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TOPページへ戻る HP俳句会 投句フォーム 投句一覧 選句結果
選句結果
     
第221回目 (2017年11月) HP俳句会 選句結果
【  坪野洋子 選 】
  特選 野良猫の足に擦り寄る秋の暮 雪絵(前橋市)
   身に沁むや瀬音ばかりの馬瀬の里 岩田遊泉(名古屋市)
   秋灯や「砂の器」の佳境なる      岩田遊泉(名古屋市)
   初霜や畑を横切る通学路 垣内孝雄(栃木県)
   鴨渡り二つの群れの相容れず 暁孝(三重県)
   長き夜やルーペでたどる古代絵図 暁孝(三重県)
   母の背にたまる温さや小春の日 輝久(大分県)
   伸び切つて蛇の流るる野分川 松村洗耳(三重県)
   刃研ぐ音の整ふ今朝の冬 小春(神戸市)
   中山道信濃追分片時雨 筆致俳句(岐阜市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 長き夜やルーペでたどる古代絵図 暁孝(三重県)
   明日の色蕾に隠す草の花 正男(滋賀県)
   駄菓子屋の裸電球一葉忌      康(東京)
   真青なる空に弾ける蔓もどき 典子(赤磐市)
   青空へ呑み込まれさう冬さくら よしこ(埼玉県)
   寒き夜や背中の並ぶ屋台村 筆致俳句(岐阜市)
   抱え持つ兄の遺影や初時雨 宇駱駄(名古屋市)
   湾を割く光の帯や冬らっき さよこ(神奈川県)
   学校は城跡の中照紅葉 蝶子(福岡県)
   木遣り歌ひのきの里の天高し 美由紀(長野県)
【  河原地英武 選 】
  特選 長き夜やルーペでたどる古代絵図 暁孝(三重県)
   なにげなき暮らしの会話小鳥来る 田中洋子(千葉県)
   初霜や畑を横切る通学路      垣内孝雄(栃木県)
   長き夜やルーペでたどる古代絵図 暁孝(三重県)
   収穫の菜よりはらりと冬の蝶 宇駱駄(名古屋市)
   秋雨の止みてより切る月桂樹 とみえ(愛知県)
   ふかし藷喰うて戦後を思ひをり 眞人(さいたま市)
   時雨来る運慶展へ長き列 眞人(さいたま市)
   研ぎ水の鮮やかな白今年米 正憲(浜松市)
   学校は城跡の中照紅葉 蝶子(福岡県)
【  鈴木みすず 選 】
  特選 蝦夷富士を目指す一群鶴来る 周桜(千葉県)
   長き夜やルーペでたどる古代絵図 暁孝(三重県)
   駄菓子屋の裸電球一葉忌      康(東京)
   上下巻まとめて買うて冬ぬくし きょうや(東京)
   刃研ぐ音の整ふ今朝の冬 小春(神戸市)
   収穫の菜よりはらりと冬の蝶 宇駱駄(名古屋市)
   抱え持つ兄の遺影や初時雨 宇駱駄(名古屋市)
   抱く子の柔き喃語や冬ぬくし 町子(北名古屋市)
   研ぎ水の鮮やかな白今年米 正憲(浜松市)
   木遣り歌ひのきの里の天高し 美由紀(長野県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、暁孝さん(三重県)でした。「伊吹嶺」11月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


講評はまだありません。

          しばらくお待ちください。

                     宜しくお願いします。

第220回目 (2017年10月) HP俳句会 選句結果
【  伊藤範子 選 】
  特選 潮匂ふ土器の欠片や鰯雲 牧子(名古屋市)
   きしめける裏の錆び戸や草紅葉 垣内孝雄(栃木県)
   周航の水尾白々と星月夜      須藤曉風(前橋市)
   薄雲を透かす光芒今日の月 清風(鳥取)
   児の椅子も並べ今宵の月を待つ 雪絵(前橋市)
   蔓ひけば緩ぶ山気や初冠雪 勢以子(札幌市)
   虫時雨天井低き芝居小屋 隆昭(北名古屋市)
   金風の吹き抜けてゆく二天門 吉沢美佐枝(千葉県)
   武蔵野の古墳小さし蕎麦の花 眞人(さいたま市)
   清秋や湖へ吸はるる鐘の音 牧子(名古屋市)
【  矢野孝子選 選 】
  特選 自画像の視線まつすぐ秋気澄む きょうや(東京)
   周航の水尾白々と星月夜 須藤曉風(前橋市)
   葡萄もぐ掌に心地よき重さかな      清風(鳥取)
   三段飛びの水引く小石秋の川 典子(岡山県)
   児の椅子も並べ今宵の月を待つ 雪絵(前橋市)
   秋天や控へ居るごと遠筑波 周桜(千葉県)
   馬防柵より遠景の曼珠沙華 正憲(浜松市)
   金風の吹き抜けてゆく二天門 吉沢美佐枝(千葉県)
   武蔵野の古墳小さし蕎麦の花 眞人(さいたま市)
   清秋や湖へ吸はるる鐘の音 牧子(名古屋市)
【  中野一灯 選 】
  特選 跡継ぎの絶えし捨畑泡立草 惠啓(三鷹市)
   きしめける裏の錆び戸や草紅葉 垣内孝雄(栃木県)
   さやけしや梯子獅子舞ふ幼顔      とみえ(愛知県)
   周航の水尾白々と星月夜 須藤曉風(前橋市)
   山の辺の盗人萩にとらはるる 正男(滋賀県)
   湾を割る光の帯や秋夕焼 松村洗耳(三重県)
   手刈りする稲の重さや蒼き空 西尾桃太郎(小牧市)
   自画像の視線まつすぐ秋気澄む きょうや(東京)
   秋深し難所で魅せる棹捌き 小林克己(総社市)
   また揺らぐ乳歯を避けて栗ご飯 蝶子(福岡県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 きしめける裏の錆び戸や草紅葉 垣内孝雄(栃木県)
   ・綿吹くや女の長き立ち話 田中洋子(千葉県)
   周航の水尾白々と星月夜      須藤曉風(前橋市)
   公園のラジオ体操萩の風 周桜(千葉県)
   木曽谷の姉から栗の渋皮煮 町子(北名古屋市)
   自画像の視線まつすぐ秋気澄む きょうや(東京)
   雨冷えの十三階に手術待つ 眞人(さいたま市)
   甌穴の渓を綾なす照葉かな 小林克己(総社市)
   清秋や湖へ吸はるる鐘の音 牧子(名古屋市)
   棟上げの槌音高しいわし雲 惠啓(三鷹市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、垣内孝雄さん(栃木県)、須藤曉風さん(前橋市)、きょうやさん(東京)でした。同点が三名ですので、今月の最多入選賞は該当者無しとなります。

【講評】


       2017年10HP句会講評        渡辺慢房

 今月もたくさんのご投句ありがとうございました。できるだけ多くの句にコメントす
るよう心がけましたので、一つの見方・考え方としてご覧ください。


1  秋冷や山懐の馬瀬の里  

 季語が静かな村の様子に合っていますね。ただ、「山懐の」が馬瀬村の説明的になっ
てしまった感があります。何かもっと感覚的なものが写生できると良かったですね。

2  満天の銀漢浴びる露天風呂  

 「満天の星」とは言いますが、「満天の銀漢」という言い方はあるのかな?と思いま
した。また、銀漢で切れるのか、「銀漢浴びる」と続くのかという点も気になりました。

3  きしめける裏の錆び戸や草紅葉  


 ふとした懐かしい景ですね。季語が良いです。

4  折鶴の飛び立たんかな秋夕焼  

 作者の心象風景をうまく読者に伝えるのは難しいですね。

5  ・綿吹くや女の長き立ち話  

 中七下五はやや平凡に感じましたが、季語の「離れ具合」が上手いと思いました。

6  ・実柘榴や深紅の粒のこぼれ出て  

 中七下五が、上五の季語の説明になってしまいました。

7  猪垣に囲まれ実る稲穂かな  

 猪垣は囲むもの、稲穂は実るものということを踏まえて、推敲の余地があるように思
いました。

8  老紅葉翼果多くを旅立たす  

 少々理屈っぽい感じを受けました。

9  笙の一声月の客待つ神苑に  

 調べが散文的なのが気になりました。

10  幸せの匂ひいろいろ茸飯  

 ささやかな幸せが感じられます。「幸せの匂ひ」と言わずに幸せが感じられるように
詠めると良いですね。

11  算盤に五つ珠あり文化の日  

 昔の箱型の算盤ですね。季語がややつき過ぎな感じがしました。

12  秋祭り貰ひし覚え長十郎  

 長十郎は梨の品種名と思いますので、秋祭との季重なりになるのではないでしょうか。
「貰ひし覚え」と言わずに、自分がその場にいるつもりで詠まれると臨場感のある句に
なると思います。

13  ロープウエー野山の錦渡りゆく  

 気持ちの良い景を素直に詠まれています。「ロープウェイ」「野山の錦」と言えば、
「渡りゆく」は言わなくてもわかりますので、もう一工夫欲しいと思いました。

14  草月流芒の侘びを活かしけり  

 生け花は門外漢のため、「草月流」という固有名詞が持つ何かを感じられませんでし
た。また、「芒の侘びを活かしけり」は説明的ですので、作者がそう感じた具体的な景
を詠むと良いと思います。

15  山々は誰かの故郷栗実る  

 上五中七が観念的です。季語の栗は実った栗の実のことですので、通常は「栗実る」
と言う必要はありません。

16  縄文を想ひて生の栗の味  

 少々理屈っぽく感じました。

17  さやけしや梯子獅子舞ふ幼顔  

 季語が、軽やかな梯子獅子に似合っていますね。中七下五は顔の上で獅子が舞ってい
るように読めてしまいますので、「幼き顔の梯子獅子」でいかがでしょうか?

18  秋天へ獅子舞ふ櫓揺れ通す  

 景のよくわかる句です。「揺れ通す」が確かな写生ですが、これはある程度の時間の
経過が含まれます。俳句は、一瞬を切り取って詠むことで、より印象が鮮明になり、説
明臭さを無くすことができることを意識されると更に良くなると思います。

19  秋の草ゆらしドローン飛び上がる  

 季語が動くように思いました。

20  尖塔のミカエル像や天高し  

 季語がつき過ぎのように思いました。例えば「尖塔のミカエル像や蔦紅葉」とすると、
建物の景がより具体的になると同時に、色付いた蔦の上の澄んだ空まで見えてくると思
います。「季語は離して使え」と言われますが、季語が動くのも宜しくない・・・と、
なかなか難しいですね。(そこが俳句の面白いところですが・・・)

21  周航の水尾白々と星月夜  

 ちょっと幻想的な美しい句ですね。湖や沿岸の観光周航船でしたら、夜は出ないでしょ
うから、長距離フェリーや外国航路の、大型周航船であろうと思いました。

22  白髪の我が影を汲む秋の水  

 水を汲む何気ない一瞬を、感覚豊かに切り取られました。「白髪の」で人物像が見え、
季語の秋の水で、綺麗に御年を重ねられていることがうかがえます。


23  開帳の秘仏に届け法師蝉  

 命令形を使っており、詠み方を工夫されています。ただ、秘仏も法師蝉も、ひっそり
と控え目な印象なのに対して、少々強すぎるような気がしました。

24  山の辺の盗人萩にとらはるる  

 ヌスビトハギの実は、動物の毛や洋服などに付きます。それを「捉われる」と言うの
は、俳諧味がありますが、少々無理があるようにも思いました。

25  空瓶に一輪挿して吾亦紅  

 空き瓶に一輪の野の花を挿すというのは、類想が多いです。「吾亦紅」を他の花に変
えても、それなりの句になってしまいます。

26  杉玉や枡で一息今年酒  

 杉玉は、新酒ができたことを知らせるために、酒屋が軒先に吊る酒林のことですね。
「枡で一息」が、今年酒に対して、ちょっとわざとらし過ぎるようにも感じました。
今年酒を汲む枡が古びている様子を詠んだりしても、面白い句になると思います。

27  一夜して火炎の村や曼珠沙華  

 上五の「一夜して」は「一夜にして」を縮めたのでしょうが、無理があります。字余
りになっても「一夜にして」とした方が良いと思います。曼珠沙華の赤を火炎に喩えた
のは、やや陳腐に思いました。

28  狗尾草戦の跡を覆ひたり  

 風景を詠んではいますが、写生というよりは報告的に感じました。

29  秋の雨音せぬ室に囲碁ソフト  

 囲碁ソフトという句材は、読者に何かの感慨を与え得るでしょうか? それはさてお
き、この句は上五を「秋雨や」とするだけで、句形が締まります。

30  音輝り色あるやうに添水鳴る  

 上五中七で何を言いたいのかが良くわかりませんでした。格好の良いことを言おうと
せずに、物を通して素直に心情を述べましょう。

31  葡萄もぐ掌に心地よき重さかな  

 共感を得られやすい句と思いますが、それだけに類句・類想が多いです。葡萄や無花
果などの重さは、誰でも一度は句にしたくなりますね。

32  薄雲を透かす光芒今日の月  

 雲のかかった月も、風情がありますね。「光芒」は「一閃の光芒」のように、筋のよ
うに見える光の穂先のことを言いますので、薄雲の月にふさわしいかどうか、ご検討く
ださい。

33  椰子の実の寄りし岬や鷹渡る  

 愛知県の観光案内のような句と思いました。謎かけや考え落ちのようなものは、作者
の自己満足になってしまうことが多いです。

34  湾を割る光の帯や秋夕焼  

 印象鮮やかな句です。沈みゆく太陽が一筋の道のように海に映っている景ですので、
下五は「秋落暉」の方がより具体的かと思いました。

35  蹲踞の水琴窟や音清か  

 「水琴窟」の説明ですね。

36  無漏地へと誘う白き蓮かな  

 頭で拵えた句と感じました。白蓮と無漏地の連想は陳腐です。

37  コバルトの染むるダム湖やそぞろ寒  

 「コバルトの」の「の」は主格を表す助詞なので、コバルトがダム湖を染めていると
いう意味になります。

38  釣宿の自慢の煮付け長き夜  

 良い句材ですね。読み方を工夫されるとさらに良くなると思います。一例ですが「釣
宿の煮付の旨き夜長かな」

39  父も子もフォークシンガー月の宴  

 よく言われることですが、「も」は要注意です。つい使いたくなる助詞ですが、「い
ろいろ言いたい感」が出てしまい、句を弛緩させることが多いです。「父と子のフォー
クシンガー月の宴」と比べてみてください。

40  藤の実や谷の数だけ村のあり  

 「谷の数だけ村のあり」が、上空から村々を俯瞰しているようで面白く思いました。

41  少年の相や寡黙は鰯雲  

 格好の良いことを言おうとしている印象を受けましたが、意味がよくわかりませんで
した。

42  三段飛びの水引く小石秋の川  

 水切りの景かと思います。軽やかに弾む小石は、春や夏の川にも似合いそうですが、
秋の澄んだ水を弾く様子も良いですね。

43  風神の息を鎮めり夕芒  

 ちょっと大仰な比喩に感じました。素直に上五中七を「風止みて」等とすると、中七
でもっと何か言えますね。

44  児の椅子も並べ今宵の月を待つ  

 情景や、気持ちの伝わる句です。調べがやや散文的ですので、下五を「月待てり」と
切ると、句が引き締まります。

45  雑茸食べて一夜をまんじりと  

 俳諧味がありますね。ただ、読み方が散文的で、内容も報告的に思いました。

46  茸狩知識のなさが悔やまれり  

 こちらも報告的で、理屈です。

47  清秋や年老いたれど賑やかに  

 お元気で何よりです。季語が動くように思いました。

48  いつのまに妻太りけり菊日和  

 面白い句で、季語も絶妙ですね。上五中七は、「いつのまにか妻太りけり(たり)」
か、「いつのまに妻太りける(たる)」にした方が良いと思います。

49  秀麗や笙の導く寺の婚  

 秀麗は、秋麗あるいは秋冷でしょうか?

50  まなかひに磯波寄する月今宵  

 無くても良い言葉を除くと、「磯波」と「月」となります。推敲の余地がありそうで
すね。

51  鏡池映る紅葉の煌めけり  

 紅葉が煌くというのは、比喩的な表現でしょうか? 「紅葉を映し煌く鏡池」等の方
が無理がないように思いました。

52  芭蕉庵池の水面にこぼれ萩  

 静かですっきりとした句ですね。

53  秋天や控へ居るごと遠筑波  

 大らかな句ですが、中七が主観的なのが気になりました。

54  公園のラジオ体操萩の風  

 季語の萩の風で、早朝の気持ち良さが伝わります。

55  後の月夫の記憶の手のぬくみ  

 作者が夫の手の温みを記憶しているという意味の句かと思いますが、素直に読むと、
夫が手の温みを記憶しているように読めました。

56  病みて覚ゆ枯れ穂となりし猫じゃらし  

 上五が主観的です。

57  短日のガラスに映る初老かな  

 身につまされます。

58  桐一葉迷ったあげく落ちにけり  

 虚子の句の本歌取りというよりは、パロディですね。

59  木曽谷の姉から栗の渋皮煮  

 ふるさとの味ですね。地名が活きています。「姉から」は「姉より」の方が調べが整
うように思います。

60  秋風に産着三枚干されたり  

 秋風より、春風の方が産着にふさわしいような気もしますが・・・・。下五は「干さ
れをり」とした方が、実際に目の前に見えている景となります。

61  蔓ひけば緩ぶ山気や初冠雪  

 感覚の鋭い句ですが、蔓のある山中から、冠雪が見えたのでしょうか? 作者の立ち
位置がよくわかりませんでした。

62  橋の灯の高きにありて無月かな  

 本当ならば、橋の上に見えているはずの月が見えない風情ですね。中七を、「高くあ
りたる」と連体形にすると、虚子の「遠山に日の当たりたる枯野かな」と同じように、
文法上は中七では切れずに、意味・心情的には切れがあるという、下五の「かな」をよ
り活かす形となります。

63  古庭に鳴いて月夜の虫浄土  

 月と虫の音の季重なりではありますが、茅舎的な童話のような風景が浮かびますね。
「古庭」というのが、わかりそうで具体的に何が古いのかがよくわからないのが気にな
りました。

64  吹く風にコスモス畑花の波  

 風が吹いて一面のコスモスが揺れたというだけでは、句材として陳腐(当たり前・類
想が多い)です。

65  手刈りする稲の重さや蒼き空  

 この稲の重さは、重労働を嘆いているのか、それとも豊作を喜んでいるのかがわかる
ように詠むと良いと思いました。

66  竹アートの刈田に点在したりけり  

 写生というより、説明・報告的に感じました。

67  障子貼り替へ花嫁を迎へけり  

 花嫁が来る→家をきれいにする という因果関係が明らかなので、理屈っぽくなって
しまいました。

68  古米と言へど銘柄なりしかな  

 作者の独り言の印象を受けました。

69  うまさうに熟柿ついばむ鴉かな   

 鴉のどんな仕草がうまそうに思えたかを具体的に詠まれると良いと思いました。

70  骨壺の母のぬくもり身に入みぬ  

 骨上げしたばかりの、温もりの残っているお骨を詠まれたのでしょうか? 骨壺の物
理的な温みと、ご母堂の思い出の温もりが重なり、確かに身にしみますね。

71  自画像の視線まつすぐ秋気澄む  

 視線と秋気の取り合わせがうまいと思いました。自画像の人物像が見えると更に良く
なると思います。

72  咲かせたき花の種まく敬老日  

 咲かせたくない花の種をまくことはありませんので、上五は不要ですね。また、「花
種蒔く」は春の季語となっています。

73  小やみなく点滴落つる夜長かな  

 点滴が止まってしまうと医療事故に繋がります。通常点滴は止まりませんから、上五
は不要ですね。

74  主人なき間の静けさや月射して  

 「主人」が、夫なのか、この建物の主なのかで、句の鑑賞が変わるように思いました。
「静けさ」と言わずに静けさが伝わると良いですね。

75  虫時雨天井低き芝居小屋  

 現在ではなかなか見られない景に思いました。中七の描写のバリエーションをいろい
ろ考えるのも楽しいですね。

76  スケスケの大幕引ける村芝居  

 幕の向こうの様子が透けて見えて、俳諧味がありますね。さすがに「スケスケ」は
「透け々々」としたくなりました。

77  先頭の鰡翻す百二百  

 鰡というと、ピョンピョン跳んでいるイメージがありますが、この場合の「翻す」は、
群れが翻るという意味でしょうか? 鰡の群れというのを見たことがないので、イメー
ジが湧きませんでした。

78  馬防柵より遠景の曼珠沙華  

 観光地などに再現された馬防柵でしょうか? 「遠景の曼珠沙華」はやや報告的です
ので、それを見ている心情を物に託して詠めると良いですね。

79  竹に風寺領を囲む秋の風  

 句の要点は竹・寺・秋風ですね。風が二回出てきますので、整理・再構成の余地があ
るように思いました。

80  落葉踏み去年の記憶の中にをり  

 観念的で、読者には言いたいことが伝わりません。

81  夕日照り輝き増すや錦山  

 童謡「もみじ」の歌いだしですね。

82  夕日落ち幽谷せまる紅葉かな  

 ちょっと凄みを感じますね。「落ちない夕日があるなら持ってこい」と、某夏井先生
に言われそうですので、「日の落ちて」等にすると良いかもしれません。

83  蟷螂のボクサーゆれる夕日影  

 カマキリの様子をボクサーに喩えているのでしょうか? ちょっと意味がわかりにく
く思いました。

84  落栗の残りは虫のすみかなり  

 説明的・報告的に感じました。

85  金風の吹き抜けてゆく二天門  

 「吹かない風があるなら持ってこい」と・・・・

86  渡し場の足もと照らす泡立草  

 「足もと照らす」は比喩かと思いますが、景がよくわかりませんでした。

87  点滅の青き着信櫨紅葉   

 季語が動くように思いました。

88  甘え啼きの烏飛び立つ芒原   

 カラスの甘え啼きというのが、どのようなものかがわかりませんでした。

89  武蔵野の古墳小さし蕎麦の花  

 佳い句ですが、武蔵野にある古墳はどれも小さいように読めますので、中七は「小さ
き古墳」の方が良いと思いました。

90  雨冷えの十三階に手術待つ  

 十三という数字が意味深ですね。たまたまでしょうが、それが気になる作者の心情が
伝わってきます。

91  秋嶺の空と溶け行く夕間暮  

 秋嶺というと、赤や黄の紅葉に彩られた山を連想しますので、物の良く見えなくなっ
た時間帯を指す夕間暮れよりも、もう少し早い時間帯で、夕空の色と溶けてゆく様子を
詠まれると良いと思いました。

92  そばかすは母親ゆづり油点草  

 雀斑と油点草の可憐さが似合っていますね。上五中七を「吾に似し子の雀斑や」等と
すると、人物の位置関係がはっきりすると思います。

93  満月や堀に天守の揺らぐ影  

 上五を「満月や」と切り、すぐにお堀の影に目を移しているので、天の月の印象が鮮
やかです。満月は仲秋の名月のことで、明月、名月、望月、十五夜,望の夜などとも言
います。

94  神輿影川面に暴れ秋暑し 

 中七に切れを入れたいですね。「神輿影暴れるる川面秋暑し」等。
 
95  甌穴の渓を綾なす照葉かな  

 具体的で美しい景ですね。紅葉を詠むのに「綾なす」はちょっと安易かな?という気
がしました。

96  秋深し難所で魅せる棹捌き  

 紅葉を楽しみながら山間の流れを下る舟の様子が描かれています。季語の選択に推敲
の余地があるように思いました。

97  清秋や湖へ吸はるる鐘の音  

 目に見える景は詠まれていませんが、全体としてとても具体的な情景が浮かびます。
たいへんお上手な句と思いました。

98  潮匂ふ土器の欠片や鰯雲  

 海・大地・空が詠み込まれ、スケールの大きさを感じました。

99  月見団子は涙の形かぐや姫  

 昔、いなかっぺ大将という漫画があり、主人公が団子のような涙をぶら下げていたの
を思い出してしまいました。不謹慎ですみません。

100  木犀の風マンションの十三階  

 90の句に続き、また十三階が出てきました。こちらは十三という数字が効いているで
しょうか?

101  鰯雲りつぱに建ちし関所跡  

 「りつぱに建ちし」が抽象的ですので、立派に思える点を具体的に詠まれると良いと
思います。

102  秋深き寅さん送るさくら像  

 「秋深き」は何にかかるのでしょうか? 寅さん? さくら像?

103  棟上げの槌音高しいわし雲  

 類想が多いようにも思いましたが、気持ちの良い句ですね。

104  跡継ぎの絶えし捨畑泡立草  

 深刻な農家の後継ぎ問題が詠まれています。「跡継ぎの絶えし」がやや説明的で、
「捨畑」と言えばおよそ事情はわかりますから、ここを工夫されると更に良くなるよう
に思いました。

105  秋の暮名残を惜しむ茜空  

 季語「秋の暮」の説明に近いと思いました。

106  御岳湖水面きらめく照紅葉  

 「きらめく」と言えば、「水面」は不要と思います。「御岳湖のきらめきに照る紅葉
かな」等・・・。

107  繋ぎ合ふ手と手の誓ひ菊日和  

 季語がうまく効いており、ご年配の夫婦(カップル)が浮かびます。「誓い」がやや
大げさな気もしますので、「繋ぎ合ふ皺の手と手や菊日和」などでいかがでしょう? 
結婚式での句等でしたら、原句で良いと思いますが。

108  ぽよぽよの嬰の拳や棉吹けり  

 中七と下五に強い切れがあるので、バランスが悪く感じました。「桃吹くや嬰の拳の
ぽよぽよと」等では如何でしょう?

109  コスモスに優しく強い母を見た  

 調べが散文的で、内容的にも陳腐に感じました。

110  新蕎麦や窓は一面銀の波  

 「窓は一面銀の波」の意味が分かりませんでした。蕎麦の花のことではないとおもい
ますが・・。

111  また揺らぐ乳歯を避けて栗ご飯  

 微笑ましい句材ですね。ただ、ちょっと言い過ぎの感じがします。「抜けさふで抜け
ぬ児の歯や栗ご飯」位に抑えて、歯を避けて食べている様子は読者の想像に任せた方が、
句に広がりが出ると思います。

112  露座仏の濡るる片頬萩の雨  

 佳い句ですね。中七を、「片頬濡らす」としたいと思いました。

113  掌に新米すくふ杜氏かな  

 感動の焦点を、杜氏ではなく新米にした方が良いと思います。「老杜氏の手に掬ひた
る今年米」等。

114  見えぬ身に聞かせてくれし月模様  

 心情は暖かいのですが、句は説明的に思いました。

115  身に入むやホスピスの窓打つ風の音  

 中七の大幅な字余りは戴けません。

116  雲間より中秋の月一茶像  

 仲秋の名月と一茶像の取り合わせが、やや唐突に感じられました。

117  暮れ残り土手に一株曼珠沙華  

 「土手」に切れを入れ、「暮れ残る土手一株の曼珠沙華」としたいと思いました。

118  投票所校舎の裏に降る木の実  

 校舎が投票所になっているということと思いますので、そうわかるように詠むと良い
と思いました。「木の実降る古き校舎の投票所」等。

119  描きかけの赤い木の実や秋の園  

 俳句で木の実というと、このみと読んで団栗類のことを指しますが、この句の場合は、
果物のきのみのことと思います。林檎園での写生会等かと思われますが、描きかけであ
ることがどう感動につながるのかがわかりませんでした。

120  落蝉をくはへて走る仔犬かな  

 「仔犬かな」と、犬が感動の焦点になっており、落蝉という季語の本位が生かされて
いないように感じました。


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