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選句結果
     
第217回目 (2017年7月) HP俳句会 選句結果
【  国枝隆生 選 】
  特選 琉金の尾鰭遅れて翻り 正憲(浜松市)
   月涼し湖水の眠る静けさに 須藤曉風(前橋市)
   夏料理窓いつぱいに太平洋      まどん(東京)
   配管工軍手の甲で汗拭ふ のぶこ(北名古屋市)
   アカシアの花散る先は母の郷   いちこ(長野県)
   海の日や吸盤著き蛸せんべい 青木秋桜(名古屋市)
   遠山を写して涼し浮御堂 惠啓(三鷹市)
   賤ケ岳水に映りて月涼し 和久(滋賀県)
   緑蔭を出でて短き影とゆく 和久(滋賀県)
   風涼し父と語らう竹の寺 美由紀(長野県)
【  坪野洋子 選 】
  特選 太陽を独り占めしてトマト熟る ユミ子(尾張旭市)
   下闇や掌に載るほどの石仏 康(東京)
   沙羅散るや羅漢に届く夕の鐘      康(東京)
   帰り来て先づ葛餅を亡き夫に とみえ(愛知県)
   初もぎのトマト重たき掌 清風(鳥取)
   炎昼のこぶしゆるめず赤子泣く 勢以子(札幌市)
   夏料理窓いつぱいに太平洋 まどん(東京)
   ビル街に残る社や夏燕 吉田正克(平子町)
   ホームランボールを探す草いきれ 眞人(さいたま市)
   緑蔭を出でて短き影とゆく 和久(滋賀県)
【  河原地英武 選 】
  特選 夕陽さす畳の隅のはぐれ蟻 原馬正文(滋賀県)
   次々に水脱ぎ捨てて簗を跳ぶ 正男(滋賀県)
   歌ふ輪の膨れてゆきぬキャンプ村      箕輪恵三(千葉市)
   バス揺るる膝の西瓜に両手添へ 幸子(横浜市)
   雨蛙一つ跳んでは首傾げ よしこ(埼玉県)
   炎昼のこぶしゆるめず赤子泣く 勢以子(札幌市)
   配管工軍手の甲で汗拭ふ のぶこ(北名古屋市)
   アカシアの花散る先は母の郷   いちこ(長野県)
   ホームランボールを探す草いきれ 眞人(さいたま市)
   緑蔭を出でて短き影とゆく 和久(滋賀県)
【  鈴木みすず 選 】
  特選 遠山を写して涼し浮御堂 惠啓(三鷹市)
   背の流れ腰で探りて鮎を釣る 正男(滋賀県)
   稜線を太く描きて梅雨明けぬ      小林克己(総社市)
   雷雲に追われてをりしランドセル まこ(埼玉県)
   一水を囲む集落蛍の夜 勢以子(札幌市)
   目を閉じて皺の手合はす原爆忌 町子(北名古屋市)
   垣根結ふ庭師の腰に蚊遣香 のぶこ(北名古屋市)
   男衆の肩に滲む血山笠走る 蝶子(福岡県)
   黒南風に轟く銃声種子島 宇駱駄(名古屋市)
   緑蔭を出でて短き影とゆく 和久(滋賀県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、和久さん(滋賀県)でした。「伊吹嶺」7月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


講評はまだありません。

          しばらくお待ちください。

                     宜しくお願いします。

第216回目 (2017年6月) HP俳句会 選句結果
【  矢野孝子 選 】
  特選 おかっぱに髪切りし子の初浴衣 眞人(さいたま市)
   湖に田に月浮く近江青水無月 谷 百合乃(滋賀県)
   紫陽花の毬に隠れて屋敷神      康(東京)
   千年の法灯淡し青葉木菟 須藤曉風(前橋市)
   夏帽の鍔の端より奥穂高 よしこ(埼玉県)
   ソーダ水耳を澄ませば波の音 吉田正克(平子町)
   神々と生くる岬や鰒干す 松村洗耳(三重県)
   あんみつや女生徒額くつつけて 嵩美(名古屋市)
   新茶買ふ空真青なる知覧にて ユミ子(尾張旭市)
   スカイツリー秋櫻子忌の雨を突く まどん(東京)
【  中野一灯 選 】
  特選 技師祀るダム湖渡れり青嵐 吉田正克(平子町)
   カラフルな路面電車や風薫る 正男(滋賀県)
   草笛を介護施設の母に吹く      箕輪恵三(千葉市)
   雨上がり笊山盛りに山桜桃もぐ とみえ(愛知県)
   うす紙を透かして枇杷の香りけり 雪絵(前橋市)
   逆らひて早瀬をくぐる鮎の影 清風(鳥取)
   新緑や経木の蓋に飯の粒 梦二 (神奈川県)
   茶室へと飛石伝ひ苔の花 のぶこ(北名古屋市)
   街道に残る脇陣蜘蛛の網 惠啓(三鷹市)
   夏旺んゲートに並ぶ馬の息 勢以子(札幌市)
【  伊藤範子 選 】
  特選 ソーダ水耳を澄ませば波の音 吉田正克(平子町)
   紫陽花の毬に隠れて屋敷神 康(東京)
   麦笛や幼きころの節ばかり      暁孝(三重県)
   石臼に山水引きて目高飼ふ りゅう太(北九州市)
   門灯を一夜で濁す火取虫 えつこ(北九州市)
   あんみつや女生徒額くつつけて 嵩美(名古屋市)
   万緑の広がりて行くロープウェイ 悠(岡山県)
   空壜のロゼの残り香水中花 うさぎ(愛知県)
   洋館の窓の大きく愛鳥日 ときこ(名古屋市)
   新樹光零して眩し九十九折 蝶子(福岡県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 剪れば血の出さうな薔薇に触れてみる きょうや(東京)
   丘こゆる野辺の送りや虎が雨 青木秋桜(名古屋市)
   甘味茶屋魚籠に活けたる鉄線花      のぶこ(北名古屋市)
   新緑や経木の蓋に飯の粒 梦二 (神奈川県)
   ほうたるの夜の向かうの窓明かり 小林克己(総社市)
   石臼に山水引きて目高飼ふ りゅう太(北九州市)
   うす紙を透かして枇杷の香りけり 雪絵(前橋市)
   紫陽花の毬に隠れて屋敷神 康(東京)
   衣替へて鏡に母のほの見ゆる 谷 百合乃(滋賀県)
   湖に田に月浮く近江青水無月 谷 百合乃(滋賀県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、康さん(東京)、吉田正克さん(平子町)でした。「伊吹嶺」6月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2017年6月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房


 今月もたくさんの御投句ありがとうございました。できるだけ多くの句にコメントし
ようとしたため、舌足らずになっている点などもあると思いますが、ご容赦ください。

1  古民家のかまど焚き火や五月鯉  

 無駄な言葉が多いです。かまどといえば、古い日本家屋であることはわかりますので、
古民家という必要はありません。かまど焚き火も、竈の火あるいは竈とだけ言えば十分
です。

2  朝まだき団地眠りや木の芽雨  

 三句切れで、言葉がこなれていません。団地眠りとは何でしょう?

3  一湾の底広々と夏の朝  

 季語が動きます。湾の底が良く見えるのは、水が澄む秋や冬のイメージです。

4  どこまでも新緑の島ひた走る  

 新緑の島を走っているということだけで、車やバイクのドライブなのか、ランニン
グなのかわかりませんので、具体的な景が見えて来ません。

5  青嵐朱の楼門を抜けて来る  

 色彩が鮮やかで気持ちの良い句ですが、「抜けて来る」は言わなくても青嵐の様子は
わかります。その分の言葉で何か言いたいですね。

6  カラフルな路面電車や風薫る  

 明るい句ですが、カラフルのような、軽くて具体性に欠ける言葉は、俳句で使うのは
難しいです。どのようにカラフルなのか、具体的に詠めると更に良いですね。

7  草笛を介護施設の母に吹く  

 思いのこもった句ですが、ちょっと散文的で、俳句の命である切れが弱いです。

8  つぎつぎと百名山のついりかな  

 実感の感じられないイメージの句です。俳句は、自分で見て感じたことを詠みましょう。

9  まず母に筍飯を持たせやる  

 お母さま自身に筍飯を持たせるのか、第三者に筍飯を持たせてお母さまに届けるのか??

10  おとろえしニュータウンなり姫女苑  

 説明的です。おとろえたニュータウンの具体的な一点に着目すると良いですね。

11  鈴蘭や渡りし空の音白し  

 「渡りし空の音白し」の意味が分かりませんでした。

12  食卓の器も変はり夏は来ぬ  

 因果関係が感じられ、説明的な句です。「も」の使い方に気を付けましょう。

13  夾竹桃ベリーダンスの夜に耽る  

 句の意味が取れませんでした。

14  緑さす髪を撫でゐる乙女かな  

 「緑さす」で切れるのか、「髪」にかかるのか、よくわかりませんでした。

15  青山椒の実の香りたつ厨かな  

 青山椒と言えば、実や香りと言う必要はありません。

16  磯の香やオーロラとなる夜光虫  

 比喩がちょっと安直に感じました。

17  旅立ちの朝百足虫と格闘す  

 「旅立ち」が、人生の節目を言う比喩的なものなのか、実際の旅行なのかがわから
ず、中七下五の解釈に悩みました。

18  雨上がり笊山盛りに山桜桃もぐ  

 明るさの見える句です。雨の匂い、山桜桃の匂いも感じられます。

19  湖に田に月浮く近江青水無月 

 地名と季語が活きています。幻想的な美しい句と思いました。
 
20  衣替へて鏡に母のほの見ゆる  

 ふと鏡に映った自分の姿に、親の面影を見るということは私にもあります。特に服装
が変わると、そういうことに気づくことが多いですね。

21  俳句誌の廃刊号や梅雨に入る  

 「廃刊となる俳句誌や・・・」と詠んでみたくなりました。

22  紫陽花の毬に隠れて屋敷神  

 さり気ない景を一点に絞って詠んでいますが、周りの映像も見えてくる広がりのある
句です。

23  旋回す馬場独占の夏燕  

 上五を、燕のことではなく、馬場の写生にするともっと良くなると思いました。

24  馬爪の掃き寄せられし夏木立  

 「馬爪の掃き寄せられし」があまり見慣れない景なので、具体的なシーンが浮かびま
せんでした。

25  ああ領空それがどうした鳥帰る  

 面白い詠み方ですが、意味がよくわかりませんでした。

26  墓石の無の字の中の雨蛙  

 「無」という文字が彫られた墓石なのでしょうか?蛙のとぼけた顔が浮かびます。

27  千年の法灯淡し青葉木菟  

 幽玄な雰囲気が感じられます。千年の年月が感じられる具体的な景が詠みこめると良
いと思いました。

28  対岸の湖水に映ゆる燈涼し  

 上五は言わなくても良いので、もったいないと思いました。

29  麦笛や幼きころの節ばかり  

 この句が悪いというわけではありませんが、一般論としては、上五を「や」で強く切
った場合は、中七下五は、上五と離れたことを詠むと、二つのことが響きあって、句に
広がりが生まれます。(二物衝撃)

30  短夜のさざ波遊ぶ船溜まり  

 雰囲気のある句ですね。波や船の音などを詠むとリアル感が増すと思いました。

31  梅雨入りとテレビ聞きつつ山椒の香  

 梅雨入りも、TVで知ることが多いのが現実ですが、できれば俳句では、自分で感じ
た季節を詠みたいですね。

32  日を受けしミカンの若葉チョウを待つ  

 どうしてチョウを待っているとわかったのでしょうか?

33  うす紙を透かして枇杷の香りけり  

 きれいに香しく包まれた、箱詰めの枇杷の実の映像が見えますね。それを持って来た
方の姿も想像できます。

34  よろけ縞やうやく消えし青田波  

 「やうやく」は作者の主観が感じられますので、眼前に実際に見えるものを詠むと良
いと思います。

35  ケーブルカー紫陽花掠め上りけり  

 車中から間近に紫陽花が見えて、はっとしたのでしょうね。

36  石臼に山水引きて目高飼ふ 

 素朴な落ち着いた暮らしですね。
 
37  門灯を一夜で濁す火取虫  

 実感があります。詩情があるか?・・・とも思いましたが、俳句とはこういうもので
良いのかなという気もしてきました。

38  爼の黴洗へども擦れども  

 この句も実感がありますね。困っている顔が浮かびました。

39  梅雨晴や駅のホームに忘れ傘   

 雨が止んだ "から" 傘を忘れたという因果関係を詠んでおり、理屈の句になっていま
す。

40  衣更へて恋の句一つ授かりぬ  

 その恋の句を投句しましょう。

41  手術待つ福寿草の開くころ  

 中七が中六の字足らずです。きちんと定型を守る意識を強く持ちましょう。「福寿草
枕辺に置き手術待つ」など、推敲次第で定型にすることは可能です。

42  手術終え水仙いちりん夫が居て  

 こちらは、中七が中八になっています。

43  トマト買ふ無人売場にあるカメラ   

 読者は、この句のどこに詩情を感じられるでしょうか?

44  ふるさとの既に滅びし桑苺   

 無いものを詠んでも、理屈っぽくなるだけで、読者にイメージは伝わりません。例え
ば中七を工夫して、「ふるさとの野に見つけたる桑苺」とすると、イメージが生まれま
す。

45  ほうたるの夜の向かうの窓明かり  

 静かで美しい句ですね。遠くの窓明かりの中には、誰のどんな生活があるのか、想像
が膨らみます。

46  短夜や長距離バスを待つ少女  

 映画のワンシーンのような印象を受けました。「短夜」だと夜の暗いイメージ、「明
易」だと、周りが白んできたイメージで、これから始まる物語が予想されるような効果
が出るかもしれませんね。

47  合歓の花風の強弱捉へをり  

 優しい句ですが、合歓の花と風の取り合わせは、良くあるように思いました。

48  逆らひて早瀬をくぐる鮎の影  

 一瞬の景を活写された句です。「鮎」ではなく「鮎の影」としたことで、眼に残る残
像が詠めました。

49  ルピナスやルンルン弾む半島路  

 可愛らしいイメージの句ですが、「ルンルン弾む」に共感する俳人は少ないと思いま
す。「半島路」という表現にも無理を感じました。

50  フォルクローレ流るるカフェの濃紫陽花  

 フォルクローレは、南米の乾燥地域の音楽のイメージがあり、紫陽花とそぐわない印
象を受けました。

51  竹林に風のささやき夏初め  

 きれいな句ですが、「風のささやき」のような、歌謡曲で使い古されたような表現は
陳腐とみなされてしまいます。

52  大車前の花は轍に埋もれあり  

 写実的で、虚子の句などにもあるような句材ですが、現在の俳句の美意識でどこまで
受け入れられるか・・・ですね。

53  五月雨に混じる足音本能寺  

 講談か浪曲の一節のようですね。想像句として面白いと思いました。

54  孑孑の命の水のシーベルト  

 原発事故などでの放射能汚染の心配のある地域の方でしょうか? シーベルトは放射
線を一定時間受けたことによる人体への影響の単位ですので、水に含まれる放射能物質
の単位はベクレルになります。

55  新緑や経木の蓋に飯の粒  

 昔の弁当の、経木の蓋の木の香りや、沢の水の味・冷たさを懐かしく思い出しました。

56  指笛の木下闇より流れ来る  

 「指笛」と言えば、「より流れ来る」は言わなくてもわかります。その分で写生でき
ることがありますね。

57  おかっぱに髪切りし子の初浴衣  

 可愛い盛りですね。それを、「可愛い」と言わずに伝えていることがこの句のポイン
トです。髪も整え、新調の浴衣を着た子と、その家族の嬉しさが伝わります。

58  軽トラの車庫へ牛小屋柿若葉  

 「車庫へ牛小屋」の意味が分かりませんでした。「車庫へ」で切れるのでしょうか?

59  育て甲斐あり鉢植えの柿に花  

 「育て甲斐あり」は作者の主観です。それを言わずに、写生を通して伝えるのが俳句
です。

60  蝉しぐれ昼寝園児の部屋暗し  

 昼寝をする部屋を暗くするのは当たり前ですので、インパクトの無い句となりました。

61  蔵付きの屋敷並びて麦の秋  

 「蔵付きの屋敷並びて」がかなり大景で大づかみですので、具体的な映像が浮かびま
せん。もっと細かいところに着目して写生すると良いと思いました。

62  三川の弾く光や夏きざす  

 明るいイメージの句ですが、「三川」がわかりませんでした。

63  朝戸より匂ひの強き花蜜柑  

 朝戸という花か果物があるのでしょうか?

64  雨足のひかる浮葉の間かな  

 「間かな」だと、間に焦点を当てて感動していることになります。「光かな」となる
ように推敲すると、また違った句になりそうです。

65  日帰りの予定を変へて夕端居  

 帰省でもされたのでしょうか? 「日帰りの予定を変へて」をもっと具体的な映像が
見えるように詠めると良いですね。

66  サングラス会釈に怪訝さうな顔  

 サングラスをかけていた "から"怪訝そうな顔をされた という、説明・理屈の句に
なってしまいました。

67  雲の峰ちんちん電車通り過ぐ  

 昭和の懐かしい景色のようですね。「通り過ぐ」がちんちん電車の描写として平凡で
すので、工夫の余地があると思いました。

68  夏帽の鍔の端より奥穂高  

 面白い視点ですね。山をやる人で共感される方は多いのではないかと思います。

69  剪れば血の出さうな薔薇に触れてみる  

 すごい比喩ですね。薔薇の美しさ、艶めかしさが感じられます。息を詰めながらそっ
と手を伸ばす作者の様子が見えて来ます。

70  ビル風をするりと抜けて夏つばめ  

 燕と風や空は、よほど工夫しないと良くありがちな句になってしまいます。

71  梅雨晴れや集積場に古新聞  

 雨が止んだ "から" 新聞を出した という、理屈の句になってしまいました。

72  玉葱を吊るせる妻や風そよぐ  

 日常的な光景ですが、そこに何か発見が無いと句材としては弱いです。

73  ソーダ水耳を澄ませば波の音  

 女性選者が二人とも採っています。ユーミンの「海を見ていた午後」のような、海の
見える喫茶店の景でしょうか。懐かしく、ロマンチックですね。

74  技師祀るダム湖渡れり青嵐  

 今は何事もなかったかのように気持ちの良い風が吹いているダム湖ですが、作者はダ
ムを造った技術者・労働者達のたいへんな苦労や犠牲に想いを馳せています。

75  田を渡る風の涼しさ寺座敷  

 「田を渡る風の涼しさ」は、青田風という季語一つでで言えますね。

76  青嵐仏舎利塔の見え隠れ  

 風が吹いて木々が揺れた "から" 塔が見え隠れした。 という、やや説明的な感じを
受けました。

77  茶室へと飛石伝ひ苔の花  

 景が良く見える句です。中七を「伝ふ飛石」と名詞で切った方がすっきりすると思い
ます。

78  甘味茶屋魚籠に活けたる鉄線花  

 古くてちょっと薄暗い甘未茶屋で、これも使い古された魚籠に活けられて、浮かび上
がるような鉄線の花が見えてきました。

79  競ひ合う踊りからくり山車揃へ  

 文字を通して映像が浮かんで来ませんでした。競い合う様子を、写真のように切り取
りましょう。

80  丘こゆる野辺の送りや虎が雨  

 上五中七が、映像としてはやや漠然としていますが、季語が利いていると思います。

81  神々と生くる岬や鰒干す  

 上五中七で、人には厳しい荒々しい岬の様子が見えて来ます。そのような土地にも、
日々の生活を営む人たちがいるのですね。

82  空の道忘れて鳴くやほととぎす  

 上五中七の意味が取れませんでした。

83  新緑を被りて浮きし野道かな  

 新緑を被って、野道が浮くというのがどのような景かわかりませんでした。

84  山すその朝日とどかぬ木下闇  

 「木下闇」という季語の説明に感じました。

85  あんみつや女生徒額くつつけて  

 この句も女性選者二名の選です。ひそひそ声や、押し殺した笑い声が聞こえてくるよ
うですね。

86  草いきれ宿題放り投げだし来  

 「放り投げだし来」は言葉の無駄ですね。「放り」だけでも意味が通じます。

87  葉桜の深まる緑散歩道  

 「深まる緑」は葉桜という季語に含まれます。「散歩道」も、ちょっと取ってつけた
感じですね。

88  万緑の広がりて行くロープウェイ  

 「広がりて行く」で、ロープウェイがぐんぐん登って視野が広がって行く様子が見え
ますね。

89  空梅雨の入日包める千枚田  

 空梅雨が係るのが入日なのか千枚田なのか? 入日が千枚田を包むのか、千枚田が入
日を包むのか?

90  新茶買ふ空真青なる知覧にて  

 以前私も、鹿児島産のお茶を通販で買ったことがあります。「空真青なる知覧にて」
に、この地に特別な思いを持つ作者の心情が感じられます。

i91  街道に残る脇陣蜘蛛の網  

 芭蕉の、夏草や・・の句を彷彿とさせる風情のある句ですね。

92  術もなく十薬統べる郷の庭  

 心情はよくわかります。上五を心情から写生に換えると、更に良い句になりそうです。

93  青芝にセグウエイうなり十勝岳  

 固有名詞が二つ入っていますが、それぞれ活きているでしょうか?

94  えびの原碧き湖面に夏の雲  

 吟行句でしょうか。このネット句会では「えびの原」を知らない方も多いでしょうか
ら、ちょっと損をしているように思いました。

95  解体の家の壁土麦の秋  

 「土壁の家壊さるる麦の秋」とすると、やるせなさやあきらめ感がより感じられるの
ではないでしょうか。

96  風死せり砂州を掠める高速路  

 ちょっとSF的な、色彩に乏しい寂莫とした景が浮かびました。独特の世界観を持つ句
と思います。

97  老鶯の声の行き交う切通し  

 句材として、やや陳腐に感じました。

98  空壜のロゼの残り香水中花  

 水中花は目で楽しむものですが、この句は嗅覚も詠んでいる点が、感覚が鋭いと思い
ました。

99  行きつ戻りつ紫陽花寺の細き道  

 句材に目新しさが無く、詠み方もやや平板に感じました。

100  夏暁や犬の名前で呼び合うて  

 犬の散歩どうしがすれ違う場面でしょうか? 季語が動くように思いました。

101  一歩退き種吹き飛ばすさくらんぼ  

 桜桃や西瓜の種を飛ばす場面はよく詠まれますが、もうひとひねりあると良いと思い
ました。

102  野球部の掛け声太し風薫る  

 「野球部の掛け声太し」は、「野球部の声」または「球児の声」とした方がすっきり
し、読者のイメージの幅も広がると思います。

103  夏旺んゲートに並ぶ馬の息  

 競馬場に行ったことのない私には、具体的な景は浮かばないのですが、馬の様子を季
語がうまく表していると思います。

104  葉桜や魚道の白き水しぶき  

 ちょっと地味ですが、涼やかで、水音なども聞こえてくる良い句と思います。

105  杖頼る七滝巡り米寿どち  

 杖頼る−米寿どち が説明的に感じました。

106  急峻な散策の道今年竹  

 散策の道に対して急峻は、ちょっと言い過ぎに感じました。

107  洋館の窓の大きく愛鳥日  

 窓の中で庭の鳥を愛でている人物を想像したくなる、含みのある句ですね。

108  立葵混み合ふてゐる診療所  

 「混み合ふてゐる」が形容しているのは、立葵でしょうか?診療所でしょうか?

109  新樹光零して眩し九十九折  

 明るく色彩豊かな句です。「眩しい」は作者の主観ですので、何かもっと客観的なも
のを写生できると更に良いと感じました。

110  薫風に追い越されたる登校児  

 季語が動くように感じました。春風・北風・木枯し・・・・

111  どかどかと命短し大花火  

 花火の命が短いというのは、陳腐な発想です。上五の擬音もありきたりに感じました。

112  遠雷や我が故郷はその向こう  

 作者の感傷をそのまま句にしても、読者には伝わりません。故郷からの手紙や荷を詠
むことで、作者の思いが表現できるのではないでしょうか。

113  円環の辻褄合はす蜘蛛の技  

 蜘蛛がそのようにして巣を張ることは誰でも知っていますので、それを詠んでも目新
しい句にはなりません。

114  み仏の肩で経聴く古寺の蜘蛛  

 たまたまそこに蜘蛛がいただけで、経を聞いていたわけではないでしょう。自己満足
の見立ては、読者の共感を得られません。

115  雨蛙葉の陰隠れ雨歌う  

 「雨蛙」という季語の説明です。

116  への字くち子ツバメたちの大合唱  

 「燕の子」という季語の説明です。

117  前略と書くも続かず明易し  

 誰への手紙なのか等が分かると、もうちょっと鑑賞しやすくなると思いました。

118  出入りする蟻の王国見てみたき  

 このままだと、「出入りする」が王国に係っているように読めます。

119  スカイツリー秋櫻子忌の雨を突く  

 この句は選者の孝子さんが採られています。孝子さんよりコメントを戴きました。

 >秋櫻子は、東京でしっかりと地盤を築いた人、その地から揺るぎないタワーが
 >雨の中を伸びている。
 >今も 秋桜子の精神?は 多くの人が受け継いだり 賛同したり・・・
 >そんなイメージです。

120  シンシンの子の心音や蓮咲く  

 上五の擬音(擬態?)語の意味が分かりませんでした。

121  キンキンの麦酒ジョッキの指の跡  

 キンキンに冷えたビールなどと良く言いますが、そのような使い古された言い回しは、句を底の浅いものにします。

122  雲海の翼縁取り朝日射す 

 雲海は、登山と関連した季語なので、飛行機から見た雲海の場合は季感があると言えるのか、疑問に思いました。

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 今月は以上です。来月もたくさんのご参加をお待ちしています。
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