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選句結果
     
第266回目 (2021年7月) HP俳句会 選句結果
【  松井徒歩 選 】
  特選 ゆふだちの海たたきつつ来たりけり 和久(米原市)
   はつたいや擦り傷に効く母の唾 貝田ひでを(熊本県)
   夏めくやそこもここもと地図広げ      小粒(和歌山市)
   天辺の光差し込む蝉の穴 蒼鳩 薫(尾張旭市)
   灯涼し切子硝子のイヤリング 石塚彩楓(埼玉県)
   手花火や次女ほんのりと紅を差し 鷲津誠次(可児市)
   天道虫はじき追ひたることもして 節彩(東京)
   竹床几つめ切る夫の丸き背ナ 野津洋子(愛知県)
   はじめての献血兄のサングラス 高橋紋(愛媛県)
   第二ボタン外すシャツの背冷房車 幹弘(東京)
【  高橋幸子 選 】
  特選 片陰を辿りて迷ふビルの街 幸子(横浜市)
   傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋 大原女(京都)
   冷豆腐祖父の箸箱銀細工      みなと(旭川市)
   星涼し神話描けるジャワ更紗 康(東京)
   梅雨晴間砂場に光る赤シャベル 雪絵(前橋市)
   祭足袋少しきつめの男振り 吉沢美佐枝(千葉県)
   雲の峰火口湖目指す長き列 周桜(千葉県)
   噴水の風に崩るる放物線 美凡(愛知県)
   風やさしねぶの木蔭のたち話 伊田一絵(東京)
   君が背の「Fight!」眩しき夏の山 椋本望生(堺市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 朝顔のけさはそらいろ雨あがる 伊田一絵(東京)
   傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋 大原女(京都)
   梅雨晴間砂場に光る赤シャベル      雪絵(前橋市)
   青葉闇吸ひ込まれゆく乳母車 素焼(さいたま市)
   古戦場跡の土塁や夏薊 石塚彩楓(埼玉県)
   灯台へ草掻き分けて夏帽子 とかき星(大阪)
   白南風や旧街道の虫籠窓 小林克己(総社市)
   飛びついてゴロを抑える日焼けの子 蝶子(福岡県)
   ゆふだちの海たたきつつ来たりけり 和久(米原市)
   雨上がり湖面に映る青葉濃し 美由紀(長野県)
【  坪野洋子 選 】
  特選 ポマードの匂ひかすかに籐寝椅子 ようこ(神奈川県)
   仰ぎ見る妙高山や青田風 田中洋子(千葉市)
   はつたいや擦り傷に効く母の唾      貝田ひでを(熊本県)
   傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋 大原女(京都)
   凌霄のほたほた恙無き夕べ 奈良野遊山(奈良市)
   臥する身に音のみ届く揚花火 筆致俳句(岐阜市)
   風青む早苗植えゆく手元より 幸子(横浜市)
   片陰を辿りて迷ふビルの街 幸子(横浜市)
   飛びついてゴロを抑える日焼けの子 蝶子(福岡県)
   浴衣着てピアノ奏でる旅の宿 惠啓(三鷹市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、和久(米原市)さん、幸子(横浜市)さん、大原女(京都)さんでした。同点が3名以上ですので、今月の最多得点賞は該当者なしとなります。

【講評】


       2021年7月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

沢山の御投句ありがとうございました。

仰ぎ見る妙高山や青田風

<仰ぎ見る>ですから、山に近い青田でしょうか。風が快いですね。

坪野さんの選です。

2	数多なる手作りジャムや夏半ば

句の形としてはできていますが、ジャムの描写が説明気味だと思います。

3	杭を打つ重機の音や梅雨湿り

マンションの工事現場でしょうか。ここに住む人にとっては期待の音かもしれませんが
近隣の人にとっては迷惑なことで、「梅雨湿り」がその気分を増幅していますね。

5	はつたいや擦り傷に効く母の唾

昔を回想しているのでしょうか、今では考えられませんが昔は唾を付けたりしましたね。
「はったい」が過去を甦らせてくれます。

坪野さんの選です。

7	薔薇の花活ける窓際予約席

(国枝)何かストーリーが見えてくるような情景です。どこかのレストランの窓際に薔
薇の花を活けて、予約札を置く情景から、どんなお客が来るか想像がふくらむ句でした。

8	歓喜して夕立波打つ樟並木

何が、どうして、歓喜するのかよく分かりませんでした。

9	日傘舞ふ谷は寂しき風ばかり

<日傘舞ふ>は終止形なのか?連体形なのか?どちらにしても<谷>が景としてよく分
かりませんでした。

10	出水行くすっぽん咥へし草の蒼

動詞が二つあるせいでしょうか、句の主体が<すっぽん>と<草の蒼>のどちらなのか
が分かりにくかったです。<咥へし>の過去形も気になりました。なお、旧仮名使いで
すと<すつぽん>ですね。

11	手作りの青じそ届き麺啜る

(国枝)我が家の庭を想像しました。昼食のソーメンを啜るのに、いつも庭の紫蘇をつ
まんで、出汁に入れて食べます。そんな二人暮らしの生活が見えて来ました。

12	夏めくやそこもここもと地図広げ

<そこもここもと>で楽し気な雰囲気が伝わってきますね。 

13	傾げつつ日傘行き交ふ渡月橋

<傾げつつ>が眼目ですね。

坪野さんの選です。

高橋幸子氏評================================

渡月橋の歩道は、日傘を傾げないとすれ違えない幅なのですね。傾げながら色とりどり
の日傘が行き交う様子が見えてきて、情趣を覚えました。

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国枝隆生氏評================================

渡月橋の人物像が見えてきました。橋の上の日傘が涼しげに見えます。

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14	竹落葉京に数多の歌枕

京都への挨拶句ですね。

(国枝)情緒のある句ですが、「京に数多の歌枕」は抽象的でもう少し京都の具体的な
物が見えるとよかったと思います。

16	冷豆腐祖父の箸箱銀細工

<箸箱>のあとに「は」が省略されていると読めば良いのですが、一読切れがあるよ
うに見えるのが気になりました。

高橋幸子氏評================================

冷豆腐と箸箱の銀細工がよく映り合っています。箸箱を大事に使っている(いた?)お
じいさまの人柄も思われます。

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18	夕焼をよぎつて行きし鴉かな

これくらい単純な句を作るのには結構勇気がいるものですね。
	
19	凌霄のほたほた恙無き夕べ

もう少し描写が欲しいと思いました。

坪野さんの選です。

20	凡夫たるけふの仕上げの冷奴

安定した句作りで安心して読めるのですが、もう少し具体的な描写が欲しいと思いまし
た。

21	天辺の光差し込む蝉の穴

蝉の穴の中から見た句でしょうか、大胆な構図ですね。

22	イーゼルやゴッホのやうな麦の秋

 物はイーゼルだけでシュールな感はありますが・・・。

24	やはらかき光を弾き未央柳

<弾き>は素直に<弾く>の方が良いと思いました。

26	街中に鳥の声きく夏館

<街中>に<鳥の声>が意外性があるのかもしれませんが、<きく>という動詞は省略
したほうが良いと思いました。
 
(国枝)場所が「街中」と「夏館」の2つあります。どちらかは要らないと思いました。

28	星涼し神話描けるジャワ更紗

良い季語を使いましたね。
	
高橋幸子氏評================================

ジャワ更紗は、世界無形文化財になっているろうけつ染めの美しい布。そこに、神話が
描かれているのですね。

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29	ポマードの匂ひかすかに籐寝椅子

 昭和の匂いですね。私の好みではポマードよりトニックでが・・・。

 坪野さんの特選です。

30	グーパーとじゃんけんのごと胡瓜揉
 
 <グーパー>で十分なので<じゃんけん>は省略できると思いました。

32	早朝の蛇口の水は心太

<水は心太>は水が心太のように見える、ということでしょうか?よく分かりませんで
した。
 
33	風運ぶ雨のにほひや立葵

 (国枝)雨が降る前触れの風には特有の匂いがあります。そんな匂いが伝わって来ま
した。

急に冷たい風が吹いて梅雨末期の雨の気配を感じることがあります。「立葵」もそんな
ころによく見かけますね。

35	労ひの言葉に添へし冷し酒

どういう場面の言葉とお酒なのか? <添へし>は現在形のほうが良いように思いまし
た。 あともう一押しの句のような気がします。

36	梅雨晴間砂場に光る赤シャベル

何でもないようなものを素材にする、俳句ならではの写生ですね。

高橋幸子氏評================================

砂場で遊んでいた子が忘れて、置きっぱなしになっていた赤いシャベル。<梅雨晴間>
の日を反射して、濡れていた赤色が光る景が印象的です。

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国枝隆生氏評================================

類型句がありそうですが、晴れた空とシャベルの赤の対比が鮮明です。

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37	日焼けしてにつと歯を見す球児かな

<見す>は終止形ですので、(下五かな止めですから)できましたら連体形にしたほうが
良いと思いました。

(国枝)「見す」は「見せる」の下2段活用でしょうから、ここは終止形で切れていま
す。そうすると「球児かな」が浮いてくる印象でした。

39	太宰の忌神保町へ古書買ひに

(国枝)古書店街で何か小説でも買おうと出かけた時と「太宰の忌」がマッチした感じ
でした。忌日の句は理屈で説明出来ないものを持っています。

40	祭足袋少しきつめの男振り

 <少しきつめ>がポイントですね。

高橋幸子氏評================================

祭足袋に注目したところが眼目です。神輿を担ぐ男衆でしょうか。<少しきつめ>か
ら、足首がきゅっと締まった、いなせな男振りが伺えます。

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41	ミルク飲む嬰の額や汗光る

予選でいただきました。丁寧に描写していますね。

42	臥する身に音のみ届く揚花火

 音しか聞こえないのが切ないですね。子規のことを思い浮かべました。

 坪野さんの選です。

43	雲の峰火口湖目指す長き列

 草津温泉の上にある白根山を思いました。

(国枝)富士山の頂上や阿蘇山の頂上の火口湖を想像しました。特に富士山の火口湖で
は延々と列を作って巡っています。そんな様子が見えてきました。

高橋幸子氏評================================

火口湖を目指す夏山登山の様子を、スケールの大きい視点でとらえていて圧巻です。

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44	喜雨を待つ老若男女顔の皺

まだ降っていない雨を「喜雨」ということに少し違和感を覚えました
。
45	ざんぶりと山湯に夏至の山男

下山か登山の途中か?いずれにしても最も日の長い時期の山の入浴の余裕というか平和
を感じました。

48	青葉闇吸ひ込まれゆく乳母車

闇に<吸ひ込まれゆく>という措辞ににかすかに不穏な感じも受けました。

国枝隆生氏評================================

乳母車が森の中に消えていく不思議な光景が見えてきました。一寸幻想的な印象でした。

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49	しぶき上げ浅瀬を駆くる日焼の子

元気な姿が良いですね。

50	ちひろの絵麦わら帽に蟹が乗り

中七下五が絵の描写でしたら、「蟹」は季語としては弱いと思います。取り合わせの句でしたら申し訳ありません。

51	灯涼し切子硝子のイヤリング

切子硝子に灯が映えて涼し気ですね。

52	古戦場跡の土塁や夏薊

 叙景の句は難しいですね。季語が動くかもしれませんが、それを言い出すときりがあ
りませんので「夏薊」で落ち着いた句になったと思います。

国枝隆生氏評================================

物だけの写生で一寸物足りないかもしれませんが、情景ははっきりしています。ただ
「土塁や」の切れ字が強いので、「夏薊」が弱くなっています。

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53	手花火や次女ほんのりと紅を差し

手花火に相応しい美しい句ですね。

54	梅雨深し破瑠戸打つ音ミシン音

破瑠戸を打つ音は雨の音だと思いますが、ミシンの音と誤解される怖れもあるかもしれ
ません。

55	石垣に瑠璃の残像青蜥蜴

感覚の良い句だと思いますが、<瑠璃の残像>ですから蜥蜴の<青>はいらないと思い
ます。

57	夏蝶の葉裏に縋る驟雨かな

「驟雨」も季語ですので気を付けましょう。

58	風青む早苗植えゆく手元より

手元より風が青む、というのが正直よく分からないのですが、、不思議な感覚ですね。

坪野さんの選です。

59	片陰を辿りて迷ふビルの街

 ビル街はことさらに暑いですから日陰を歩きますね。慣れない町ですと視界も偏って
道に迷います。

 坪野さんの選です。

高橋幸子氏評================================

特選でいただきました。面白い視点でとらえた御句で、類想が無いと思いました。迷
路パズルのような趣も感じられ、惹かれました。
 
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60	汗の衣を引き剥がしたる身軽さよ

<引き剥がしたる>に俳味を感じました。

(国枝)「引き剥がしたる」が大げさのような印象でした。

61	走馬灯母縁で待つ吾が帰り

(国枝)「母縁で待つ」が分かりづらいのですが、「母が縁先で待っている」という意
味でしょうか。助詞がなくて、一寸詰め込みの感。

62	復活の快挙プールに拍手わく

池江選手のことだと思いますが、来年になっても普遍性のある句かどうか?

63	噴水の風に崩るる放物線

高橋幸子氏評================================

噴水の対称形をした放物線が、強い風で崩される瞬間をよくとらえた御句だと思います。

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64	炎天の冷めぬ夕暮ドプラー音

炎天の<冷めぬ><ドプラー音>と飛躍した言葉が並びましたが、実際に(ドップラー
効果)の音を聞いたのか、言葉の綾なのか?いずれにしても私としては消化不良でした。

66	読み切れぬカラマーゾフの夏終はる

<カラマーゾフ>は本のことでしょうか?不思議な感覚の句ではありますが・・・。

67	秋近し伸びに伸びたりスカイツリー

スカイツリーが伸びるという感覚が分かりませんでした。

69	天道虫はじき追ひたることもして

天道虫と遊んでいるのでしょうか、気負いのない句柄に惹かれました。

71	遠ざかる祭ばやしや初浴衣

<遠ざかる>が良い雰囲気ですが、「祭」「浴衣」の季重なりが気になりました。

(国枝)遠い昔の郷愁を感じる句でした。

72	でで虫をつぶてに遊ぶ子を叱る

子供に対して<叱る>と常識で収めてしまったのが残念だと思いました。

75	梅雨空に音のみ残し飛行機去る

下六のリズムが悪いので下五に収まるように工夫してほしいです。例えば「機影去る」。

76	道の辺や百円野菜雲の峰

上五の<や>で切れて、<野菜>(体言)で切れて三段切れです。「道の辺の」とすれば
解消しますがどうでしょうか?

78	炎天をのしてローラー転圧機

<のして>は「伸して」でしょうか?分かりづらいので漢字の方が良いと思いました。

79	灯台へ草掻き分けて夏帽子

 「夏帽子」の措辞で良く茂った夏草の緑も見えてきますね。

国枝隆生氏評================================

灯台はどこでも道なき道を歩いて行くようなイメージですが、それを「草掻き分けて」
と写生したところに臨場感が出ています。

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81	白南風や旧街道の虫籠窓

予選で頂きました。「類句あり」の声が聞こえそうなのでネットで検索しましたが見当
たりませんでした。

国枝隆生氏評================================

同様な句で、「梅雨明けや旧街道の石畳」もありましたが、こちらは「白南風」の明る
さと「虫籠窓」の壁の白さが引き合っていると思いました。

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82	ふと吾に向ひし螢肩に附く

<ふと吾に>は殆ど意味のない修飾のような気がしました。

85	貴婦人の振舞い思ふ黒揚羽

<振舞い思ふ>が曖昧模糊として鑑賞しきれませんでした。

86	父の日の無為無策にてごろ寝かな

「父の日」は母の日に比べて比較的地位の低いイベントですので、気持ちはよく分かり
ます。

88	夏マスク少し恥らひ目を合はす

作中人物の人柄とか姿が見えてきませんでした。

89	高原の風の吹き出す冷蔵庫

冷蔵庫ですから冷っとしますが、それを<高原の風>という発想では俳味には遠いと思
います。

91	立葵塀の高さを越へにけり

報告の句のように思えました。

(国枝)もし文語で詠むなら「越えにけり」ですね。

92	風やさしねぶの木蔭のたち話

高橋幸子氏評================================

合歓の花の木陰で立ち話とは、素敵な景です。しかも優しく吹く風が心地よさを誘いま
す。<たち話>は<立ち話>とした方が、景がよく見える気がしました。

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93	朝顔のけさはそらいろ雨あがる

朝顔の花に光る雨の水滴も見えてきます。

国枝隆生氏評================================

「けさはそらいろ」の断定がよかったと思います。青空と朝顔の青が重なって強調され
ています。

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95	飛びついてゴロを抑える日焼けの子

予選でいただきました。<飛びついて>の勢いが良いので、<抑える>は省略できるよ
うに思いました。

坪野さんの選です。

国枝隆生氏評================================

一見して少年の草野球でしょう。「飛びついて」の勢いが「日焼けの子」にふさわしい
と思いました。

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96	黴の書は父健在の日のことを

上五は<は>ではなく<や>の方が句が生きてくるように思いました。

97	砂浜といふは裸足を誘ふもの

夏の砂浜の説明のように感じました。

98	薄ごろも細き絎針撓りけり

上五で切れていますので下五には切れ字は使わないほうが良いと思いました。

99	竹床几つめ切る夫の丸き背ナ

御主人の丸い背中を見つめる奥様。一緒に暮らした長い年月が走馬灯のように・・・と
いうのは大げさでしょうか?「竹床几」が良い雰囲気をかもしだしていますね。

101	アメンボの六脚が欲しロボティクス

機知の富んだ句ですね。理屈との隣り合わせの危うさを感じました。

102	君が背の「Fight!」眩しき夏の山

「Fight!」はTシャツのロゴでしょうか。若々しい句に好感を持ちましたが、<君>が
句を甘くしているように思いました。

高橋幸子氏評================================

若々しい作品です。二人で夏山登山している景ですね。先を歩く彼のシャツの背に
「Fight!」の文字。眩しいのは、夏山でなく、その文字かもしれません。

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103	余り苗残る命の片隅に

<残る命の片隅に>が分かりませんでした。観念が勝りすぎているように思いました。

104	行きつけの本屋更地に夏つばめ

予選で頂きました。町の本屋さんがどんどん減っています。「夏つばめ」が程よく効い
ていますね。

106	はじめての献血兄のサングラス

仲の良い兄妹なのですね。状況からそこそこ若いお嬢さんを想像しました。

107	空蝉のコンクリに付く都会派よ

木ではなくコンクリだから都会という理屈を感じてしまい、<都会派>への飛躍に共感
できませんでした。

109	梅雨出水響く大波つくりけり

<つくりけり>に説明を感じました

110	急旋回屋根に消えゆく燕かな

屋根に消えるぐらいで、<消えゆく>は大袈裟では?

111	後戻り出来ぬ人生かたつむり

季語の斡旋はとても良いのですが、<後戻り出来ぬ人生>は当たり前の教訓(ないしは
感慨)だと思いました。

(国枝)「人生」が大げさのような感じでした。

112	浴衣着てピアノ奏でる旅の宿

 優雅な旅ですね。

坪野さんの選です。

113	潮満ちて岸に浜木綿傾けり

静かな景色を淡々と描写されていますね。10句選に迷った句です。

114	呼び戻す旅の思ひ出大夕焼

思い出ですから、<呼び戻す>は言わずもがなの言葉ではないでしょうか。

115	梅雨明くる忠敬の道たづねけり

<たづねけり>が報告なので<忠敬の道>を描写してください。

116	梅雨明けや旧街道の石畳  

出来ている句ですが、<旧街道>のようなよく使われる言葉ではなく、街道の様子を描
写してみてはどうでしょうか

117	水平線のぼる朝日や敗戦日

良い句だと思いますが、どんな季語を持ってきても成立する句のように感じました。

118	ゆふだちの海たたきつつ来たりけり

豪快で臨場感のある句ですね。夕立の壁のようなものが前面から迫ってきたことに遭遇
したことがあります。そんなことを思い出しました。

国枝隆生氏評================================

一物仕立ての力強さを感じました。「海たたきつつ」の写生に夕立の勢いが見えました。

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119	雨上がり湖面に映る青葉濃し

雨が上がって湖面の青葉がさぞ美しかったと思います。吟行では皆この場面でどう表現
しようかと悩みます。心を静かにして技巧に走らないのが良いのですね。

国枝隆生氏評================================

青葉が登場することから、山の湖を感じました。山の静かさが伝わってきます。

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121	第二ボタン外すシャツの背冷房車

背中で冷房を感じているということは電車?の中で立っているのですね。上六が惜しい
ですが<第二ボタン外す>で暑さも疲れも伝わってきます。省略の効いた佳句だと思い
ます。


第265回目 (2021年6月) HP俳句会 選句結果
【  武藤光リ 選 】
  特選 石一つ外し走らす田植水 雪絵(前橋市)
   立葵少年の背のぐんと伸び 田中洋子(千葉市)
   ダム放水残雪の山揺るがしむ      貝田ひでを(熊本県)
   艶やかに波打つ甍迎へ梅雨 吉沢美佐枝(千葉県)
   手枕に潮騒届く夏座敷 妙好(名古屋市)
   菱の花薄日射したる細き雨 素焼(さいたま市)
   サナトリウムありし丘なり濃紫陽花 石塚彩楓(埼玉県)
   迷い人保護と放送青葉風 町子(北名古屋市)
   かち割りに揺るる梅酒の琥珀色 小豆(和歌山市)
   大空へ子蜘蛛の一糸風にのり 野津洋子(愛知県)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 指揮棒は割り箸夏の河川敷 石塚彩楓(埼玉県)
   立葵少年の背のぐんと伸び 田中洋子(千葉市)
   鈍色にけぶる山並走梅雨      田中勝之(千葉市)
   教会の尖塔目指すつばくらめ 正男(大津市)
   缶詰の蓋に海の絵夏初め 大原女(京都)
   優勝を決めしスマッシュ若葉風 きょうや(東京)
   石一つ外し走らす田植水 雪絵(前橋市)
   蛍狩幼抱つこのシェルエット 周桜(千葉県)
   空を切るキッカーの脚夏つばめ 椋本望生(堺市)
   かち割りに揺るる梅酒の琥珀色 小豆(和歌山市)
【  伊藤範子 選 】
  特選 二杯目のビール感想戦佳境 幹弘(東京)
   立葵少年の背のぐんと伸び 田中洋子(千葉市)
   投函の鈍き余韻や走り梅雨      雪絵(前橋市)
   木屑敷く園の小径や射干の花 幸子(羽沢南1-3-18)
   手枕に潮騒届く夏座敷 妙好(名古屋市)
   朝凪や仔犬の遊ぶ潮だまり 梦二(神奈川県)
   指揮棒は割り箸夏の河川敷 石塚彩楓(埼玉県)
   線となる窓の雫やさみだるる 美凡(愛知県)
   梅雨寒や服薬の白湯柔らかき 百合乃(滋賀県)
   かち割りに揺るる梅酒の琥珀色 小豆(和歌山市)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 ダム放水残雪の山揺るがしむ 貝田ひでを(熊本県)
   牛乳をコップ一杯夏来たる みぃすてぃ(神奈川県)
   梅雨深し薬箪笥の鐶の数      康(東京)
   優勝を決めしスマッシュ若葉風 きょうや(東京)
   石一つ外し走らす田植水 雪絵(前橋市)
   投函の鈍き余韻や走り梅雨 雪絵(前橋市)
   手枕に潮騒届く夏座敷 妙好(名古屋市)
   点滴の縷々と卯の花腐しかな みのる(大阪)
   夏蝶の縺れて海に向ひけり 櫻井 泰(千葉県)
   かち割りに揺るる梅酒の琥珀色 小豆(和歌山市)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、雪絵さん(前橋市)、小豆さん(和歌山市)でした。「伊吹嶺」6月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


               2021年6月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

1	風五月ツーリング列もう見えぬ

 自転車かバイクのツーリング集団でしょう。初夏の風の中をあっという間に駆け抜け
てゆくその背中を見送る作者。かつての自分を投影しているのかもしれませんね。

2	汗するも充ちるも無くて暮れゆけり

 無為に過ごしてしまった一日を悔やんでいるのでしょうか? ちょっと観念的過ぎて、
具体的な映像が浮かびませんでした。

3	立葵少年の背のぐんと伸び

 初夏に成長し、下から上にどんどん咲いてゆくタチアオイと、成長期の少年は良く似
合いますね。ただ、似合い過ぎて、やや「付き過ぎ」の感があります。

 奥山ひろ子氏評===============================

勢いがある花と、成長期の少年の組み合わせが、生き生きしていると思いいただきまし
た。〈ぐんと〉が効いていますね。

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 伊藤範子氏評================================

立葵ののびやかな姿と重なって成長ぶりに目を細めている様子が浮かびます。

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4	紫陽花に駅の名隠るホームかな

 駅のホームに花壇があって、駅名表示が隠れるように紫陽花が育っているのだと思い
ますが、そんな状態になるまで、駅員が放置するのかな?と、疑問に思ってしまい、作
りごとめいているような気がしてしまいました。

5	鈍色にけぶる山並走梅雨

 情景はよくわかりますが、走り梅雨に限らず、雨の日には同じような景が見られるの
ではないかと思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

基本的な写生句と思いました。〈鈍色にけぶる〉が山並みを描いていると思います。さ
らに独創的な発見があると個性が出ると思います。

 ======================================

6	風の道見える青田となりにけり

 情景の見える気持ちの良い句ですね。ただ、類想は多いと思います。また、「青田」
という季語だけで、風が吹き抜けてゆく景まで見えて来ますので、「季語の説明」的な
句という印象も受けました。

7	感嘆符封じ静かの薔薇見会

 コロナ禍で、大声での会話が禁止されているのでしょうか。「感嘆符を封じる」とい
う表現が独特で面白いと思いました。

8	園庭に未来たすくと鯉のぼり

 「未来たすく」の意味が分かりませんでした。「たすく」が「託す」の誤記だと考え
ると、「子供たちに未来を託すと言っているような鯉幟が(幼稚園などの)園庭に立て
られている」という意味に解釈できるかと思いますが、それも主観的ではあります。

9	教会の尖塔目指すつばくらめ

 教会の尖塔と燕の取り合わせが良いですね。「目指す」ちょっとが安易なので、推敲
をして欲しいと思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

鋭い尖塔を目指すつばめの様子が浮かびました。燕の飛び方も鋭いのでキリっとした御
句ですね。教会という場面設定がいいですね。

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10	単線の電車見送る蝸牛

 単線ということで、ある程度鄙びた線路沿いということは想像できます。願わくば、
蝸牛が「見送る」という作者の見立てではなく、電車とカタツムリのもっと客観的な写
生が欲しいと思いました。

11	川渡る茅花流しの手漕ぎ舟

 茅花流しが吹く中での手漕ぎ舟の様子を詠まれていますが、「川渡る」は舟の描写と
してちょっと平凡かつ大雑把かと思いました。

12	泰山木夕日集むる花ひとつ

 泰山木の白い花が夕日に映えているところを、「夕日集むる」とうまく表現されたと
思います。「花ひとつ」も、そこに作者の視線が集中していることを感じさせますね。

13	籠もり居やピンクのマスク簡単服

 家に籠っているから簡単服で済ませているという理屈が感じられます。また、上五、
中七、下五で切れる三段切れとなっているため、調べが途切れてしまっています。

14	妻の愚痴遠慮気味なる昼寝覚 

 句意がよくつかめませんでした。昼寝をしていたのは、作者でしょうか、妻でしょう
か?

15	牛乳をコップ一杯夏来たる

 一見、季語が動くようにも思いましたが、腰に手のポーズで飲む風呂上がりの牛乳の
イメージとリンクすると、季語がしっくりきて、夏の実感が湧いてきます。

16	梨若葉去年より今年気は若し

 意気軒高で何よりですが、作者の主観を述べただけでは、読者は「ああ、そうです
か。」と言うしかありません。「梨若葉」という季語も、見慣れない感じを受けました。

17	缶詰の蓋に海の絵夏初め

 夏→海という連想が、ちょっと安易に思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

楽しい缶詰ですね。何の缶詰か想像を膨らませるのが楽しいです。

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18	今朝の夏野の花活ける薬瓶

 季語が動くように思いました。薬瓶ですから、一輪挿し程度もしくはそれより小さい
ものだと思います。夏の元気旺盛な草花を活けるには、ちょっと不似合いに感じます。

19	難題の微分積分目借時

 微分や積分と言えば、難しい数学というイメージがありますので、「難題の」と言う
必要があるかどうか、疑問に思いました。また、よく「微分積分」とセットで言われま
すが、今悩んでいる問題は微分なのか積分なのか、きちんと区別した方が良いと思いま
す。

20	ダム放水残雪の山揺るがしむ

 雄大な景ですね。「残雪」は本来春の季語ですが、初夏になっても雪が残っている高
地のダムが描かれています。本当は「揺るがしむる」とすべきかと思いますが、字余り
を避けるのであれば、「揺るがしめ」等も良いかもしれませんね。

21	湯けむりを裂きて奔流鮎の宿

 「奔流」というと、人間なども押し流されてしまう強い流れを想像しますので、そん
なところで鮎釣りなどできるのか、疑問に思ってしまいました。

22	雨上がる森の蜘蛛の囲詳らか

 蜘蛛の巣に水滴が付いて見つけやすくなったという句意かと思います。「詳らか」と
まで言わずとも、蜘蛛の巣の様子を写生することで、それは伝わると思います。
例:「蜘蛛の囲の皆光りたる雨上がり」

23	梅雨兆す観音堂に人の声

 観音堂に人の声がするのは珍しいことなのでしょうか? この描写で、作者が何を言
いたいのかが、よくわかりませんでした。

24	梅雨深し薬箪笥の鐶の数

 古い薬舗でしょうか。ちょっと薄暗い店内のイメージと、季語がよく似合っていると
思いました。店に染み付いた薬の匂いも伝わって来ます。

25	満ちてなほ青葉の滾り瀬を下る

 「満ちてなほ青葉の滾り」は、季語の説明に感じられます。青葉というだけでは不足
でしたら、万緑や結葉というような季語を使ってみてはいかがでしょうか。

26	鬼雨の夜煮穴子舌に崩れゆく

 激しい雨の音を聞きながら、ふっくらと煮上がった穴子堪能されているのでしょう。
上五を「鬼雨の夜や」とはっきり切れを入れると、更に良くなると思いました。

27	ちぎり絵の静にならぶてんとう虫

 ちぎり絵でてんとう虫を描いたのか、てんとう虫の背中の模様をちぎり絵に見立てた
のか、良くわかりませんでした。

28	つゆ晴れ間乾いた声の鳥の朝

 気持ちの良い五月晴の朝の景ですね。「乾いた声」というのが、梅雨晴にやや付き過
ぎているような気もしました。「梅雨晴の朝や満ちたる鳥の声」「梅雨晴や朝に満ちた
る鳥の声」等、推敲してみては如何でしょうか?

29	風止んで無数の牡丹揺れ止まず

 観察が鋭いですね。「無数の」という描写がちょっと大雑把に感じられますので、も
う少し具体的な写生をされると更に良くなると思いました。

30	雉鳩の声くぐもりて梅雨に入る

 季語の斡旋がお上手だと思いました。「声くぐもりて」と下五に繋げるのが良いか、
「声のくぐもり」と切るのが良いか、迷いますね。

31	知らぬ間に鉛筆でとる祭拍子

 祭拍子は聞きなれない言葉で、祭囃子の間違いかと思いましたが、鉛筆で「とる」と
なっていますので、拍子なのでしょうね。祭囃子の拍子の意かと思いますが、下五の字
余りも含めて再考したいところです。

32	ぬばたまの闇より生まる蛍かな

 幽玄で格調のある句と思いましたが、「闇より生まる蛍かな」は、類句・類想が多い
ように感じました。また、枕詞は、古式床しい感じを出すのに有効ですが、言葉を極限
まで切り詰めなくてはならない俳句で使うのは難しいですね。本来は「ぬばたまの闇」
とすべきところを、俳句では「ぬばたま」だけで使うというような例もあるようです。

33	洗濯屋窓にすがしき夏うぐひす

 「窓にすがしき」が洗濯屋に掛かるのか夏鶯に掛かるのかが不明瞭で、状況がよく分
かりませんでした。作者はクリーニング屋さんなのでしょうか?

34	池の面に水輪の雫青時雨

 「水輪」は水面にできる円形の波紋なので、「水輪の雫」が何を指すのかがよく分か
りませんでした。

35	引明けの一日花に蟻一つ

 「引明け」は、明け方、夜明けのことなので、「引明けの一日」の意味がよく分かり
ませんでした。また、俳句で「花」と言えば桜のことを指しますが、この句では「蟻」
という季語も使われていますので、素直に読むと季重なりということになります。
* 作者より、「一日花」は「一日でしぼんでしまう花」(例アサガオ)の意であるとの
 御連絡を戴きました。

36	柿の花零るる午や鶏奔る

 上五中七の静謐な雰囲気と、下五の喧噪がミスマッチな感じを受けました。

37	栗の花匂ふ御寺の翳深し

 栗の花の独特な匂いと、静かな寺の雰囲気が似合っていますね。ただ、「御寺」とい
う表現が句を弛緩させていると感じます。音数を合わせる都合もあるのでしょうが、俳
句では「寺」としたいものです。

38	優勝を決めしスマッシュ若葉風

 スカッと気持ちの良い句ですね。「優勝を決めし」がちょっと観念的で説明臭さがあ
りますので、たとえば「線上に決めし」等と、具体的な一打を描写するのも良いと思い
ます。

 奥山ひろ子氏評===============================

〈優勝〉〈スマッシュ〉が力強いことばですね。一瞬のボールを打つ音が聞こえてきそ
うです。「若葉風」の季語でさわやかな勝利になってると思います。

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39	炎天のジャズ・フェスティバル三千人

 「三千人」と、敢えて字余りで用いた具体的な数字が活きていないように感じました。
オーディエンスの人数を言わなくても、屋外のジャズフェスであれば、大勢の人がいる
ことはわかります。

40	冷酒や最期はバンとそれも良き

 死ぬ間際に冷酒を飲みたいという意味でしょうか? 「バンと」が何を形容しているの
か、よく分かりませんでした。酒をバンと飲むという表現であれば、斬新さよりも違和
感を強く感じます。

41	やまんばや梅雨茸嬉嬉と装へる

 句意がわかりませんでした。山姥が梅雨茸をアクセサリーにしているという想像句で
しょうか?

42	鳥を追ふ老婆背には夏の蝶

 「鳥を追ふ老婆」が、何となく鬼気迫るものを感じさせますが、その背中では夏の蝶
が軽やかに舞っていると・・・、状況がいまいちよく分かりませんでした。

43	眠れぬやビール一杯七七日

 誰かの四十九日に、寝付けないので寝酒にビールを飲んだということかと思います。
作者と四十九日を迎えた故人の関係がわからないと、状況が浮かびませんね。三段切れ
なのも気になりました。

44	艶やかに波打つ甍迎へ梅雨

 梅雨を迎えるのは鬱陶しいものですが、こういう小さな発見があると嬉しいですね。
中七、下五が名詞止めとなっていますので、中七は「甍波打つ」とするのも良いかと思
います。

45	俤や遺句をひもとく蛍の夜

 静かに誰かを偲んでいる夕べですね。「遺句をひもとく」で、その人を思ってること
はわかりますので、上五は推敲の余地があるように感じました。たとえば、誰かが具体
的にわかるようにする等。

46	念入りに化粧たしなむ梅雨晴間

 惹かれる句ですが、晴れた→お出かけ→念入りに化粧という理屈が感じられるのが残
念に思いました。季語を「走り梅雨」とか「梅雨湿り」等にしてしまった方が、鬱陶し
い時期にも関わらず、丁寧な生活を送っている作者の様子が見えてくると思います。ま
た、「化粧たしなむ」は、「ふだんから化粧をしている」という意味と思いますので、
「念入りに化粧たしなむ」という表現は、ちょっと気になりました。

47	夏霧の覆うて鎮もる八ヶ岳

 「覆うて」は無くても霧が山を覆っていることはわかりますね。「鎮もる」も省けそ
うな気がしますので、動詞を減らすよう推敲されては如何でしょうか。

48	荒梅雨や遠白波の熊野灘

 荒々しい海の光景が見えて来ます。地名が活きていますね。

49	サーフィンの乗つて呑まれて波しぶく

 サーフィンという季語を説明しているように感じました。

50	梅雨曇外灯ともる昼散歩

 曇→暗い→外灯をともすという理屈が感じられます。昼散歩という言い方も、ちょっ
と無理やりさを感じました。

51	有り難のワクチン接種梅雨晴間

 「有り難の」の気持ちは、季語が語ってくれます。上五を工夫するともっと良い句に
なると思います。

52	石一つ外し走らす田植水

 水を止めている石を外した一瞬を書き留めた句ですね。時間的にも空間的にも一点に
絞って詠まれていますが、その外側の大きな景や時間経過も見えて来ます。

 武藤光リ氏評================================

  普通の言葉で、事実の報告の中に農民の生活がよく表れている。走らすで動きも、
映像も出た。

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 奥山ひろ子氏評===============================

田に水を入れるときの一瞬の水の勢いを感じました。〈走らす〉がいいですね。

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53	投函の鈍き余韻や走り梅雨

 「鈍き余韻」になるほどと思いました。季語の斡旋もお上手です。

 伊藤範子氏評================================

ぐずついた天気のなかの投函の音にかすかに余韻を感じた感覚が良いと思いました。

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54	緋牡丹に透明の傘路地住ひ

 牡丹の花に雨が当たらないようにビニール傘をさしかけているのですね。「路地住い」
だと路上生活者のような感じもしますので、路地の様子を具体的に写生してはどうでしょ
うか?

55	いつの間に居酒屋消えて梅雨に入る

 コロナ禍詠でしょうか? 季語が無常観を漂わせていますね。

56	水上ぐる力ありけり花菖蒲

 「水上ぐる力ありけり」は、根から水を吸い上げる力という意味でしょうか? それ
は他の植物も同じだと思いますが…。

57	二度踏みし消毒ペダル梅雨深し

 足踏み式の消毒液ディスペンサーですね。なんとなく二回踏んでしまう人も多いので
はないでしょうか。季語が、先の見えないコロナ禍を連想させ、やるせなさが伝わりま
す。

58	眠気さす頃と知ってか蚊の羽音

 まったく寝入り端に聞く蚊の羽音には、いらいらさせられますね。「眠気さす頃と知っ
てか」は作者の実感でしょうが、やや観念的に感じられました。

59	蒲公英の群れなびく野や風を見る

 上五中七で風が吹いていることはわかりますので、下五は視線や発想を大きく変えて
みては如何でしょうか。

60	梅雨晴や記念樹の葉の光りあひ

 「記念樹」は、作者にとっては特別な木でしょうが、読者にはその姿かたちが見えて
きません。「葉の光りあひ」を、青葉光、若葉光等に換えて仕立て直すのも一案かと思
います。

61	桟橋へ続く路地裏夕薄暑

 「路地裏」は、路地の奥まったところという意味で、「路地裏の長屋」等と言います
ね。この句の場合は「裏路地」の方が良いと思います。

62	故郷に羽を伸ばせり閑古鳥

 羽を伸ばしているのは、作者とも閑古鳥とも取れます。それを狙ったダブルミーニン
グでしょうか?

63	船影の波間に二三海女の笛

 船影は船の姿のことなので、「船影の波間」がどういう様子を言っているのかがよく
分かりませんでした。また、海女さんは繰り返し潜水し、その都度呼吸音がすると思い
ますので、「二三」という数の限定が不自然に感じました。

64	木屑敷く園の小径や射干の花

 植物園等の遊歩道に木のチップが敷かれているのは珍しいことではありませんので、
上五中七はもう少し工夫があると良いと思いました。「園の」は無くても良いと思いま
す。「射干」は著莪(しゃが)と檜扇(ひおうぎ)の両方を指しますが、この句の場合
は著莪だと思いますので、特に理由が無ければ著莪の表記の方が分かり易いと思います。

 伊藤範子氏評================================

「木屑敷く」の写生が効いていると思いました。

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65	観音堂裏仄暗く射干の花

 著莪の花は、あまり日当たりの良いところは好みませんので、寺社の裏などで良く見
られますね。お堂の裏と言えば、「仄暗く」は言わなくてもわかるような気がしました。

66	腰痛にことよせ逃がれ溝浚へ

 良くあることと思いますが、句としては報告の域を出ていないように感じました。あ
まりズルをして、ご近所から苦情が出ないようにしてください。

67	新薬に株価暴るる梅雨晴間

 季語が動くように思いました・・・というより、そもそも上五中七が俳句の材料とし
て適切かどうか、疑問に感じました。

68	父の日のお祝せがむ八十路かな

 茶目っ気のあるお爺ちゃんですね。「お祝」のような丁寧語は俳句に不似合いな場合
が多いですが、この句ではうまく活かされています。

69	蛍狩幼抱つこのシェルエット

 「シェルエット」は「シルエット」のことかと思います。蛍狩りでは、足元が危なかっ
たりするので子供は抱いてあげたり、暗いので他の人が影に見えたりするのは当然です
ので、もう一工夫欲しいと思いました。ちなみに、シルエットの語源は仏の人名で、ス
ペルはsilhouetteです。私は最初読めませんでした。

 奥山ひろ子氏評===============================

「蛍狩」といえば真っ暗な光景が浮かびますが、掲句は少し明かりがもれているのでしょ
うか。面白い点に着目されました。〈シェルエット〉は「シルエット」でいいと思いま
す。

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70	美容師のシャンプー清し梅雨晴間

 「美容師のシャンプー清し」は、美容師が使っているシャンプー液は清潔だという意
味でしょうか? それとも、美容師にしてもらうシャンプー行為は清々するという意味
でしょうか? どちらにしても、言葉が消化不良的に感じました。

71	ざぶざぶと辣韭洗ふ外流し

 情景がよくわかりますが、土付きの辣韭を外流しで洗う様子の描写として「ざぶざぶ
と」は、かなり陳腐に感じました。

72	炎天下手に鍵のこる更地かな

 古い自宅を取り壊したのでしょうか。上五の季語が、やるせなさと諦めの混じった複
雑な感情を伝えます。

73	夏帽子母と見違ふシルバーカー

 上五と下五が名詞になっている句を、俗に「観音開き」と言い、あまり良くないこと
とされています。この句の場合は、上五と下五を入れ替えても句が成り立ってしまいま
す。また、具体的(すぎる)映像を持つ名詞ががっちりと両端を押さえているため、読
者の想像が入り込む余地を無くしてしまっています。

74	夏夕べ米一合を洗ひ上げ

 米は「洗う」ではなく「研ぐ」では?と思いましたが、「無洗米」などとも言います
し、最近は精米技術が向上して、研ぐ必要は無く、さっと洗うだけで良い米が多いので
しょうか? 句に戻って、「米一合」をどう解釈するか、迷いました。若い人なら一人
で一合の御飯を食べるでしょうが、年配の方でしたら夫婦で一合あれば足りると思いま
す。作者はどんな気持ちで、一合の米を洗ったのでしょうか?

75	手枕に潮騒届く夏座敷

 いいですね。こういう夏座敷でのんびりしたいものです。

 伊藤範子氏評================================

海近くの日本家屋か旅館でくつろぐ様子「潮騒届く」が良いですね。

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76	点滴の縷々と卯の花腐しかな

 いつ終わるとも知れない点滴、いつ止むともしれない雨、作者の沈んだ気持ちが滲み
ます。

77	かはほりやひともし頃はひと恋し

 「ひともし頃はひと恋し」は、ややありきたりの発想・表現に感じました。一読、NSP
というフォークグループの「夕暮れ時はさびしそう」という曲を思い出しました。

78	梅雨晴間干し網揺るる浜の昼

 情景が良くわかる句ですが、前述の「観音開き」となっていますので、上五は「梅雨
晴や」とはっきりと切字を入れたいところです。

79	入母屋の青き瓦や梅雨晴間

 青い(青緑色)瓦は、30〜40年ほど前に流行ったそうですね。屋根の形が入母屋
であること、瓦が青緑色であることが、梅雨の晴れ間の気持ちよさとどう響きあうのか
が、いまひとつ伝わりませんでした。

80	新緑の樹々をくぐりて句を練りぬ

 楽屋落ち的な句ですね。上五中七は、いろいろ言い換えができますね。「新涼の庭を
廻りて」「紅葉の樹々をくぐりて」等々

81	飛び交ひし蛍もしるや親子ずれ

 「親子ずれ」は、「親子擦れ」ではないでしょうから、「親子連れ(づれ)」のこと
かと思います。蛍が、通りかかった親子連れのことを見知っているという意味でしょう
か?句意がいまひとつわかりませんでした。

82	明け六つの空気旨かり夏めきぬ

 俳句では、古い言葉や文語文法、旧仮名遣いなどが使われますが、さすがに「明け六
つ」という表現を使う必要性があるか、疑問に感じました。夜明けの頃を表す表現は、
他にもいろいろあると思います。また、夜明けの空気を美味しく感じるのは、初夏に限っ
たことではありませんので、季語が動くように思いました。

83	五月雨て門灯仄かに滲みたる

 雨のせいで灯りが滲んで見えるというのは、普通にある現象と思いますので、それを
そのまま言うだけでは報告の域を出ないように感じました。

84	朝凪や仔犬の遊ぶ潮だまり

 気持ちよく、微笑ましい光景ですね。潮だまりにはイソギンチャクやヤドカリがいた
り、取り残された魚が泳いでいたりしますので、子犬の興味も尽きないのでしょう。

 伊藤範子氏評================================

元気な仔犬が遊ぶ様子が可愛らしいと思いました。

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85	新米の女教師や田植唄

 田舎の学校に赴任した女教師でしょうか? 二十四の瞳を思い出しました。「新米」
は「新前」のことと思いますが、ちょっと馬鹿にしたようなニュアンスも含みますので、
「新任の」では如何でしょうか。

86	葉桜や港の丘に別離あり

 五七五の俳句で詠むには不適切な句材のように思います。短編小説にでもしてみては
如何でしょうか?

87	生ぬるき風はうなじを夏至夕べ

 夏至→暑い→風がぬるいという理屈が感じられます。

88	麦秋の風に息巻くコンバイン

 麦の刈り入れの景と思います。そのまま「麦刈」という季語がありますので、それを
使って仕立ててみては如何でしょうか?

89	山門の仁王を叩く男梅雨

 梅雨や男梅雨は、期間を指して言う言葉で、降る雨そのもののことではありませんの
で、男梅雨が仁王を叩くという表現には違和感を覚えました。また、仁王像は通常寺の
門(山門)にありますので、上五は不要と思います。

90	音高く植田に注ぐ水豊か

 「音高く」で、水が豊かなことはわかりますね。

91	皮脱いで瑞々しけり今年竹

 句が、「今年竹」という季語の説明になってしまいました。「今年竹」というだけで、
読者は皮脱いで瑞々しい竹の姿を想像します。「瑞々しけり」は、「瑞々しかり」とす
べきかと思います。

92	夏蝶の縺れて海に向ひけり

 一句一章で勢いよく言い切った気持ちの良い句です。遥かに海を望む丘に立って、彼
方に飛んで行く蝶を見送る作者が見えます。

93	夏空や洗濯終了電子音

 中七に助詞「の」が省かれているため、三段切れとなり、リズムが途切れ途切れの句
となってしまいました。また、夏空→晴れ→洗濯という理屈が感じられます。

94	木戸開けて誰を招きぬ百日紅

 百日紅が木戸を開けたり、誰かを招いたりしているように読めてしまいました。

95	菱の花薄日射したる細き雨

 観音開きの句ですね。薄日の場合は「差す」の字の方が適切かと思います。

96	新緑や念珠ますます透きとおる

 水晶の念珠でしょうか。明るい季節の中に置かれ、一層輝きを増したように見えるの
でしょうね。どういう状況で、新緑の中で念珠を持っているのかがわかると、一層よかっ
たと思いました。

97	巣立ちそうご近所さんを呼びにいく

 季語は入っていますが、俳句(韻文)というより、散文の一節のような印象を受けま
した。

98	サナトリウムありし丘なり濃紫陽

 かつて、家族か知人が療養していたサナトリウムでしょうか? 静かに往時を偲ぶ姿
が、季語から伝わります。

99	指揮棒は割り箸夏の河川敷

 「指揮棒は割り箸」が具体的で面白いですね。指揮棒を持っておらず、割り箸で代用
したということは、当初は演奏する予定はなく、その場で突発的に演奏することになっ
たということでしょう。そうすると、楽器が必要な吹奏楽等ではなく、コーラス部でしょ
うね。夏休みにBBQでもしているところでしょうか? ただ、夏の炎天下の河川敷はちょ
っとハードすぎる気もします。もうちょっと穏やかな季節であって欲しいと思ってしま
いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

にわか合唱隊の練習でしょうか。さわやかな河川敷で楽しそうな練習風景が想像できま
した。〈割り箸〉が眼目で、お昼ご飯(コンビニ弁当?)の後の風景ではないかと拝察し
ました。句材も独創的で、夏ののんびりした雰囲気が伝わり特選とさせていただきまし
た。

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 伊藤範子氏評================================

バーベキューでしょう。仲間とどんな歌を歌ったのでしょう。楽しそうです。

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100	迷い人保護と放送青葉風

 地域の防災行政無線ですね。季節を問わず時々ある放送なので、この季語を選ばれた
必然性がいまひとつピンと来ませんでした。個人的には、秋や冬の夕暮れなどの方が似
合うように感じました。

101	吊り橋の揺れと歩むや風薫る

 「揺れと歩む」が工夫された表現と思いますが、吊り橋を渡るときには当然歩きます
ので、「歩む」と言う必要があるでしょうか? 

102	十薬の白く浮き立つ雨上がり

 十薬の白い花は、薄暗いところでも目を引きますね。ただ、そのイメージはすでに十
薬という季語に織り込み済みですので、「白く浮き立つ」は季語の説明的に感じられま
した。

103	ワクチンは小さなあかり枇杷熟るる

 希望の灯りということでしょうか。観念的であることが気になりましたが、熟れた枇
杷の色が胸の中の希望を象徴しているように感じました。

104	機影なく低き爆音梅雨曇

 重い爆音が、どんよりとした曇り空に響いて、重苦しい雰囲気を醸しています。ただ
の曇りではなく、梅雨曇りである点が効果的ですね。

105	背伸びして泰山木の花の顔

 泰山木の花は高いところに咲くので、「背伸びして」はわかるのですが、「泰山木の
花の顔」はどういう意味でしょうか? 花の様子を見たとも取れるし、作者の顔が泰山
木の花になったとも取れます。

106	緑陰に風の湧きゐる夕べかな

 緑陰は、木が強い日差しを遮ることによってできる涼しい木陰で、日差しが弱まる夕
べには緑陰と呼ぶのはふさわしくないように思いました。

107	色白の細き腕も日焼けして

 「色白の細き腕」の人物像が全く見えませんので、作者が何を言いたいのかわかりま
せんでした。また、切れが無く、散文的なところも気になりました。

108	梅雨寒に備へふくらむ旅鞄

 理屈っぽい句に感じました。梅雨→寒い→服を増やす→鞄が膨らむという因果関係を
語っているからですね。

109	線となる窓の雫やさみだるる

 窓ガラスについた水滴が垂れ落ち、やがていくつかが連なって線となって流れ落ちて
行く様子をじっと見ている作者の姿が見えて来ます。外の、ぼんやりした街の様子など
も、浮かんで来ますね。

 伊藤範子氏評================================

点だった雨粒が次第に線になって伸びていく。そんな様子は車窓でもよく見受けられま
す。五月雨の雰囲気を言い得ていると思いました。

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110	あぢさゐの丸きポストは古稀の色

 句の意味が分かりませんでした。「丸きポスト」は、紫陽花の花の比喩的表現でしょ
うか? また、「古稀の色」とは? よもや、樹齢70年の紫陽花という意味ではない
と思いますが。

111	空を切るキッカーの脚夏つばめ

 サッカー選手が、キックを空振りしたのでしょうか?

 奥山ひろ子氏評===============================

季語「夏つばめ」により、俊足キッカーを連想しました。力強い若々しい〈脚〉ですね。
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112	母逝くまで綴りし日記濃紫陽花

 紫陽花に、お母様を偲んでいる気持ちが込められています。上五の字余りは、何とか
したいところですし、推敲すれば何とかできると思います。

113	梅雨寒や服薬の白湯柔らかき

 気持ちが沈みがちになる季節ですが、薬を飲むための湯のぬくもりにちょっとホッと
したという感じでしょうか。「柔らかき」から安堵感が伝わります。

 伊藤範子氏評================================

白湯は水道水と違って確かに柔らかいですね。薬もよく効く事と思いました。

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114	言葉尽き雲の迅さや夏薊

 何かドラマチックなものを感じます。ただ、ストーリー的な物を表現するには、五七
五は短か過ぎます。

115	間諜のごと城址を黒揚羽

 面白い比喩ですね。黒揚羽が、忍者の黒装束も連想させますね。

116	どくだみの花東浄を明るうす

 「明るうす」は、答えを言ってしまっているようなもので、俳句ではそこまで言って
は言い過ぎです。「明るうす」と言わずに明るく感じられる様子を詠みたいですね。

117	明日もまたよき日であれと夕端居

 心穏やかな日を過ごされたことがわかります。ただ、主観的過ぎますので、心穏やか
な様子が読者に伝わるような、具体的な物や景色を詠みたいものです。

118	自粛裡の二駅の旅梅雨晴間

 コロナ禍で様々なことの自粛が求められる中の二駅分の乗車、そしてそれを旅と呼ぶ
ことがどういう意味なのか、いまひとつ伝わって来ませんでした。

119	窓框きしきし軋む梅雨入かな

 状況は理解できます。ただ、梅雨→湿気→窓がきしむという理屈が感じられます。
「きしきし軋む」も、冗長な表現に感じました。

120	ダンディの仕上げは粋な夏帽子

 句の意味を理解するのに3回ほど読み直しました。私の場合、「ダンディ」でひょっ
こりひょうたん島の登場人物が頭に浮かんでしまうので、作者には申し訳ありませんが、
剽軽な句と感じられてしまいました。

121	かち割りに揺るる梅酒の琥珀色

 「かち割り」は西日本の言い方らしく、東日本ではあまり聞きませんが、語感が、い
かにも角が立って透き通った硬い氷をイメージさせますね。グラスを揺らしながら梅酒
の古酒を味わいつつ、回想に耽る作者が思われます。

 奥山ひろ子氏評===============================

〈琥珀色〉の措辞から今年の梅酒ではなく、数年物の梅酒ではと思いました。〈かち割
り〉がうまいと思いました。おいしそうですし、具体的です

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 伊藤範子氏評================================

冷蔵庫で作った氷でなく「かち割り氷」が一層美味しそうです。氷によって変わる梅酒
の変化が見えます

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122	大空へ子蜘蛛の一糸風にのり

 「雪迎」という季語(晩秋)の説明になってしまいました。

123	寝間で聞く夜鷹の声の妖しけり

 「妖しけり」は言い過ぎです。主観的な言葉を使わずに、その気持ち・雰囲気が伝わ
るように詠みたいですね。

124	つややかな穂麦の波や風清し

 風に揺れる穂麦の様子を写生されました。「つややか」「清し」に、作者の主観が強
く感じられるのがちょっと残念です。

125	ほととぎす密やかに啼く細雨かな

 私には、あの鳴き声は「密やか」には聞こえませんので、句に共感できませんでした。

126	片陰や子の泣き声の遠ざかる

 作者は日陰にいて、遠ざかる子供の泣き声を聞いているのでしょうか? なぜ子供が
泣いているのでしょう? 状況がよく分かりませんでした。

127	二杯目のビール感想戦佳境

 面白い句材ですね。作者は将棋がお好きなのでしょう。TVの感想戦に釘付けになって、
ついついビールが進んでしまうのだと思います。「二杯目の」だと、居酒屋などでジョッ
キのお代わりをしているイメージなので、自宅でのTV観戦でしたら「二本目の」の方が
よりリアルかと思います。

 伊藤範子氏評================================

題材が新鮮です。将棋に感想戦があることを知り、ネットテレビで放送された先日の棋
聖戦を思ったりしました。

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