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選句結果
     
第241回目 (2019年7月) HP俳句会 選句結果
【  長崎眞由美 選 】
  特選 サーカスが来るよもうすぐ夏休み 彩楓(さいふう)(埼玉県)
   梅雨空を突く聖堂の避雷針 加藤剛司(名古屋市)
   揚羽蝶桃源郷の地図ひらく      原馬正文(滋賀県)
   吹かれゐてゆたにたゆたに夏柳 吉沢美佐枝(千葉県)
   祈るごと幹に縋れる蝉の殻 みのる(大阪)
   サングラス口で叱つて眼で笑ふ 椋本望生(堺市)
   つやつやの仔牛の鼻やつゆほぐさ さいらく(京都)
   夏草や廃棄車両の堆し 小豆(和歌山市)
   先生の家は駄菓子屋枇杷熟るる 小春(神戸市)
   手を腰に牛乳飲めば夏の空 三香子(名古屋市)
【  高橋幸子 選 】
  特選 あかときの太鼓一打や山笠動く 蝶子(福岡県)
   豆腐屋の泥跳ねて来る夕立晴 加藤剛司(名古屋市)
   夏木立キッチンカーのカレーの香      まこと(さいたま市)
   傍に来て猫もするなり夕端居 筆致俳句(岐阜市)
   パレットに搾り切る青夏惜しむ 伊奈川富真乃(新潟県)
   朝顔やはうき目のこる無人駅 和久(米原市)
   前略のあと浮かびこぬ雲の峰 安来(埼玉県)
   朝取りの茄子の刺まで濃紫 町子(北名古屋市)
   蛍火の一筆書に闇動く 小豆(和歌山市)
   読みふける荷風日記や梅雨深し 紅さやか(福岡県)
【  坪野洋子 選 】
  特選 大波の崩るるやうに暑さ来ぬ 小林克己(総社市)
   風薫る着信音のボブ・ディラン きょうや(東京)
   風死すや真昼の路地のリキュール臭      比良山(大阪)
   雨垂れが帯になりたる夕立かな 節彩(東京)
   つやつやの仔牛の鼻やつゆほぐさ さいらく(京都)
   パレットに搾り切る青夏惜しむ 伊奈川富真乃(新潟県)
   にこにこと目覚め良き子や風知草 ときこ(名古屋市)
   太く濃き夢の字吊るす星祭 ときこ(名古屋市)
   蝉しぐれ杖を頼みの百の磴 うさぎ(愛知県)
   読みふける荷風日記や梅雨深し 紅さやか(福岡県)
【  国枝隆生 選 】
  特選 パレットに搾り切る青夏惜しむ 伊奈川富真乃(新潟県)
   手ひねりの花瓶のゆがみ梅雨湿り 田中洋子(千葉市)
   蚊帳吊りし鉤痕残る床柱      惠啓(三鷹市)
   朝顔やはうき目のこる無人駅 和久(米原市)
   朝取りの茄子の刺まで濃紫 町子(北名古屋市)
   蛍火の一筆書に闇動く 小豆(和歌山市)
   追伸の長き一文夏見舞 うさぎ(愛知県)
   あかときの太鼓一打や山笠動く 蝶子(福岡県)
   先生の家は駄菓子屋枇杷熟るる 小春(神戸市)
   白鷺の見つめし水面風渡る 美由紀(長野県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、伊奈川富真乃さん(新潟県)でした。「伊吹嶺」7月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


講評はまだありません。

          しばらくお待ちください。

                     宜しくお願いします。

第240回目 (2019年6月) HP俳句会 選句結果
【  武藤光リ 選 】
  特選 フーコーの振り子ついりの科学館 康(東京)
   漁小屋の蠅取りリボン蠢けり  三泊みなと(北海道)
   石炭の匂ふ構内夏燕      正憲(浜松市)
   飛魚(あご)のとぶ戦艦大和沈む海 まこと(さいたま市)
   子離れの妻のマニキュア蛍の夜 うさぎ(愛知県)
   駄菓子屋に集ふ腕白梅雨晴間 惠啓(三鷹市)
   起床時刻遠し明易の病棟 佐東亜阿介(青森県)
   かたつむり一葉旧居跡の井戸 彩楓(さいふう)(埼玉県)
   比良越えて琵琶湖を叩く大夕立 和久(米原市)
   じゃんけんぽんなんじゃもんじゃの咲く空き地 吉田正克(名古屋市)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 とりどりの餃子の形こどもの日 ぐ(神奈川県)
   ぴり辛に仕上ぐるパスタ半夏雨 加藤剛司(名古屋市)
   鯱ショーの水かぶりたる薄暑かな      加藤剛司(名古屋市)
   燕の子糞を落としつ育ちけり 妙子(東京)
   くろがねの南京錠や花うつぎ 吉沢美佐枝(千葉県)
   虹立つやリュックに詰める日本地図 とかき星(大阪)
   半眼の野仏濡らす梅雨入かな 雪絵(前橋市)
   子離れの妻のマニキュア蛍の夜 うさぎ(愛知県)
   釣り船に飛び込む飛魚(あご)や潮止り 惠啓(三鷹市)
   かたつむり一葉旧居跡の井戸 彩楓(さいふう)(埼玉県)
【  伊藤範子 選 】
  特選 アイスコーヒー朝を散りゆく会社員 小春(神戸市)
   水鉄砲抱かせ小さな柩かな ぐ(神奈川県)
   虹立つやリュックに詰める日本地図      とかき星(大阪)
   くちなしの香りや樺美智子の忌 まこと(さいたま市)
   紫陽花のとりわけ今朝の藍の色 みのる(大阪)
   子離れの妻のマニキュア蛍の夜 うさぎ(愛知県)
   亡き母と話したきこと山桜桃 町子(北名古屋市)
   帰りかければ噴水の立ち上がる ときこ(名古屋市)
   よべの雨引きづる空や山法師 勢以子(札幌市)
   じゃんけんぽんなんじゃもんじゃの咲く空き地 吉田正克(名古屋市)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 くろがねの南京錠や花うつぎ 吉沢美佐枝(千葉県)
   とりどりの餃子の形こどもの日 ぐ(神奈川県)
   繭煮るやゆつくり廻る糸車      周桜(千葉県)
   葉隠れのカフェの看板街薄暑 うさぎ(愛知県)
   鎌を研ぐ父の背中や迎へ梅雨 小川めぐる(大阪)
   屋上に赤き鳥居や風薫る 伊藤順女(船橋市)
   駄菓子屋に集ふ腕白梅雨晴間 惠啓(三鷹市)
   寝静まるアマゾン大河星涼し 小豆(和歌山市)
   起床時刻遠し明易の病棟 佐東亜阿介(青森県)
   オホーツク見下ろす苫屋浜豌豆 彩楓(さいふう)(埼玉県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、うさぎさん(愛知県)、ぐさん(神奈川県)、吉沢美佐枝さん(千葉県)でした。同点3名ですので、今月の最多得点賞はありません。

【講評】


       2019年6月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房


1 居酒屋の頭上注意や夏つばめ 

 「頭上注意」は軒の巣の下に貼られた貼り紙でしょうね。 単なる燕(春)ではなく、
夏燕とした効果があったでしょうか?

2 ハリヨとふ魚(うお)美しき噴井かな 

 「ハリヨとふ」がちょっと説明的に感じられますが、作者の「へぇ、これがハリヨと
いう魚なんだ!」という驚きも伝わってきます。ハリヨが棲むようなところですので、
水の透明さも見えて来ます。

3 ひかえめに咲いてこぼれて柿の花 

 「ひかえめに咲いてこぼれて」は作者の主観で、全体的に季語「柿の花」の説明に感
じました。

4 明滅やそれは蛍の息づかい 

 蛍の明滅を息遣いと感じたのは作者の主観です。この句も全体的に季語の説明に感じ
ます。

5 焙煎の香路地に広がる梅雨の入り 

 湿りの多い時期は、匂いも感じやすくなりますね。ただ、珈琲の香や、茶(焙じ茶)の
香と言わずに、あえて焙煎の香とした狙いがわかりませんでした。上五の字余りは許容
される場合が多いですが、できれば無くしたいものです。

6 躓くやわずかな段差額の花 

 「わずかな段差」が説明的で、具体的な物が見えないのが残念に思いました。段差の
ある具体的な物を言うと、もっと良くなったと思います。上五の「や」の切れは、ちょっ
と唐突な感じがしました

7 青空を引き立てている村祭 

 村祭りが青空を引き立てているという意味が分かりませんでした。村祭りは、収穫を
祝う秋祭りと同じく、秋の季語となります。

8 嶋一つ浮く湖内(うみうち)夏祭り 

 湖内というのが地名なのか、湖の内側のことをそう呼ぶのか、ネットや辞書で調べて
みましたがよくわかりませんでした。「浮く湖内(うみうち)」では中六になりますの
で、解消したいところです。

9 ぴり辛に仕上ぐるパスタ半夏雨 

 「ぴり辛」という詩語としては軽めの措辞が、半夏雨という複雑な奥行きを持つ季
語との面白いコントラストになっており、軽さと若々しさを感じます。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

 難しい季語を果敢に生かされていると思いました。「ぴり辛」が、「半夏雨」のう
っとおしさを跳ね返している感じもしました。
=============================================================================

10 鯱ショーの水かぶりたる薄暑かな 

 溌溂と元気な句ですが、季語と、水をかぶるという景が、ちょっとつき過ぎに感じま
した。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

最前席でご覧になったと拝察いたしました。その積極性と夏らしい元気な御句が気持ち
いいです。
=============================================================================

11 エスカレーター駆ける少年麦藁帽 

 エスカレーターを駆け上がる少年を、元気ととるか、躾・礼儀ができていないととる
かで、句の印象が変わりますね。上五・下五とも字余りなのは、解消したいところです。

12 校庭の消防連呼夏来る 

 「校庭の消防連呼」の意味がわかりませんでした。

13 ダリア咲く町の図書館閉館日 

 たまたま図書館が閉まっているときに通りかかったら、いつもは人が多くてあまり気
にも留めなかったダリアが目についたということでしょうか? 「咲く」「町の」は省
ける言葉ですので、もう一工夫するとより分かりやすくなったと思います。閉館日より
は休館日の方が一般的な言葉ではないかと思いました。

14 句坐の窓西日さえぎるブラインド 

 「西日さえぎるブラインド」は当たり前の景で、句材としての魅力には乏しいと思い
ます。

15 五月蠅追ふ猫一瞬の狩の顔 

 猫の様子を描写されていますが、猫の追うものは蠅でなくても良く、季語が動くよう
に感じました。

16 燕の子糞を落としつ育ちけり 

 燕の子を見守る作者の優しい視線が感じられます。ただ、詩というよりは、報告の域
を出ないように思いました。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

燕の巣の下にはたくさん糞が落ちていますね。作者はその決定的瞬間を目撃なさったの
ですね。かわいらしい、自然の営みを感じました。
=============================================================================

17 うつちやつたじやがいもの芽の長さかな 

 剽軽さが感じられる句ですね。余って捨ててしまった種芋を、やはり惜しんでいるよ
うな表情が見えて来ます。

18 午前九時偵察機飛来熊蜂 

 この句も独特の面白味を感じます。ただ、三段切れ、中七の字余り(または破調)、
上五の措辞の必然性など、問題も多いです。

19 くろがねの南京錠や花うつぎ 

 鉄の鍵と卯の花だけの、さり気ない取り合わせの句ですが、さまざまな情景が見えて
来ます。重々しい鉄の南京錠が掛けられているのは、古い土蔵の白壁で、その蔵のある
庭には、空木の花をはじめ色々な花が咲き始めて初夏を告げています。周りの田んぼか
らは蛙の音も聞こえ、早苗が風に揺れ・・・・と、想像を広げてくれる佳句と思いまし
た。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

くろがねの錠の硬質感と、花うつぎの白い柔らかな生命の対比が巧みだと思います。 
=============================================================================

20 ドラム缶並べて浮橋影涼し 

 影の正体がわかると良いと思いました。

21 とりどりの餃子の形こどもの日 

 微笑ましい句ですね。言わなくても、家族みんなでわいわいと餃子を作ったことが
わかります。食卓を囲む家族の笑顔が見えて来ます。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

 こどもの日に家族で餃子を作っている光景が浮かびました。句材が新鮮で独自性が
あり、季語も生かされていると感心いたしました。読み手も幸せを共感しますね。
=============================================================================

22 水鉄砲抱かせ小さな柩かな 

 幼い子が亡くなったのでしょうか? 棺に入れてあげるものとしては意外性があり、
それが人の死という非日常性につながるような気がしました。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

まだ幼い男の子でしょう。幼子を送る悲しみには胸が締め付けられます。
大好きだったおもちゃを持たせて 天国では元気に遊んでほしいという思いが涙を誘い
まます。
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23 松蝉の鳴くや峠の六地蔵 

 蝉が「鳴く」、花が「咲く」、風が「吹く」等は、省ける動詞です。この句は、「松
蝉や峠に古き六地蔵」のような、上五を「や」で切って下五を名詞止めにすると、姿良
く仕上がると思います。

24 暮泥む紫陽花寺の時の鐘 

 「紫陽花寺」では季語になりませんので、この句は、紫陽花で切れるのでしょうか?
 でも、そうすると「寺の時の鐘」がちょっと不自然です。

25 靄まとふ山の裾野の夏蓬 

 遠景から近景への視線の動きが良いですね。野の香りが感じられます。

26 嵩よりも重さにあらぬ新茶かな 

 詩情よりも、作者の主観・主張が勝って感じがします。

27 小さくも姿くづさず枇杷熟るる 

 姿を崩さずに熟れるという意味が良く分かりませんでした。また、全体的に枇杷の実
の説明に感じました。

28 足裏に木目の凹凸夏座敷 

 皮膚感覚で季節を感じる感性が良いですね。ただ、座敷とは畳を敷いた部屋を言いま
すので、足で木の床の凹凸を感じたというのは、矛盾する気がします。

29 フーコーの振り子ついりの科学館 

 フーコーの振り子は、地球の自転を証明するための、非常に長い振り子です。音無く
振れ続ける振り子と、静かに季節が変わって行く感覚が呼応するように感じました。
「ついり」は「梅雨入り」と漢字表記の方が良いと思います。

=== 武藤光リ氏評 ============================================================

 上野の国立科学博物館だろう。幼少の頃の見学を思い出した。入梅が効いている。
あの館内の重たい空気と暗さ、静寂さなど思い出させてくれました。恐竜も珍しい昆
虫も、また見に行きたくなりました。
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30 剣客を気取りひと振り梅雨の傘 

 大仰な喩えが面白いですね。「梅雨の傘」という表現に少々窮屈さを覚えました。

31 クリーンヒット逃す少年雲の峰 

 「クリーンヒット逃す」というのは、内野ゴロでしょうか、三振でしょうか? それ
とも守備のファインプレーに阻まれたのでしょうか? 具体的な景が見えると良いですね。

32 浮かびたる山城跡や夏の天 

 麓の方から山城の址を見上げているのだと思います。その視線の向きは「夏の天」で
わかりますので、上五の「浮かびたる」の代わりに、山城の景を写生されると良いです
ね。

33 嫁菜咲く白き碍子のログハウス  

 碍子は、電線を固定するためなどに使う絶縁物で、白い陶器が一般的だと思います。
この句は、碍子を植木鉢代わりにして嫁菜を咲かせているという意味でしょうか? ど
う解釈すべきか、よくわかりませんでした。

34 漁小屋の蠅取りリボン蠢けり  

 蠅取りリボンは懐かしいですが、実は拙宅でもまだ利用しています。この句、リボン
が蠢くというのは、それほどびっしり蠅がたかっているのでしょうか? なかなか想像
できませんでした。

35 水俣の海馬の稚魚や競渡船 

 海馬はタツノオトシゴのことと思いますが、その稚魚と競渡船の位置関係がよくわか
りませんでした。

36 針穴をすと出る糸や漁夫帰る 

 針の穴に糸を通している非常に近接した景と、漁夫が帰ってくるという景が、一つの
視線・視点の中に収まらないように思いました。

37 おぼえなき特攻花や庭に咲き @特攻花 オオキンケイ菊 

 オオキンケイギクは、特定外来植物に指定され、各地で駆除活動などが行われている
ほど繁殖力が強く、どこにでも勝手に生えてきますね。この句は、中七が「や」で切れ
ていますが、意味的には切れておらず、植えた(蒔いた)覚えのない花が庭に咲いたと
いう、報告・説明に留まってしまいました。この花が季語になっているかどうかはひと
まず置いておいて、「特攻花」という非常に印象強い言葉がもっと活かせればと思いま
した。

38 路地暑き天満橋の川渡御の 

 「川渡御が行われている天満橋の近くの路地が暑い」ということを語順を変えて言っ
ただけの、これも報告に留まっています。川渡御といえば天満という地名は不要ですし
また暑い季節に行われていることもわかります。(「暑し」も季語なので季重なりです。)

39 虹立つやリュックに詰める日本地図 

 旅立ちの景でしょうか? 季語が効いて、ロマンを感じる句です。ただ、日本地図と
いえば、一枚の紙に日本全土が印刷されたもので、いくらなんでも、あれを持って旅行
をする人はいないと思います。道路地図や時刻表などが現実的かとは思いますが、句と
しての面白みに欠けるかもしれませんね。思い切って世界地図にすると、夢が広がるか
もしれません。

*読み返して、「リュックに厚き日本地図」とすれば、地図帳のようなものを連想でき
ると思いました。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

長旅へお出かけでしょうか、佳き旅の訪れを予感させる虹です。「リュックに詰める」
が具体的でいいと思いました。
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=== 伊藤範子氏評 ============================================================

日本一周の旅の始まりでしょうか。<虹立つ>の季語に わくわくする気持ちが込めら
れているようですね。
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40 葛切や遠く揺らめく多宝塔 

 参拝後の、茶店などでの休憩の一時でしょうか? 「遠く揺らめく」が陽炎を思わせ
て、ひんやりした葛切りが美味しそうです。

41 桜桃忌机上の眼鏡こちら向く  

 太宰は眼鏡をかけていたかな?と思いましたが、そういうことでは無いのでしょうね。
明るい字面と対照的に暗いイメージを持つ季語と、人が掛けていない眼鏡の虚ろさの取
り合わせが巧みに感じました。

42 蠅取りを知りたるごとく避ける蠅  

 たしかに、そう思う時があります。「あるある!」的な面白さはありますが、もう少
し「詩」としての味わいが欲しいと思いました。

43 百粒の雨に傾ぎぬ額の花  

 百粒の雨だと、かすかに降ってすぐにやんでしまったように感じます。また、雨と紫
陽花はよほど工夫しないと句材として新鮮味がありません。

44 鈍色の匂ひ鼻腔へ梅雨じめり 

 匂いを色で表現したのは新鮮に感じました。ただ、何の匂いなのかがわからないのと
匂いと言えば「鼻腔へ」は不要と思える点が残念でした。

45 石炭の匂ふ構内夏燕  

 石炭の匂ふ構内は、炭鉱の遺構かと思いますが、構内から燕が見えたのでしょうか?

46 エスエルの座席直角夏燕  

 「座席直角」は、背もたれに傾斜が付いておらず直角になっているという意味かと思
いますが、客車内の座席と空を飛んでいる(であろう)燕の、視線のつながりがよくわ
かりませんでした。

47 公園に老々介護若葉晴れ  

 老々介護は最近の時事的な言葉ですね。意味はわかりますが、あまり具体的なイメー
ジは伴わず、説明的に感じます。こうした”便利”な言葉に頼らずに、具体的な目に見
えるものを詠む方が、臨場感が高まります。

48 ドクダミの匂ふベンチの花談義  

 「花談義」は、花時に行われる寺の説教のことです。季語にはなっていないかもしれ
ませんが、どくだみとの取り合わせはちょっとちぐはぐに感じました。

49 飛魚(あご)のとぶ戦艦大和沈む海  

 上五を「飛魚とぶや」と切った方が、説明感が無くなって余韻が生まれます。

50 くちなしの香りや樺美智子の忌  

 作者は、学生運動を体験された世代なのだと思います。私は樺美智子さんの死後の生
まれで、名前くらいしか知らないのですが、名前の文字そのものが梔子と合っているよ
うに思いました。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

学生運動家であった樺美智子の忌日は6月15日。梔子の花の咲くころだったことを記
憶している作者でしょう。
死亡に関する見解が分かれること、白いブラウスを着ていたことも知ると、「くちなし」
の季語が効いています。
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51 黒々と杜を浮かせり麦の秋  

 麦が実って明るく見えることで、森がことさら暗く深く見えたのでしょう。中七は
「浮かせたり」としたいところですが、字余りになりますので一工夫欲しいと思いま
した。

52 半眼の野仏濡らす梅雨入かな  

 「半眼の野仏」が、何があっても黙って立っている石仏をよく表していますね。た
だ、「梅雨入り」は梅雨に入ることで、雨そのものではありません。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

しっかりと写生された、基本ができている御句だと思います。
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53 父の日と言わぬ差し入れセブンスター 

 照れ隠しで、さりげなく煙草を贈ったのでしょうか? 下五、事実とは異なるかもし
れませんが、例えば「ハイライト」とすると字余りが解消します。

54 今年竹浸食域に田も墓も 

 竹の地下茎はどんどん伸び、周りに蔓延ってゆきます。「浸食域」が詩語としてどう
かと思いましたが、句材としては面白いと思いました。

55 タオルよく乾く立夏のこども園 

 タオルをたくさん使うこども園では、乾きが早いのは助かりますね。ふんわりと気持
ちよく乾いたタオルと、夏に向かってますます元気になって行く子供達の声が思われま
す。

56 ふあふあと海に抱かれし水母かな 

 句全体が、くらげの説明になっています。一句一章の句は、季語の説明になりがちで
すのでご注意ください。

57 麦秋や今朝もてくてく八千歩 

 実った麦の畑の中を歩くのは、健康的で気持ちが良いですね。ただ、「今朝もてくて
く八千歩」は、詩というよりは報告になってしまいます。

58 凛として刺より咲きぬ花薊 

 「凛として」は作者の主観です。主観を述べた句は説明的になってしまいがちですの
で、注意が必要です。

59 吹く風の光をはねる柿若葉 

 柿若葉には、すでに光のイメージは含まれます。柿若葉というだけで、読者はこの句
のような情景を思い浮かべることができます。一句一章の句は、このように「季語の説
明」になってしまうことがありますので、ご注意ください。

60 紫陽花のとりわけ今朝の藍の色 

 紫陽花を詠んだ一句一章の句で、自分が感動した花の色を読者に伝えたいという気持
ちがよく伝わります。ただ、「とりわけ今朝の藍の色」が完全に作者の主観で、読者は
置いて行かれてしまいます。「とりわけ」等と言わずに、具体的な物を詠んで感動を作
者に伝えましょう。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

お庭の紫陽花を毎日楽しみにしているのでしょう。<とりわけ今朝の>に 作者の喜び
が伝わりました。
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61 ゆふまぐれ舞ひ納めたる花菖蒲 

 「舞ひ納めたる」は、花菖蒲が咲き終えてしぼんだという意味でしょうか? 美しい
比喩と思いますが、それだけに寄り掛かってしまった句という印象でした。

62 線香の密やかに満ち梅雨に入る 

 線香が満ちるという意味がわかりませんでした。香り、あるいは煙が満ちるという意
味でしょうか?

63 弥撒に祈るヴェールの媼青葉光 

 清らかな明るさを感じます。ヴェールで女性であることがわかりますので、「媼」は
省けるのではないかということと、「弥撒」なので「祈る」は省いて上五の字余りを解
消したいと思いました。

64 花束を駅に忘れてついり雨 

 「ついり雨」は「梅雨入り雨」かと思いますが、「梅雨入り」で十分です。

65 千億の水輪の音やさみだるる 

 水輪は、雨が水面に落ちた波紋ですので、それ自体は音がしません。雨音も、千億と
いうように数を意識するようなものではなく、全体としてひとつのノイズのように感じ
られますので、この句は五月雨のイメージを頭の中で拵えたもののように感じました。

66 炎天の笑みのまぶしき鼓笛隊 

 炎天下で、鼓笛隊がにこやかに演奏しているということだと思いますが、上五の季語
が動くように思いました。

67 たくましき祖母のまなざし梅漬けて 

 逞しいのは祖母でしょうか? 祖母のまなざしでしょうか? どちらにしても、意味が
よくわかりませんでした。

68 繭煮るやゆつくり廻る糸車 

 「ゆつくり廻る」が具体的で良いですね。糸取りをしながらおしゃべりに花を咲かせ
る人たちが想像できます。

69 一歳の孫の新調更衣 

 「孫」というのは、作者から見た場合の間柄であって、他人である読者から見たら
「子(子供))」です。「孫」というだけで主観的となり、読者に思いが伝わらない句
になりがちですので、ご注意ください。昔から、「子・孫俳句に名句なし」と言われま
す。もちろん例外はいくらでもありますが、作句の際は肝に銘じましょう。

70 葉隠れのカフェの看板街薄暑 

 少し見ないうちに、あっというまに葉が茂り、見慣れた看板を隠してしまうのです
ね。こういうところにも、季節が駆けてゆくのが感じられます。

71 子離れの妻のマニキュア蛍の夜 

 巧みな句ですね。「子離れの妻のマニキュア」で、これまでの時間や、現在の妻の気
持ち、そしてそれを見る夫(作者?)の気持ちが思われます。季語も活きています。
上五、「子離れし」「子離れて」等も考えられると思いますが、どれが良いでしょうね?

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

季語から拝察して、マニキュアは足の指に塗られたのをお詠みになられたのではと想像
いたしました。作者の奥様に対する愛情と、句材探しの意欲を感じました。
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=== 伊藤範子氏評 ============================================================

ようやく子育ても一段落。家事に追われていたころにはマニキュアもしていなかった妻
が爪を美しくしたことを発見。
若い頃の二人に戻り 微笑ましい一句になりました。
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72 どくだみの白き潔さや雨曇り 

 ほの暗い雨の中で、どくだみの花がひときわ白く見えているのでしょう。「潔さ」は
「きよさ」と読ませるのでしょうが、少々無理があるように感じました。

73 薄烟る街をひとりの梅雨の傘 

 この「ひとり」は作者自身でしょうか? モノトーンの街を何を思って歩いているの
か、想像を広げたくなります。

74 トロ箱に胸鰭ふたつ走り梅雨 

 鱶の鰭か何かでしょうか? いまいちよくわかりませんでした。

75 鎌を研ぐ父の背中や迎へ梅雨 

 父の背中は、無言で多くを語るものと相場が決まっています。それに鎌など研がれた
日には、句材として出来すぎの感があります。季語の斡旋も巧みです。

76 屋上に赤き鳥居や風薫る 

 どこかのビルの屋上に上がったところ、思いがけず赤い鳥居のある小さな祠が祀って
あったでしょう。その意外さと、気持ちよく吹き過ぎる風が、微妙に似合っていると思
いました。上五は、「屋上に」「屋上の」どちらが良いでしょうね?

77 風薫る湖面に雲の小さき波 

 「雲の小さき波」がよくわかりませんでした。雲のような小さな波が立っているのか、
小さな波状の雲が映っているのか・・・。

78 大輪の薔薇の重さに俯きて 

 薔薇の様子を写生されていますが、大輪の薔薇→重い→花が下を向いてしまうという
理屈・説明にとどまってしまっています。

79 中り来し時の撓みや鮎の竿 

 鮎釣りの景を、目に見えるそのまま詠まれていますが、観察・発見が足りないのが残
念です。どんなアタリなのか、竿の撓みの様子はどうなのかなどを、もっとよく観察し、
自分の言葉で句にできると更に良くなると思います。

80 江ノ電で向かふ鎌倉風青し 

 固有名詞が二つ使われていますが、「風青し」というのは江ノ電に乗っていることに
より感じているので、鎌倉に向かっているかどうかはあまり関係ないように思います。
また、江ノ電のイメージには当然鎌倉周辺も含まれますので、中七に工夫の余地がある
ように感じました。

81 時ならぬ雨にも凛と白菖蒲 

 雨と菖蒲の取り合わせは定番中の定番です。また、その菖蒲の様子を「凛」と感じる
のは作者の主観ですし、わざわざ言わなくても読者はわかってくれます。

82 亡き母と話したきこと山桜桃 

 ゆすらうめに、お母様との思い出をお持ちなのかもしれませんね。ただ、それがわか
るのは作者だけなので、上五中七は作者の心情を直接述べるのではなく、物に托して読
者に訴えたいところです。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

ゆすらうめは 何か郷愁に誘われます。子どもの頃の甘酸っぱい色々な思い出もふくめ
て、お母様とはいつまでもつながっていたい気持ちに共感しました
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83 釣竿に鮎の銀鱗はね上ぐる 

 鮎を釣り上げた瞬間ですね。目の前の景の単なる描写でなく、作者が得た感動が伝わ
るところまで、自分なりの観察・表現を深めたいですね。

84 焼きなすの後ろにそつとグラス酒 

 どこか粋な色気を感じます。コップ酒・茶碗酒という言葉はありますが、グラス酒と
いう言い方もあるのでしょうか?

85 夕の虹少し錆び浮くベンチかな 

 ちょっと寂しそうな景ですね。下五を「かな」で切っていますが、上五にも切れがあ
るため、焦点が分散してしまった感じがします。

86 ごみ広場朱夏にかがよふアルミ缶 

 ごみ広場というのは、ごみの集積場のことでしょうか? 朱夏とは陰陽五行にちなむ
夏の異称ですが、残念ながら活きていないように感じました。

87 梅雨晴間ピアノもれ来るプレリュード 

 梅雨の晴れ間に聞こえてくるピアノの音、気持ちが明るくなりますね。プレリュード
は、具体的な曲がわかりませんが、例えばショパンのプレリュードと言えば、「ピアノ」
とは言わなくても良くなると思います。三弾切れにならないように注意しましょう。

88 消灯や張り付く蝙蝠網戸越し 

 上五中七下五でそれぞれ切れる「三段切れ」で、中七が字余りなので、リズムがぶつ
切れになってしまいました。上五の「や」の切れも活きておらず、全体が説明的に感じ
ました。

89 初蝉やすつ飛んでいく反抗期 

 上五で切れていますが、「すつ飛んでいく」は蝉のところに行くという意味でしょう
か? 

90 石塀の端からゆるり蝸牛 

 蝸牛に対して「ゆるり」は、擬態語として新鮮味に欠けるように感じました。

91 新緑やお社の千木天をさす 

 「お社の千木天をさす」は、千木の説明ですね。

92 夏服のほそき腕にカフを巻く 

 夏服を着て、自分の腕の細さに改めて寂しさを感じたのでしょう。切れが無く、やや
散文的なのが残念に思いました。。

93 駄菓子屋に集ふ腕白梅雨晴間 

 懐かしい景ですね。雨に降りこめられていた子供達が、一斉に飛び出してきて駄菓子
屋に集まって来たのですね。「集う腕白」がやや説明的ですので、駄菓子屋にある物や
様子を描いて、腕白たちの様子を連想させることができると更に良くなると思います。

94 釣り船に飛び込む飛魚(あご)や潮止り 

 魅力的な句材ですが、下五が残念に思いました。潮止りと、飛魚が飛び込んでくるこ
との関係がよくわかりません。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

季語が船に飛び込んできたのですね。飛魚の力強さをしっかり詠まれていると思いまし
た。
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95 紫陽花の毬の先にも濃紫陽花 

 紫陽花の様子を写生されていますが、誰でも見える・気づく範疇を越えておらず、発
見・詩情に乏しく感じました。

96 膝かかえ泣きつくしけりつくつくし 

 泣いている人物も理由も見えませんが、幼い子でしょうね。言葉遊びを意識されたの
かと思いますが、「つくつくし」は秋の季語です。(当句会は当季に限定はしませんが、
季節外の句はどうしても臨場感に乏しい印象となります。)

97 寝静まるアマゾン大河星涼し 

 雄大な海外詠ですね。熱帯アマゾンだけに、「星涼し」の季語が特に活きていると感
じました。

98 草笛や昔の彼はもういない 

 ちょっと内面的・主観的過ぎて、読者がついて行くのが難しい句に感じました。

99 かりゆしのホテルウーマン白き指 

 中七で切れているようですが、意味的には切れていないため、全体のメリハリがあり
ません。

100 石垣島白服まぶしおさげ髪 

 こちらは、石垣島^白服まぶし^おさげ髪 このように上五中七下五でそれぞれ切れ
る「三段切れ」なので、ぶつ切れのリズムとなってしまいました。通常、切れを一か所
にすると、そこに感動の焦点ができ、明瞭な句となります。

101 この先に多き鎖場岩清水 

 「この先に多き鎖場」が説明的に感じました。鎖場そのものを写生しましょう。

102 植田より朝日賜る厨かな 

 東向きの台所の窓から、田植えを終えた田が見えるのでしょうか。「賜る」に作者の
気持ちがこもっていますが、日常の景を一歩踏み出す発見が欲しいと思いました。

103 帰りかければ噴水の立ち上がる 

 「あるある!」的な句ですね。噴水のところで何をしていたのだろう?誰かを待って
いたのかな?この後どうなったのかな?・・・と、想像が膨らみます。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

噴水を楽しみに待っていたのに、もう離れなくてはいけない時間になってしまった。
七五五のリズムが 後ろ髪を引かれる思いには効果的な調べになっていると思いました。
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104 忘れゆく漢字ぼろぼろ梅雨寒し 

 私も含め、身につまされる方も多いと思います。主観的内容の句ですが、肩ひじを張
らず季語も適切で、共感を呼ぶ句と思いました。

105 風清しふとひと駅を歩く初夏 

 「風清し」と「初夏」は、一つの季語、薫風・若葉風・青田風・風青しなどで言えな
いかな?と思いました。

106 起床時刻遠し明易の病棟 

 外は明るくなったのにまだ床の中に居なくてはならないという、所在の無い気持ち
が、字余り・破調のリズムから伝わります。

107 オホーツク見下ろす苫屋浜豌豆 

 知床あたりの短い夏の様子ですね。「見下ろす」で、作者の立知位置や視線がはっき
りわかります。

108 かたつむり一葉旧居跡の井戸 

 取り合わせが良いですね。上五を「ででむしや」と切ると、よりめりはりが付くと思
います。また、「一葉旧居跡の井戸」は正確ですが少々口説い感じもしますので、「一
葉の井戸」と略しても良いかもしれません。

=== 奥山ひろ子氏評 ==========================================================

かたつむりと一葉旧居が、ひっそりした感じで合っていると感じました。
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109 早苗月五句選り寄り「柿の花」 

 何度も読み返しましたが、申し訳ありませんがまったく意味が分かりませんでした。
「選り寄り」は「すぐりより」と読むのでしょうか? 季語が二つ(早苗月・柿の花)
入っていますが、柿の花に括弧が付いている意味は何でしょうか?


110 行く蟻と来る蟻同じ蟻の道 

 よく観察されていると思いますが、いまひとつ「季語の説明」の域を出ていないよう
にも感じました。

111 アカシアの花殻匂ふ雨催 

 湿度が高くなると、匂いが良く感じられるようになります。舗道に降り積んだアカシ
アの白い花殻の匂いに気付き、雨が近いと感じたのでしょう。感性の鋭い句と思いまし
た。

112 よべの雨引きづる空や山法師 

 朝起きて昨夜の雨がまだ残っているを見た時の心情、そこに白い山法師がひっそりと
咲いているのに気づいた心情が静かに詠まれています。「よべ」は「昨夜」と表記して
も大丈夫です。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

上五中七によって はっきりしない梅雨空を上手く言い得ていると思いました。山法師
はそんなぼんやりした空にキリリと花開いています。
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113 比良越えて琵琶湖を叩く大夕立 

 大きな景ですね。まさに大夕立ですね。

114 ほうたるのふはり飛び交ふ雨もよひ 

 蛍と言えば、「ふはり飛び交ふ」は不要です。

115 火の鳥となりて羽ばたく夏氷 

 夏氷は掻き氷のことです。それが火の鳥であるという比喩?がよくわかりませんでし
た。

116 享年より若き遺影や夏の菊 

 「夏菊」は夏の季語ですが、「夏の菊」では季語になりませんのでご注意ください。
「青葉」を「青い葉」とできないのと同じです。

117 夕立風拾ひし骨のまだ熱し 

 句意はよくわかりますが、「(火葬後の)拾い終わった骨がまだ熱い」というのは、ど
のような状況か、よくわかりませんでした。骨壺を抱いていて、そこから熱が伝わって
来るのでしょうか?

118 裸子や桃太郎めく丸き腹 

 元気で丈夫そうな幼子ですね。私は桃太郎よりも、腹掛けをした金太郎を連想してし
まいました。

119 静寂を絡めてゐたり蜘蛛の糸 

 蜘蛛の糸(蜘蛛の囲?)のどのようなところに、静寂を絡めていると感じたのでしょ
うか? 観念的な比喩は、なかなか読者に伝わりません。

120 雨粒に傘すぼめたる海月かな 

 水面に浮いている海月が、雨粒に当たってその傘をすぼめたのでしょうか? 事実と
すれば鋭い観察で面白い発見と思いますが、今一つ情景が思い浮かびませんでした。

121 階段の下に陣張る十薬草 

 嘱目吟ですね。屋外の非常階段の下などに、どくだみが群れているのをよく見かけま
す。「陣張る」が表現の工夫かと思いますが、全体にありきたりな景で、発見に乏しい
ように思いました。

122 メドゥーサの怒りもかくや栗の花 

 栗の花は、通常その独特な匂いが詠まれることが多いのですが、この句は栗の花の見
た目を詠まれた点が新鮮に感じました。比喩にも作者の工夫が感じられますが、ちょっ
と無理があるように思いました。

123 七夕の星へと友は旅立ちぬ 

 ご友人の逝去を詠まれたのでしょうか? きれいな句ですが、逝去の比喩として、
「星になる」「空に行く」「旅立つ」等はよく見かけますので、こうした安易な比喩を
避けて、七夕にご友人を偲ぶ思いを、物に托して詠めると良いですね。「七夕や友の遺
せし旅硯」等

124 名刹の庭埋めつくす牡丹かな 

 「名刹」という言葉は説明的で、形や大きさなどの具体的な景が見えて来ません。言
葉を選ぶ際には、そうした点にご注意ください。

125 潜伏の祈りの祠夏燕 

 「潜伏の祈りの祠」がいろいろ想像させますが、有名な場所でしたら、地名を言えば
「潜伏」も「祈り」も言わなくてもわかるかも知れませんね。

126 安息の日曜ひと日青葉雨 

 「安息」は日曜の説明ですし、「ひと日」という言葉も不要です。これらの言葉を使
わずに、心静かな雨の日曜日を物に托して描けると良いですね。

127 御嶽山青葉目に染む雨上がり 

 色彩鮮やかな句ですが、御嶽山という固有名詞が生きているでしょうか? また、
「目に染む」という主観的な言葉を使わなくても、青葉の鮮やかさを言うことはできる
と思います。

128 鈍色の空に向かひて虹立ちし 

 「虹が空に立つ」とは言いますが、「空に向かって立つ」とはあまり言わないように
思います。下五の「虹立ちし」は切れが無く散文的ですので、「立ちぬ」「立てり」と
したいところです。

129 緑蔭に一日二本のバスを待つ 

 状況は良く分かるのですが、類句・類想が多いように思いました。

130 じゃんけんぽんなんじゃもんじゃの咲く空き地 

 意味よりも、言葉遊び的な面白さを感じましたが、下五が尻すぼみ的に面白さに欠け
るのが残念です。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

子供の遊びが<じゃんけんぽん>だけで想像でき、<なんじゃもんじゃ>の名前も楽
しい名前なので明るく楽しい一句となりました
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131 病葉を摘みたる午後や妻の留守 

 奥様が留守で、所在無い気持ちが読み取れます。「摘みをる」の方が、より臨場感が
増すと思います。

132 ロールパン焦げた方取る白桃忌 

 白桃忌がわかりませんでした。与謝野晶子の忌日の白桜忌のことでしょうか?

133 アイスコーヒー朝を散りゆく会社員 

 高いビルの中のカフェなどから、駅を見下ろしているのでしょうか? 上五を「アイ
スティー」等にせず、あえて字余りにしたことで、作者自身は急ぐ会社員たちを尻目に
ゆったりとしていることが伺えます。

=== 伊藤範子氏評 ============================================================

駅前で簡単なモーニングをとって出社する会社員たち。彼らが散らばっていく様子を俯
瞰しているかのような描写<朝を散りゆく>が斬新だと思いました。
熱い飲み物よりも冷たいものの方が 短い時間で済むので 急ぐ感じが伝わります。
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134 竹落葉時に聞ゆる鈴祓ひ 

 音もなく落ちる竹落葉と、不意に響く神社の鈴祓いの音の対比が良いですね。鈴祓い
に対して「聞ゆる」は省けますので、もう一つ踏み込んだ写生ができるとより良くなる
と思いました。

135 夫摘花の枇杷は大きな実をつけり 

 「夫摘花の」は、「つま・てきかの」と読むのでしょうか?ちょっと無理があるよう
に感じました。「実をつけり」は「実をつけたり」とすべきですが、字余りを解消する
工夫が必要になりますね。

136 田水引く夫はせわしく田を回る 

 働き者の御主人ですね。切れが無く散文的ですので、切れを意識して作句されると
より俳句らしくなると思います。



今月は以上です。またのご投句をお待ちしています。 慢房

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