89	清明の朝を煌めく雨の粒

 清明と聞くと、心なしか雨粒も明るく見えて来ます。

90	神代桜届かぬ幹を撫ずる所作

 神代桜ほどの名木ともなれば、おびんずる様や撫で牛のように触れて御利益を賜りた
くなるのでしょう。しかし、柵などがあって近くまで寄れないので、せめて撫でるふり
だけでもということですね。

91	清明や裏の山より筧水

 「裏の山より筧水」は通年あるものでしょうから、そこに音なり光なり、清明らしい
発見が欲しかったですね。

92	藁すぼの垂れて声する雀の巣

 藁素坊(わらすぼ)という有明海に棲む魚がいるようですが、この場合は藁しべ(あ
るいは藁すべ)のことかと思います。雀の巣に藁が垂れ下がり、子雀の声がするという
ことだけでは、発見に乏しく句材としては残念に思いました。


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