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選句結果
     
第318回目 (2026年6月) HP俳句会 選句結果
【  酒井とし子 選 】
  特選 南天の花散る樺美智子の忌 まこと(さいたま市)
   お絵描きの眼差し一途梅雨最中 大原女(京都)
   天平の甍を焦がす大夕焼      水鏡(岐阜県)
   山の端に落ちゆく夕日麦の秋 水鏡(岐阜県)
   昭和歌謡好きと十代古茶新茶 さかいみさこ(石川県)
   傘さしてジョギングの人麦の秋 ゆきえ(和歌山市)
   一族の声の重なる田植かな 原 洋一(岡山県)
   朽ち樋の水飲む烏梅雨晴間 比良山(大阪)
   大南風沖に異国のクルーズ船 石塚彩楓(埼玉県)
   万歳は最後の言葉沖縄忌 櫻井 泰(館山市)
【  武藤光リ 選 】
  特選 一族の声の重なる田植かな 原 洋一(岡山県)
   天平の甍を焦がす大夕焼 水鏡(岐阜県)
   夕焼けを背負ひて黒し伊吹山      如月庵(岐阜県)
   あてのなき便り待つ日や女梅雨 ようこ(神奈川県)
   南天の花散る樺美智子の忌 まこと(さいたま市)
   白南風やグラスへ注ぐシークワーサー 正憲(浜松市)
   大南風沖に異国のクルーズ船 石塚彩楓(埼玉県)
   すれ違う日傘の人の母に似て 佐藤けい(神奈川県)
   短夜を抱きしめて読む妣の日記 近江菫花(滋賀県)
   青葉風電車待つ間の文庫本 美由紀(長野県)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 古墳より出でし大甕五月闇 田村幸之助(和歌山県)
   謎解きの合間に眠る熱帯夜 田村幸之助(和歌山県)
   お絵描きの眼差し一途梅雨最中      大原女(京都)
   山の端に落ちゆく夕日麦の秋 水鏡(岐阜県)
   一族の声の重なる田植かな 原 洋一(岡山県)
   道草の黄色の帽子麦の波 百合乃(滋賀県)
   鉦叩き呼ぶ渡し舟梅雨晴間 よりこ(名古屋市)
   朽ち樋の水飲む烏梅雨晴間 比良山(大阪)
   真ん中に孵らぬ卵巣立鳥 戸口のふっこ(静岡県)
   青葉風電車待つ間の文庫本 美由紀(長野県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 古墳より出でし大甕五月闇 田村幸之助(和歌山県)
   お絵描きの眼差し一途梅雨最中 大原女(京都)
   紫陽花や碁石の響く児童館      鷲津誠次(岐阜県)
   青嵐山頂で食ふ塩握り ゆきえ(和歌山市)
   一族の声の重なる田植かな 原 洋一(岡山県)
   人中の濃き父の日の似顔かな 芳典(東海市)
   あてのなき便り待つ日や女梅雨 ようこ(神奈川県)
   火の島の噴煙どんと夏の空 まこと(さいたま市)
   大南風沖に異国のクルーズ船 石塚彩楓(埼玉県)
   青葉風電車待つ間の文庫本 美由紀(長野県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、原 洋一さん(岡山県)、次点は田村幸之助さん(和歌山県)でした。「伊吹嶺」六月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


        2026年6月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

 前回(四月)は「季語の説明をしない」ことについて触れました。今回は、「主観を
直接述べない」ことについて書きたいと思います。

 主観とは、「作者自身の感じたことや考えたこと」です。「美しい」「嬉しい」「華
やかだ」「凛々しい」などの言葉がそれに当たります。これらをそのまま句に置くと、
句が説明に傾き、俳句の余白が失われてしまいます。

 俳句の読者が求めているのは、作者の感想そのものではなく、「作者が感じた世界を
自分の中にも呼び起こす体験」です。
 そのためには、主観を言葉で述べるのではなく、その感情を生んだ“景”を十七音に
凝縮し、読者の想像力に委ねることが大切です。

 作句の際は、「主観を直接言わず、景によって感動を伝える」ことを意識してみてく
ださい。それでは、個々の句を鑑賞します。

1	夜勤明け夜が残せし白い月

 早くも秋の句ですね。夜勤明けの疲れた状態で見る白々とした朝の月は、独特の感慨
がありそうですね。「夜が残せし白い月」は、文語と口語が混在していますので、もし
意図的にそうされているのでなければ、「夜が残した白い月」(口語)か「夜が残せし白
き月」(文語)に統一されると良いと思います。

2	後書きは青虫なるか初蝶来

 こちらは早春の句ですね。申し訳ありませんが、「後書きは青虫なるか」の意味がど
うしてもわかりませんでした。

3	謎解きの合間に眠る熱帯夜

 暑くて眠れないから、クイズなどの謎解きをして夜を過ごしているという意味かと思
いますが、そうだとするとやや理屈っぽいように感じました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 季語が効いていて現代的な面白さがある作品です。健康的でないところに俳諧味を感
じてしまいました。「〜合間の眠り」と切れを入れては…とも。

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4	古墳より出でし大甕五月闇

 古墳の内部の暗さ、甕の中の暗さ、五月闇の暗さが重なって、静かな迫力を感じまし
た。

 奥山ひろ子氏評===============================

 大切に発掘されて大物が出土しましたね。
 周りの木々が深い影を作り、その木々にも歴史の年月があり、いろいろ想像させてい
ただき特選としました。

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5	ひたすらにボール蹴る背な麦の秋

 サッカー部の練習風景でしょうか。若々しい季語が似合っています。

6	お絵描きの眼差し一途梅雨最中

 雨で外遊びができず、お絵描きをしているのでしょう。眼差しに着目したことで、生
きいきした表情が見えました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 外遊びができず残念な季節ですが、お絵描きが好きなのですね。「一途」がいいです。

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7	青蛙なんだかんだと飛び跳ぬる

 蛙が跳ねるのは普通ですが、「なんだかんだと飛び跳ぬる」がどのような景・状況を
詠まれたものかわかりかねました。

8	ひなげしや休耕田を埋め尽くす

 中七下五が、上五の状況説明ですので、上五の「や」の切れが活きていません。内容
的にも、報告的に感じました。

9	天平の甍を焦がす大夕焼

 「天平の甍」は井上靖の小説のタイトルですが、ここでは奈良地方の建物を象徴する
意味で使われているものと思います。古い寺院のシルエットが夕焼けに浮かぶ様子が浮
かびます。

10	山の端に落ちゆく夕日麦の秋

 麦畑が夕日に染まる景が浮かびますが、夕日は落ちるものなので、「山の端に落ちゆ
く」は定型的な夕日の説明的に感じました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 中七まではよくある景ですが、季語で景色が広がりました。夕日と黄金色の麦の対比
が美しいです。

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11	紫陽花や碁石の響く児童館

 児童館で碁というのは、一見ミスマッチな感じがしましたが、碁が好きな児童がいて
もおかしくはありませんね。窓の外の濡れた紫陽花と、静かな館内に響く石の音が印象
的です。

12	昭和の日百年の夢かけ抜けり

 今年は昭和百年にあたりますが、作者が百年前から生きていたわけではないと思いま
すので、百年の夢が何を指すのかわかりませんでした。

13	夕焼けを背負ひて黒し伊吹山

 伊吹山のシルエットですね。「黒し」で存在感が際立ちます。

14	閻魔堂の闇覗き込む薄暑かな

 明るく心浮き立つような季語と、閻魔堂の闇がミスマッチにも思えますが、逆にその
対比が狙いでしょうか?

15	登校の列を見守る立葵

 集団登校ですね。立葵の擬人化が成功しているかどうか、微妙なところに感じました。

16	廃線もやむなし会議濃紫陽花

 重い空気が漂っているのかと思います。ふと目をやった会議室の窓から紫陽花が見え
て、すこし気持ちが和んだのでしょうか?

17	子雀や何をしててもたのしくて

 何をしてても楽しいのは作者でしょうか?子雀でしょうか?

18	昭和歌謡好きと十代古茶新茶

 昭和歌謡には日本茶が似合いそうですが、「古茶新茶」とされた意味は何でしょうか?
二種類のお茶を淹れて飲み比べているというわけではないと思いますが・・・・。

19	垂直の登攀(とはん)か雨のかたつむり

 蝸牛が垂直な壁を這って上っているのですね。ただ、それだけでは句材として弱いと
思います。雨も、蝸牛から容易に連想されます。

20	人はみな仮面剥ぎたし青葉木菟

 人は誰でも(誰かの)仮面を剥ぎたいと思っているという意味でしょうか? 誰の仮面
かわからないと、句の意味が掴めませんでした。また、作者の主観(主義主張)を述べた
句と感じました。

21	羽抜鶏ひとり厨にしばし座す

 羽抜鶏が厨に座っているのかと思いましたが、羽抜鶏をひとりとは言わないでしょう
から、座っているのは作者なのでしょうね? 何故厨に座っているのか、何故そこに羽
抜鶏がいるのか、状況がよくわかりませんでした。

22	魔の山の雪渓ひかる夕つ方

 雪渓は夏の季語ですね。夕方に光って見えるというのが、いまひとつイメージが湧き
ませんでした。雪渓は窪んだところにありますので、夕方は影になる場合が多いように
思います。「魔の山」という措辞も抽象的に感じました。

23	青嵐山頂で食ふ塩握り

 山頂の風に吹かれながら頬張るおにぎりはうまいでしょうね。ただ、「おにぎり」
「握り飯」はいわゆるおむすびのことですが、「握り」だと私は握り寿司を連想してし
まいますので、「塩むすび」の方がしっくりきます。

24	傘さしてジョギングの人麦の秋

 そういう人もいるのですね。走り難そうです。傘よりかっぱを着た方が良いのにと、
思ってしまいましたが、蒸れるのが嫌なのでしょうか?

25	草野球競ひしころの青林檎

 回想句かと思います。昔、草野球をやっていた頃は、青林檎をよく食べていたという
ことでしょうか?「野球(草野球)を競う」という言い方は不自然に思いました。

26	青嵐ふるさとの空ほしいまま

 風は見えないので、上空に風が吹いているかどうかはわからないのでは?と、思って
しまいました。

27	一族の声の重なる田植かな

 懐かしい田植え風景ですね。親戚総出で苗を手で植えていた頃は、声を掛け合って苗
束を放ったりしていました。

 武藤光リ氏評================================

 元気で明るい日本の原風景だ。

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 奥山ひろ子氏評===============================

 ご家族での田植。いい景色ですね。「声の重なる」で気持ちのまとまりがうかがえま
す。

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28	水底に影の走りぬあめんぼう

 水馬やメダカなどは、実物よりも水底の影で存在に気づくことがよくありますね。

29	人中の濃き父の日の似顔かな

 小さな子からお父さんへのプレゼントでしょうね。そういえば、小さい子が書いた人
の顔には、人中がはっきりとした線で描かれていることがありますね。

30	梅雨空やプレイパークに煙立つ

 屋外の遊び場で焚火をしているのでしょうか? どうしても梅雨空の下でやらなけれ
ばならなかったのかな?と疑問に思いました。

31	香水や匂ひ撮せぬセクシな子

 「撮せぬ」は「うつせぬ」と読ませるのかと思いますが、撮にはそのような読みはあ
りません。セクシはセクシーのことかと思いますが、こちらも無理がありますし、この
ような言葉を使うと句が軽薄になります。

32	服柄に似合ふ香水探しけり

 服に合わせて香水を選ぶという発想は私にはありませんでした。そういうお洒落もあ
るのですね。ただ、句としては報告の域を出ないように感じました。

33	寺町の甍したたる青葉雨

 閑静な寺町に明るい雨の降る景ですね。

34	静謐な夜のせせらぎや草蛍

 清流のほとりの草むらで音もなく光る蛍。風情がありますね。中七下五で静謐な感じ
は伝わりますので、上五はもう一工夫欲しいと思いました。

35	はからずも相合傘や男梅雨

 どういうシチュエーションでしょうか? 作者が相合傘をどう感じているのか(嬉し
いのか、嫌なのか)が、季語からは読み取れませんでした。

36	あてのなき便り待つ日や女梅雨

 誰からの便りかはわかりませんが、こちらは季語から作者の気持ちが感じられました。

37	コンパクト閉じる音して香水も

 作者の近くで誰かが化粧をしているのだと思いますが、どういう状況なのかわかりま
せんでした。香水も、どうしたのでしょうか?

38	道草の黄色の帽子麦の波

 通学帽の小学生でしょうね。なんとなく懐かしさを覚える光景です。

 奥山ひろ子氏評===============================

 生命力旺盛な麦と、元気な道草の小学生?の取り合わせが生き生きしています。

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39	南天の花散る樺美智子の忌

 樺美智子さんのことを憶えている人も少なくなっているでしょうね。私にとっても生
まれる前の出来事です。作者は何か、ひときわ強い思いがあるのかと思います。静かに
散る南天の花に気持ちが込められているのでしょう。

40	火の島の噴煙どんと夏の空

 桜島でしょうか? 近くに住んでいる人には深刻な問題なのでしょうが、この句のよ
うな力強い景を見てみたいような気もします。

41	たましひの数の刻印慰霊の日

 平和の礎への追加刻銘は今でも行われているのですね。

42	白南風やグラスへ注ぐシークワーサー

 シークワーサーは柑橘類の名称ですので、ジュースやチューハイなどにしないとグラ
スに注ぐことはできません。

43	鉦叩き呼ぶ渡し舟梅雨晴間

 今でもそういう渡し舟があるのですね。観光用でしょうか? 水かさが増えたりする
と欠航でしょうから、雨が止んでいる間の運行ですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 とてもアナログなシステムで舟を呼ぶのですね。「鉦」の音が響いて長閑な渡しを想
像しました。

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44	朝曇敬老席のふさがりて

 地区の行事か、運動会などでしょうか? もう少し状況がわかると良いですね。

45	朽ち樋の水飲む烏梅雨晴間

 雨が上がったので外に出て、ふと上の方を見ると、烏が樋に溜まった雨水を飲んでい
たのですね。烏も長雨にうんざりしていたのでしょうか?

 奥山ひろ子氏評===============================

 鴉の生きる姿を切り取られ、「朽ち樋」と鴉の構図に臨場感がありました。

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46	梅雨寒や熊の徘徊劇化めく

 時事的な句ですね。季語の選択が良いと思いますが、やや説明的・報告的に感じまし
た。

47	飛べぬほど血を吸ふて蚊の赤い腹

 面白い句材ですね。蚊が血を吸い過ぎて飛べなくなることは、実際にあるそうです。
下五は、上五中七より容易にイメージできますので、もう一工夫あると良いと思いまし
た。

48	はんざきの川の主たる強面

 主観的で、季語の説明的な句と感じました。

49	大南風沖に異国のクルーズ船

 クルーズ船は来るところでしょうか?去るところでしょうか? 南風に旅心を誘われ
ますね。

50	配膳の終わりし卓や麦酒汲む

 「や」は感動の切字ですが、配膳が済んだテーブルのどんなところに感動したのでしょ
うか?

51	万歳は最後の言葉沖縄忌

 サイパン島のバンザイクリフを思い出しましたが、沖縄戦でも同じようなことがあっ
たのでしょうね。観念的な句ですが、思いが感じられました。

52	枇杷啜り明日のことなど誰が知る

 主観を言われても、読者は取り残されてしまいます。ただ、上五が巧みで、全体とし
てまとまっている感じを受けました。

53	短夜や深夜ラジオの聴き通し

 ラジオ深夜便でしょうか? うつらうつらしているうちに夜が白んでくることは私も
良くあります。

54	丸洗ひされる天守や雷雨去る

 雷雨が城の天守の洗浄であるという見立て(比喩)だと思いますが、それだけではあま
り詩情を感じません。

55	真ん中に孵らぬ卵巣立鳥

 雛鳥が巣立った後の巣の真ん中に、孵らなかった卵が残されているのですね。育つ命
と育てなかった命の対比ですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 せっかく真ん中にあるのに残念。真ん中に置いて孵るのを待っていたのでしょうか。
自然の厳しさですね。「真ん中」が眼目。

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56	緑陰へ引きづる椅子や三角点

 状況や、緑陰のある場所と三角点の位置関係などがよくわかりませんでした。三角点
というと、山頂などにあるものを連想しますが、ひきずるような椅子が置いてあるとい
うことは、街中にある三角点でしょうか?

57	すれ違う日傘の人の母に似て

 はっとした瞬間ですね。いくつになっても、親は忘れられません。

58	冷やし中華錦糸卵は上手く焼け

 錦糸卵「は」とありますので、うまく行かなかったものもあったのでしょうか?

59	短夜を抱きしめて読む妣の日記

 短夜を抱きしめるというのは、詩的な表現と思いますが、具体的にどういうことなの
かよくわかりませんでした。

60	アリーナに軋むバスケ車汗光る

 車椅子バスケットボールで使用する車椅子を「バスケ車」というのですね。「軋む」
と音を描いたことで、臨場感が増しました。


61	薔薇園の白きベンチへ戦ぐ風

 薔薇園の気持ちの良い風ですね。上五を「や」で切っても良いと思いました。

62	菖蒲園水面に揺るる年尾句碑

 上五と下五が名詞で、入れ替えても同じような句になる句を俗に、「観音開き」「キ
セル俳句」「サンドイッチ俳句」等と言います。この形の句は、読者のイメージが広が
らない場合が多く、通常あまり良くないものとされています。


63	 若葉燃ゆ八十路の舞台ロック歌手

 三段切れでリズムが途切れた感じがします。「若葉萌ゆ」の方が自然に思いましたが、
意図的に「燃ゆ」とされたのでしょうか?

64	 父の日に開けぬ日記の形見なり

 「日記の形見」の意味がわかりませんでした。形見の日記ではないのでしょうか? 
また、なぜ父の日には日記を開けないのでしょうか?

65	時の日やイタリア人のオンタイム

 時の記念日なので、普段は時間に大らかなイメージのあるイタリア人も時間通りに来
たという句意かと思いますが、理屈の句と感じました。

66	生つてねと西瓜の花を撫でる吾子

 「孫子俳句に名句無し」と言われます。自分の子供は特に可愛く思えて「吾子」と言
いたい気持ちはわかりますが、読者はそこに親ばかを感じてしまいます。「子」だけで
可愛らしさは充分に伝わります。

67	青葉風電車待つ間の文庫本

 最近は皆スマホを見ており、本を読んでいる人は本当に少なくなりましたね。もうす
でに「懐かしい景」なってしまいました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 携帯でなく文庫本を読みながら電車を待っている人を見ると、その佇まいがいいなぁ
と思います。駅のホームの周りにはよい緑があるのですね。

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68	雨上がり色の賑わう立葵

 濡れた立葵の花がひと際鮮やかに見えるのですね。「色の賑わう」がやや主観的で説
明的に感じました。

第317回目 (2026年5月) HP俳句会 選句結果
【  松井克行 選 】
  特選 メーデーの先頭をゆくブルドッグ 筆致俳句(岐阜市)
   弁当のおかず交換若葉雨 田村幸之助(和歌山県)
   岩窪に蝌蚪より小さき魚光る      芳典(東海市)
   春雨や卒寿八十路の長電話 大原女(京都)
   たたう紙に母の筆跡更衣 原洋一(岡山県)
   点滴の縷々と卯の花腐しかな みのる(大阪)
   しろがねの光走れり初鰹 かれん(春日部市)
   薫風や芝生に解く抱っこひも 蝶子(福岡県)
   あたたかし見知らぬ人の会釈受け 小豆(和歌山市)
   母の日や庭の白薔薇仏前に まこと(さいたま市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 暮れ方の風音乾く麦の秋 吉沢美佐枝(千葉県)
   オムライス上手に出来て長閑なり  百合乃(滋賀県)
   たたう紙に母の筆跡更衣      原洋一(岡山県)
   子の名前大きく掲げ鯉幟 石塚彩楓(埼玉県)
   流れ読む船頭の竿青嵐 正憲(浜松市)
   しろがねの光走れり初鰹 かれん(春日部市)
   札所への百の石段青楓  筆致俳句(岐阜市)
   薫風や芝生に解く抱っこひも 蝶子(福岡県)
   さ緑の香や「おかわり」と豆の飯 かよ子(和歌山市)
   雨上がり日差し弾ける柿若葉 美由紀(長野県)
【  関根切子 選 】
  特選 たたう紙に母の筆跡更衣 原洋一(岡山県)
   春深む甘きにほひのパン工場 直樹(埼玉県)
   粒ほどのいのちが動く蝸牛      後藤允孝(三重県)
   点滴の縷々と卯の花腐しかな みのる(大阪)
   薫風や新入幕の触れ太鼓 みぃすてぃ(神奈川県)
   番長となる面構へ葱坊主 正憲(浜松市)
   流れ読む船頭の竿青嵐 正憲(浜松市)
   メーデーの先頭をゆくブルドッグ 筆致俳句(岐阜市)
   札所への百の石段青楓  筆致俳句(岐阜市)
   薫風や芝生に解く抱っこひも 蝶子(福岡県)
【  玉井美智子 選 】
  特選 岩窪に蝌蚪より小さき魚光る 芳典(東海市)
   暮れ方の風音乾く麦の秋 吉沢美佐枝(千葉県)
   たたう紙に母の筆跡更衣      原洋一(岡山県)
   朝霧の零るる楓若葉かな 後藤允孝(三重県)
   薫風や新入幕の触れ太鼓 みぃすてぃ(神奈川県)
   流れ読む船頭の竿青嵐 正憲(浜松市)
   ときとして主亡き家の余花匂ふ ようこ(神奈川県)
   谷繋ぐ橋の如くの鯉のぼり 古屋侏儒(神戸市)
   札所への百の石段青楓  筆致俳句(岐阜市)
   薫風や芝生に解く抱っこひも 蝶子(福岡県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は原洋一さん、次点は蝶子さん(福岡県)でした。「伊吹嶺」5月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


講評はまだありません。

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                     宜しくお願いします。

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