|
【
第314回目
(2026年2月)
HP俳句会 選句結果】
|
 |
| 【
酒井とし子
選 】 |
 |
| 特選:
筆先の割れる写経や余寒なほ
|
ようこ(神奈川県)
|
|
島国の湖に島あり霞立つ。
|
大原女(京都)
|
|
ささくれの指に残れり寒さかな
|
たまえ(京都)
|
|
春近き部屋パソコンの起動音
|
直樹(埼玉県)
|
|
小流れの音より春の立ちにけり
|
筆致俳句(岐阜市)
|
|
春めくや赤フレームの眼鏡買ふ
|
如月庵(岐阜県)
|
|
老梅や旧家に残るつるべ井戸
|
安楽(岐阜県)
|
|
みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
|
水鏡(岐阜県)
|
|
二月や期限切れなる備蓄水
|
石塚彩楓(埼玉県)
|
|
突堤に並ぶ釣り人鳥帰る
|
惠啓(三鷹市)
|
|
|
|
 |
 |
| 【
武藤光リ
選 】 |
 |
| 特選:
御手水に小さき青空梅三分
|
蝶子(福岡県)
|
|
寒夕焼指切りをして転校す
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
出航の船に日矢差す菜の花忌
|
よりこ(名古屋市)
|
|
小流れの音より春の立ちにけり
|
筆致俳句(岐阜市)
|
|
華厳寺の戒壇めぐり余寒なほ
|
筆致俳句(岐阜市)
|
|
湯に放つ若布の緑目に沁むる
|
ようこ(神奈川県)
|
|
老梅や旧家に残るつるべ井戸
|
安楽(岐阜県)
|
|
みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
|
水鏡(岐阜県)
|
|
二月や期限切れなる備蓄水
|
石塚彩楓(埼玉県)
|
|
日向ぼこ夫と二人のティータイム
|
小豆(和歌山市)
|
|
|
|
 |
 |
| 【
奥山ひろ子
選 】 |
 |
| 特選:
ほろ酔いの父が読み手のかるた取り
|
飴子(名古屋市)
|
|
紅梅のぽつと弾ける日差しかな
|
雪絵(前橋市)
|
|
畔を焼く野良着の匂ふ兜太の忌
|
久保田山蛾(栃木県)
|
|
「よっしゃー」と拳突き上げ合格す
|
貝田ひでを(大阪)
|
|
寒夕焼指切りをして転校す
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
うつすらと海の蒼吐く蜆汁
|
原洋一(岡山県)
|
|
筆先の割れる写経や余寒なほ
|
ようこ(神奈川県)
|
|
淡雪や少年野球の卒部式
|
蝶子(福岡県)
|
|
おぼろ夜や枕元にはランドセル
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
日向ぼこ夫と二人のティータイム
|
小豆(和歌山市)
|
|
|
|
 |
 |
| 【
渡辺慢房
選 】 |
 |
| 特選:
出航の船に日矢差す菜の花忌
|
よりこ(名古屋市)
|
|
唐梅や撫で牛少し微睡みぬ
|
みぃすてぃ(神奈川県)
|
|
寒夕焼指切りをして転校す
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
小流れの音より春の立ちにけり
|
筆致俳句(岐阜市)
|
|
筆先の割れる写経や余寒なほ
|
ようこ(神奈川県)
|
|
老梅や旧家に残るつるべ井戸
|
安楽(岐阜県)
|
|
みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
|
水鏡(岐阜県)
|
|
遠くまであおぞら薄紅の冬芽
|
石塚彩楓(埼玉県)
|
|
御手水に小さき青空梅三分
|
蝶子(福岡県)
|
|
淡雪や少年野球の卒部式
|
蝶子(福岡県)
|
|
|
|
 |
※(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)
今月の最高得点者は、ようこさん(神奈川県)でした。「伊吹嶺」二月号をお贈りいたします。おめでとうございます!
|
 |
【講評】
|
2026年2月伊吹嶺HP句会講評 渡辺慢房
1 ほろ酔いの父が読み手のかるた取り
微笑ましいお正月の風景ですね。下五は「歌留多かな」とすると句が締まると思いま
す。
奥山ひろ子氏評===============================
「ほろ酔いの父」がいいですね。お父様にとって幸せな時間で、ご家族のほのぼのとし
た雰囲気が感じられました。「ほろ酔ひ」でいただきました。
======================================
2 冬空に楓の実殻の揺れやまず
冬空を背景に楓(ふう)の実が寂しげに揺れている様子が浮かびます。
3 隠沼の無明を破る鴨の水脈
格調を感じる句ですが、隠沼(こもりぬ)の水脈が見えるという点に矛盾を感じてしま
いました。
4 雪かぶり黙して立てる地蔵かな
写生句ですが、「黙して立てる」は地蔵の描写としては当たり前のように感じました。
5 寒風に吹かれ山茶花いと強し
寒風と山茶花の季重なりです。また、「いと強し」と作者の主観をそのまま言わない
で、その強さが読者に伝わるようにしたいですね。
6 盆梅の老樹いまだに精気あり
「いまだに精気あり」は作者の主観で、報告的です。精気を感じた点を具体的に写生
して欲しいと思いました。
7 善哉忌環状線の駅メロディー
織田作之助の忌日ですから、この環状線は大阪でしょうね。ネットで調べたところ、
19の駅にそれぞれ違うメロディーがあるとのことですが、それが善哉忌とどう響くの
かがよくわかりませんでした。
8 鬼やらひ神社の下を電車過ぐ
事実・実景だと思いますが、それを作者がどう感じたのかが伝わって来ませんでした。
9 焼畑の里の猟夫の清め酒
景が見えるようで、なかなか見えて来ませんでした。焼畑の里より、焼畑と言った方
が具体的な景が見えると思います。清め酒も、猟夫が飲んでいるのか、銃や罠に振りか
けたりしているのか?
10 軽便の駅長室の冬帽子
この句も、状況がよくわかりませんでした。この帽子は、駅長が被る制帽で、冬用の
ものがあるのでしょうか? 帽子の主は駅長だと思いますが、帽子を置いてどこへ行っ
たのでしょうか? 作者はなぜ駅長室にいるのでしょうか?
11 唐梅や撫で牛少し微睡みぬ
撫で牛の傍に蝋梅が咲き、その香が漂っています。作り物の牛がまどろむなどという
ことは無いのですが、なんとなくそんな気にさせられます。
12 虎落笛今夜は月夜動く影
三段切れで、上五と下五が名詞で入れ替えても句が成り立つ、いわゆる「観音開き」
ですね。虎落笛(冬)と月夜(秋)の季重なりでもあります。
13 日向ぼこ日本は海に寝ころんで
雄大でユニークな発想ですね。
14 島国の湖に島あり霞立つ。
春の湖の景ですね。海(湖)と島の入子構造が面白いです。最後の「。」は打ち間違い
でしょうか。
15 ささくれの指に残れり寒さかな
中七「残れり」だとここで切れて、「ささくれが指に残った。寒い!」という意味に
なります。「残りし」とすると、「ささくれのある指に寒さが残った」という意味にな
ります。
16 電車止め飛行機を止め春一番
春の訪れを告げる嬉しい風のようですが、そういう実害もあるのですね。
17 春寒や信号無視の猫過る
逆に、信号を守る猫がいるのか?と思ってしまいました。
18 紅梅のぽつと弾ける日差しかな
「ぽつと弾ける」がいかにも春らしいですね。日差しの温かさが伝わります。
奥山ひろ子氏評===============================
作者は開花の瞬間をごらんになったのでしょう。「弾ける」は「弾くる」で瞬間を捉
えた措辞の生き生きした表現がいいと思いました。
======================================
19 料峭や風雷神の鋭き眼
春先の風はまだまだ冷たく感じます。風神雷神の眼光の鋭さに通じるものがあります
ね。
20 春兆す鬼怒の瀬音よ風音よ
鬼怒川は栃木を流れる清流で、茨城で利根川に合流します。作者はこの川の瀬音、風
音に春を感じたのですね。
21 早梅を愛でて里山振り返る
俳句では、「早梅や」と書けば、愛でている気持ち、様子が十分に伝わります。
22 脳天を突きて寒水素通りす
句意がわかりませんでした。何が脳天を突いて、寒水がどこを素通りするのでしょう
か?
23 寒風に哭く千年の大欅
大欅を吹き渡る風の音を、「欅が哭く」と表現されました。作者にはそのように聞こ
えたのでしょう。大欅だけで、樹齢の長い古木の様子が浮かびますので、「千年の」と
いう説明的な措辞は無くても良いように思いました。
24 春近き部屋パソコンの起動音
PCの起動音に春の気配を感じられたのですね。私には無い感性で、感心しました。
25 野焼なる消防団の煤け顔
「なる」は多様な意味・用法がある日本語ですが、この場合の意味がよくわかりませ
んでした。「野焼きである」という意味でしょうか? また、「消防団の煤け顔」を詠
むことで、作者は何を伝えたかったのでしょう? 滑稽? 慰労? 不快? 読者により解
釈が異なるような気がしました。
26 畔を焼く野良着の匂ふ兜太の忌
畔焼と兜太忌の季重なりです。
奥山ひろ子氏評===============================
「匂ひ」は畔焼の匂いと拝察しましたが、農業にも取り組んだ兜太を念頭に詠まれ、作
者の兜太への敬慕を感じました。「匂ひ」で切れを入れてもいいかと思いました。
======================================
27 陸海空のダイヤを乱す春一番
16番の句と同じ句意ですね。こちらはやや説明的に感じました。
28 「よっしゃー」と拳突き上げ合格す
合格を季語としている歳時記もあるようですが、入学試験以外の各種試験の合格もあ
りますので、はっきりとした春の季語を入れたいところです。例:春光に拳突き上げ合
格す
奥山ひろ子氏評===============================
合格を知った瞬間そのままを切り取られた印象で、うれしさが伝わってきました。
======================================
29 寒夕焼指切りをして転校す
再会を約す指切りでしょうね。冬の夕焼けが淋しく奇麗です。
奥山ひろ子氏評===============================
転校は切ないもの。その気持ちが「寒夕焼」の季語によく投影されています。
======================================
30 萌黄さすほつほつふふむ蕗のたう
蕗の薹の説明的に感じました。
31 うつすらと海の蒼吐く蜆汁
確かに蜆汁は青みがかりますが、蜆は海ではなく淡水または汽水に棲みますので、
「海の蒼」が気になりました。
奥山ひろ子氏評===============================
そうなんです。蜆汁は少し青味がかります。なるほど、「海の蒼」なのですね。詩的
表現がいいですね。
======================================
32 湖畔には万羽の鶴や宙鳴らし
「宙鳴らし」の意味がわかりませんでした。
33 上七軒幽けき路地へ牡丹雪
上七軒は、京都の古い花街とのことですね。「幽けき路地」は細い路地というような
意味でしょうか? 情景の見える句ですが、中七を「や」で切ると更に句が締まると思
いました。
34 冴返る皿取り落としたたく床
意味がよくわかりませんでした。床を叩いたのは、作者が取り落とした皿でしょうか?
作者でしょうか?
35 浮寝鳥時に柵越える夢
浮寝鳥が、時々は柵(しがらみ)を越える夢を見ているだろう・・という句意でしょう
か? 浮寝鳥は空を飛べますので、いつでも自由に柵を越えられると思います。
36 新調の車椅子にて老いの冬
「にて」とありますので、作者はこの車椅子に乗られているのだと思います。「老い
の冬」という淋しさがにじむ語句がありつつも、車椅子を新調されて快適になった静か
な嬉しさも伝わります。
37 大雪に村埋れんとしていたり
雪国では、年に何度もこういう景を見るのでしょう。
38 野遊びや母置き去りに掛けまはり
元気の良い子供ですね。「掛け」は「駆け」ですね。
39 出航の船に日矢差す菜の花忌
司馬遼太郎と言えば、歴史小説や紀行文学の大家で、上五中七がよく似合っています
ね。
40 春風のやうにタッチの駅ピアノ
「春風のやうにタッチの」の意味がわかりませんでした。「春風のやうなタッチの」
でしたら、ピアノの鍵盤のタッチの比喩表現かと思えるのですが…。ただし、この場合
でも春風は季語としては働かないと思います。
41 スマホ消え本の電車に受験生
「スマホ消え本の電車」の意味がわかりませんでした。
42 小流れの音より春の立ちにけり
水の音は、春を感じる音の代表格ですね。
43 華厳寺の戒壇めぐり余寒なほ
寒さの残る中での戒壇めぐりですね。引き締まった空気が感じられます。
44 筆先の割れる写経や余寒なほ
余寒の句が続きます。こちらは、筆先が割れて掠れた文字に寒さを感じたのですね。
奥山ひろ子氏評===============================
「筆先の割れる」がいい写生。文語は「割るる」ですね。季語と共鳴していると感じ
入りました。
======================================
45 湯に放つ若布の緑目に沁むる
生の若布は褐色で、熱湯に入れると瞬時に鮮やかな緑色に変わります。それは感動的
と言っても良いと思いますが、「目に沁むる」と主観を語らないで、作者の感じた感動
が読者に伝わるようにしたいですね。
46 絵らふそく雪の三寺参りかな
状況はわかりますが、「三寺参り」というがちょっと説明的に感じました。これを言
わずに、蝋燭と雪を具体的に描写して、三寺参りの様子を読者に伝えることができると
もっと良くなると思います。意味や状況が伝わらない句も困りますが、あれこれと説明
しすぎるのも良くありません。俳句では、読者の句を解釈する力を信じることも大切で
す。
47 新雪にあらたなる雪十日町
十日町は豪雪地帯で、積雪の被害も出ているようですね。「新雪にあらたなる雪」は
工夫がうかがえますが、やはり言葉の矛盾を感じてしまいました。
48 世の中へ目を剥く仁王冬木立
仁王像と冬木立の対比が良いと思いますが、「世の中へ目を剥く」が仁王の描写とし
ては浅いように感じました。
49 梅が香の伝へておりし風の向
きれいな句ですが、梅の香りが風に乗ってきたというだけでは、句材としてちょっと
弱いと思いました。
50 春めくや赤フレームの眼鏡買ふ
春と赤がやや「即き過ぎ」に感じました。
51 枝垂梅降り注ぐ如いのち咲き
「降り注ぐ如」は枝垂梅の形容だと思いますが、「いのち咲き」の意味がわかりませ
んでした。梅の花をいのちに喩えたのでしょうか?
52 まだ白き伊吹の嶺や春寒し
山頂にまだ雪が残っている=寒いという理屈を感じました。
53 老梅や旧家に残るつるべ井戸
できている句ですが、中七下五の描写で梅の木も老木であることはわかりますので、
上五にもう一工夫あると更に良くなると思いました。
54 秒針の音なき校舎浅き春
「秒針の音なき校舎」がよくわかりませんでした。逆に、常に時計の秒針の音が聞こ
える校舎というのがあるのでしょうか?
55 街は今蒼き沈黙冴え返る
「街は今蒼き沈黙」がわかりませんでした。どういう状況なのでしょうか?
56 鳥帰る遅延を告ぐる時刻表
時刻表は、定時運行の時刻が載っており、遅延の情報は書かれていない(事前には書
けない)と思います。
57 みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
これから成長が加速して行くことを予感させますね。
58 咳の子に昔話をして共寝(ともね)
風邪がうつらないようにしてください。
59 春だねと犬の呟く散歩かな
犬が人語を話すはずはありませんので、作者にはそう聞こえたということかと思いま
すが、ちょっと突飛な感じがしました。
60 濁りたるオリーブ油の香冴返る
オリーブ油は、冷蔵庫や寒い部屋などに置くと白く濁ったり固形化したりしますね。
ただ、その状態での香りを作者がどう感じたか、この句からは読み取れませんでした。
61 沁み渡る濯ぐ歯磨き余寒なほ
「沁み渡る濯ぐ歯磨」が良くわかりませんでした。歯を濯ぐときの冷たい水が歯に沁
みるということでしょうか?
62 遠くまであおぞら薄紅の冬芽
「遠くまであおぞら」という措辞はちょっと不思議な感じがしましたが、冬の澄んだ
空気が感じられます。空の色と冬芽の対比が良く、中七下五の句またがりも効果的に働
いていると思います。
63 二月や期限切れなる備蓄水
三月十一日が近づきますね。ローリングストックなどを上手に行って、備蓄品が期限
切れにならないようにしてください。
64 息詰めて舞う飛ぶ走る冬五輪
冬五輪が季語になるか気になりました。また、「舞う飛ぶ走る」選手が息を詰めるの
は無理があると思います。しかし、それは置いておいて、全体的に俳句というよりオリ
ンピックのスローガンかキャッチフレーズのように感じました。どれかの競技に着目し
て、感動した一瞬を切り取ってみては如何でしょうか?
65 サンドウィッチレタスで挟む蕗の味噌
蕗味噌は大好物で毎年自分で作りますが、サンドイッチに使うという発想は無く、驚
きました。今度勇気を出してやってみます。クリームチーズなども合いそうですね。
66 突堤に並ぶ釣り人鳥帰る
釣り人たちと鳥の関係が弱いように思いました。釣りをする人たちは、竿先や浮きな
どに注意を向けており、渡り鳥を気にする人は少ないような気がします。
67 眼と耳の老化の愁ひ蜆汁
上五中七は、個人的に非常に共感しますが、下五の季語がいまいちはまらず、いわゆ
る「季語が動く」ように感じました。
68 拝殿の太鼓どどんと春兆す
拝殿の太鼓は一年中同じ音で鳴ると思います。その中でどう春を感じられたのかが伝
わると良いと思いました。
69 傘に少し入れくれたる春ショール
春ショールを纏った人が、作者を傘に入れてくれたということでしょうか? 「少し」
とありますので、あまり雨が防げず、濡れてしまったのでしょうか?
70 梅まつり所々に投句箱
「所々に投句箱」は、写生というより報告に感じました。それを作者がどう感じたか
が、読者に伝わるようにして欲しいと思います。
71 もやもやの心に灯る黄水仙
心に思った想像上の黄水仙でしょうか? それは季語として機能しないと思います。
72 冬ざれや床屋裏口の手拭い
「床屋裏口の手拭い」の景が浮かびませんでした。何のために、裏口のどこにどのよ
うに置かれて(吊るされて?)いる手拭いなのでしょうか?
73 左手を離れる兄よその手に弟
状況がわかりませんでした。作者が兄弟の兄と左手を繋いでいて、その手を放して今
度は弟と手をつないだということでしょうか?
74 御手水に小さき青空梅三分
「小さき青空」と「梅三分」が良いですね。細かい部分ですが、上五の助詞は「に」
以外にも使えるものがあります。どの助詞がベストか、よく検討したいですね。(にが
ダメと言っているわけではありません。)
武藤光リ氏評================================
映像がしっかりしている。
梅三分と小さき空が響き合い、肌寒い早春の神社が表出された。
======================================
75 淡雪や少年野球の卒部式
春の雪降る中でのラストゲームでしょうか。中八が残念ですね。
奥山ひろ子氏評===============================
「卒部式」というのがあるのですね。「淡雪」の季語がやさしく卒部する球児を包ん
でいるように思いました。
======================================
76 おぼろ夜や枕元にはランドセル
屋外の景と屋内の景が混ざっている点が気になりました。
奥山ひろ子氏評===============================
新入生あるあるですが、「おぼろ夜」という季語で夢やわくわくする気持ち、もやも
やする不安まで感じました。季語の力です。
======================================
77 節分を佳き日と嫁ぎはや幾年
「節分に嫁いだ」という事実を回想している句ですので、桜の絵の桜が季語にならな
いのと同様、この場合の節分は季語になりません。
78 日向ぼこ夫と二人のティータイム
微笑ましいですね。上五と下五を入れ替えても成り立つ、いわゆる「観音開き」なの
が残念です。
奥山ひろ子氏評===============================
仲良しご夫婦を写生すると、このような御句になるのですね。素敵です。
======================================
79 集金の近道険し笹子鳴く
状況がよくわかりませんでした。何の集金に、なぜ険しい道を歩いているのでしょう
か?
80 生姜湯の碗撫す吾の余生まだ)
余生はまだ来ない? 余生はまだ続く?
81 焼き芋を二個ふところに友見舞ふ
あまり深刻ではない怪我や病気なのでしょう。気の置けない友人と、一個ずつですね。
82 寒明けを待たずいそいそ鍬手入れ
いそいそに、早く畑に出たい気持ちが表れていますね。ただ、いそいそと言わずにそ
の気持ちがわかるようにすると、さらに良くなると思います。
83 待春の木曽馬砂浴び豪快
中七下五の破調が気になりました。豪快というのは作者がそう感じたということです
が、そうした主観を言わずにその気持ちを読者に伝えると良いと思います。
84 父の香は上の抽斗室の花
句の意味がわかりませんでした。温室の上段の引き出しに、お父様が愛用されている
(されていた?)コロンでも入っているのでしょうか?
85 凍てし朝いざ出陣と受験生
凍てる(冬)と受験生(春)の季重なりです。「いざ出陣」も受験生の描写として新鮮味
を感じませんでした。
86 朝焼けや一輪開く梅の花
朝焼け(夏)と梅(春)の季重なりです。「一輪開く」も梅の描写としてありきたりに感
じます。
|
【
第313回目
(2026年1月)
HP俳句会 選句結果】
|
 |
| 【
松井徒歩
選 】 |
 |
| 特選:
冬ざれや煙となりし恋の文
|
みぃすてぃ(神奈川県)
|
|
元日や母八度目の年女
|
田村幸之助(和歌山県)
|
|
玄関に熊の剥製榾明り
|
水鏡(岐阜県)
|
|
筆圧の衰えぬ師の年賀状
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子
|
安楽(岐阜県)
|
|
折鶴に初春の息吹き込めり
|
雪絵(前橋市)
|
|
幼子に羽子板市の手締めかな
|
雪絵(前橋市)
|
|
算盤の一玉重し夜半の冬
|
蝶子(福岡県)
|
|
廃校の錆びし鉄棒冬の草
|
蝶子(福岡県)
|
|
白色の紫色へ菊枯るる
|
まこと(さいたま市)
|
|
|
|
 |
 |
| 【
国枝隆生
選 】 |
 |
| 特選:
折鶴に初春の息吹き込めり
|
雪絵(前橋市)
|
|
去年今年二分遅れの掛時計
|
水鏡(岐阜県)
|
|
筆圧の衰えぬ師の年賀状
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子
|
安楽(岐阜県)
|
|
初山河夕日の中へ消え去りぬ
|
福山三歩(栃木県)
|
|
友とゐて言葉途切れて浮寝鳥
|
直樹(埼玉県)
|
|
人日や薬膳スープほの甘し
|
正憲(浜松市)
|
|
ごまめ噛むほど良き苦味これもよし
|
*町子(北名古屋市)
|
|
やり残すこと多かりし去年今年
|
佐藤けい(神奈川県)
|
|
日向ぼこ卒寿の友と解くパズル
|
かよ子(和歌山市)
|
|
|
|
 |
 |
| 【
玉井美智子
選 】 |
 |
| 特選:
算盤の一玉重し夜半の冬
|
蝶子(福岡県)
|
|
折鶴に初春の息吹き込めり
|
雪絵(前橋市)
|
|
友とゐて言葉途切れて浮寝鳥
|
直樹(埼玉県)
|
|
病床の心耳に届く除夜の鐘
|
後藤允孝(三重県)
|
|
人日や薬膳スープほの甘し
|
正憲(浜松市)
|
|
楪や終の棲家と決めし村
|
原洋一(岡山県)
|
|
白猫の鈴の音透ける霜夜かな
|
櫻井 泰(館山市)
|
|
ドローンの風切る羽音初大師
|
梦二(神奈川県)
|
|
風神の袋緩むや虎落笛
|
美由紀(長野県)
|
|
日向ぼこ卒寿の友と解くパズル
|
かよ子(和歌山市)
|
|
|
|
 |
 |
| 【
関根切子
選 】 |
 |
| 特選:
初夢や七福神と酌み交す
|
惠啓(三鷹市)
|
|
蒙古船沈む港や浮寝鳥
|
田村幸之助(和歌山県)
|
|
元日や母八度目の年女
|
田村幸之助(和歌山県)
|
|
霜晴や旧陸軍の格納庫
|
ゆきえ(和歌山市)
|
|
獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子
|
安楽(岐阜県)
|
|
負けん気が身を乗り出してカルタ取り
|
大原女(京都)
|
|
折鶴に初春の息吹き込めり
|
雪絵(前橋市)
|
|
幼子に羽子板市の手締めかな
|
雪絵(前橋市)
|
|
正論は少し退屈福笑
|
久保田晋一(栃木県)
|
|
冬ざれや煙となりし恋の文
|
みぃすてぃ(神奈川県)
|
|
|
|
 |
※(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)
今月の最高得点者は、雪絵さん(前橋市)でした。「伊吹嶺」一月号をお贈りいたします。おめでとうございます!
|
 |
【講評】
|
2026年1月伊吹嶺HP句会講評 松井徒歩
沢山の御投句ありがとうございました。
1 冬晴れや俳句手ほどき探しおり
具体的に何をしているのか分からないのが残念です。
2 紺碧の色無き風に柿たわわ
紺碧は空の色でしょうか? 省略のし過ぎだと思います。
(国枝評)「色なき風」「柿たわわ」のどちらも強い季語で季重なりが気になりました。
3 燦燦と自然を囃す冬の朝
具体的な景色が見えないのが残念です。
4 近道のなき人生や老いが世ぞ
若い人に何か言いたいのか、自分に言い聞かせているのか? 教訓めいた文は俳句には
向いていないと思います。
(国枝評)人生訓として見れば,このとおりですね。でも季語は何でしょうか。「老い
が世」は季語でないと思いますが。下五は「老いの春」でもよかったと思います。
5 そこかしこ聖樹眩き夜警かな
クリスマスの光の裏側で、黙々と務めを果たす夜警の寒さ。一刻も早く我が家の暖かさ
に触れたいという気持ちが伝わってきます。
6 髭剃りて顎一撫での去年今年
う〜ん?季語が効いているのか効いていないのか自信がないです。
7 蒙古船沈む港や浮寝鳥
魅力的な句ですが、「沈む」は過去形の方が良いように思いました。
8 元日や母八度目の年女
元日の清々しい空気の中で、九十六歳という高齢を迎えた母の命の輝きを讃える句です
ね。
9 去年今年二分遅れの掛時計
いつも二分遅れている掛時計。この前時間を合わせたばかりなのに、テレビが新年の
訪れを告げた瞬間、ふと壁を見るとやはり二分遅れている。そんな時計のマイペースに、
可笑しみを感じます。
国枝隆生氏選================================
二分遅れたままの時計が、年末年始にまたがっていったという発見が面白い。
======================================
10 玄関に熊の剥製榾明り
日常の照明では味わえない原始的な灯りによって、熊の剥製がいっそう際立って見えま
す。
11 霜晴や旧陸軍の格納庫
かつての軍事施設という歴史背景が、「霜晴」の空気感と重なることで、静謐な平和へ
の祈りを感じました。
12 数へ日や仮退院の足で灸
慌ただしい年の瀬の仮退院。まずは灸で身体を整え、少しでも楽になりたいと願う作者
の、切実な実感が伝わってきます。
13 筆圧の衰えぬ師の年賀状
衰えぬ筆圧に託された師の矜持。それに応えるように、安堵の中にも居住まいを正す
弟子の尊敬の念が伺えます。
国枝隆生氏選================================
毎年師と年賀状のやり取りをしているのだろう。毎年師の筆圧を確認して,師が元気
なことを確認しているのだろうという安堵感をうまく表現している。
======================================
14 獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子
二句目で旧仮名使いですので、一言・・・「笑う子」は「笑ふ子」ですね。
国枝隆生氏選================================
よく獅子舞に頭をかまれるという句を見かけるが、この句の「笑う子」「泣出す子」
と対比したのが面白い。
======================================
15 ため口をけふは改め門礼者
当たり前かもしれませんが、そう言われてみればみなそうですね。正月独特の空気で
しょうか。
16 故郷は初松籟の城下町@豊後竹田市
「故郷」は「城下町」に直接繋げたほうが良いように思います。
17 若菜野や宿場町なほみどり濃し@五十三次石部宿
みどりが濃いのは「若菜野」なのか?宿場町の他の何かなのか?「なほ」が分かりにく
いです。
18 年新た打ち捨てられし鉢実る
捨てられた鉢に何かの植物が育っているのだと思いますが、「鉢実る」は少々乱暴な
言葉だと思いました。
19 古都の春日本語聞かぬ街歩き
オーバーツーリズムですね。よく分かる句です。
20 年玉に手刀切る子あどけなや
手刀があどけないかなあ?と思いました。むしろませているような感じがしました。
21 負けん気が身を乗り出してカルタ取り
「身を乗り出して」という具体的な描写から負けん気の強さが伝わってきます。
22 焼芋を友に手提げの昼下がり
昼下がりという気ままな時間に、温かな友の存在がなんとも心強いですね。友人のとこ
ろへ行くのだと思いますが焼き芋が作者の友とも感じられました。
23 ほんのりと灯る自販機冬夕焼
冬夕焼の儚さと自販機の孤独な光。そこに作者の心情が映し出されているように感じら
れました。
24 折鶴に初春の息吹き込めり
祈りの象徴である折鶴に、一年の始まりを告げる清らかな空気を吹き込む作者。その一
息は、折鶴に命を宿らせるかのようで、作者の凛とした矜持が伝わってきます。
国枝隆生氏特選================================
正月に飾るため、折り鶴を作ってどこかへ飾ろうと思ったのでしょう。そのために息を
吹き込んだ。その息が今年初めての息だったとの気づきがよかったと思います。「初春
の息」が息づいています。
======================================
25 幼子に羽子板市の手締めかな
幼子が目を丸くしている様子が目に浮かびました。
26 童(わっぱ)とのほどよき距離や寒鴉
「ほどよき距離」にどういう共感を見出せばよいのか分かりませんでした。
27 窓辺にはモルゲンロート前穂高
前穂高岳ですと上高地から涸沢辺りの山小屋でしょうか。感動的な光景ですね。でも
モルゲンロートは季語でしようか?
28 初山河夕日の中へ消え去りぬ
「夕日の中へ」という感覚が独特。。
国枝隆生氏選================================
今年初めて見る山河の景色が夕日に消えた。はや元日の1日が終わったと作者は感慨
に浸っているのだろう。
======================================
29 初晴や瞳を光に慣れさせる
晴れていて光が強いから、という因果関係を感じました。
(国枝評)中八を何とかしたいと思いました。このままで中七にするなら「初晴やまぶ
しさを目に慣れさせて」となるのでしょうか。
30 鍬始寡黙の父に似る晩年
かつては親に反目したかもしれない人生ですが、晩年の「鍬始」が父と子を深く結びつ
けたのですね。
31 友とゐて言葉途切れて浮寝鳥
「浮寝鳥」の前に切れがあればもっと良くなったと思います。
国枝隆生氏選================================
ともに寡黙な友達なのだろう。話が途切れたひととき、ともに浮寝鳥を見ている情景
が黙っていても二人の心が通っているのが見える。
======================================
32 吾子に酒注ぐ嬉しさや新障子
父親の幸せな気持ちと、新しい障子から差し込む明るい冬の光が、調和しています。
33 交番の出入りの多き去年今年
交番の出入りが多いのはどちらかと言えば年末ではないでしょうか。
34 病床の心耳に届く除夜の鐘
病に臥せっていると、目を開けていても視線は漂うばかりですが、その分、耳は研ぎ澄
まされ敏感になります。そこに響く除夜の鐘の音は、心に寄り添い、慰めてくれるかの
ようです。
35 パパ目掛け土手駆け降りる冬帽子
「パパ」は父あるいは親の方が良いようにも思いますが。パパのほうが親子の親近感
が伝わるかもしれませんね。
36 雪催ショートパンツが颯爽と
ショートパンツの人は男女どちらかは示されていませんが、女性の方が絵になりますね。
37 若水の薬効を浴ぶ臓腑かな
「浴ぶ」は終止形なのでここで切れてしまいかな止めに繋がりません。連体形にして
「薬効浴ぶる臓腑かな」でどうでしょうか。
(国枝評)下五を「かな」で止めるなら、「若水の薬効浴ぶる臓腑かな」と中七は連体
形にしたいところです。
38 正論は少し退屈福笑
季語が離れすぎているように思います。
39 初春の光へ子らは手をつなぎ
手をつなぎ何をしようとしているかよく分かりませんでした。
40 滝凍る今生の時止めては
滝が凍り、轟音が消えた無音の世界。作者の意識は、現実の時間を超え、静止画の中に
没入しているかのようです。
41 寒月や灯らぬ家に帰る道
誰もいない家へと向かう心細さが、凍てつくような「寒月」の光に照らし出され、寂し
さがより一層際立ちますね。
42 冬ざれや煙となりし恋の文
形として残る灰ではなく、消えゆく「煙」として描かれたことで、恋が完全に終わった
という切なさが際立ちます。
43 山始巨岩を祀る幣白し
悪くない句ですが、「幣白し」は常套すぎると思いました。
44 人日や薬膳スープほの甘し
人日にちなんで、七種の素材を贅沢に使ったスープの情景が目に浮かびます。
国枝隆生氏選================================
「人日」の時候の季語と事柄を取り合わせるのは難しい。この句は松の内も終わろう
としている日に飲んだ薬膳スープとの取り合わせが成功した。
======================================
45 煤逃や盤の王将歩に突かる
大掃除の喧騒を逃れ、せっかく将棋に興じているものの、盤上では王将が歩に突かれる
という皮肉な窮地に立たされているのですね。
46 唄うてやなほ唄つてや忘年会
皆で夜を徹して楽しんでいるような、賑やかで熱気あふれる一幕ですね
47 名にし負ふ三寺まいり寒の月
「名にし負ふ」ではなく三寺まいりが目に見える描写をしてほしいです。
(国枝評)上五の「名にし負ふ」は写生というより慣用語の印象を受けました。
48 蹲踞を透ける朽葉や蝉氷
「蹲踞を」ではなく「蹲踞の」のほうが良いように思います。
49 若水や喝入るるごと喉過ぐる
若水という、神聖な水に喝を入れられた作者。喉元を過ぎる冷たさに、心身が瞬時に
引き締まるような緊張感が伝わってきます
50 竹刀持つ握りこぶしや淑気満つ
新春の清らかな淑気が満ちる中、竹刀を握りしめる拳に、新しい年に懸ける並々なら
ぬ決意を感じました。
(国枝評)元気のある新年の句となりました。
51 新年会おはこの唄を唄はれて
自分の十八番の唄を、先に誰かに歌われてしまった。そんな残念な気持ちを抱えつつ
も、ここはめでたい新年会の席。無念さを抑えて、さて、代わりに何を歌おうかと思案
する。そんな心の余裕と微かな悔しさが混ざり合う俳味のある句ですね。
52 母と来し宮に元旦子を連れて
「元旦」は上五に持ってきて作り直したほうが良いように思いました。原句では事実
の報告のような感じです。
53 渇筆の墨の掠れの淑気かな
「渇筆」は「掠れ」の説明ですので省略したほうがよいように思います。
54 楪や終の棲家と決めし村
「終」という言葉を使いながらも、そこには新たな人生への希望が満ちています。
「楪」という再生の季語が、この地で新しく生きていく作者の決意を引き立てていま
す。
(国枝評)新年に楪を飾り、改めて今の家が終いの住処と決めたのでしょう。ただ
「村」はなくても分かると思いました。
55 初鏡ですねと笑う美容室
きっと気心の知れた馴染みの美容師さんとの会話なのでしょう。美容室の大きな鏡を
「初鏡」と捉えた、作者の遊び心が良いです。
56 早起きの鳥が見つける初氷
一茶の俳句に通じるものを感じました。
57 冬の日に追はれ少年帰りけり
「冬の日に追はれ」は主観が強すぎてよく分かりませんでした。
58 手の甲にコメと書かれし水つ洟
買い物のメモでしょうか。「水つ洟」という意外な季語が面白いですね。
59 朽ち雨戸硝子戸鳴らす寒波来る
戸が二つ登場するのが気になりました。
(国枝評)三段切れの句ですが、こういう場合、リズム感が切れ切れになるような印象
になると思います。
60 オイルヒーターに触れ指折る句作
十七音に収まってはいますが散文調の調べが気になりました。
61 ごまめ噛むほど良き苦味これもよし
しみじみとした句。
国枝隆生氏選================================
正月のごまめを食べながら、自分で肯っているのが面白い。
======================================
62 ロゼワイン笑顔を添へて女正月
ロゼワインがこの句の中でどう効いているのかよく分かりませんでした。
63 柔らかき雪の縁取る緋の欄干
素直に詠っていますが、やや報告気味でしょうか。
64 静寂や雪しんしんと禅の庭
「静寂」と「しんしん」に意味の重なりがあると思います。
65 テールランプの奔流に乗る師走かな
推敲の努力をして上五に収めてほしいです。「乗る」は省略できるので語順を入れ替
えれば定型に収まると思います。
66 白猫の鈴の音透ける霜夜かな
「鈴の音透ける」がよく分からないので、読者の共感を得るような描写をしてほしい
です。
67 算盤の一玉重し夜半の冬
「一玉重し」という表現に、人生の歩みの一コマが重なるようですね。
68 廃校の錆びし鉄棒冬の草
「錆びし鉄棒」は、人の去った廃校の孤独を象徴しているようです。その一方で、足
元に広がる冬の草には、なお続いていく自然の逞しさが感じられます。
(国枝評)冬草がはびこっている校庭の内鉄棒に着目したのがよかったと思いました。
69 大吉の神籤転び来初詣
「転び来」がよく分かりません。転がり込むというようなことでしょうか。
70 鯛焼や身をくねりつつ参拝路
鯛焼を手に持って人ごみを避けつつ行く初詣でしょうか。「身をくねりつつ」が面白
いですね。
71 雪帽子被(ひ)されしおはよ庭木達
「ひ」という読み方が疑問でした。「被さりし朝」ではどうでしょうか。
72 寒波来て置きみやげして銀世界
助詞の「て」が二つあると「何々してこうなった」という説目になりがちですから、
一つだけにしたほうが良いと思います。
73 寒中の風呂追焚の二度三度
中七は「風呂の追炊き」のほうが調べもよく、切れも生じて良いように思いました。
74 白色の紫色へ菊枯るる
純白だった菊が、枯れゆく過程で淡い紫色を帯びていく。その微妙な色彩の移ろいに、
生命が尽き果てる静かな美しさを感じました。
75 数へ日の会報作り揃はぬ稿
「揃はぬ稿」がよく分かりません。なかなか届かない原稿があるということでしょう
か?
76 買初はセールの俳句中古本
「俳句中古本」では本の姿が見えてきませんでした。
77 寒の宵運ぶ水桶人の影
三段切れのように思えます。
78 ドローンの風切る羽音初大師
初大師の撮影にドローンが飛んでいたのでしょうか。いかにも現代の句ですね。
79 手本なき老後を生きる大旦
年が改まっても世情が不安で老後も心配ですね。
80 武者凧を吾子へと抱え風の町
「風の町」のイメージが湧きませんでした。
81 初夢や七福神と酌み交す
七福神がまるで友達のようで面白いですね。作者の身近に七福神の誰かに似た友人が
いるのかもしれないと想像が膨らみます。
82 初明り考妣の額に合掌す
元日の夜明けの中、亡き父母の遺影に静かに手を合わせる姿に、感銘を受けました。
83 やり残すこと多かりし去年今年
身に沁みました。
国枝隆生氏選================================
一年を振り返って,反省しつつ新年を迎えたのであろう。
======================================
84 大根切る煮物を好む齢となり
ありのままの自分を肯い、慈しむような姿に心惹かれました。
85 元日の薄暮の白き月仰ぐ
「元日や手を洗ひをる夕ごころ」に通じるものを感じました。
86 寒夜覚め妖怪のごと庭木の影
語順を変えたりして下五の字余りを解消してください。
87 指先の温みに融ける薄氷
「温み」は氷が融ける理屈になりますから省略したほうが良いと思います。
88 湯上りの柔き踵にひび薬
柔らかい踵でしたらひび薬はいらないように思いました。
89 茜空老父母揃い初詣
「揃い」ですと軽い切れが生じますので、「揃う」のほうが良いように思います。
90 風神の袋緩むや虎落笛
「虎落笛」がどう効いているのかよく分かりませんでした。
91 日向ぼこ卒寿の友と解くパズル
共に歳を取った良き友。かくありたい。
国枝隆生氏選================================
友と言うことは作者も卒寿に近いのであろう。ともに老いながらパズルに興じている。
年を取ってもいつでも友達であることがほほえましい。
======================================
92 日溜まりやふくら雀の並ぶ岸
報告気味の句のように感じました。
|