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選句結果
     
第279回目 (2022年9月) HP俳句会 選句結果
【  国枝隆生 選 】
  特選 虫の音の間を置く闇の深さかな 後藤允孝(三重県)
   処暑の風厨の灯り明るくす 田中洋子(千葉市)
   湖よりの風に生まれて新走      百合乃(滋賀県)
   野仏に秋蝶すがりては離る 雪絵(前橋市)
   いわし雲杭一本の校名碑 正憲(浜松市)
   夕焼や路地より甘き醤油の香 石塚彩楓(埼玉県)
   月明や運河にひびくカンツォーネ 康(東京)
   鰹節ふつくり削る良夜かな 小川めぐる(大阪)
   旅人の我も招かれ芋煮会 麻里代(和歌山市)
   星月夜更けて川辺に靄立てり りきお(秋田県)
【  高橋幸子 選 】
  特選 野仏に秋蝶すがりては離る 雪絵(前橋市)
   夕焼や路地より甘き醤油の香 石塚彩楓(埼玉県)
   虫の音の間を置く闇の深さかな      後藤允孝(三重県)
   月明や運河にひびくカンツォーネ 康(東京)
   朝霧に白き闇なす誘導路 筆致俳句(岐阜市)
   秋高し親子で飛ばすラジコン機 野津洋子(瀬戸市)
   旅人の我も招かれ芋煮会 麻里代(和歌山市)
   星月夜更けて川辺に靄立てり りきお(秋田県)
   夜学の灯漢字ノートと老眼鏡 ようこ(神奈川県)
   秋高し最前列のアシカショー 幹弘(東京)
【  松井徒歩 選 】
  特選 銀漢や天文学者になりそこね きょうや(東京)
   雷鳴にお経唱えし祖母の背な 橋本 美恵子(名古屋市)
   枝豆や書き留めて置く塩加減      正男(大津市)
   睡蓮の葉の密にして花一つ 中島(横浜市)
   討論の静かになりし添水かな 幸子(横浜市)
   いわし雲杭一本の校名碑 正憲(浜松市)
   夕焼や路地より甘き醤油の香 石塚彩楓(埼玉県)
   爽籟や松葉を挟む古語辞典 小川めぐる(大阪)
   すり傷のスケボーの子や天高し まこと(さいたま市)
   月山のつぶやきとなる虫時雨 和久(米原市)
【  坪野洋子 選 】
  特選 天高し正午を告ぐる時の鐘 石塚彩楓(埼玉県)
   湖よりの風に生まれて新走 百合乃(滋賀県)
   枝豆や書き留めて置く塩加減      正男(大津市)
   討論の静かになりし添水かな 幸子(横浜市)
   いわし雲杭一本の校名碑 正憲(浜松市)
   夕焼や路地より甘き醤油の香 石塚彩楓(埼玉県)
   虫の音の間を置く闇の深さかな 後藤允孝(三重県)
   鰹節ふつくり削る良夜かな 小川めぐる(大阪)
   花野原前行く夫の大きな背 佐藤けい(神奈川県)
   秋高し親子で飛ばすラジコン機 野津洋子(瀬戸市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、後藤允孝さん(三重県)、石塚彩楓さん(埼玉県)でした。「伊吹嶺」9月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】



        2022年9月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

沢山の御投句ありがとうございました。

2	ひんまがる胡瓜みそマヨ昼餉かな

胡瓜で切れているように見えますし、みそマヨでも切れます。そして切れ字の<かな>
ですので(句意は分かるのですが)句の姿が悪いですね。

3	噴水に砕け散るは水の花

中六ですか?

4	五月雨に紫陽花咲きて光るなり

「五月雨」も「紫陽花」も強い季語ですので、どちらか一つの季語でまとめた方が良い
と思います。

(国枝)季語が二つあってもどちらかに重点があればよいと思いますが、この句ではど
ちらも前面に出た季語なので、季重なりが気になりました。

6	処暑の風厨の灯り明るくす

地味な句ですが、出来ている句ですね。

国枝隆夫氏評===============================

「処暑」は暑さが一段落した季節だが、最近はまだまだ暑さが厳しいが、この句には
ホッとする安らぎが見える。

======================================


7	母の背に手を置く写真秋桜

作者の手だと思いますが、中七の描写が今一つ物足らないように感じました。

8	声出さずありがとうねと簾外す	

簾への感謝ですね。

10	灯を消して人間の闇虫の闇

人間の闇と虫の闇の対比でしょうか? すみません読み切れませんでした。

11	蟋蟀の透明な音に静まる目

<透明な音>が詩的表現ですが、よく分かりませんでした。

12	雷鳴にお経唱えし祖母の背な

お祖母さんの心境がよく分かります。

14	子規庵を偲ぶ九月の曇り空

よく分る句なのですが、もっと突っ込んだ描写が欲しいと思いました。

15	秋立てりごま塩ぱらりお弁当

上五で切れて中七で切れて三段切れだと思います。

16	こほろぎや港のチャイムイエスタデ一

この句の「こほろぎ」は姿かもしれませんが、どうしても鳴き声を連想しますので、
チャイムの音とミスマッチのような気がします。

17	残照に忘れし躯鵙の贄

(国枝)「残照に忘れし」が面白い表現だと思います。ただ「躯」と難しい言葉を使わ
れていますが、「贄」で身体と言うことが分かりますので、単純に「残照に忘れしまま
の鵙の贄」
も考えられます。

18	湖よりの風に生まれて新走

場所は特定していないけれども国誉めの句ですね。

坪野洋子さんの選です。

国枝隆夫氏評===============================

この湖は琵琶湖だろうか。湖からの風はおいしい米が出来るという賛歌の句となって
いる。

======================================

19	柿すだれ断層のあと残る里

(国枝)岐阜県の根尾谷を感じさせる。柿すだれと断層の取り合わせに里の感じがよく
出ている。ただ三段切れの印象があるので、「柿すだれ断層あとに残る里」と中七は続
けた方がよいかと思います。

20	釣べ落し待つ人あらば帰路急ぐ

<帰路急ぐ>は「釣べ落し」との理屈を感じました。

21	比良暮れて野は黄昏の薄かな

場所が違うとはいえ<暮れて>と<黄昏>は言葉が被さっているように思いました。

22	枝豆や書き留めて置く塩加減

料理初心者の男性でしょうか、お酒が好きな方を想像しました。

坪野洋子さんの選です。

23	秋澄むといちだん明かき火焔土器

上5は「秋が澄むようになると」という因果関係が透けて見えますが、「火焔土器」が
クローズされてきます。上五は「秋澄みて」とさらっと流すことも考えられます。

25	野仏に秋蝶すがりては離る

秋蝶に何かが宿っているようにも思えてきました。

高橋幸子氏評================================

特選でいただきました。<すがりては離る>が言い得て妙で、秋蝶の様子をよく見て写
生されています。しかも花ではなく、野仏なのがほほえましく、意味深長です。

 ======================================

国枝隆夫氏評===============================

秋の蝶は何かにかけて弱っているのだろう。そのすがる先を野仏としたところに作者の
思いが見える。

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27	二階から点灯明かり霧の木々

<点灯灯り>は灯りを付けた瞬間のことでしょうか?どんな意味にしても少し無理な言
葉だと思いました。二階の灯りと戸外の木々と焦点が別れているのも気になりました。

28	秋暁の路地に端座の猫家族

<猫家族>が窮屈な言葉遣いのように思います。

29	夕花野をちの淡海くれなゐに

(国枝)花野の夕暮れ色と琵琶湖のくれなゐ色を取り合わせて、きれいな情景となって
いると思います。

32	睡蓮の葉の密にして花一つ

良く観察した句ですね。

33	討論の静かになりし添水かな

討論が一段落したところで、「添水」の音に我に返ったという景ですね。

坪野洋子さんの選です。

34	何しても上手くゆく筈昼寝覚

個人の感慨の句ですので、日記に添えるのには良いですが、句会の句には向かないと思
います。

35	一斉に鳴り出すスマホ秋出水

レベルの高い洪水の警報でしょうか。句意は分かりますが、季語の付け方はこれで良い
のか迷いました。

36	いわし雲杭一本の校名碑

一本の杭の他は鰯雲しか見えないのですが、その分杭に象徴性が伺えます。

坪野洋子さんの選です。

国枝隆夫氏評===============================

名詞だけの何でもない情景。よけいな言葉がなくシンプルに出来ている。「いわし雲」
から「校名碑」の上が広々とした雄大な情景になった。

======================================

37	炎日や運河脈打つ貨車の群れ

中七下五が共にどういう状況かよく分りませんでした・。

39	銀漢や天文学者になりそこね

夜空を仰ぐ度に込み上げる微かな忸怩。銀漢ともなればなおさらでしょうか。

40	昇り消えるラヂオゾンデや9月尽

マニアックな句ですね。9月は九月としたいです。

41	天高し正午を告ぐる時の鐘

正午の鐘が澄み切った空の下鳴り響いています。

坪野洋子さんの特選です。

42	夕焼や路地より甘き醤油の香

良き時代の庶民の生活のノスタルジーを感じました。

坪野洋子さんの選です。

高橋幸子氏評================================

「夕焼」は夏の季語なので、「秋夕焼」でもいいかなと思いました。夕焼けの色と路地
よりの醤油の香りが映り合って、懐かしさを醸し出しています。

 ======================================

国枝隆夫氏評===============================

「夕焼」と「醤油の香」の取り合わせにメルヘンが感じられる。

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43	献杯の夜行の杯へ雨月の灯

夜行の杯がよく分かりませんでした。

44	灯さずに良夜明りの夢話

<灯さずに>が説明でしょうか。夢話のイメージが曖昧な感じを受けました。

45	風に空に秋の訪れ旅支度

<秋の訪れ>を思わせる具体的な描写が欲しいです。

46	食ひ尽くしこの柚子坊の太り様

太っている以外は、(<食ひ尽くし>では)柚子坊の様子が分からないのでもやもや感
が残りました。

47	虫の音の間を置く闇の深さかな

 静寂を<闇の深さ>と捉えたのですね。

坪野洋子さんの選です。

高橋幸子氏評================================

虫の音が途絶えた間をうまく言い表していると思いました。感覚的な御句です。

 ======================================

国枝隆夫氏評===============================

一物写生の俳句。虫が鳴いていない間の無音の状態を「闇の深さ」と詠んだのがよかっ
たと思います。簡単に見えて、このような詠み方は難しいと思います。

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48	空蝉の眼は吾を見てゐたり

<吾>の措辞で主観が強くなったような気がしました。

49	両の手の杖リズミカル秋遍路

元気で明るいお遍路ですが、<リズミカル>が描写としては弱いと思います。

51	ワルツ舞ふ月のドナウのクルーズ船

言葉が多すぎるように感じました。

52	月明や運河にひびくカンツォーネ

イタリアですね。ベネチアでしょうか。

高橋幸子氏評================================

イタリアでの景でしょうか。〈月明〉〈運河〉〈カンツォーネ〉と三拍子そろって、
ばっちりです。

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国枝隆夫氏評===============================

夜間クルーズのような外国情緒のある句。日本にこんなところがあるかどうか。とにか
くおしゃれに出来上がった句。

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53	目覚むればそぞろ寒なり外は雨

下五が「そぞろ寒」の原因のように置かれているように感じました。

55	道沿ひに早生柿ならぶ獺祭忌

(国枝)あえて季重なりにしたのは柿の好きな子規を詠んだからでしょうか。

56	朝霧に白き闇なす誘導路

霧の視界の悪さを<白き闇>というのがユニークですね。

高橋幸子氏評================================

<白き闇なす>の言い回しに惹かれました。飛行機が飛び立つ前の誘導路、やや不安な
気持ちも感じられます。

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57	一つ二つ三つ摘む朝顔に明日の芽

上五が余りにも長すぎます。

58	知らぬ地に我が名見つくや木槿垣

季語を頼りにしてもどういう状況かが分かりませんでした。

59	大嵐すだれ外せば部屋明かし

報告の句のように思いました。

61	逢えぬ日々十六夜賞づるコールあり

<コール>は電話でしょうか? それでしたら<電話>の表記で良いと思います。

62	岩の峰夕映えの空雁渡る

上五から中七へ畳みかけて読めば気にならないかもしれませんが、句中に切れが二つあ
りますね。

64	秋となる一人の膳や目玉焼き

出来ている句ですが、中七下五が引き立つような季語の使い方が他にあるように思いま
した。

(国枝)「目玉焼き」から一人住まいの様子が見えてくるが、ただわびしさはない様子。
季語の「秋となる」が一寸あいまいのなので、もう少し明るい季語でもよいかなと思い
ます。「良夜なる一人の膳の目玉焼」など。

65	秋空へソーラー点検女性技師

ソーラーが空を向いているのは理解できますが、秋空へ点検というのが分かりませんで
した。それともソーラーで切れて<点検女性技師>で一つの言葉ですか?

67	ひぐらしや築五十年珠算塾

<築五十年>の後に<の>が省略されていると読めば門題ありませんが、どうも切れて
いるように思えてなりません。

68	かなかなや父の蔵書の値は安く

がっかりですね。古書の目利きのある人がいれば良いのですが。

69	きりぎりす指揮する野辺や蝉の後

<指揮する野辺>がよく分かりませんでした。

70	網戸越し臥す昼の床涼新た

三段切れのように見えます。<網戸越し>なのは「涼新た」ですか?「網戸」は夏の季
語ですね。

71	鰹節ふつくり削る良夜かな

私はオノマトペには厳しいほうですが、「良夜」に<ふつくり>は割と合っていると思
いました。

坪野洋子さんの選です。

国枝隆夫氏評=============================== 

良夜に何故鰹節を削るか分からないが、秋の夜長を楽しんでいるのが「ふつくり」の効
果だと思います。

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72	爽籟や松葉を挟む古語辞典

頂きましたが、古語辞典よりも<松葉>の方が主役だと思うので、辞典はこの流れでは
下五に置かないほうが良いように思いました。余計なお世話かもしれませんが、私の作
り方ですと「爽籟や辞書に松葉を栞とし」でしょうか。

73	電柱をたちまち占居葛の蔓

「葛の蔓」の説明のように感じました。

74	花野原前行く夫の大きな背

 丈夫なご主人なのですね。頼り切っている奥さんが伺えます。

坪野洋子さんの選です。

75	虫の音やとぎれとぎれの休耕田

(国枝)虫の音を「とぎれとぎれ」と詠んだのは面白いと思いましたが、休耕田がとぎ
れとぎれのように詠めますので、「休耕田とぎれとぎれの虫の声」と上下ひっくり返し
てみてはどうでしょうか。

76	草深くこぼるる響き虫の秋 

虫の声が<こぼるる>が?でした。。

77	高原や日本刺繍のごと花野

高原の「花野」だと思いますので、切れ字<や>が効いていないと思います。

79	大仏に西瓜供へて涼一つ

「西瓜」は秋の季語で「涼」は夏の季語ですね。

81	リュックの子芒の風に攫はれぬ

背中の子供が芒の陰に隠れてしまったのでしょうか?<攫はれぬ>がよく分かりません
でした。

82	筆順で決めし凸の字筆の秋

(国枝)「筆の秋」の季語が気になりました。

83	秋の日や飛行機雲の白長き

些細なことかもしれませんが、<長き>は連体形ですので<長く>の方が良いと思いま
した。

86	秋彼岸夫の読経の声の延び

「秋彼岸」と読経が即きすぎと感じました。

87	落ちまいと露虫へばるハイウエイ

ハイウエイが大雑把すぎて鑑賞に困りました。

88	秋高し親子で飛ばすラジコン機

 ラジコンの飛ぶ視界の先に空で、季語がやや即きすぎかもしれませんが、微笑ましく
て爽快な句ですね。

坪野洋子さんの選です。

高橋幸子氏評================================

気持ちのいい御句です。親子の笑顔がはじけますね。

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89	風清し道に毬栗一つあり

道が説明ですね。

90	雨過ぐるごとに色づく桜紅葉

紅葉の説明の句のように思えます。

91	秋澄むや早発ちの子の置手紙

(国枝)朝早く子どもが旅行にでも出かけたのだろうか。季語から爽やかさと同時に子
どもの弾む心も見えてくる。

92	旅人の我も招かれ芋煮会

良い旅になりましたね。

高橋幸子氏評================================

野外で行われる芋煮会。旅人も招き入れるおおらかな気風がいいですね。

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国枝隆夫氏評===============================

これから涼しくなると川原での芋煮会が盛んになるが、誰でも歓迎する山形の人情を感
じさせてくれる。

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93	俯きてスマホ触る背秋めきて

俯いて丸い背中に秋の哀愁を感じたと受け止めました。

94	川岸に響む一喝秋の雷

<響む>は「とよむ」と読むのですね。知らなくて<響かむ>かと思い悩みました。

96	十六夜といふも月影まどかなり

「十六夜」の説明のような句です。

97	チルタイム閑かに賞づる蟲のこゑ

こちらも<チルタイム>の説明のような感じがします。

98	大雪山の四囲の底なり稲の花

<大雪山の四囲>ですと大雪山が真ん中にあるわけで、その<底>が?でした。

101	すり傷のスケボーの子や天高し

腕白盛りの子に「天高し」と無難にできていますね。

102	星月夜更けて川辺に靄立てり

夜と<更けて>が言葉の重複かと思いましたが、微妙な時間の経過の表現なのですね。

高橋幸子氏評================================

月のない星の明るい夜が更け、空気が冷えてくると、川面に靄が生まれるのですね。
自然現象が美しくとらえられています。

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国枝隆夫氏評===============================

靄は真夜中に立つかどうか気になったが、きれいな言葉で詠んでいる上品な句。幻想的
に仕上がっている。

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103	耳固し笑みてうなづく生身魂

耳硬化症という病気があるようですが、そのことでしょうか?

104	園児乗せお散歩カート秋の晴

ほぼ只事の句ですので季語が大事になります。もう少し季語を吟味してください。

105	隊商の列なるラクダ月下行く

<ラクダ>は漢字の方が良いと思います。

106	思春期を吹つ切れるかに西瓜割り

<吹つ切れるかに>と持って回った言い方をせずに<吹つ切る>と断定してはいかがで
しょうか。

109	腸(はらわた)の瘤を除きて空澄めり

粗削りな句ですが、季語が良いですね、全快をお祈りします。

110	靴下に右左あり体育の日

下五に収めたいですね。

113	秋の蝶日蔭の庭を今日も飛ぶ

ご自分を投影しているのでしょうか、日陰とはいえ元気に動き回りたいですね。

114	九月場所今年最多の勝ち目指す
 
意味はよく分かりますが俳句は意味の伝達だけではないので・・・。

115	名月や今宵一番テレビにて

<今宵一番>は一番良い時間という意味でしょうか?

117	月山のつぶやきとなる虫時雨

月山のつぶやきという把握が良いと思いました。月山の懐に眠る即身仏にも思いを馳せ
ました。

(国枝)「月山」は固有名詞の山形の月山のことでしょうか。虫時雨が月山のつぶやき
だと思ったのは面白い発想です。

118	往年の女優気取りや秋袷

<往年の>が曖昧ですね。

119	夜学の灯漢字ノートと老眼鏡

晩学の夜長ですね。 

高橋幸子氏評================================

名詞だけでこんなにも様子がよく分かるのかと、感心しました。若い夜学生に混じっ
て、初老の作者が、一生懸命難しい漢字に挑戦している様子がありありと浮かんでき
ます。

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120	秋高し最前列のアシカショー

<最前列>に作者のさあ楽しむぞという期待が見て取れますね。

高橋幸子氏評================================

カメラが、ズームアウトの<秋高し>からズームインして<最前列>へと寄る趣があり
ます。アシカの飛び込む水しぶきまで見えるようです。

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121	黄落の届くホームの最後尾

保守的すぎる思考かもしれませんが、「黄落や」としたいですね。そしてホームの最後
尾の描写をしてはどうでしょうか。




第278回目 (2022年8月) HP俳句会 選句結果
【  武藤光リ 選 】
  特選 離れ住む子へ絵手紙や百日草 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   蜜豆や歳重ねても姉は姉 田中洋子(千葉市)
   倒木の根つこの湿り蛇の衣      美佐枝(千葉県)
   蝉の殻指にとまらせ帰宅の子 節彩(東京)
   不器用な着地いじらし糸蜻蛉 百合乃(滋賀県)
   風涼し城の狭間を抜けて来し 中島(横浜市)
   整備士の遅き昼餉や蝉時雨 鷲津誠次(岐阜県)
   丸き背の祖母のまろび寝白磁枕 野津洋子(瀬戸市)
   香ばしく焼けたるパンや今朝の秋 ときこ(名古屋市)
   表札は夫の名のまま門火焚く 惠啓(三鷹市)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 コロナ禍や青紫蘇香る朝ごはん 小雅(名古屋市)
   ぶらぶらと西瓜畑を抜けて海 いまいやすのり(埼玉県)
   原爆忌黙祷乱すジェット音      美凡(熊之庄八幡206-4)
   蜩や手拭い解く老剣士 神長誉夫(神奈川県)
   知らぬ子と野鳥談義や夏休み 星女(東京)
   時々は遺影をあふぐ団扇かな 小川めぐる(大阪)
   倒木の根つこの湿り蛇の衣 美佐枝(千葉県)
   蝉の殻指にとまらせ帰宅の子 節彩(東京)
   尾根を行く小さきリュックや雲の峰 蝶子(福岡県)
   向日葵や病癒えしと友来る 上中     かよ子(和歌山市)
【  伊藤範子 選 】
  特選 夏見舞君には空の写真集 幹弘(東京)
   離れ住む子へ絵手紙や百日草 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   マホガニのピアノに遺影夏館      康(東京)
   蜩や手拭い解く老剣士 神長誉夫(神奈川県)
   新涼やジョガーの軽き靴の音 福山三歩(栃木県)
   知らぬ子と野鳥談義や夏休み 星女(東京)
   カリヨンを遠く花野の落暉かな 美佐枝(千葉県)
   蝉の殻指にとまらせ帰宅の子 節彩(東京)
   整備士の遅き昼餉や蝉時雨 鷲津誠次(岐阜県)
   とんぼうを追へばとんぼう増えにけり 櫻井 泰(千葉県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 時々は遺影をあふぐ団扇かな 小川めぐる(大阪)
   白砂の指(および)に抜けり原爆忌 水鏡(岐阜県)
   蜜豆や歳重ねても姉は姉      田中洋子(千葉市)
   夜店はや好みの皿と出合いけり 正男(大津市)
   蜩や手拭い解く老剣士 神長誉夫(神奈川県)
   知らぬ子と野鳥談義や夏休み 星女(東京)
   表札は夫の名のまま門火焚く 惠啓(三鷹市)
   尾根を行く小さきリュックや雲の峰 蝶子(福岡県)
   とんぼうを追へばとんぼう増えにけり 櫻井 泰(千葉県)
   夏見舞君には空の写真集 幹弘(東京)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、蒼鳩 薫(尾張旭市)さん、節彩(東京)さん、神長誉夫(神奈川県)さん、星女(東京)さん、小川めぐる(大阪)さん、幹弘(東京)さんでした。同点が3名以上ですので、今月の最多入選賞は該当者無しとなります。

【講評】


               2022年8月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

1	ほつれ髪手櫛で梳かす梅雨湿り

 梅雨湿りのさり気ない景をうまく捉えられました。ただ、「梳かす」だと、他の人に
命じて髪を梳かせるという意味になってしまいます。中七を「手櫛で梳くや」「撫づる
手櫛や」のように、切るのも良いと思います。

2	枝垂れ咲く凌霄庭を独り占め

 「枝垂れ咲く」は凌霄花の描写として陳腐に感じました。「庭を独り占め」も、写生
というより、作者の主観で述べた措辞に思えます。

3	コロナ禍や青紫蘇香る朝ごはん

 コロナ禍で世相がどんよりしているので、せめて朝食は香りの良い青紫蘇を利かせて
気分良く・・・ということでしょうか? 「青紫蘇香る朝ごはん」が具体的なイメージ
が湧かなかったので、どんな献立か気になりました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 気分が滅入りがちなコロナ禍にあって、青じその香りが立ち昇る場面がいいと思いま
した。「朝ごはん」の措辞もいいですね。

 ======================================

4	朝の水細きニラの葉すくと立つ

 「朝の水」は、作者が韮に掛けた水のことと思いましたが、そうすると、水をやった
から→韮が立ち上がったという因果関係を感じさせる理屈っぽい句になってしまいます。
「朝の水」を作者が飲んだものと考えると、上五で切れて、涼し気に立っている韮との
対比が良い感じとなります。なお、韮は春の季語です。

5	何番め十席ばかりのビヤガーデン

 句意がつかめませんでした。席数の少ないビヤガーデンで、自分たちは何番目の客か?
と言っているのでしょうか?

6	バス停の屋根に広がる柿の花

 バス停の屋根を覆うような巨大な柿の花を想像してしまいました。実際は、柿の花は
緑がかってあまり目立たず、落ちやすい花です。

7	風鈴や待ち人いまだ軒のした

 「待ち人」は、誰かが来るのを待っている人ではなく、来るのを待たれている人のこ
とです。「待ち人来たらず」は、おみくじの常套語ですね。

8	白砂の指(および)に抜けり原爆忌

 指の間を落ちる白砂に、作者の祈りが感じられます。直接感情を表す言葉を使わなく
ても、作者の思いが伝わる見本のような句ですね。

9	冬瓜やどんな味にも染まります

 冬瓜の説明になってしまいました。上五を「や」で切った場合は、中七下五は上五と
関係の無いことを言うのが俳句の一つのセオリーです。

10	四回目のワクチン接種灸花

 上五の字余りが気になりました。「四回のワクチン接種」でも、四回目を打ったとい
うことはわかると思います。

11	向日葵のように育てと子の寝顔

 季語を比喩に使った場合、それは季語として機能するのか?ということは、俳人の間
でも議論が分かれるところです。著名な例としては、漱石の「菫程な小さき人に生れた
し」がありますが、私としては、これは漱石だから許されるのだと思っています。

12	蜜豆や歳重ねても姉は姉

 観念的な句ですが、季語が良いので、歳を重ねてますます仲の良い姉妹の姿が浮かん
で来ます。

13	底紅や祠の屋根をふく媼

 底紅(秋)と屋根葺く(春)の季重なりです。

14	思考力失せて酷暑の限りなく

 俳句というより、愚痴の一片に思えました。

15	喝采の如く沸きだす朝の蝉

 今日も一日、夏の日を謳歌しようという蝉の声ですね。「喝采の如く」「沸きだす」
と、比喩が上手に使われています。

16	一匹のはぐれ蛍とすれ違ふ

 はぐれ蛍の大群というのはあり得ませんので、「一匹の」は省けるように思いました。
その分で、蛍とすれ違ったという事実の報告だけでなく、その時の作者の心情などがに
じみ出るようにできると良いですね。

17	夜店はや好みの皿と出合いけり

 夜店を覗くのはちょっとワクワク感を伴いますね。骨董などを扱う店でしょう、すぐ
に好みの皿が目に留まった高揚感が伝わります。

18	手花火や夫と子たちの弾む声

 楽しそうな様子が浮かんで来ます。ただ、花火をするのは普通は楽しいことで、「手
花火」というだけで子どもたちの弾む声が聞こえてきます。それが季語の力です。

19	ぶらぶらと西瓜畑を抜けて海

 詩というより、「目的も無く西瓜畑を歩いて、別に見たくもない海に出た」という事
実の報告のように感じました。俳句は詩であり、作者の感動を読者と共有するものです。
この句のどこに、作者の感動のポイントがあるのか、よく分かりませんでした。

 奥山ひろ子氏評===============================

 〈ぶらぶらと〉のオノマトペがどうかがこの句の鍵ですね。私はいいと思いました。
当てもなさが出ますし、気ままな時間という印象が夏休みを連想させます。

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20	解禁の待ち遠しきや囮鮎

 「解禁の待ち遠しきや」は、作者の主観です。俳句で主観を述べても、読者は「ほう、
そうですか。」と言うしかありません。また、鮎漁の解禁が待ち遠しいというのは、鮎
釣りが好きな人は皆思うことで、句材としては陳腐だと思います。

21	一番鶏ちょうど火が消え蚊遣香

 朝方まで、蚊に悩まされて眠れずにいたのでしょうか?
 上五と下五が名詞で中七を挟んでいる句を「観音開き」や「キセル俳句」「サンドイッ
チ俳句」などと言い、通常は避けた方が良いものとされていますので、意識されると良
いと思います。

22	炎昼やバイク走らす郵便夫

 郵便配達は、酷暑でも極寒でも郵便物を届けなければならず、たいへんな仕事ですね。
配達員を見る、作者のあたたかい視線を感じます。

23	原爆忌黙祷乱すジェット音

 原爆忌でも、ジェット機は予定通り運行するのでしょう。静かに祈りを捧げていると
ころに響く轟音に、心が乱されたのですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 原爆忌くらい静かに過ごしたいのに、現実はままならないというやるせなさを感じます。

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24	離れ住む子へ絵手紙や百日草

 中七が「や」で切れていますので、取り合わせの句として読むべきかと思いましたが、
どうしても、百日草の絵手紙を描いたという意味に思えてしまいました。距離の問題や
コロナ禍でなかなか会えない子どもに、色とりどりの百日草の様子を、絵手紙にして届
けてあげたいという気持ちを詠むには、「や」の切れは使わない方が良いと思います。

 武藤光リ氏評================================

季語百日草が効いている。何日も会えぬ辛さが込められている。
絵手紙の絵も百日草であろうから、「や」の切れは少し強すぎるか。
 離れ住む子への絵手紙百日草
これで百日草を見て子を思い、絵手紙をしたためた心境と繋がる。

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 伊藤範子氏評================================

遠くの子と会えないコロナの時代を感じさせる句。百日草は花期が長いので会えない時
間も感じられました。

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25	炎昼や烏の口の塞がらず

 面白い句ですね。あまりの暑さに、カラスも口を開けて喘いでいるようですね。

26	沖縄の少女の慰霊詩の朗誦

 少女が慰霊のために詩を朗読したというだけでは、報告の域を出ないように感じまし
た。また、「沖縄忌」「慰霊の日」等のはっきりした季語を入れたいところです。

27	山鉾や町衆の意気天を衝く

 山鉾と言うだけで、読者は「町衆の意気天を衝く」のシーンを思い浮かべます。そう
いう意味で、「季語の説明」的な句と感じました。

28	空蝉の庭下駄の緒に縋りをり

 ちょっと物足りなく感じました。「空蝉の縋る庭下駄」と縮め、もう一つ何か盛り込
みたいですね。

29	マホガニのピアノに遺影夏館

 遺影の主が愛用したピアノでしょうか。なにやら物語を秘めていそうですね。上五は
字余りになっても「マホガニーの」とした方が良いと思います。

 伊藤範子氏評================================

「マホガニー」と思いますが、希少な高級木材で猫脚タイプが多いとのことで夏館にぴっ
たりですね。ピアノがお上手だった亡き人(女性のような気がしました)を偲んでおら
れる様子が伝わります。

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30	朝採れのゴーヤの友の土産かな

 「朝採れの」「ゴーヤの」「友の」と「の」が続くので、意味が取りにくく感じまし
た。「朝採れのゴーヤの」と「友の」が「土産」に掛かるのですね。「朝採れ」「朝採
り」という言葉は、スーパーや直売所などで野菜等の新鮮さをアピールするには良いで
すが、俳句で使うには具体的な映像を伴わず、説明的な感じがしますので、注意が必要
と思います。

31	すててこや昭和まことに遙かなる

 偶然、私も最近似たような句を作りました。原句:「草笛や昭和は遠くなりにけり」
もちろん、草田男の「降る雪や〜」の句の本歌取りであり、オマージュですが、読む人
によってはおふざけやパクリと捉えたかもしれませんね。最終的に、「草笛や昭和に生
まれ育ちたる」と推敲しました。

32	堂鳩の眼動かぬ大暑かな

 暑いと鳩は目玉を動かさなくなるのかどうか知りませんが、そういうことも有りなん
と思わされます。

33	傾ぎゆく一両電車田水湧く

 「田水湧く」という季語は有りませんので、「田水沸く」の間違いでしょうね。田の
水が熱せられて、土中の藁などが発酵して泡を生じ、一面に湯が沸いているように見え
ることを言います。

34	黒南風や乳房貪る赤子かな

 一句の中に複数の切字を使うことはやめましょう。切字は詠嘆を重く響かせるので、
一句の中に二つ以上あると句の焦点がぼやけてしまいます。特に「や」と「かな」の併
用は、まず成功することはありません。「や」「けり」は、「降る雪や明治は遠くなり
にけり」等の例がありますが、通常は避けた方が良いです。

35	蜩や手拭い解く老剣士

 しっかりとした句形の句です。緊迫する立ち合いを終えて静かに面を脱いだところで
しょうね。再び静寂が訪れた道場に響く蜩の声が印象的です。

 奥山ひろ子氏評===============================

 季語が効いていると思いました。〈手拭い解く〉が写生ですね。「手拭ひ」でいただ
きました。

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 伊藤範子氏評================================

夕暮れ時を感じさせ、染み入るような蜩の鳴き声と、老剣士の涼やかな所作、映画のワ
ンシーンのようです。

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36	花の色 眺めていたり 朝顔の

 作者が朝顔の花の色を眺めていたというだけでは、単なる報告です。作者が読者に伝
えたい感動は何でしょうか?

37	虫籠や 覗きし子等の 笑顔かな

 34の句と同様、一句に複数の切字を使うのはやめましょう。また、俳句は分かち書き
せずに一行で書いてください。

38	踊子の指先星をつかむごと

 面白い喩えですが、盆踊りの指先が何かを掴むような仕草に見えたことは無いので、
いま一つぴんときませんでした。

39	今もなほポマードのしみ籐寝椅子

 ポマードを愛用されていたご主人またはお父様なのでしょうね。「ポマードのしみ」
を「ポマード匂ふ」等としても味わいがあると思いました。


40	新涼やジョガーの軽き靴の音

 「軽き」が「靴」に掛かるようにも「音」に掛かるようにも読めました。「新涼」の
季語で軽快で爽やかな感じが伝わりますので、「軽き」は別の言葉に置き換えても良い
かもしれません。

 伊藤範子氏評================================

夏を過ぎてジョギングの足取りも軽くなる気分が、音に託されています。

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41	秋に入る草葉は己が陰を持つ

 上五で切れるのかと思いましたが、そうすると切れが二か所になってしまいますので、
「秋に入る草葉」と読むのでしょうか? 秋に入ろうとする季節の草や葉は、それぞれ
の陰(影ではなく?)を持つ・・・。句意がよくわかりませんでした。

42	知らぬ子と野鳥談義や夏休み

 作者の野鳥談議に付き合ってくれる子がいるのも、夏休みならでは。知らぬ者どうし
で話をするのも、一つの冒険ですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 〈知らぬ子〉がいいですね。こんな開放感があるのも、夏休みならではだと思いました

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 伊藤範子氏評================================

同じ趣味を持つ人は大人も子供も関係なくすぐ分かるのでしょう。話が弾んだことと思
いました。

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43	節電に俳句歳時記青葉椅子

 節電をするために、家のエアコンを使わずに、歳時記を持って外に出て、青葉の繁る
木陰の椅子で作句をしている・・・という意味でしょうか? どうも、無理やり言葉を
詰め込んだ散文という印象を受けました。

44	何処までが庭か畑か百日草

 季語が動くように思いました。

45	夜半の秋灯表に浮く雨の影

 「灯表に浮く雨の影」は、何となく雰囲気を感じる言葉なのですが、意味がよくわか
りませんでした。ひおもて(日面)という言葉はありますが、灯表もひおもてと読むの
でしょうか?

46	遊泳の見飽きぬ鉢のメダカかな

 私もメダカを飼っており、見ていると見飽きませんが、それをそのまま言っても詩に
はなりません。

47	黒雲のはや大地打つ夕立雨

 季語「夕立」の説明です。また、夕立だけで雨の意味がありますので、夕立雨と言う
必要はありません。

48	ひぐらしや晩年の父いよよ寡黙

 下五の字余りが気になりました。また、お父様はご存命なのだと思いますが、ご高齢
であることは容易に察することができますので、「晩年」は言わなくも良いと思いまし
た。

49	時々は遺影をあふぐ団扇かな

 新盆でしょうか? 団扇を使いながら故人を偲んで誰かと会話をしているのでしょう。
時々、故人の遺影にも風を送ってあげているのですが、「ねぇ、聴いてる?」と言いた
げな作者の気持ちが、ほのぼのと感じられます。

 奥山ひろ子氏評===============================

 句材に意外性があり、思いやりが感じられる句だと思ました。

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50	風を生むもののひとつとして金魚

 句意がよくわかりませんでした。少なくとも私には、水の中にいる金魚が風を生むと
いうイメージはありません。

51	倒木の根つこの湿り蛇の衣

 根こそぎ倒されてしまった大木と、乾いて無機質な蛇の抜け殻との対比が面白いです
ね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 〈根っこの湿り〉に、写生を追及しての一句かと思います。

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52	カリヨンを遠く花野の落暉かな

 良い意味でも悪い意味でも、絵葉書のような光景ですね。

 伊藤範子氏評================================

夕日に染まった花野の日暮れどき カリヨンの音との風景が美しい一句と思いました。

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53	盆休の知らせべたべた待合所

 病院等でしょうか? お盆休みの知らせが貼り出されているということだけでは、句
材として乏しいと思います。

54	本当は轟音なるや流れ星

 何故そう思われたのでしょうか?

55	捕へゐし虫放つ子や原爆忌

 原爆忌に、放生会のようなことを行うところがあるのでしょうか?

56	生身魂目耳弱れど鼻の利き

 説明的に感じました。具体的に、嗅覚は衰えていないと感じた瞬間を写生されると良
いと思います。

57	語り部を孫に託すや原爆忌

 原爆体験者の高齢化が進み、語り継ぐ世代も代わっています。掲句は、若い語部の様
子等を具体的に写生されると良いと思いました。

58	耐える吾を日と見下ろすや百日紅

 暑さに耐えている自分を、サルスベリが太陽と一緒に見下ろしているという意味でしょ
うか? 「百日紅」という季語だけで、灼けるような真夏の昼の様子が浮かびますので、
この句は、季語の説明に近いと思いました。

59	蝉の殻指にとまらせ帰宅の子

 子どもが蝉の殻を拾って持ち帰ったというだけでは、句材として寂しいと思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 男の子でしょうか、〈指にとまらせ〉の具体的な表現がいいですね。

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 伊藤範子氏評================================

学校か公園で見つけたのか、得意気に帰ってきた子の様子がよく伝わります。

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60	灸花描けば可憐な野草かな

 灸花が可憐な野草であると言うことは、万人が認めると思います。逆に言うと、それ
は言わなくてもわかるということです。

61	朝顔やいくつ咲いたか夫の問い

 上五を「や」で切る場合は、中七下五は上五と直接関係の無いものを取り合わせるの
がセオリーです。

62	不器用な着地いじらし糸蜻蛉

 「いじらし」は作者の主観です。そう言わずにその気持ちを読者に伝えられると良い
ですね。

63	高階の手に取る近さ天の川

 高階は高層階の意味と思いますが、そういう言い方があるのか疑問に思いました。ま
た、高いところなので、天の川が近くに見えるというのも、新鮮味に欠けるように感じ
ます。

64	夜を明かす郡上踊の下駄の音

 郡上踊りと言えば、夜通し踊ることはわかります。また、浴衣に下駄履きの人が多い
でしょうから、下駄の音がするのも特に目新しさは感じません。

65	風鈴のしきりに鳴りし留守の軒

 誰かの家を訪ねたらたまたま留守で、軒下の風鈴だけがしきりに鳴っていたのですね。
それが作者には、主のいない家を守っているように感じられたのかもしれません。

66	夏草の山を登りて景崩し

 作者が、夏草の茂っている山を上ったとも、夏草が山の麓の方から山頂に向けてはび
こって行ったとも取れます。いずれにしても「景崩し」の意味がよくわかりませんでし
た。

67	風涼し城の狭間を抜けて来し

 上五で切れていますが、内容は中七下五に繋がり、下五で再び切れていますので、ち
ぐはぐな感じを受けました。城の狭間(銃眼)を風が抜けることは有り得るとは思います
が、あの小さな穴を抜けた空気の流れを感じるのは、よほど近くにいないと難しいので
はないかと思いました。

68	雑草を分け白帆ごと半夏生

 半夏生という季語は、二十四節気七十二候のうちの夏至の三候を指す場合と、ドクダ
ミ科の多年草を指す場合がありますが、この句の場合はどちらでしょう? 「雑草を分
け白帆ごと」の意味もよくわかりませんでしたが、白斑(はくはん)の誤変換でしょう
か?

69	蝉しぐれ散居小さな杜となり

 「散居小さな杜となり」の意味がよくわかりませんでした。散居分家した親族の家が、
住む人がいなくなって杜のように木が生い茂ったということでしょうか?

70	風鈴や一期一会の形見あり

 句意がわかりませんでした。この場合の形見は、遺品という意味ではなく、誰かと出
会ったことの記念品という意味でしょうか? 

71	ホームラン売り子呼び止め生ビール

 野球観戦の一コマですね。贔屓チームの選手がホームランを打ったので、気を良くし
て球場の売り子からビールを買ったのでしょう。上五下五が名詞切れでリズムが悪いの
で、もう一工夫欲しいと思いました。例:本塁打出て購へる生ビール

72	汗飛ばし指揮棒振れりペトレンコ

 ウクライナ情勢を受けての一句でしょうか? 最近、ペトレンコに関する時事的なニュ
ースを見た記憶が無いため、ピンと来ませんでした。

74	雲の峰天を目指して広がりぬ

 季語「雲の峰」の説明です。

75	独唱に続く合唱蝉の庭

 「独唱に続く合唱」が面白い発見ですね。

76	ここまでは風ここからは青田波

 句意がよくわかりませんでしたが、青田波は風によってできるものですので、風と青
田波の取り合わせは意外性に欠けるように感じました。

77	他の花を入れやうとせぬ薔薇の気性

 句意がよくわかりませんでした。作者は薔薇の花に排他的な物を感じたのでしょうか?

78	泊とせし「崑崙ホテル」夕焼くる

 「崑崙ホテル」という固有名詞で、読者に何を伝えたいのかがピンと来ませんでした。
また、ホテルは宿泊するところですので、「泊とせし」は不要です。更に、「夕焼け」
は名詞ですので、「夕焼くる」のような活用が可能かは、疑問です。

79	椰子の木や渚の二人夕焼けて

 前句と同様、「夕焼け」の活用については疑問があります。

80	大正のブルーの洋館夏の雲

 意図的に「青き洋館」等とせずに、字余りを承知でブルーというカタカナを使われた
のでしょうか? 

81	整備士の遅き昼餉や蝉時雨

 何の整備士なのか気になりました。今時、蝉時雨の降るような屋外で昼食を取る職場
があるでしょうか? 熱中症にならないか、心配です。

 伊藤範子氏評================================

自動車か鉄道車輛の整備でしょうか。蝉時雨に囲まれて、汗を流し時間に間に合うよう
に精一杯働いた人の様子が浮かびます。

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82	風なくて噴煙どこへ芋の花

 作者の、噴煙に関する心配と、なかなか見られない里芋の花との取り合わせが、いま
一つピンと来ませんでした。

83	砂利道の西回りバス蝉時雨

 「西回りバス」が何を意味しているのか、よく分かりませんでした。西回り、東回り
は、この句にとって重要事項なのでしょうか?

84	地下足袋の足裏しなやか草いきれ

 地下足袋の裏はゴム底になっていますので、しなやかと言えばしなやかでしょうが、
わざわざ言うほど特徴的なことでしょうか? 草いきれを感じるところで地下足袋を履
いてすることと言えば、草刈りや草むしりが思い浮かびますが、これらはそれぞれ独立
した季語になっていますね。

85	暁天や一番蝉のかすれ声

 一番鶏という言葉は有りますが、一番蝉という言い方もあるのでしょうか?また、そ
れが季語となるのかどうか、疑問に思いました。夜明けから鳴く蝉というと、蜩ではな
いかと思いますが、掠れた蜩の声は思い浮かびませんでした。

86	湿っぽい小風吹き抜け夏座敷

 「湿っぽい小風吹き抜け」は、じめじめとしてあまり気持ち良さが感じられず、から
りと開け放った夏座敷に不似合いに感じられました。また、小風(微風)が吹き抜けると
いう日本語表現も、ちぐはぐな感じがしました。

87	盆用意箸も作りし父のこと

 句意がよく分かりませんでした。故人となられたお父様のことを思い出しておられる
のでしょうか?

88	新涼を受けて傘寿の感謝かな

 「新涼を受けて」の意味が分かりませんでした。誰かから、新涼の挨拶を受けたので
しょうか?

89	山の日やヤッホーと孫に返し人

 「返し人」の意味が分かりませんでした。「返せし人」でしょうか?

90	初生りのオクラひとつを分かち食ぶ

 家庭菜園かベランダの鉢植え等でしょうか? やっと実った一本のオクラを、大事に
分け合って食べているご夫婦の姿が見えます。刻んで納豆と和えたりしたのでしょうか?
初物なので、より滋養が感じられたと思います。

91	嬰児のよちよち両手にねこじゃらし  

 子どもの手にねこじゃらし(エノコログサ)というのは、類想が多いように思います。
また、「よちよち」という形容もありきたりに思いました。

92	扇風機付きのベストをペンキ塗る

 最近よく見かける空調服のことと思いますが、「ベストをペンキ塗る」の意味がよく
分かりませんでした。ベストにペンキを塗っているわけではないと思いますが…。

93	幼子の泣き顔のごと?(エイ)の腹

 エイの腹は、人間の顔のように見えますね。私には、どちらかというと、笑い顔に見
えます。いずれにしても、腹の様子を顔に喩えただけでは、句材として浅いと感じます。

94	キスしては砂に隠るるチンアナゴ

 手元の歳時記では、あなごについて「アナゴ科の魚の総称だが、真穴子の通称とする
のが普通。[角川 合本俳句歳時記 第四版]」とされており、チンアナゴが季語となるか
は疑問です。

95	星帰る高嶺の花に雫置き

 綺麗な句ですが、季語は何でしょうか? 花(桜)ではないと思いますが・・。

96	出しそびれ残暑見舞を書く夕べ

 出しそびれた残暑見舞いを夕方に書いているということに、詩情はあるでしょうか?
 また、立秋前に出さなくてはならない暑中見舞いと違い、残暑見舞いは暑さを感じる
うちは送っても良いとされていますので、まだまだ出しそびれてはいないと思います。

97	丸き背の祖母のまろび寝白磁枕

 私は実際に使っている人を見たことがありませんが、暑い時には陶器や磁器の枕がひ
んやりとして良さそうですね。上五中七は、「転び寝の祖母の丸き背」としたいと感じ
ました。

98	入相の鐘に急かるる草むしり

 夕方の鐘が聞こえる時分になっても、まだ草むしりが終わらない焦燥感。暑い日中を
避けて、夕方近くになってから始めたのでしょうが、もう少し早く始めていれば良かっ
たという後悔の念が伝わります。

99	父母と話したきこと敗戦忌

 戦争については、多くの人が、それぞれ胸の内にいろいろなものを抱えていることで
しょう。それを両親と話してみたいと思った時、両親がいない寂しさ。

100	ワンピースの水玉の揺れ涼しかり

 「水玉のワンピース」の揺れではなく、「ワンピースの水玉」の揺れに着目したとこ
ろが、作者の観察眼の鋭さですね。

101	吊り橋へと潜り抜けたる蝉時雨

 上五は、字余りとせずに「吊橋へ」で良いのではないかと思います。

102	靖国に少年兵や終戦日

 靖国神社には、少年兵の御霊も祀られているのですね。靖国と終戦日は、付き過ぎの
ように感じました。

103	掌の粒の重みや葡萄房

 葡萄を持った時に感じるのは、粒の重みというより、房の重みでは無いでしょうか?
「手に受けし房の重みやマスカット」等の方がしっくり来るように思います。

104	修行僧歩む足もとさやかなり

 「さやか」は、秋の清々しさを言う言葉ですが、修行僧の足元のどんなところにそれ
を感じたのでしょうか?

105	逆転打かち割り氷ガリと噛む

 甲子園球場名物のかちわり氷でしょうね。口に含んだ氷を噛む際のオノマトペとして
ガリと」は平凡ですので、「噛み砕く」等、もう一工夫欲しいと思いました。

106	黒い雨あびた婆やの平和祭

 実際に被爆された方の思いは如何ばかりかと思います。「婆や」は年配女性の使用人
を言う言葉だと思うのですが、現在そのような人がいるのか、疑問に思いました。

107	喜寿迎ふ竹馬の友へ夏見舞

 竹馬の友ですから、作者もほぼ同年齢ですね。暑さに負けず、お互いまだまだ頑張ろ
うという気持ちで認められたのでしょうね。

108	香ばしく焼けたるパンや今朝の秋

 季語が活きています。焼きたてのパンの描写として、「香ばしく」は真っ当なのです
が、何かもう一工夫欲しいと思いました。

109	金木犀香るや夜の美術館

 通常美術館は夜は閉館していると思いますので、作者は美術館の外にいるのでしょう。
季節になるとそこここで香る金木犀も、美術館の前だとちょっと特別な感じがするので
しょうか?

110	新涼や雀蜂の巣軒下に

 新涼の爽やかさと、雀蜂の巣の不気味さがミスマッチのように感じました。新涼は
秋、蜂の巣は春の季語です。

111	梅酒酌む琥珀色した2年物

 梅酒はたいてい琥珀色ですね。二年物というのも、そう珍しくはないと思います。

112	青田走る訛りなつかし在来線

 上五、下五の字余りが気になりました。

113	ほのかなる沖の漁り火星月夜

 漁火は、沖にほのかに見えるものです。「漁火の」は「ほ」「ほのか」の枕詞になっ
ています。

114	表札は夫の名のまま門火焚く

 門火を焚きながらふと気づいて、改めてご主人を偲んでおられるのでしょう。上五中
七が、詩の言葉としてはちょっと生々しい感じがするので、「表札に遺る夫の名」等、
推敲するとさらに良くなると思います。

115	旧友(とも)来り西瓜を玉で買ひにけり

 「来り」「けり」と、切れが二つあるので、句が二つに割れてしまっています。

116	鬼酒(おにぎす)に檸檬ひときれ宵も過ぎ

 網走番外地という歌に、「きすひけきすひけきす暮れて」という歌詞があったのを思
い出しました。荒っぽい酒に檸檬、それも丸絞りでなく一切れとは、ずいぶんお洒落で
すね。

117	 潮騒や夜の浜木綿匂ひ立つ

 浜木綿は夕方から夜にかけて咲き、良い香りを漂わせます。潮の香がよいアクセント
になっていますね。

118	 西日射す築四十年の四畳半

 「西日射す九尺二間に太っちょの背なで児が泣く飯が焦げつく」という狂歌を思い出
しました。

119	蛇口が馬鹿みたい八月十五日

 面白い・・というか、斬新な句と思いましたが、「蛇口が馬鹿みたい」の意味がよく
わかりませんでした。

120	催涙雨次の約束せぬ空港

 句意がよくわかりませんでした。作者と恋人を織姫と彦星に喩え、空港での別れを詠
んだのでしょうか?

121	尾根を行く小さきリュックや雲の峰

 テントなどは持たない、気軽な日帰り山行でしょうね。軽快で楽しそうです。

 奥山ひろ子氏評===============================

 お子さんのリュックでしょうか。リュックと、雲の峰が合っていると思います。

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122	雪渓を横切る猿を見てをりぬ

 わざわざ「見てをりぬ」と言うほど、見ていたことに特別な意味があったのでしょう
か?

123	向日葵や病癒えしと友来る

 明るい向日葵が、快癒の象徴のようですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 病気だったことで、不安も生じたのでしょう。病から解放されふつうの生活に戻る喜
びにあふれていました。

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124	立葵下校の児らを見守りぬ

 微笑ましい句ですが、「下校の児らを見守りぬ」という見立ては、作者の自己満足に
感じられます。立葵と子供たちを素直に写生した方が、良い句が得られるように思いま
す。

125	下脹れ並びし籠の無花果よ

 無花果の形状を下脹れと表現したことはわかりますが、それが籠に並んでいる様子の
どんな点に、作者は感動を感じたのでしょうか?

126	あの朝も生活はありし原爆忌

 原爆忌は、今となっては特別な日ですが、その日は誰も特別な日になるとは思わず、
当たり前の生活を送っていたのですね。今日も昨日の続きであり、明日も今日の続きに
なるだろうと・・・。

127	軽やかに上がる花火の重低音

 花火とはそういうものですね。

128	凌霄花古希の着こなす江戸小紋

 凌霄は、真夏の空に似合う花です。そんな暑い中でも、着崩れせず粋に着物を着こな
しているご年配の様子が浮かびます。

129	とんぼうを追へばとんぼう増えにけり

 わかります。「とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな(中村汀女)」の句を思い出しま
した。

 伊藤範子氏評================================

同じ経験があります。見つけて追っていったら次々に蜻蛉が湧いてきました。シンプル
ながら共通の懐かしい体験を感じさせる句ですね。

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130	夏見舞君には空の写真集

 なかなか粋な夏見舞いですね。「君」が誰かが気になります。

 伊藤範子氏評================================

夏見舞は手紙だけでなく物品のやり取りも含まれるとのこと。同じ文面の葉書などでは
なく、特別に選んだものということ。類句がなく、爽やかで、送られた相手も嬉しく見
入ったことと思います。

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131	大南風俄か庭師を悩ませり

 俄か庭師は作者自身でしょうか? 強風が吹くので、庭仕事がしにくいというだけで
は、句材として物足りないと思いました。


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