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選句結果
     
第268回目 (2021年9月) HP俳句会 選句結果
【  松井徒歩 選 】
  特選 秋しぐれ敷藁厚く眠る牛 きょうや(東京)
   草紅葉埴輪はいつも笑みうかべ 田中洋子(千葉市)
   利根川の入日に稲を刈り急ぐ      いまいやすのり(埼玉県)
   対岸の宿の灯うるむ霧時雨 雪絵(前橋市)
   莢豌豆蒔きて晩酌雨の音 まこと(さいたま市)
   澄みし眼の落蝉風に転がりぬ 野津洋子(愛知県)
   重陽の奈良の大仏聞し召す 周桜(千葉県)
   淡海の空も水面も鰯雲 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   伊吹嶺の翳りなき日や鳥渡る 安楽()
   優勝と友の一報月見酒 蝶子(福岡県)
【  高橋幸子 選 】
  特選 またもとの一人の暮し燕去ぬ 奈良野遊山(奈良市)
   盆まいり父にコーヒー義父に酒 小粒(和歌山市)
   江戸川に残る渡し場ばつたとぶ      美佐枝(千葉県)
   読み止しの三国志読む夜長かな 筆致俳句(岐阜市)
   よく跳ぬる水切り石や鰯雲 さいらく(京都)
   秋しぐれ敷藁厚く眠る牛 きょうや(東京)
   淡海の空も水面も鰯雲 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   若武者の白鉢巻や菊人形 櫻井 泰(千葉県)
   伊吹嶺の翳りなき日や鳥渡る 安楽()
   白粉花や稚児腕に深眠り 飴子(名古屋市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 新涼や万歳をして眠る孫 みなと(旭川市)
   草紅葉埴輪はいつも笑みうかべ 田中洋子(千葉市)
   爽やかや女医の小さきイヤリング      大原女(京都)
   逆さまに山を転がす芋の露 茫々(和歌山市)
   江戸川に残る渡し場ばつたとぶ 美佐枝(千葉県)
   帯のごと草のうねりや野分あと ようこ(神奈川県)
   木曽駒のやさしきひとみ蕎麦の花 筆致俳句(岐阜市)
   よく跳ぬる水切り石や鰯雲 さいらく(京都)
   一枚の葉先へ走る露の玉 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   淡海の空も水面も鰯雲 蒼鳩 薫(尾張旭市)
【  坪野洋子 選 】
  特選 よく跳ぬる水切り石や鰯雲 さいらく(京都)
   廃屋の闇を深めし虫の声 田中勝之(千葉市)
   曼珠沙華手桶を提げてのぼる坂      みぃすてぃ(神奈川県)
   流星や近くて遠き吾娘の家 みのる(大阪)
   澄みし眼の落蝉風に転がりぬ 野津洋子(愛知県)
   亡き夫の顔に似ているいぼむしり かつこ(東京)
   秋しぐれ敷藁厚く眠る牛 きょうや(東京)
   台風の間もなくくるぞ風見鶏 きょうや(東京)
   小鳥来る浜辺に光るシーグラス 石塚彩楓(埼玉県)
   伊吹嶺の翳りなき日や鳥渡る 安楽()

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、きょうやさん(東京)、さいらくさん(京都)でした。「伊吹嶺」9月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


        2021年9月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

沢山の御投句ありがとうございました。

1	廃屋の闇を深めし虫の声

闇が深まったのではなく、「虫の声」が闇を深めたという感覚の句ですね。

坪野さんの選です。

3	草紅葉埴輪はいつも笑みうかべ

力みのない大らかな描写に好感を持ちました。

国枝隆生氏評================================

埴輪は様々な表情を見せています。すべての埴輪が笑っているわけではありませんが、
この句を読むとすべてそうだと同感させるような印象のある句です。

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4	久に聞く赤子なく声秋日和

 少子化の今日、どこかで久々に赤子の泣き声を聞いたのですね。

5	盆まいり父にコーヒー義父に酒

お父様は下戸だったのですね。俳味があって好きな句です。

高橋幸子氏評================================

リフレインの調べの良さがいいなと思いました。<盆まいり>は、<盆まゐり>ですね。
生前好きだったものを忘れずお供えする作者。缶コーヒーにワンカップでしょうか。

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6	お気に入り着られず仕舞ふ夏終わる

 因果関係の動詞が三つも並んでいます。せめて季語だけでも体言にしてはどうでしょ
うか。

7	鴨川の風教へたる尾花かな

<教へたる>がよく分かりませんでした。「尾花」の揺れで風が分かるという意味でしょ
うか?

8	爽やかや女医の小さきイヤリング

 省略の効いた句ですね。

国枝隆生氏評================================

女医のイヤリングを見ただけの句ですが、イヤリングという小道具を見つけた爽やかさ
が伝わってきます。

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9	焼秋刀魚先を競うて近づきぬ 

バーベキューでしょうか? 状況がよく分かりませんでした。

10	新涼や万歳をして眠る孫

ただでさえかわいいお孫さん。こんな姿を見れば幸せこの上ないですね。

国枝隆生氏評================================

見たままの句だと思います。確かに赤子が眠っているときは、両手を握って万歳してい
ます。秋の涼しい風の中に熟睡しているようです。易しい表現で心打つものがあります。

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11	利根川の入日に稲を刈り急ぐ

高野素十を思わせるような丁寧な描写ですね。

13	友の訃や盥の夕日に瓢浮く

盥に<夕日>・「瓢」と二つあるのが気になりました。やや凝りすぎのような気がしま
し
た。

14	飯盒の湯気追いかけて鰯雲

飯盒の湯気の行方の先に「鰯雲」があるという句意でしょうか? <追いかけて>に俳
味があるかもしれませんが、適切な描写かどうか?

15	立て直す案山子の背中風の中

<風の中>がとって付けたような感じがしました。

16	路地を出てかなかなと鳴き風になる

難解な句でした。路地を出るのは作者?蜩?

17	秋灯下趣味を違えて妻と吾

俳味は伺えるのですが、<趣味を違えて>がやや説明に感じました。

18	病み癒えし友が提げ来る新走

 病が快癒した友人がお見舞いのお礼に訪れたのでしょうか。二人で汲んだ新酒はさぞ
美味しかったと思います。

19	夕暮の来てゐるネオン街愁思

愁思は「秋思」の転換ミスでしょうか? 夕暮と秋思では付きすぎかなと思いました。

20	逆さまに山を転がす芋の露

大胆な句ですね。<山を転がす>のような表現は私は苦手でなかなかできません。

国枝隆生氏評================================

芋の露の近景と遠景を取り合わせた句に「芋の露連山影を正しうす 蛇笏」があります
が、この句も近景と遠景を取り合わせたものです。その近景の露の中に遠景の山が見え
ているのが面白いと思いました。

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21	しづかなる二百十日の空青し

 厄日の「二百十日」。何事もなくよかったですね。

22	江戸川に残る渡し場ばつたとぶ

リズムも良く季語が効いていますね。

高橋幸子氏評================================

江戸時代、江戸川には橋が無く、賑わっていた渡し場。今は閑散とし、草も伸びてバッ
タが跳んでいる情景が見えてきます。矢切の渡しでしょうか。
 
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国枝隆生氏評================================

江戸川の渡し場と言えば矢切の渡しですが、「ばつたとぶ」の素直な取合せの写生がよ
かったと思いました。

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23	曼珠沙華手桶を提げてのぼる坂

お墓が高台にあるのでしょうね。墓地と述べていないところがみそでしょうか。

坪野さんの選です。

24	喪服干す高き青空赤とんぼ

 <干す>は連体形でしょうか? 言葉の流れを見ると終止形のように感じられて、三
段切れのように見えます。

25	秋霖に軋む大地の叫びかな

(国枝)「秋霖」は秋の長雨ですが、この句の雨はむしろ秋出水にふさわしいのでしょ
う。その雨の被害を「大地の叫び」と詠んだのは作者の実感でしょうが、やや飛躍した
かと思います。具体的な山などの様子を詠めば普遍的な写生句になったと思います。

26	山里に案山子の家族棲みにけり

<案山子の家族>の見立てですが、<棲みにけり>は述べすぎているように思いました。

27	ちぎれ雲浮かべ流るる秋の水

句の題材としてはよくある景ですが、雲が水と一緒に流れるような雰囲気が面白いです
ね。

28	落ち葉踏む物語めく赤い靴

<物語めく>は作者の主観に留まっているように思いました。

(国枝)赤い靴の女性が落ち葉を踏んでいく情景からこれから何かが起こるのではない
かと詠まれたのだと思います。「物語めく」でなく、赤い靴が落葉を踏んでいる客観的
な情景を写生して、何か作者の驚きが見えるとよかったと思います。

29	帯のごと草のうねりや野分あと

「野分あと」ではなく「野分中」の方がよいように思いました。

国枝隆生氏評================================

台風あとの草原の様子を詠んでいますが、一帯の草原がうねっていると感じたのが共感
しました。

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30	流木の置き土産めく秋出水

流木は皮肉っぽくいえば置き土産そのものですから<めく>が効いているかどうか?

31	町を出て瑞穂の国の帰燕かな

<町を出て>(巣のあった町から飛び去る?)。<瑞穂の国の帰燕>(日本から飛び去
る?)。言葉の運びはこれで良いのかな?と疑問に思いました。

34	大雨に臥して稲穂のあわれなり

<あわれなり>は答えを出してしまっていると申しますか、述べすぎているように思い
ました。哀れに見える状態を描写してほしいと思います。

35	対岸の宿の灯うるむ霧時雨

俳句の形を十分に自覚した作りですね。蕪村の句を思わせるような雰囲気です。

37	寝る前の一杯の水熱帯夜
 
<一杯の水>と「熱帯夜」でははやや理が勝っていると思いました。

38	湯上りのガリガリ君や秋暑し

赤城乳業の氷菓ですね。初秋は事実上真夏ですから美味しいでしょうね。

40	むらすすき草書のやうやかなのやうや

<草書>か<かな>かどちらかにしたほうが良いと思いました。

41	ゑのころやかうべを垂れて群れ生きて

<生きて>は述べすぎていると思いました。

(国枝)「ゑのころ」は狗尾草のことだと思いますが、「ゑのころ」だけで分かるので
しょうか。「ゑのころ」だけなら犬の子になってしまいませんか。

42	朝顔や子ら溌剌と路地駆けて

<溌剌>では描写としては弱いように思います。

43	赤とんぼ無垢の夕日を野に浴びて

(国枝)夕日の写生で「無垢の夕日」が慣用句というか、やや抽象的な写生になってい
ますが、赤とんぼは無垢の夕日がふさわしいのでしょう。実感のある句です。

44	流星や近くて遠き吾娘の家

近くに嫁いでいても色々な事情でそんなに行くこともできない。何か切ないですね。

坪野さんの選です。

45	無花果の裂けて葉陰の雀蜂

裂けての<て>が少し気になりましたが、無難な描写ですね。

46	池の畔や釣り人ふたり吾亦紅

<ふたり>の体言で切れが生じますので、三段切れですね。

(国枝)上5,中7,下5のそれぞれで切れている三段切れで、リズムを悪くしていま
す。池、釣り人、吾亦紅の三題話のような印象でした。

47	読み止しの三国志読む夜長かな

私も吉川英治と山岡荘八の『太平記』を交互に読んでいますが深更に及ぶこと度々です。

高橋幸子氏評================================

吉川栄治の歴史小説「三国志」をはじめとして、色々な作家が中国史をもとにして「三
国志」を書いています。近頃では漫画も人気。私は、劉備、関羽、諸葛孔明などの名前
位しか知らないのですが、全巻を読み通すのは大変だと思います。

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48	木曽駒のやさしきひとみ蕎麦の花

木曽馬の瞳ですね「蕎麦の花」が誠に似合っています。

国枝隆生氏評================================

開田高原あたりの牧場でしょうか。確かに馬の瞳は大きいのでよく詠まれます。この瞳
に一面の蕎麦畑が映っていたことでしょう。

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49	青柿にほのと稜線らしきもの

(国枝)青柿の表面に稜線らしい筋が見えたのでしょうか。それとも近景の青柿に対し
て、遠景の稜線らしいものが見えた取り合わせでしょうか。よく分かりませんでした。

50	栗拾ふ老いに事足る五つ六つ

意味はよく分かるのですが、<老いに事足る>はやや理屈かなと思いました。

52	自転車の錆落としする菊日和

<錆落としする>がやや散文調なので(差し出がましいかもしれませんが)<錆取りし
たる>ではどうでしょうか?

53	二死二塁敵と味方に秋の風

<敵と味方に>は述べ過ぎているように思いました。言いたいことを我慢するのも俳句
だと思います。

55	道標の明るき錆や苔清水

<明るき錆>のイメージが掴み切れませんでした。

56	天高し珈琲の香のまるく濃く

<まるく>の措辞に戸惑いました。季語ももっと良いのがあるような気がします。

57	素直さの見本のやうに芋の露

<素直さの見本>には共感できませんでした。

58	またもとの一人の暮し燕去ぬ

 少し因果関係を感じましたが「燕去ぬ」が効いていますね。<またもとのおのれにも
どり夕焼中 龍太>の句を思いました。

高橋幸子氏評================================

特選でいただきました。上五・中七から、毎年燕の来るのを楽しみにし、燕の様子をつ
ぶさに見つめ、子育てを励ますなど、燕に寄り添った生活をされていたことが分かりま
す。「燕去ぬ」が心に響きました。来春が待ち遠しいですね。

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59	新走り掲載料の振り込まれ
60	奥美濃の神の通ひ路秋桜

<掲載料><神の通ひ路>ともに曖昧な言葉で読み切れませんでした。

61	金婚の旅の宵闇神籤(みくじ)引く

<宵闇>が句の中で効いているかどうか?

62	朝刊にとびきりの新涼

字余足らずの冒険句でしょうか? としても選までには届かないと思いました。

63	踝のこつりと硬しかまどうま

踝は骨なので<硬し>に意外性は感じませんでした。

64	風鈴や倉敷川を小舟ゆく

涼し気な風景ですね。

65	水澄むや気がかりのことみな了へし

中七下五が報告気味だと思います。

66	よく跳ぬる水切り石や鰯雲

<よく跳ぬる>に少し説明臭を覚えましたが情景が良く見えます。

坪野さんの特選です。

高橋幸子氏評================================

秋になって空気も澄み、気分も快調。石投げも上手くいったのでしょう。3回、4回と跳
ねたのでしょうか。広々した空に鰯雲。気持ちの良い御句です。

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国枝隆生氏評================================

水切りの様子と鰯雲の取り合わせが爽やかさを感じました。水切りの石の飛んで行った
先に鰯雲が見えたのでしょう。

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67	子を背に暮るる匂ひの花野道

 路地裏でしたら夕餉の匂いなどするでしょうが、この句の<暮るる匂ひ>は分かりま
せんでした。

68	隙間より沁み入る夜寒かり住まい

上五中七は「隙間風」の一言ですむように思います。最も季節は冬になりますが。

69	機織り屋の庭の箒目草ひばり

上五の字余りが惜しいですね。

70	月光のすでに敷かれし草の宿

<敷かれし>がよく分からなのですが、部屋に(布団の代わりに)光が満たされている
というような意味でしょうか?<すでに>は不要な主観だと思いました。

(国枝)「月光のすでに敷かれし」がよく分かりませんでした。

71	火の鳥の真つ逆さまに彼岸花

<火の鳥>が何を象徴しているのか分かりませんが、上五と下五の赤色に理を感じまし
た。

72	爽やかに草履そろへて躙り口

中七に切れを入れたほうが良いと思いました。できれば下五の斡旋にも一考を要すると
思いました。

73	庭隅の仄かな明かり花茗荷

静かな俳句に好感を持ちました。

74	蛍火やそれぞれ一ツの闇を持ち

<一ツ>は一つですか? <の>は省略して字余りを解消してはどうでしょうか。

75	寂しさの理由なくつのる土用波

上五中七は俳句の基本では忌避される主観の表明ですね。

76	通り雨蓮の浮葉に音高く

<音高く>が通り雨の報告では・・・。

77	紅白に園を囲めり夾竹桃

出来ている句ですが、「夾竹桃」の描写としては今一歩だと思いました。

78	莢豌豆蒔きて晩酌雨の音

菜園のことは全くの無知ですが、雨が出来栄えをよくするような予感がして、お酒も旨
いだろうなと思いました。

79	オクラ取る踵を上げて背伸びして

冷蔵庫でのひとこまでしょうか。<て>のリフレインのリズムが良いですね。

(国枝)「踵を上げて」「背伸びして」の動作に実感があると思いました。

80	コスモスの咲くバス停の青い空

コスモスと青空は定番すぎると思いました。

81	心のたがを外す仕舞い湯虫の声

<心のたがを外す>とは日常の柵から逃れて心が自由になるというようなことでしょう
か? 仕舞い湯の模様を具体的に描写して、そういった主観を読者に読み取ってもらう
のが俳句の基本だと思います。

82	なでしこの風やはらかきハーモニカ

風の音がハーモニカの柔らかい音のようである、と読みましたが、風景としてのイメー
ジが湧きませんでした。 

83	吾のずぼんヌの字に乾く今朝の秋

 <吾>にはこだわらなくても良いように思いました。

84	蕎麦の花風と戯る一日旅

予選で頂きました爽やかで気分の良い句ですね。

85	玲瓏や闇夜を紡ぐかねたたき

玲瓏はかねたたきのことと思われますので、<や>の切れ字が効いているかどうか?綺
麗な言葉を並べすぎているようにも思いました。

(国枝)きれいな言葉ですが、「玲瓏」は「闇夜を紡ぐかねたたき」の結論のような印
象でした。「玲瓏」と直接言わないで、具体的な写生から「玲瓏」を想像させるとよかっ
たと思います。

86	出水引く青き夜空の安らけし

 上五中七の描写で読み取れますから、<安らけし>は不要な言葉だと思います。

87	澄みし眼の落蝉風に転がりぬ

風に転がるということよりも、落蝉の目が澄んでいることにはかなさを感じました。

坪野さんの選です。

88	1 映画見る「ゴッドファーザー」夜長かな

<映画見る>は要らないと思います。一例ですが「長き夜のゴッドファーザー三部作」
などどうでしょうか。

89	2 秋風やないもの強請り生きる術 

主観の吐露ではなく何かを描写してください。

90	故郷やテレビ画面に長き夜

中七の助詞<に>の使い方に違和感を覚えました。

91	亡き夫の顔に似ているいぼむしり

いぼむしりに似た顔とは、びっくりしました。

坪野さんの選です。

92	秋しぐれ敷藁厚く眠る牛

<敷藁厚く>が具体的な描写で、でしっかりとした句ですね。

坪野さんの選です。

高橋幸子氏評================================

晩秋になると寒さも増し、時雨も身に染むようになります。この敷き藁は新藁でしょう
か。飼い主の牛を大切にする気持ちが伝わってきます。牛もさぞかし気持ちよく眠れる
ことでしょう。

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93	台風の間もなくくるぞ風見鶏

中七の口語調が面白いですね。神戸の高台の屋敷を思い浮かべました。

坪野さんの選です。

94	秋空にブラスバンドの音上りゆく

下六にしてまでの措辞でしょうか?五音に収める工夫が欲しいです。

95	白雲の千切れて浮かぶ九月かな

不可なく描写している句ですね。

96	丹精の郷の梨売る道の駅

<丹精>が説明ですね
。
97	厨ごと終えて消灯虫時雨

<厨ごと終えて>は報告だと思います。

98	重陽の奈良の大仏聞し召す

<聞し召す>が酔いが回っているようにも見えて面白いですね。重陽という特別の日で
すからどんな願いことでも聞いてくれるかもしれません。

99	爆発のコロナ感染夜長かな

<爆発のコロナ感染>は報告ではないでしょうか。

100	一枚の葉先へ走る露の玉

よく目の行き届いた写生句ですね。

国枝隆生氏評================================

この句は近景だけの写生です。露の動きをよく観察されていると思います。

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101	淡海の空も水面も鰯雲

大きな景で気分爽快ですね。

高橋幸子氏評================================

広々とした湖に映る空一面の鰯雲。スケールの大きさに魅せられました。

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国枝隆生氏評================================

雄大な鰯雲を詠んでいます。空だけでなく、水面にも鰯雲が映っているまさに鰯雲だけ
の雄大さです。琵琶湖はこんな感じで広々と見えるのでしょうか。

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103	小鳥来る浜辺に光るシーグラス

形よくできた句ですが、シーグラスは海岸で見つかるガラス片ですので<浜辺に光る>
はやや説明気味だと思いました。

坪野さんの選です。

104	一雨過ぎ安寧たる虫の庭

<一雨過ぎて安寧>は因果関係の理屈だと思います。

105	若武者の白鉢巻や菊人形

白虎隊を想像しました。

高橋幸子氏評================================

きりりと鉢巻きをした若武者人形。鉢巻が白なのがいいですね。菊の香りも格調高く感
じます。

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106	櫨紅葉水面揺れればほむら立つ

紅葉(赤)→ほむら(赤)の発想は、平凡ではないかと思います。

107	はららごを散らして美し曲げわつぱ

<美し>と結論を伸べず描写してほしいです。

108	ましら酒呑みて猿めが街へ出る

ましら酒と猿で付きすぎではないかと思いました。

110	伊吹嶺の翳りなき日や鳥渡る

きれいにできた句ですね。

(国枝)鳥が渡っていくとき、晴れきった伊吹山らしい気分のよい句です。「翳りなき」
とややオーバーな写生もよかったと思います。

坪野さんの選です。

高橋幸子氏評================================

どこにも翳りのない全き山容の伊吹山。こんな伊吹嶺の見える日に鳥が渡ってくる景が
気持ちよいです。

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111	白粉花や稚児腕に深眠り

稚児行列に疲れた稚児かと思いましたが、幸子さんの読みもありですね。

高橋幸子氏評================================

<白粉花>を(おしろひ)、<稚児>を(ちのみご)と読んでとらせていただきました。
腕に深眠りする稚児と白粉花の映り加減に情趣を感じました。

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112	喪の家の賑はひ遥かほととぎす

<喪の家に賑はひ遥か>は説明では。それとも<遥か>は「ほととぎす」に掛かってい
る?
113	峠には銀河明りや延暦寺

峠を大きく表現しているので、延暦寺の斡旋はあまり効いていないとと思いました。

114	水澄みてえりの青竹さしにけり

(国枝)琵琶湖の情景でしょうか。今頃にえり漁の準備をするのでしょうか。季語の
「水澄みて」に悠久な琵琶湖を想像しました。

115	優勝と友の一報月見酒

何の優勝か知りたいところですが、音数の関係でしょうがないですね。

116	下校児の緩き歩みや曼珠沙華

(国枝)10句選に入れるかどうか迷った句です。学校帰りの児が丁度曼珠沙華を見て、
つい止まったのでしょう。曼珠沙華の前でおしゃべりしている様子が見えます。

117	秋天へテニスボールの弾む音

上五は切れを入れたほうが良いと思いました。

118	夫居らぬ夜長をひとり恣

<夫居らぬ>はいろいろ想像できるのですが、場合によっては読みが全然違ってくるの
に悩みました。

120	スケジュール帳に帰宅日秋灯

書き物に対して灯りの斡旋は定番だと思いました。

121	まだ六時日入り早まる九月かな

<日入り早まる>に対して<まだ六時>が理屈に感じました。

122	法師蝉信号待ちの陰探し
 

第266回目 (2021年7月) HP俳句会 選句結果
【  松井徒歩 選 】
  特選 ゆふだちの海たたきつつ来たりけり 和久(米原市)
   はつたいや擦り傷に効く母の唾 貝田ひでを(熊本県)
   夏めくやそこもここもと地図広げ      小粒(和歌山市)
   天辺の光差し込む蝉の穴 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   灯涼し切子硝子のイヤリング 石塚彩楓(埼玉県)
   手花火や次女ほんのりと紅を差し 鷲津誠次(可児市)
   天道虫はじき追ひたることもして 節彩(東京)
   竹床几つめ切る夫の丸き背ナ 野津洋子(愛知県)
   はじめての献血兄のサングラス 高橋紋(愛媛県)
   第二ボタン外すシャツの背冷房車 幹弘(東京)
【  高橋幸子 選 】
  特選 片陰を辿りて迷ふビルの街 幸子(横浜市)
   傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋 大原女(京都)
   冷豆腐祖父の箸箱銀細工      みなと(旭川市)
   星涼し神話描けるジャワ更紗 康(東京)
   梅雨晴間砂場に光る赤シャベル 雪絵(前橋市)
   祭足袋少しきつめの男振り 吉沢美佐枝(千葉県)
   雲の峰火口湖目指す長き列 周桜(千葉県)
   噴水の風に崩るる放物線 美凡(愛知県)
   風やさしねぶの木蔭のたち話 伊田一絵(東京)
   君が背の「Fight!」眩しき夏の山 椋本望生(堺市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 朝顔のけさはそらいろ雨あがる 伊田一絵(東京)
   傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋 大原女(京都)
   梅雨晴間砂場に光る赤シャベル      雪絵(前橋市)
   青葉闇吸ひ込まれゆく乳母車 素焼(さいたま市)
   古戦場跡の土塁や夏薊 石塚彩楓(埼玉県)
   灯台へ草掻き分けて夏帽子 とかき星(大阪)
   白南風や旧街道の虫籠窓 小林克己(総社市)
   飛びついてゴロを抑える日焼けの子 蝶子(福岡県)
   ゆふだちの海たたきつつ来たりけり 和久(米原市)
   雨上がり湖面に映る青葉濃し 美由紀(長野県)
【  坪野洋子 選 】
  特選 ポマードの匂ひかすかに籐寝椅子 ようこ(神奈川県)
   仰ぎ見る妙高山や青田風 田中洋子(千葉市)
   はつたいや擦り傷に効く母の唾      貝田ひでを(熊本県)
   傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋 大原女(京都)
   凌霄のほたほた恙無き夕べ 奈良野遊山(奈良市)
   臥する身に音のみ届く揚花火 筆致俳句(岐阜市)
   風青む早苗植えゆく手元より 幸子(横浜市)
   片陰を辿りて迷ふビルの街 幸子(横浜市)
   飛びついてゴロを抑える日焼けの子 蝶子(福岡県)
   浴衣着てピアノ奏でる旅の宿 惠啓(三鷹市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、和久(米原市)さん、幸子(横浜市)さん、大原女(京都)さんでした。同点が3名以上ですので、今月の最多得点賞は該当者なしとなります。

【講評】


       2021年7月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

沢山の御投句ありがとうございました。

仰ぎ見る妙高山や青田風

<仰ぎ見る>ですから、山に近い青田でしょうか。風が快いですね。

坪野さんの選です。

2	数多なる手作りジャムや夏半ば

句の形としてはできていますが、ジャムの描写が説明気味だと思います。

3	杭を打つ重機の音や梅雨湿り

マンションの工事現場でしょうか。ここに住む人にとっては期待の音かもしれませんが
近隣の人にとっては迷惑なことで、「梅雨湿り」がその気分を増幅していますね。

5	はつたいや擦り傷に効く母の唾

昔を回想しているのでしょうか、今では考えられませんが昔は唾を付けたりしましたね。
「はったい」が過去を甦らせてくれます。

坪野さんの選です。

7	薔薇の花活ける窓際予約席

(国枝)何かストーリーが見えてくるような情景です。どこかのレストランの窓際に薔
薇の花を活けて、予約札を置く情景から、どんなお客が来るか想像がふくらむ句でした。

8	歓喜して夕立波打つ樟並木

何が、どうして、歓喜するのかよく分かりませんでした。

9	日傘舞ふ谷は寂しき風ばかり

<日傘舞ふ>は終止形なのか?連体形なのか?どちらにしても<谷>が景としてよく分
かりませんでした。

10	出水行くすっぽん咥へし草の蒼

動詞が二つあるせいでしょうか、句の主体が<すっぽん>と<草の蒼>のどちらなのか
が分かりにくかったです。<咥へし>の過去形も気になりました。なお、旧仮名使いで
すと<すつぽん>ですね。

11	手作りの青じそ届き麺啜る

(国枝)我が家の庭を想像しました。昼食のソーメンを啜るのに、いつも庭の紫蘇をつ
まんで、出汁に入れて食べます。そんな二人暮らしの生活が見えて来ました。

12	夏めくやそこもここもと地図広げ

<そこもここもと>で楽し気な雰囲気が伝わってきますね。 

13	傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋

<傾げつつ>が眼目ですね。

坪野さんの選です。

高橋幸子氏評================================

渡月橋の歩道は、日傘を傾げないとすれ違えない幅なのですね。傾げながら色とりどり
の日傘が行き交う様子が見えてきて、情趣を覚えました。

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国枝隆生氏評================================

渡月橋の人物像が見えてきました。橋の上の日傘が涼しげに見えます。

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14	竹落葉京に数多の歌枕

京都への挨拶句ですね。

(国枝)情緒のある句ですが、「京に数多の歌枕」は抽象的でもう少し京都の具体的な
物が見えるとよかったと思います。

16	冷豆腐祖父の箸箱銀細工

<箸箱>のあとに「は」が省略されていると読めば良いのですが、一読切れがあるよ
うに見えるのが気になりました。

高橋幸子氏評================================

冷豆腐と箸箱の銀細工がよく映り合っています。箸箱を大事に使っている(いた?)お
じいさまの人柄も思われます。

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18	夕焼をよぎつて行きし鴉かな

これくらい単純な句を作るのには結構勇気がいるものですね。
	
19	凌霄のほたほた恙無き夕べ

もう少し描写が欲しいと思いました。

坪野さんの選です。

20	凡夫たるけふの仕上げの冷奴

安定した句作りで安心して読めるのですが、もう少し具体的な描写が欲しいと思いまし
た。

21	天辺の光差し込む蝉の穴

蝉の穴の中から見た句でしょうか、大胆な構図ですね。

22	イーゼルやゴッホのやうな麦の秋

 物はイーゼルだけでシュールな感はありますが・・・。

24	やはらかき光を弾き未央柳

<弾き>は素直に<弾く>の方が良いと思いました。

26	街中に鳥の声きく夏館

<街中>に<鳥の声>が意外性があるのかもしれませんが、<きく>という動詞は省略
したほうが良いと思いました。
 
(国枝)場所が「街中」と「夏館」の2つあります。どちらかは要らないと思いました。

28	星涼し神話描けるジャワ更紗

良い季語を使いましたね。
	
高橋幸子氏評================================

ジャワ更紗は、世界無形文化財になっているろうけつ染めの美しい布。そこに、神話が
描かれているのですね。

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29	ポマードの匂ひかすかに籐寝椅子

 昭和の匂いですね。私の好みではポマードよりトニックでが・・・。

 坪野さんの特選です。

30	グーパーとじゃんけんのごと胡瓜揉
 
 <グーパー>で十分なので<じゃんけん>は省略できると思いました。

32	早朝の蛇口の水は心太

<水は心太>は水が心太のように見える、ということでしょうか?よく分かりませんで
した。
 
33	風運ぶ雨のにほひや立葵

 (国枝)雨が降る前触れの風には特有の匂いがあります。そんな匂いが伝わって来ま
した。

急に冷たい風が吹いて梅雨末期の雨の気配を感じることがあります。「立葵」もそんな
ころによく見かけますね。

35	労ひの言葉に添へし冷し酒

どういう場面の言葉とお酒なのか? <添へし>は現在形のほうが良いように思いまし
た。 あともう一押しの句のような気がします。

36	梅雨晴間砂場に光る赤シャベル

何でもないようなものを素材にする、俳句ならではの写生ですね。

高橋幸子氏評================================

砂場で遊んでいた子が忘れて、置きっぱなしになっていた赤いシャベル。<梅雨晴間>
の日を反射して、濡れていた赤色が光る景が印象的です。

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国枝隆生氏評================================

類型句がありそうですが、晴れた空とシャベルの赤の対比が鮮明です。

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37	日焼けしてにつと歯を見す球児かな

<見す>は終止形ですので、(下五かな止めですから)できましたら連体形にしたほうが
良いと思いました。

(国枝)「見す」は「見せる」の下2段活用でしょうから、ここは終止形で切れていま
す。そうすると「球児かな」が浮いてくる印象でした。

39	太宰の忌神保町へ古書買ひに

(国枝)古書店街で何か小説でも買おうと出かけた時と「太宰の忌」がマッチした感じ
でした。忌日の句は理屈で説明出来ないものを持っています。

40	祭足袋少しきつめの男振り

 <少しきつめ>がポイントですね。

高橋幸子氏評================================

祭足袋に注目したところが眼目です。神輿を担ぐ男衆でしょうか。<少しきつめ>か
ら、足首がきゅっと締まった、いなせな男振りが伺えます。

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41	ミルク飲む嬰の額や汗光る

予選でいただきました。丁寧に描写していますね。

42	臥する身に音のみ届く揚花火

 音しか聞こえないのが切ないですね。子規のことを思い浮かべました。

 坪野さんの選です。

43	雲の峰火口湖目指す長き列

 草津温泉の上にある白根山を思いました。

(国枝)富士山の頂上や阿蘇山の頂上の火口湖を想像しました。特に富士山の火口湖で
は延々と列を作って巡っています。そんな様子が見えてきました。

高橋幸子氏評================================

火口湖を目指す夏山登山の様子を、スケールの大きい視点でとらえていて圧巻です。

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44	喜雨を待つ老若男女顔の皺

まだ降っていない雨を「喜雨」ということに少し違和感を覚えました
。
45	ざんぶりと山湯に夏至の山男

下山か登山の途中か?いずれにしても最も日の長い時期の山の入浴の余裕というか平和
を感じました。

48	青葉闇吸ひ込まれゆく乳母車

闇に<吸ひ込まれゆく>という措辞ににかすかに不穏な感じも受けました。

国枝隆生氏評================================

乳母車が森の中に消えていく不思議な光景が見えてきました。一寸幻想的な印象でした。

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49	しぶき上げ浅瀬を駆くる日焼の子

元気な姿が良いですね。

50	ちひろの絵麦わら帽に蟹が乗り

中七下五が絵の描写でしたら、「蟹」は季語としては弱いと思います。取り合わせの句でしたら申し訳ありません。

51	灯涼し切子硝子のイヤリング

切子硝子に灯が映えて涼し気ですね。

52	古戦場跡の土塁や夏薊

 叙景の句は難しいですね。季語が動くかもしれませんが、それを言い出すときりがあ
りませんので「夏薊」で落ち着いた句になったと思います。

国枝隆生氏評================================

物だけの写生で一寸物足りないかもしれませんが、情景ははっきりしています。ただ
「土塁や」の切れ字が強いので、「夏薊」が弱くなっています。

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53	手花火や次女ほんのりと紅を差し

手花火に相応しい美しい句ですね。

54	梅雨深し破瑠戸打つ音ミシン音

破瑠戸を打つ音は雨の音だと思いますが、ミシンの音と誤解される怖れもあるかもしれ
ません。

55	石垣に瑠璃の残像青蜥蜴

感覚の良い句だと思いますが、<瑠璃の残像>ですから蜥蜴の<青>はいらないと思い
ます。

57	夏蝶の葉裏に縋る驟雨かな

「驟雨」も季語ですので気を付けましょう。

58	風青む早苗植えゆく手元より

手元より風が青む、というのが正直よく分からないのですが、、不思議な感覚ですね。

坪野さんの選です。

59	片陰を辿りて迷ふビルの街

 ビル街はことさらに暑いですから日陰を歩きますね。慣れない町ですと視界も偏って
道に迷います。

 坪野さんの選です。

高橋幸子氏評================================

特選でいただきました。面白い視点でとらえた御句で、類想が無いと思いました。迷
路パズルのような趣も感じられ、惹かれました。
 
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60	汗の衣を引き剥がしたる身軽さよ

<引き剥がしたる>に俳味を感じました。

(国枝)「引き剥がしたる」が大げさのような印象でした。

61	走馬灯母縁で待つ吾が帰り

(国枝)「母縁で待つ」が分かりづらいのですが、「母が縁先で待っている」という意
味でしょうか。助詞がなくて、一寸詰め込みの感。

62	復活の快挙プールに拍手わく

池江選手のことだと思いますが、来年になっても普遍性のある句かどうか?

63	噴水の風に崩るる放物線

高橋幸子氏評================================

噴水の対称形をした放物線が、強い風で崩される瞬間をよくとらえた御句だと思います。

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64	炎天の冷めぬ夕暮ドプラー音

炎天の<冷めぬ><ドプラー音>と飛躍した言葉が並びましたが、実際に(ドップラー
効果)の音を聞いたのか、言葉の綾なのか?いずれにしても私としては消化不良でした。

66	読み切れぬカラマーゾフの夏終はる

<カラマーゾフ>は本のことでしょうか?不思議な感覚の句ではありますが・・・。

67	秋近し伸びに伸びたりスカイツリー

スカイツリーが伸びるという感覚が分かりませんでした。

69	天道虫はじき追ひたることもして

天道虫と遊んでいるのでしょうか、気負いのない句柄に惹かれました。

71	遠ざかる祭ばやしや初浴衣

<遠ざかる>が良い雰囲気ですが、「祭」「浴衣」の季重なりが気になりました。

(国枝)遠い昔の郷愁を感じる句でした。

72	でで虫をつぶてに遊ぶ子を叱る

子供に対して<叱る>と常識で収めてしまったのが残念だと思いました。

75	梅雨空に音のみ残し飛行機去る

下六のリズムが悪いので下五に収まるように工夫してほしいです。例えば「機影去る」。

76	道の辺や百円野菜雲の峰

上五の<や>で切れて、<野菜>(体言)で切れて三段切れです。「道の辺の」とすれば
解消しますがどうでしょうか?

78	炎天をのしてローラー転圧機

<のして>は「伸して」でしょうか?分かりづらいので漢字の方が良いと思いました。

79	灯台へ草掻き分けて夏帽子

 「夏帽子」の措辞で良く茂った夏草の緑も見えてきますね。

国枝隆生氏評================================

灯台はどこでも道なき道を歩いて行くようなイメージですが、それを「草掻き分けて」
と写生したところに臨場感が出ています。

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81	白南風や旧街道の虫籠窓

予選で頂きました。「類句あり」の声が聞こえそうなのでネットで検索しましたが見当
たりませんでした。

国枝隆生氏評================================

同様な句で、「梅雨明けや旧街道の石畳」もありましたが、こちらは「白南風」の明る
さと「虫籠窓」の壁の白さが引き合っていると思いました。

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82	ふと吾に向ひし螢肩に附く

<ふと吾に>は殆ど意味のない修飾のような気がしました。

85	貴婦人の振舞い思ふ黒揚羽

<振舞い思ふ>が曖昧模糊として鑑賞しきれませんでした。

86	父の日の無為無策にてごろ寝かな

「父の日」は母の日に比べて比較的地位の低いイベントですので、気持ちはよく分かり
ます。

88	夏マスク少し恥らひ目を合はす

作中人物の人柄とか姿が見えてきませんでした。

89	高原の風の吹き出す冷蔵庫

冷蔵庫ですから冷っとしますが、それを<高原の風>という発想では俳味には遠いと思
います。

91	立葵塀の高さを越へにけり

報告の句のように思えました。

(国枝)もし文語で詠むなら「越えにけり」ですね。

92	風やさしねぶの木蔭のたち話

高橋幸子氏評================================

合歓の花の木陰で立ち話とは、素敵な景です。しかも優しく吹く風が心地よさを誘いま
す。<たち話>は<立ち話>とした方が、景がよく見える気がしました。

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93	朝顔のけさはそらいろ雨あがる

朝顔の花に光る雨の水滴も見えてきます。

国枝隆生氏評================================

「けさはそらいろ」の断定がよかったと思います。青空と朝顔の青が重なって強調され
ています。

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95	飛びついてゴロを抑える日焼けの子

予選でいただきました。<飛びついて>の勢いが良いので、<抑える>は省略できるよ
うに思いました。

坪野さんの選です。

国枝隆生氏評================================

一見して少年の草野球でしょう。「飛びついて」の勢いが「日焼けの子」にふさわしい
と思いました。

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96	黴の書は父健在の日のことを

上五は<は>ではなく<や>の方が句が生きてくるように思いました。

97	砂浜といふは裸足を誘ふもの

夏の砂浜の説明のように感じました。

98	薄ごろも細き絎針撓りけり

上五で切れていますので下五には切れ字は使わないほうが良いと思いました。

99	竹床几つめ切る夫の丸き背ナ

御主人の丸い背中を見つめる奥様。一緒に暮らした長い年月が走馬灯のように・・・と
いうのは大げさでしょうか?「竹床几」が良い雰囲気をかもしだしていますね。

101	アメンボの六脚が欲しロボティクス

機知の富んだ句ですね。理屈との隣り合わせの危うさを感じました。

102	君が背の「Fight!」眩しき夏の山

「Fight!」はTシャツのロゴでしょうか。若々しい句に好感を持ちましたが、<君>が
句を甘くしているように思いました。

高橋幸子氏評================================

若々しい作品です。二人で夏山登山している景ですね。先を歩く彼のシャツの背に
「Fight!」の文字。眩しいのは、夏山でなく、その文字かもしれません。

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103	余り苗残る命の片隅に

<残る命の片隅に>が分かりませんでした。観念が勝りすぎているように思いました。

104	行きつけの本屋更地に夏つばめ

予選で頂きました。町の本屋さんがどんどん減っています。「夏つばめ」が程よく効い
ていますね。

106	はじめての献血兄のサングラス

仲の良い兄妹なのですね。状況からそこそこ若いお嬢さんを想像しました。

107	空蝉のコンクリに付く都会派よ

木ではなくコンクリだから都会という理屈を感じてしまい、<都会派>への飛躍に共感
できませんでした。

109	梅雨出水響く大波つくりけり

<つくりけり>に説明を感じました

110	急旋回屋根に消えゆく燕かな

屋根に消えるぐらいで、<消えゆく>は大袈裟では?

111	後戻り出来ぬ人生かたつむり

季語の斡旋はとても良いのですが、<後戻り出来ぬ人生>は当たり前の教訓(ないしは
感慨)だと思いました。

(国枝)「人生」が大げさのような感じでした。

112	浴衣着てピアノ奏でる旅の宿

 優雅な旅ですね。

坪野さんの選です。

113	潮満ちて岸に浜木綿傾けり

静かな景色を淡々と描写されていますね。10句選に迷った句です。

114	呼び戻す旅の思ひ出大夕焼

思い出ですから、<呼び戻す>は言わずもがなの言葉ではないでしょうか。

115	梅雨明くる忠敬の道たづねけり

<たづねけり>が報告なので<忠敬の道>を描写してください。

116	梅雨明けや旧街道の石畳  

出来ている句ですが、<旧街道>のようなよく使われる言葉ではなく、街道の様子を描
写してみてはどうでしょうか

117	水平線のぼる朝日や敗戦日

良い句だと思いますが、どんな季語を持ってきても成立する句のように感じました。

118	ゆふだちの海たたきつつ来たりけり

豪快で臨場感のある句ですね。夕立の壁のようなものが前面から迫ってきたことに遭遇
したことがあります。そんなことを思い出しました。

国枝隆生氏評================================

一物仕立ての力強さを感じました。「海たたきつつ」の写生に夕立の勢いが見えました。

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119	雨上がり湖面に映る青葉濃し

雨が上がって湖面の青葉がさぞ美しかったと思います。吟行では皆この場面でどう表現
しようかと悩みます。心を静かにして技巧に走らないのが良いのですね。

国枝隆生氏評================================

青葉が登場することから、山の湖を感じました。山の静かさが伝わってきます。

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121	第二ボタン外すシャツの背冷房車

背中で冷房を感じているということは電車?の中で立っているのですね。上六が惜しい
ですが<第二ボタン外す>で暑さも疲れも伝わってきます。省略の効いた佳句だと思い
ます。


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