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選句結果
     
第219回目 (2017年9月) HP俳句会 選句結果
【  国枝隆生 選 】
  特選 乱れ萩丘の上なる父母の墓 さよこ(神奈川県)
   物指しの裏に母の名秋日和 明珍(埼玉県)
   夕風に花野の色の波立てり      須藤曉風(前橋市)
   身に入むやかかさまと泣く姫の木偶 松村洗耳(三重県)
   十六夜の路地小走りに下駄の音 とみえ (愛知県)
   濡れ縁で野良着たたみて夕涼み のぶこ(北名古屋市)
   ベランダの野菜鉢より虫の声 眞人(さいたま市)
    人差指立て秋風を受けにけり シロー(柏市)
   鯊日和海抜0の防波堤 勢以子(札幌市)
   奉納の刀匠の衣の爽気かな ときこ(名古屋市)
【  河原地英武 選 】
  特選 ターバンの少女の視線秋気澄む 和江(名古屋市)
   物指しの裏に母の名秋日和 明珍(埼玉県)
   自販機に礼を言はれし星月夜      明珍(埼玉県)
   足摺の大き夕日や秋遍路 康(東京)
   行くほどに妻が先ゆく花野かな 須藤曉風(前橋市)
   身に入むやかかさまと泣く姫の木偶 松村洗耳(三重県)
   白髪の夫と歩めり花野径 のぶこ(北名古屋市)
   濡れ縁で野良着たたみて夕涼み のぶこ(北名古屋市)
   乱れ萩丘の上なる父母の墓 さよこ(神奈川県)
   モルダウのゆるき流れや夕月夜 蝶子(福岡県)
【  坪野洋子 選 】
  特選 列島の空を汚さず鳥渡る 正憲(静岡県)
   ・黒板の文字くっきりと九月かな 田中洋子(千葉県)
   自販機に礼を言はれし星月夜      明珍(埼玉県)
   足摺の大き夕日や秋遍路 康(東京)
   こほろぎや納屋に使わぬ三輪車 康(東京)
   虫の音を二つに分かつ小径かな 小春(神戸市)
   十六夜の路地小走りに下駄の音 とみえ (愛知県)
   軒に吊るブリキのバケツ鱗雲 とみえ (愛知県)
   水鳥の離ればなれの波枕 まこ(埼玉県)
   ベランダの野菜鉢より虫の声 眞人(さいたま市)
【  鈴木みすず 選 】
  特選 吾亦紅盛り花に足す綾子の忌 町子(北名古屋市)
   物指しの裏に母の名秋日和 明珍(埼玉県)
   足摺の大き夕日や秋遍路      康(東京)
   秋澄むや時おり聞こゆ鈴祓 小春(神戸市)
   十六夜の路地小走りに下駄の音 とみえ (愛知県)
   結ひ上げて襟足白し秋の風 きょうや(東京)
   火の粉浴び仁王立ちして筒花火 吉田正克(尾張旭市)
   闇深き九十九里浜銀河濃し 箕輪恵三(千葉市)
   乱れ萩丘の上なる父母の墓 さよこ(神奈川県)
   モルダウのゆるき流れや夕月夜 蝶子(福岡県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、さよこさん(神奈川県)でした。「伊吹嶺」9月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


講評はまだありません。

          しばらくお待ちください。

                     宜しくお願いします。

第218回目 (2017年8月) HP俳句会 選句結果
【  矢野孝子選 選 】
  特選 髪を梳く白き腕や夏の月 吉田正克pl(尾張旭市)
   日暮れまで通し狂言蝉の声 明珍(埼玉県)
   夏木立踵の白き修行僧      典子(岡山県)
   裃の折り目清しや祇園祭 妙子(東京)
   油蝉地球のぼやき聞くごとく 原馬正文(滋賀県)
   みはるかす青田の果ての大落輝 須藤曉風(前橋市)
   冷汁や一族郎党みな細身 田村幸之助(鈴鹿市)
   山の日や視界三百六十度 シロー(柏市)
   校庭に動くものなし夏休 惠啓(三鷹市)
   傾きて日差受けをり秋簾 清風(鳥取)
【  伊藤範子 選 】
  特選 錆水の漏るる蛇口や原爆忌 青木秋桜(名古屋市)
   夕焼や介護ベッドの母軽し 正木児童()
   展けゆく朝の連山秋晴るる      須藤曉風(前橋市)
   碑の名入れ新たに広島忌 筆致俳句(岐阜市)
   星満ちて白む木椅子や夜の秋 和久(滋賀県)
   鈴虫の翅ととのふる草の闇 勢以子(札幌市)
   校庭に動くものなし夏休 惠啓(三鷹市)
   少年の顎つきだしラムネ飲む のぶこ(北名古屋市)
   稜線を色濃く隔て秋の空 ユミ子(尾張旭市)
   クッキーのぼろぼろ零る敗戦忌 嵩美(名古屋市)
【  中野一灯 選 】
  特選 みはるかす青田の果ての大落輝 須藤曉風(前橋市)
   古畳翅を引きずり火蛾の這ふ 小春(神戸市)
   鬼瓦入道雲を背負い立つ       いちこ(長野県)
   旱天のダム湖に眠る村役場 小林克己(総社市)
   首傾げ胴ふつくらと茄子の牛 町子(北名古屋市)
   初秋や上り框に薬売り 田村幸之助(鈴鹿市)
   髪を梳く白き腕や夏の月 吉田正克pl(尾張旭市)
   蟻の列牛乳壜に誘ふ児 周桜(千葉県)
   力こぶ自慢のをさな日焼けして 蝶子(福岡県)
   錆水の漏るる蛇口や原爆忌 青木秋桜(名古屋市)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 髪を梳く白き腕や夏の月 吉田正克pl(尾張旭市)
   夏木立踵の白き修行僧 典子(岡山県)
   裃の折り目清しや祇園祭      妙子(東京)
   展けゆく朝の連山秋晴るる 須藤曉風(前橋市)
   雨近き闇に花あり烏瓜 康(東京)
   星満ちて白む木椅子や夜の秋 和久(滋賀県)
   向日葵の路地は抜け道風の道 さよこ(神奈川県)
   縮まらぬ距離のありけり星祭 皆空 眞而(川崎市)
   錆水の漏るる蛇口や原爆忌 青木秋桜(名古屋市)
   クッキーのぼろぼろ零る敗戦忌 嵩美(名古屋市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、吉田正克plさん(尾張旭市)でした。「伊吹嶺」8月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2017年8月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房


1  七年の黙(もだ)破られて蝉時雨  

 蝉は7年間を幼虫として土中で過ごすと言われますが、それをそのまま句にしたので
は、理屈っぽくて発見の無い、陳腐な句となってしまいます。

2  空襲に非ず列島猛暑なる  

 今年は猛暑や豪雨が多いですね。「空襲に非ず」の意味が良くわかりませんでした。

3  蓮の花無漏路のやうに真白なり  

 「無漏路のやうに」という直喩がこの句の眼目ですが、やや大仰で観念的です。句全
体としては、「蓮が白い」と言っているにすぎません。

4  夕焼や介護ベッドの母軽し  

 思いのこもった句です。やや季語が動くように思いました。

5  日暮れまで通し狂言蝉の声  

 「日暮れまで通し狂言」が、時間的にも空間的にも大きな幅を持つので、具体的な景
が伝わりません。一瞬の時間の一点の景を切り取って詠むと、良い句になると思います。

6  干草に埋もれ牛歩の眠りつく  

 干し草に埋もれているのは何なのか? また、「牛歩の眠りつく」の意味がわかりま
せんでした。

7  古びたる客間のピアノ朝曇  

 季語が動きます。

8  弁慶の橋ともなれば青嵐  

 「ともなれば」が、何を表現したいのかがわかりませんでした。

9  わが生死かかる八月熱帯夜  

 死ぬほど暑いということでしょうか? 脱水症や熱中症にご注意ください。八月と熱
帯夜の季重なりです。

10  シャワー浴ぶはげた頭を残すまま  

 諧謔味がありますが、「頭を残すまま」という表現がおかしいように思いました。

11  夏木立踵の白き修行僧  

 観察が鋭く、鮮やかな色彩の句です。

12  夕凪の鳶羽たたむ防波堤  

 「夕凪」で海辺の景であることはわかりますので、「防波堤」と言う代わりに鳶や周
りの様子を写生したいですね。

13  夏旺んひしめく鯉の暴れ食ひ  

 季語が動きます。「鯉の暴れ食ひ」は、人間が鯉料理を食べているようにも読めます。

14  古畳翅を引きずり火蛾の這ふ  

 映像の見える句です。読み方がやや散文的なのが気になりました。

15  青田風濃尾平野を渡りけり  

 地名などの固有名詞は、それでなければならないという必然性が必要です。この句の
「濃尾平野」にはそれが感じられませんでした。

16  湘南の海霧より現れしクルーザー  

 この句の場合も、地名の必然性が弱く感じました。また、クルーザーと海霧の取り合
わせも平凡に思いました。

17  幽霊か亡霊かイプセンの夏  

 イプセンの代表作に「幽霊」という作品があるという以上の深みが感じられません。

18  尼寺や廊下の軋む百物語  

 百物語の不気味さが感じられますね。場面を寺以外に設定した方が、意外性やリアル
感が増すと思いました。

19  揚花火大団円のひとしきり  

 大団円は物語などが丸く納まることですが、この句の場合はどういう意味なのでしょ
う?

20  裃の折り目清しや祇園祭  

 着眼点と、そこに集中して詠まれたのが良いですね。祇園祭を見たことはありません
が、一つのシーンが目に浮かんで来ます。

21  油蝉地球のぼやき聞くごとく  

 比喩は、意外性と読者の共感という反するものをどう両立させるかにかかっていま
す。この句の場合はどうでしょうか?

22  雷雲の選挙ポスター笑ひけり  

 「雷雲の選挙ポスター」とは何でしょう? また、「笑ひけり」だと、それまで笑っ
ていなかったポスターの顔が笑ったということになり、かなり不気味です。

23  展けゆく朝の連山秋晴るる  

 大きな景の、気持ちの良い句ですね。上五で、やまやまが徐々に見えてくる様子が描
けています。

24  みはるかす青田の果ての大落輝  

 景が良く分かるスケールの大きな句です。上五を工夫すれば、もう一歩深みが増すよ
うに思いました。

25  子等帰途へ残りし庭の法師蝉  

 帰省していた子や孫が帰って、静かになった家に蝉の声がひときわ大きく聞こえると
いう情景が良く分かりますが、詠み方が散文的なのが残念です。俳句は韻文であるとい
うことを、強く意識して詠みましょう。。

26  秋立つやきのふと違う音ピアノ  

 狙いどころは良いと思うのですが、「きのふと違う音」が主観的で、どう違うと感じ
たのかが読者に伝わりません。下五の表現も窮屈です。

27  白き指するりと抜くや鮎の骨  

 鮎の骨から指を抜いているように読めます。

28  どらやきに亀の焼き印秋暑し  

 写生句ですが、上五中七に言葉で言われている以上の深みがありません。季語も動き
ます。

29  木漏れ日の腹切り矢倉秋の蝉  

 季語が良いですね。上五に工夫の余地があるように思いました。

30  雨近き闇に花あり烏瓜  

 烏瓜の花の雰囲気が良く出ています。

31  鬼瓦入道雲を背負い立つ   

 気持ちの良い句です。鬼瓦が「立つ」という表現が少々気になりました。

32  炎天下行き先見えぬ蟻の列  

 炎天と蟻の季重なりです。

33  打水や新たな風の動きたり  

 打水のせいで、風が新鮮に感じたという着眼点が良いですね。「風が動く」という表
現はちょっと疑問に思いました。

34  甲子園湧く歓声の蝉しぐれ  

 蝉しぐれを甲子園の歓声に喩えたのでしょうか? 少々無理があるように思いました。

35  今朝秋の大扉開く金庫室  

 中七の大扉の読み方がよくわかりませんでした。「おおど」と詠むと字足らずとなり
ます。金庫室に、秋と響きあう風情は感じられませんでした。

36  片照りの村に嫁來て飯の汗  

 村に嫁が来ることと、飯が饐えることの関係がよくわかりませんでした、

37  身に入むや死者の名多き海難碑  

 「死者の名多き海難碑」は当たり前で、上五の季語がつき過ぎに感じました。

38  あたためし牛乳の膜吹いて秋  

 最後はむしろ「春」の方が合いませんか?

39  浴衣着て花カンナの道かけてく子  

 浴衣とカンナの季重なりで、中七が字余りです。「かけてく子」は「駆け行く子」と
しましょう。

40  ビルの庭夏日にキラキラ一本樹  

 詰め込みすぎの句で、何が言いたいのかわかりません。

41  いい汗をかいて夕餉のひとり酒  

 主観的で、作者の自己満足になってしまいました。何をして汗をかいたのかを、具体
的に詠みましょう。

42  包丁を軽く当てたり西瓜割れ  

 包丁を当てたら西瓜が割れたというだけでは、詩になりません。

43  一寸置く物で塞がり藤寝椅子  

 ありがちな光景ですが、どんなものが置かれているか、具体的な様子を詠みましょう。

44  暑きこと互に嘆きバスを待つ  

 「互に嘆き」まで言うのは言い過ぎです。それを言わずに暑くて辟易していることを
示すのが俳句です。

45  花菖蒲光りし雨の棘のごと  

 棘のようなのは、花菖蒲なのか雨かがわかりませんでした。

46  菖蒲田の花の高さを渡る蝶  

 菖蒲田と蝶の季重なりです。

47  碑の名入れ新たに広島忌  

 まだ風化していない悲しみを感じます。

48  東京の人と見送る五山の火  

 五山とは、鎌倉か京都のものと思いますが、「東京の人と見送る」がどう活きてくる
のかがよくわかりませんでした。

49  鉄塔を腕に育つ雲の峰  

 何かの鉄塔を峯雲の腕に喩えられたのでしょうか?  ちょっと無理があるように感じ
ました。


50  ゴルファーの細きリボンや青嵐  

 女子ゴルファーでしょうか? 季語との響きあいが今一つ感じられませんでした。

51  まじまじと夜店で開く師の句集  

 季語としての夜店は、祭りや観光地などの、路上の屋台などのことです。ここで句集
を開き、まじまじと鑑賞するのは、無理があると思います。

52  星満ちて白む木椅子や夜の秋  

 きれいな句ですね。童話のようなシーンが浮かびました。

53  銀漢を余さず包む鄙の黙  

 静かな山里の夜景ですが、「余さず包む鄙の黙」が説明的に感じました。銀漢と言う
だけで、雄大で静謐な感じは伝わります。季語の力を信じましょう。

54  旱天のダム湖に眠る村役場  

 「眠る」だと、目につかない状態にあるというニュアンスとなります。ダム湖が干上
がって沈んでいた役場が見えたということでしたら、「現れし」の方が適当なように思
いました。

55  蚤潰すぴくりと猫の耳動く  

 身近なところに取材し、具体的な景を詠まれています。調べが一本調子な感じがしま
すので、中七下五を「ぴくりと動く猫の耳」のように、名詞止めにすると良いと思います。

56  つがい揚羽蝶(あげは)に邪魔立ての蝶のあり  

 様子は良くわかりますが、説明的な感じがします。

57  座して聴く虫の劇場野音祭  

 「野音祭」が本当の野外音楽祭なのか、虫の声の比喩なのかがわかりませんでした。
後者だとすると、「虫の声」という季語の説明です。

58  住む鳥のなかった巣箱櫨紅葉  

 文語体の場合は「なかりし」とすべきですが、口語体であれば「なかった」でOKです。
伊吹嶺は文語体を使われる方が多いですが、これから若い人が増えると、口語体の句も
増えてゆくかもしれませんね。鳥の場合、「住む」は「棲む」とした方が良いと思います。

59  新涼や胎児男の子とメール来る  

 おめでとうございます。このままで良いと思いますが、下五を「告げらるる」とする
と、当事者的になってより臨場感が増すと思います。

60  首傾げ胴ふつくらと茄子の牛  

 写生句ですが、やや季語の説明的な印象です。

61  不忍池や蜻蛉すれすれ空真青  

 三句切れです。上五を「しのばず」と読ませるのは無理があると思います。

62  秋の夜や机上に広ごる山の地図  

 中七の字余りは極力避けましょう。この句もまだまだ推敲可能です。

63  舟並びべガンジス河の魂祭り  

 ほとんどの読者は、ガンジス河の魂祭りのことを知らないでしょうから、上五はそれ
を象徴するようなものを置きたいですね。

64  新しきダム湖濁るる秋出水  

 中七は「ダム湖の濁る」で良いと思います。

65  冷汁や一族郎党みな細身  

 先日宮崎に行った際に、ホテルの朝食で冷汁を食べました。さっぱりして良いですね。
この句は、面白いですが、皆冷汁ばかり食べているから太れないというような「理屈感」
が、やや強く感じられました。

66  初秋や上り框に薬売り  

 富山の薬売りも、酷暑の時期は避けるのでしょうね。懐かしい景です。

67  尼寺の卯の花散るや潦  

 中七を「や」で切っていますので、「尼寺の卯の花」という大きな景から、「潦」と
いう一点に視点が切り替わっていますが、上五を「尼寺や」とし、「卯の花の散る潦」
とした方が、視点がスムーズに流れるのではないでしょうか。

68  髪を梳く白き腕や夏の月  

 一枚の日本画のような句です。女性のシルエットと、月に照らされた腕の白さが際立
ちます。

69  早起きの子の手に見せるかぶと虫  

 微笑ましい景ですが、内容が陳腐(よくあること)です。

70  地元での盆踊とて友帰る  

 内容が陳腐で、報告的です。

71  屋上にあるヘリポート日雷  

 「屋上にある」は説明的です。「屋上のヘリポートより日雷」とすると、具体的な景
が見えてくると思います。

72  古戦場跡の石ころ盂蘭盆会  

 季語が動きます。古戦場跡→古戦場、石ころ→石とすれば、あと4音使えます。

73  わたなかの柱状節理天の川  

 わたなかは海中と書きます。海に囲まれたという意味もありますが、字面からは海中
に沈んでいる柱状節理が連想され、取り合わせが突飛すぎるように思いました。上五を
「海に立つ」とすれば、具体的な景が見えてきます。

74  鈴虫の翅ととのふる草の闇  

 普通秋の虫はその鳴き声を詠むのですが、様子を詠んだ点が面白いと思いました。た
だ、「草の闇」ですと、本当に見たのかな?という気もします。

75  子の手より精霊ばつた我が肩に  

 不意にバッタが跳んで驚いたのでしょうか? 切れが無く散文的ですので、「子の手
より我が肩に跳ぶ飛蝗かな」のように切れを入れると良くなると思います。

76  リハビリの妻の一歩や菊日和  

 ほのぼのとした愛情が感じられる句です。ただ、リハビリや試歩などはよくある句材
ですので、読み方を工夫しないと同じような句になりがちです。

77  文月や矮鶏の子七羽親ほどに  

 文月の頃に雛が親鳥ほどに育つというのは当たり前ですので、そのままでは句材とし
てきびしいです。

78  生姜畑の畝間に敷けり竹落葉  

 竹落葉という季語は、今まさに落ちている、または落ちたばかりの葉をを言います。
竹林に積もっているいつ落ちたのかわからない竹の葉には、季感はありませんのでご注
意ください。

79  図書館の緑の日覆い瓜あまた  

 最近よく見るグリーンカーテンだと思います。なっているのは苦瓜(ゴーヤ)でしょ
うか? 瓜はいろいろな種類がありますが、単に瓜と言えば、「瓜田に履を納れず李下
に冠を正さず」という言葉があるように、通常畑で地這いで作ります。

80  向日葵の路地は抜け道風の道  

 「道」のリフレインのリズムが気持ち良いですね。抜け道を元気に走りすぎる子供の
姿が浮かんできます。

81  山の日や視界三百六十度  

 山に登れば三百六十度に視界が広がるという理屈を言っただけの句に感じました。

82  凌霄花散り敷くままの空家かな  

 単なる「空家」だと、一枚の風景にすぎません。作者の思いが入ったものが詠めると
良いですね。

83  滴りや目鼻うすれし磨崖仏  

 できている句ですが、滴り→摩崖仏→目鼻がないというのは、類想が多いように思い
ました。

84  校庭に動くものなし夏休  

 深閑とした校庭の様子を詠まれています。夏休み"だから"校庭に誰もいない という
因果関係感じられる点が少々気になりました。

85  つぶやきの多き老い母盆の棚  

 中七に切れがあるので、お母様と盆棚(精霊棚)に直接の関係が無くなっています。
ここを切らずに、精霊棚を飾っているお母様の様子とした方が良いと思います。「精霊
棚飾る老母の独り言」

86  朝顔市の二千円の鉢朝顔  

 二千円という具体的な金額が活きていません。上五の字余り、中七下五の句またがり
のリズムの悪さも気になります。

87  若き日の宿を目指すや夏の旅  

 内容が主観的で、読者には全く映像が伝わりません。

88  蟻の列牛乳壜に誘ふ児  

 一心に蟻の列を追う子供の様子が見え、微笑ましいです。ただ、一本調子で切れが無
く、散文的なのが気になりました。

89  踏切の通過電車や草いきれ  

 「通貨電車」はちょっと言葉を無理をしている感じです。「遮断機の無き踏切や」等
とすると、街中ではない周りが草だらけの踏切の景が浮かぶと思います。

90  少年の顎つきだしラムネ飲む  

 恥ずかしながら、顎の読みが分からず、選者の範子さんに教えて戴きました。「顎門」
と表記されると、間違わずに「あぎと」と読めると思います。 少年が、顔を上に向け
ずに、顎だけ突き出すようにして飲んでいる表情を想像すると面白いですね。切れがな
く一本調子なのがちょっと残念です。

91 鉦の音に遠つ祖よぶ盂蘭盆会 

 「鉦の音に遠つ祖よぶ」は、盂蘭盆会の説明です。季語の説明の句です。

92 老ぬればだるさ残りし昼寝覚 

 「老ぬればだるさ残りし」が理屈です。目覚めたときのだるい感じを、事物に託して
詠みましょう

93 稜線を色濃く隔て秋の空 

 一読気持ちの良い句ですが、「隔て」の語が不自然に感じました。「秋の空が稜線を
隔てる」という意味にとれます。。

94 静けさや一直線の蚊火の煙 

 煙に対して「一直線」というのは、言い過ぎのように感じました。「真上に立ちし」
等でいかがでしょうか?

95 縮まらぬ距離のありけり星祭 

 織姫と彦星の距離を言ったものと思いますが、今風の恋の句と解釈するのも面白いで
すね。「縮まらぬあいつとの距離星祭」ではちょっとやりすぎでしょうか?

96 七夕に願い二つの恋多き 

 句の意味がよくわかりませんでした。

97 力こぶ自慢のをさな日焼けして 

 腕白坊主が目に浮かびますが、句に切れがなく、弛緩した感じがします。俳句は韻文
であり、切れとリズムが重要であることを意識しましょう。「日焼子の自慢の小さき力
瘤」

98 打ち水の後に微風を賜りし 

 この句も、切れがありません。ちょうど同じような景を詠んだ拙句がありますので、
ご参考まで。「打水を渡りし風を貰ひけり」

99 白球を掴む球児の日焼けの手 

 一点に集中して詠まれている点が良いと思いました。ただ、「球児」というだけで日
に焼けているだろうことはわかりますし、球を掴むすがたも当然思い浮かびます。

100 金魚すくひ水しなやかに尾鰭追ふ 

 何となく洒落た言い回しですが、意味が良くわかりませんでした。尾鰭を追っている
のは水?作者?

101 向日葵も顔を背ける日差しかな 

 まったく、言いたいことはよくわかります。が、このような比喩は、世間話にとどめ
ておきましょう。

102 風止みて碧き湖面に雲の峰 

 映像が良く見えますね。上五が、「風が止んだから」という説明になっている点が残
念です。

103 山風に湖の波立つ秋の声 

 難しい季語に挑戦されました。湖が波立つと言えば、風が出たということはわかりま
すので、上五に工夫の余地がありそうです。

104 人知れず墓地の通路に鶏頭花 

 「人知れず」が観念的です。どんな点にそう感じたのかを、具体的な物を詠むことで
表現しましょう。

105  本殿の古鏡眩しき夏祓  

 失礼ですが、「本当に見たのかな?」と思ってしまいました。ご神体となるような古
鏡はたいてい錆びたりくすんだりしているものですし、眩しく光を反射するような場所
には置かれていないのではないでしょうか? 実際にご覧になったものでしたら、申し
訳ありません。

106  紅柄の塗られし家並炎暑かな  

 中七に切れがありますので、下五の「かな」の切字が不自然に感じます。また、紅柄
とあれば、「塗られし」を使わずに詠むこともできそうです。

107  錆水の漏るる蛇口や原爆忌  

 季語が効いています。感情を表す言葉は使われていませんが、作者のやるせない気持
ちが十分に伝わります。

108  嫁ぎ来て三人増えし盆供養  

 意味が良く分かりませんでした。誰が嫁いで来たのか? 三人増えたのは供養する人?
される人?

109  傾きて日差受けをり秋簾  

 中七を「をり」と切ったところがこの句の手柄です。ここを「をる」とすると、まっ
たく弛んだ句になってしまいます。

110  抜けし身の還ることなし蝉の殻  

 当たり前のことを句にしても、良い句にはなりません。

111  草田男忌時のかなたの真白き歯  

 「万緑の中や吾子の歯生え初むる」の本歌取りですが、頭で拵えた句という印象を受
けてしまいました。

112  クッキーのぼろぼろ零る敗戦忌  

 こぼれるのが洋菓子である点に、意味深なものを感じました。中七の擬音は、ほろほ
ろ、ぽろぽろ、はらはら、ぱらぱら等々、工夫の余地があるかもしれません。

113  炎天下九回裏の打球音  

 逆転サヨナラヒットでしょうか? 上五が切れているようで、あまりはっきり切れて
いませんので、「炎天や」と強く切った方が良いと思います。

114  老監督笑顔の皺と日焼かな  

 前の句と合わせて読むと野球の監督だとわかりますが、この句だけでは、それがわか
りません。

115  潮風やおもかげを追ふ夏帽子  

 「おもかげを追ふ夏帽子」の意味がわかりません。「面影」のような実体の無い言葉
を俳句で使うのは難しいです。きれいなことを言おうとせず、実際の物を詠みましょう。

116  空蝉に土の乾きしうしろ足  

 蝉の抜け殻の足に、乾いた土が付いていても、特に珍しくはないと思います。

117  せせらぎを独り占めして川床料理  

 ほぼ、季語の説明です。

118  叡山の山頂に聴く高校野球  

 比叡山と高校野球には、何か特別のつながりや関係があるのでしょうか? それがわ
からないため、この句の感動のポイントが掴めませんでした。下五の字余りですが、原
則として字余り・字足らずは、その効果計算してやるものと思ってください。そうでな
い字余り・字足らずは推敲不足です。


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