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選句結果
     
第227回目 (2018年5月) HP俳句会 選句結果
【  坪野洋子 選 】
  特選 ちゃぶ台に刺子の布巾豆の飯 彩楓(さいふう)(埼玉県)
    麦秋や庚申塔の苔の艶 吉沢美佐枝(千葉県)
   風薫る修道院の長回廊      きょうや(東京)
   尺蠖のくの字で止どむ句碑の上 典子(赤磐市)
   大川の風頬張るや鯉のぼり 周桜(千葉県)
   コールタール匂ふ枕木昭和の日 正憲(浜松市)
   躾とる母の面影衣替 百合乃(滋賀県)
   訥弁の訛りなつかし修司の忌   筆致俳句(岐阜市)
   地球儀の日本見てゐる修司の忌 眞人(さいたま市)
   夏の雨ブロンズ像の胸反らす 小春(神戸市)
【  橋幸子 選 】
  特選 万緑や孫と竸ひて逆上り 吉田正克(尾張旭市)
   みどりごに胸乳ふくませ麦の秋 胸乳:むなぢ 伊奈川富真乃(新潟県)
   大皿に漢山盛り夏料理      百合乃(滋賀県)
   新緑や睨みをきかす鬼瓦 小林克己(総社市)
   鑑真の漂着の浜卯波立つ 彩楓(さいふう)(埼玉県)
   母の日や母の針目の力布 勢以子(札幌市)
   葉桜やしづけき午後のニュータウン 長谷川妙好(名古屋市)
   揚雲雀脇目も振らず農夫婦 和江(名古屋市)
   半玉の裳裾濡らすや走り梅雨 惠啓(三鷹市)
   白き線描きて落つる柿の花 あけみ(北名古屋市)
【  長崎眞由美 選 】
  特選 長閑けしや日に三本のバスを待つ ときこ(名古屋市)
   踏切の向かうに夏が待つてゐる 垣内孝雄(栃木県)
   尺蠖のくの字で止どむ句碑の上      典子(赤磐市)
   山里の風ほしいまま鯉のぼり さよこ(神奈川県)
   十薬を干しては干して母白寿 隆昭(北名古屋市)
   鑑真の漂着の浜卯波立つ 彩楓(さいふう)(埼玉県)
   ちゃぶ台に刺子の布巾豆の飯 彩楓(さいふう)(埼玉県)
   兄突きて弟受くるところてん 町子(北名古屋市)
   地球儀の日本見てゐる修司の忌 眞人(さいたま市)
   先達は方向音痴木下闇 田村幸之助(鈴鹿市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 薔薇園を抜けたる風の匂ひかな 和久(滋賀県)
   卯波立つ智恵子の海や鳶の笛 吉沢美佐枝(千葉県)
   病棟をつなぐ廊下の梅雨湿り      田中勝之(千葉県)
   開け放つ図書館の窓椎若葉 康(東京)
   訥弁の訛りなつかし修司の忌   筆致俳句(岐阜市)
   鑑真の漂着の浜卯波立つ 彩楓(さいふう)(埼玉県)
   暮れ際の風の添ひくる花の雨 勢以子(札幌市)
   闇に声落し白鳥帰りけり 三泊みなと(北海道)
   たんぽぽの絮の無数や風を待つ 幸子(横浜市)
   山城へ木曽川の風捉へつつ うさぎ(愛知県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、彩楓(さいふうさん)(埼玉県)(2句)でした。「伊吹嶺」5月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2018年5月伊吹嶺HP句会講評        国枝 隆生

鑑真の漂着の浜卯波立つ

ちゃぶ台に刺子の布巾豆の飯

 ともに今月の最高得点句で同じ作者です。1句目、私も頂きました。鑑真が日本に上陸
したのは鹿児島県坊津の秋妻屋浦だそうです。この句は上5,中7を使って鑑真の上陸地
の説明になっていますが、「卯波立つ」の季語がシンプルでよかったのだと思います。
丁度今頃のやや荒い波が鑑真の苦労を想像させるようです。

 2句目は昔懐かしい情景です。果たして今頃は「ちゃぶ台」というべきか、「食卓」と
いうべきか難しいところですが、「刺子の布巾」が昔懐かしさを強調しています。季語
の「豆の飯」のおいしさが布巾で引き立っています。

薔薇園を抜けたる風の匂ひかな

 この句は私の特選句です。この句の鑑賞のポイントは「風の匂ひ」です。一般に薔薇
を詠むとしたら当然薔薇そのものの美しさに視点が行きます。しかしこの句は薔薇園か
らの風を詠んでいます。風の匂いから薔薇の見事さを想像させているのは類型のない表
現です。

訥弁の訛りなつかし修司の忌

地球儀の日本見てゐる修司の忌

 修司の忌は5月4日ですね。寺山修司は青森の弘前市出身で、10代の頃から俳句を始め、
その後、短歌、劇作家とジャンルを変えていったマルチ芸術家ですね。

一般的に忌日の句を詠むときは、ある程度傾向があるようです。1つは忌日にちなんだ
人物に関することを詠む。もう1つは、日常の自分の生活の中から、忌日の人物に思い
をはせる。後者の、自分に関連づけて、忌日の人物に思いをはせて詠むとよいとの、櫂
未知子の発言を聞いた記憶があります。

 そういう前提で詠んだ場合1句目は作者自身の経験から詠んで、そして青森出身から
「訥弁の訛」と呼んだのでしょうか。と言うことは忌日を詠むときの2つの傾向をまとめ
て詠んでいるようですね。私はこの句を頂きました。

 2句目を採った選者もいます。こちらの句は完全に自分の体験から「修司忌」を取り合
わせている句のようです。「地球儀の日本見てゐる」からなかなか「修司忌」とつながり
ませんでした。でもよい句だと思います。

卯波立つ智恵子の海や鳶の笛

 「智恵子の海」とは智恵子が精神を病んで、千葉県で療養していたことから、詠まれ
たのでしょうか。智恵子というとどうしても福島の安達太良を思い出してしまいますが、
千葉県に縁があったことも思い出しました。「卯波」は陰暦四月(卯月)の時立つ波とあ
りますが、私は卯波というと前句のような一寸荒い波を連想してしまいます。しかし、
ここでは「鳶の笛」とありますので、穏やかな波でしょうか。ただ「智恵子の海」のフ
レーズからやや暗いイメージを持ちました。卯波と千葉から、私は「あるときは船より
高き卯浪かな 鈴木真砂女」の卯波を思い出しました。

病棟をつなぐ廊下の梅雨湿り

 私の通っている病院は北棟、南棟と分かれており、その2階が道路をまたがってつなが
っています。現代はこれが「つなぐ廊下」だと思いますが、この句を読むと、昔の病院
で板で繋いだ渡り廊下を思い出します。そういう屋外の廊下が「梅雨湿り」を直に感じ
るような気がして、ノスタルジーを感じていただきました。

 以下気のついたことを述べます。

満々と緑雨蓄えダム湖かな

校庭に丸く咲き満つさつきかな

天守より遥か美濃見る薄暑かな

 「かな」という切れ字は「や」「けり」と合わせて最もよく使われる切れ字で、下5で
大きく止める時に使われます。いわば上5,中7と続いてその全体を受け止める切れ字す。
リズム感の面から途中で切れがないことが重要です。そういう意味で私が特選で頂いた
「薔薇園を抜けたる風の匂ひかな」は途中で切れがなくて、最後に「かな」で受け止めて
います。

 そこでこの3句ですが、皆さん、これらの句を発音して見て下さい。何となくリズムに
違和感を持ちませんか。途中で切れを入れないためには、1句目は中7を「緑雨蓄ふる」、
2句目の中7は「丸く咲き満つる」、3句目の中7は、「見る」が連体形もありますが、意味
的には「遙か美濃見ゆる」と連体形を使うことでリズムが続きます。しかしそうすると、
いずれも中8になってしまいます。従って中7に収めるために連用形、終止形などで表現
したのでしょうか。工夫して連体形などで中7に収めたいものです。

山羊夫婦隠し事なき春の昼

 「山羊夫婦」がよく分かりませんでした。ネットでいろいろ検索したのですが、参考
になるものが見えませんでした。牡羊座と山羊座の夫婦のことを言っているのでしょう
か。しかしそのことと中7以降のことからどんな詩情があるのか分かりませんでした。

春闌のひかり泡立つ船尾かな

 この「春闌のひかり」の意味も分かりませんでした。「闌」とは「春たけなわ」とい
う意味のようですが、「春闌くる」などでよいと思いました。

山里の風ほしいまま鯉のぼり

大川の風頬張るや鯉のぼり

風を飲み青空を食むこひのぼり

灘五郷山風に酔う五月鯉

吊るされて再びの空五月鯉

 時節がら今月は「鯉のぼり」の句が多く見られました。5句ほど抜いてみましたが、1,
2句目は採られていました。これは一般的な話になるのですが、「鯉のぼり」を詠むと
ややもすれば擬人化で詠まれることが多く見られます。擬人化は難しく、類型的な表現
に陥らないようにすることが大事です。3句目が典型的な擬人化法ですが、これまでに
ない新鮮な感覚の詠み方を期待したいと思います。

月おぼろ地球はどこもスマホ族

 「月」と「地球」を対比させ、その地球には「スマホ族」が溢れている世相のことを
言いたかったのでしょうか。ただ何故月と地球を対比させたかったのか分かりませんで
した。

大皿に漢山盛り夏料理

取り分けて下げる大皿夏料理

 「夏料理」というと、「大皿」の出番なのでしょうか。特に1句目は、「漢山盛り」
がよく分からなかったのですが、いろいろ考えてみると、「男が大皿に山盛りの夏料理
を盛ってきた」という意味でしょうか。いろいろ工夫されているようですが、意味が分
かってしまうと内容が薄く、詩情がないように思えました。もっとシンプルにすっきり
させると分かり易くなると思います。1句目も2句目も「夏料理」の説明のように感じま
した。

追ひ追はれしつつ卯浪の競ひかな

 最初、「追はれしつつ」とは一体何だろうかと思いました。「追はれし」の連体形に
「つつ」は続かないように思いました。ところが「追ひ追はれ」は1つの名詞で、「し
つつ」と動詞につながっていることが分かりました。この句も卯波の形態の面白さを狙っ
たのではないかと思いましたが、全体に卯波の説明になっていると思いました。

山藤の香り近しき手に遠し

 「近しき手」がよく分かりませんでした。「近し」は形容詞の終止形で、それに形容
詞の連体形らしき「き」につながるのでしょうか。単純に「香り近き」でよいと思いま
すが、中6になってしまうので、「き」を付け加えたのでしょうか。それとも中7は「香
りが近くても」下5の「手には届かない」ということを言いたかったのでしょうか。

夏鴨の胸や左右に拓く水脈

 今月の切れ字のうち、「や」についても考えてみましょう。切れ字の「や」は大きな
断絶を詠みたいときに使います。その時、「夏鴨の胸や」とくると、以下に続くことと、
意味的にも断絶させる必要があります。しかし以下に続く「左右に拓く水脈」は鴨の胸
で水脈を左右に拓くという意味ですから、「や」の効果はありません。意味的には「夏
鴨の胸が左右に拓く水脈」となります。なお過去の名句にはすべてがこのような断絶の
意味を持った「や」ばかりではありません。「引つぱれる糸まつすぐや甲虫 素十」と
いう強調の「や」もあります。

 今月は以上です。最近は観念的な句や人生訓のような句がなくなりました。「伊吹嶺」
では、物に即して、物をよく写生して、その写生から間接的に作者の思い、感動を詠む
ことを目指しています。

また来月も佳句に会えることを楽しみにしています。

第226回目 (2018年4月) HP俳句会 選句結果
【  伊藤範子 選 】
  特選 葉桜や生徒を浚ふ始業ベル 小林克己(総社市)
   子の数の風船上げて閉校す 松村洗耳(三重県)
   漕ぐほどに身を乗り出して半仙戯      暁孝(三重県)
   木苺や父母へ小昼の登り坂 輝久(大分県)
   飴色の竿の撓りや春の鮒 加藤剛司(名古屋市)
   初ひばり鍬の手止めて深呼吸 長谷川妙好(名古屋市)
   江ノ電の揺れにまかせる目借時 筆致俳句(岐阜市)
   爛漫の御苑に春を惜しみけり 吉沢美佐枝(千葉県)
   夏隣スワンボートの屋根ひらく 小川めぐる(大阪)
    麦青む背丈の伸びて五年生 シロー(柏市)
【  武藤光リ 選 】
  特選 保証人欄に判押す啄木忌 嵩美(名古屋市)
   坂おほき京の七口やまざくら 垣内孝雄(栃木県)
   子の数の風船上げて閉校す      松村洗耳(三重県)
   地球儀の海に止まれり春の蠅 きょうや(東京)
   七度の仮設を郷の桜かな 輝久(大分県)
   のどけしや流木を切るチェーンソー   三泊みなと(北海道)
   あたたかし波郷遺品の丸眼鏡 眞人(さいたま市)
   園児描くゆがむ笑顔のゴム風船 隆昭(北名古屋市)
   金婚の青春切符山笑ふ 惠啓(三鷹市)
   新学期兄が手を引く下校道 サトコ(北名古屋市)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 観覧車黄砂の空に止まりをり 田中勝之(千葉県)
   自動ドア開けば入りくる花の塵 田中洋子(千葉県)
   啓蟄の園庭ならぶ泥だんご      伊奈川富真乃(新潟県)
   子の数の風船上げて閉校す 松村洗耳(三重県)
   花並木上を見たまますれ違う 里子(名古屋市)
   地球儀の海に止まれり春の蠅 きょうや(東京)
   春風や触るると開く自動ドア 康(東京)
   飴色の竿の撓りや春の鮒 加藤剛司(名古屋市)
   腕広げ一輪車の子蝶の昼 町子(北名古屋市)
   富士山に尻向けてゐる潮干狩 和久(滋賀県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 遺されし歪な湯呑さくら冷え  三泊みなと(北海道)
   木曽馬の孕むや牧の風光る 岩田遊泉(名古屋市)
   子の数の風船上げて閉校す      松村洗耳(三重県)
   地球儀の海に止まれり春の蠅 きょうや(東京)
   弁天のくちびるの紅春満月 康(東京)
   飴色の竿の撓りや春の鮒 加藤剛司(名古屋市)
   江ノ電の揺れにまかせる目借時 筆致俳句(岐阜市)
   青空や水面に揺るる花の影 宇駱駄(名古屋市)
   金婚の青春切符山笑ふ 惠啓(三鷹市)
   菜の花や島より島を眺めをる 蝶子(福岡県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、松村洗耳さん(三重県)でした。「伊吹嶺」4月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】



         2018年4月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

 1  濡れそぼる二つの傘に猫柳  

 そぼる(戯る)は「たわむれる」「ふざける」などの意味です。上五は「濡れそぼつ」
と言いたかったのではないでしょうか?

 傘が濡れるのは当たり前ですし、猫柳が傘にどう絡んでくるのかが見えませんので、
もう一つ工夫がほしいと思いました。

2  ひれ黒き龍天に昇る昼の夢  

 難しい季語に挑戦されました。ただ残念ながら、「龍天に昇る」という想像上の季語
を、夢で決着させるのは、少々安易に思いました。

3  筍の重たき今日の背負ひ籠  

 たくさん採れたのですね。下五を「背負ひ籠」で止めていますが、ここを「重さかな」
と止めるように工夫すると、読者の意識が重さの方に集中し、たくさん採れた嬉しさも
より伝わると思います。

4  杉の花散らせて風の戯れり  

 静かな景の句ですが、やや報告的に思いました。「風が吹いて杉の花が散った」とい
うだけでなく、作者の発見が込められると良いですね。

5  木曽馬の孕むや牧の風光る  

 生命感に満ちた明るい句ですね。

6  梅桜桃の花まで咲き競ふ  

 福島県に三春(みはる)という地名があります。滝桜という名木で有名ですが、ここ
は春の訪れが遅く、梅と桜と桃が同時に咲くことから三春と名付けられたそうです。

 この句は、三つの花が咲いている景を「遅き春」等の言葉で表し、その春の景の中で
特に目が惹かれたものを取り合わせるなどしてはいかがでしょうか。

7  春の口紅マニキュアのごとつややかに  

 一般名詞に季節を付けた「春の口紅」のような言葉を季語とすることには、少々疑問
を感じます。「マニキュアのごと」という直喩も、新鮮さが感じられませんでした。

8  自動ドア開けば入りくる花の塵  

 類想があるようにも思いますが、良い着眼点と思います。「開けば入りくる」が物事
の因果関係を言っていてちょっと説明的なのが気になりました。「自動ドアより舞ひ来
たる花の塵」等、推敲してみてください。


9  従軍の子規の鞄や春しぐれ  

 時雨は冬のもので、春時雨となるとどこかほのぼのというか、ある意味間の抜けた感
じがします。従軍記者として遼東半島に渡ったもののタイミングが悪く、ほぼ何もせず
にすぐに帰国してしまった子規の鞄との取り合わせが良いですね。

10  陽炎をまとひし黄金(きん)の避雷針  

 避雷針があるような孤立した高い場所に陽炎が立つのかな?と、疑問に思ってしまい
ました。

11  啓蟄の園庭ならぶ泥だんご  

 微笑ましいですね。私も幼稚園の頃に、泥団子を作って遊んだ記憶があります。啓蟄
と泥(土)のイメージがやや付きすぎなのと、並んでいるのが園庭であるようにも読め
るのが少々気になりました。

12  躙り口出でて花の香徒の音  

 徒の音はかちのおとと読むのでしょうか? 読み方、意味ともに良くわかりませんで
した。

13  穴を出て蛇のびて行く山路かな  

 「のびて行く」が、蛇がだんだん長くなってゆくように思えてしまいました。山道に
蛇がいるのは珍しくありませんので、一工夫欲しいと感じました。

14  汐干狩ぬれたるままの忘れ物  

 「忘れ物」が抽象的かつ説明的です。具体的な物を詠んで、それが誰かの忘れ物であ
ると読者に伝わるように工夫してください。

15  坂おほき京の七口やまざくら  

 声に出して読んでみると、この句のリズムの良さに気が付きます。ただ、「 坂おほ
き京の七口」は具体的な景ではなく、一般論ですので、今一つ具体的な景がイメージで
きませんでした。

16  大町を抜けて小町や花の径  

 大町、小町という表現は抽象的で、具体的な景が見えて来ません。

17  弥生尽子の指なぞる字画数  

 「子の指なぞる字画数」は、子の指が字画数をなぞるのか、それとも字画数が子の指
をなぞるのか? いずれにしても意味がわかりませんでした。

18  節分草読めぬ地名の案内図  

 地名が読めないというのは作者の主観的なことですね。地名を具体的に書いた方が、
場合によっては面白い句になるかもしれません。

19  薄月の卵のごとき蕗の薹  

 薄月(秋)と蕗の薹(春)の季重なりです。

20  木の芽時すずめの首はよく回る  

 雀の首の回り方は季節によって変わるわけではないでしょうが、特にこの季節にそう
感じられたのですね。季語が活きています。

21  花桃やあるなしの風枝揺らす  

 桃の花は春の季語ですが、花桃は桃の種類を指すものであり、季語にはなっていない
と思います。

22  蚕豆の同じ莢なる笑顔かな  

 笑顔というのは、蚕豆の実の比喩かと思いますが、今一つピンと来ませんでした。

23  子の数の風船上げて閉校す  

 「子の数の風船」で、子供達がそれぞれ一つずつ風船を持っている景が具体的に見え
ますね。風船を「上げる」「飛ばす」「放つ」・・・どれが良いでしょう?

24  こでまりの静かな揺れを活けにけり 

 揺れを活けたというのが、ユニークな捉え方ですね。

25  竹の秋かはらぬ里の鳥の声  

 日本の原風景のような、懷かしい鄙びた景が浮かびますが、「かはらぬ」が係るのが
里なのか鳥の声なのかがわかりませんでした。

26  漕ぐほどに身を乗り出して半仙戯  

 ぶらんこを漕ぐ様子を写生されています。ただ、今一つ目新しさ・発見が感じられま
せんでした。

27  見納めと皆で笑いし花の下  

 良くある発想・光景に思えてしまいました。

28  花並木上を見たまますれ違う  

 桜並木とは言いますが、花並木という言い方はあるのか、ちょっと疑問に思いました。
この句、すれ違う相手が誰なのかが気になります。単なる行きずりの人なのか、それと
ももっと深い関係の人なのか・・・。すれ違うのは体なのか心なのか・・・。ちょっと
深読みしすぎでしょうか?

29  入相の鐘突く僧や月朧  

 「突く」でも間違いではありませんが、鐘の場合は「撞く」の方がより似合うと思い
ます。

30  失言の取り消しつかぬところてん  

 取り合わせに捻りのある面白い句ですね。中七の切れが弱いので、「取り消しつかぬ」
が「ところてん」に係っているようにも読めてしまいます。上五中七を「取り消しのつ
かぬ失言」としては如何でしょうか。

31  保証人欄に判押す啄木忌  

 ユーモアとペーソスの漂う面白い句ですね。ただ、啄木=借金のイメージが強いので、
季語がつき過ぎに感じました。

32  風光る金管五重奏の乙女  

 せっかく明るく軽快な季語を使っているのに、下五の字余りが句全体をもたつかせて
しまっているのが残念に思いました。

33  寄り添うをそっと堀くる春筍  

 「堀くる」は「掘り来る」でしょうか?

34  とく癒えよ車椅子ひく花見かな  

 上五と下五で切れているので、句がばらばらな感じがします。上五を、字余りとなっ
ても「疾く癒えよと」とするか、「治癒願い」等とし、切れずに中七につながるように
しましょう。

35  霾るや戦地映像重ね見る  

 土埃に、戦地の映像を(心の中で)重ねて見ているということかと思いますが、今一
つよくわかりませんでした。

36  観覧車黄砂の空に止まりをり  

 「止まりをり」ですから、観覧車がしばらく止まった状態であることがわかります。
事故なのか、黄砂の影響で観覧車の営業を見合わせているのか、状況がよくわかりませ
んが、不穏な雰囲気に季語が合っていると思います。

37  春暁の漁場へと急ぐ夫婦舟  

 夫婦舟という言葉は辞書に載っておらず、多分演歌などのために作られた造語ではな
いかと思います。こういう言葉を安易につかうと、句に格調が無くなるように思います。

38  地球儀の海に止まれり春の蠅  

 単に地球儀というのではなく、地球儀の海に止まったというところを見定めているの
に感心しました。中七に切れを入れるのが良いか、推敲の余地があるかもしれません。

39  七度の仮設を郷の桜かな  

 福島第一原発の事故で住民が住めなくなった福島県の富岡地区のことでしょうか?
今一つ句の意味がわかりませんでした。

40  木苺や父母へ小昼の登り坂  

 住まいよりも高いところにある畑で野良仕事をしている両親に、休憩用のお茶などを
持って行くところかと思います。季語から、明るくのどかな景が見えてきます。

41  源流の山遥かなり春の河  

 上五中七の雰囲気と、ほのぼのとした春の河の感じがいまいち合わないように感じま
した。むしろ冬の方が、空気が澄んで遠くの雪を頂いた山々がよく見え、あの雪がここ
まで流れてくるのだな…という感慨が湧くように思いました。

42  木々芽吹く校塔高き日章旗  

 季語が動くように思いました。

43  醍醐寺の太閤誑す櫻かな  

 「醍醐の花見」の説明です。

44  相撲道人道逸るる落花かな  

 どこで切れるのかわかりませんでした。俳句で教訓的なことや主義主張などを言おう
としても、主観的で底の浅いものにしかなりません。

45  春風や触るると開く自動ドア  

 一読、中七下五が当たり前すぎると思いましたが、季語の軽快さとは合っていると思
います。

46  弁天のくちびるの紅春満月  

 この句の弁天様は実景ではなく、春の満月から導かれたイメージと解釈すると、独特
の世界観が見えてきます。

47  のどけしや流木を切るチェーンソー    

 チェーンソーはかなり騒々しく、危険でもあるので、あまりのどかな感じはしません
が・・・。

48  遺されし歪な湯呑さくら冷え   

 「歪な湯呑」から、元の持ち主の姿や気性について、想像が広がります。そして、季
語からは作者の複雑な想いが伝わりますね。

49  沼尻に命蠢く蝌蚪の紐  

 「蝌蚪の紐」の説明です。

50  風渡り芽柳の糸解きほぐす  

 柳に風は似合いすぎる取り合わせで、これで新鮮な句を詠むのは難しいと思います。

51  ひこばえや風に吹かれて遊びゐる  

 ひこばえが風に揺れているのを「遊んでいる」と喩えただけでは、句材として面白い
とは言えません。

52  つばくらめ川面すれすれ又空へ  

 燕の飛翔の様子を詠まれていますが、説明・報告の域を出ていないと感じました。

53  あたたかし波郷遺品の丸眼鏡  

 波郷といえば眼鏡のイメージですね。一読、季語が動くように思えたのですが、何
度も読むうちに絶妙な距離感に思えてきました。

54  春の風開け放たれし大方丈  

 春の暖かな風が吹いた→窓や戸を開けて風を通した・・・という、理屈・因果関係が
感じられるため、説明的に思えました。

55  葉桜や木洩れ日頬に脈うちて  

 「脈うちて」が工夫点かと思いますが、いまいちピンときませんでした。

56  新茶汲み母となる娘と児のはなし  娘(こ)  

 漢字を、本来の読み方には無い読み方で読ませるのは、最近のキラキラネームのよう
で、俳句の品格が落ちるように思います。この句の場合「子」と書いても娘であること
はわかりますね。

57  飴色の竿の撓りや春の鮒  

 よく手入れして使い込んだ和竿なのでしょう。釣りは鮒に始まり鮒に終わると言うそ
うで、お好きな人には嬉しい季節到来ということですね。

58  城周る女子ランナーや朝霞  

 「城周る」も「女子ランナー」も、具体的な景の浮かびにくい抽象的な言葉と思いま
す。朝霞という季語と相まって、全体的にぼんやりした印象を得ました。

59  曲線の影の動きや春ともし  

 上五中七は、もう少し具体的に言って戴かないと、意味がわかりません。

60  春愁の吾の映りこむ眼かな  

 「春愁」が「吾」に係るのか「眼」に係るのかがわからず、全体的にも、意味が取り
にくく思いました。

61  桜餅銜へ駈けだす童かな  

 やんちゃ坊主でしょうか? この景だけでは、何が起こったのか読者にはわかりませ
んので、もう一工夫欲しいと思いました。

62  華鬘草ハートの揺るるネックレス  

 季語華鬘草の説明に感じました。

63  葱坊主園児散歩の白帽子  

 季語が付き過ぎに思いました。

64  飲み友のほしき堤や花万だ  

 「ほしき」が、作者の気持ちをそのまま言う言葉なので、深みが無くなっています。
例えば、「飲み友のおらぬ堤や花万朶」とすると、事実をそのまま述べて、なおかつ飲
み仲間が欲しいという作者の心情が伝わると思います。

65  ビバルディ流るる牛舎春の虹  

 ビバルディといえば、四季の中でも春が特に有名ですね。屋内外の位置関係もあり、
季語にもう一工夫欲しいと思いました。

66  年表の初めの余白亀鳴けり  

 難しい季語に挑戦されました。上五中七の意味がはっきりわかると良いと思いました。

67  春愁の空をひろげて鳶の笛  

 「春愁」は、何となく雰囲気の良い言葉で、よく使われる割には、実は使い方が難し
い季語だと思います。この句には、空以外に目に見えるものが詠まれていないので、読
者はわかったようなわからないような気分になります。

68  幹穿つ嘴のリズムや寒もどり  

 上五中七の明るい躍動感と、下五の季語がかみ合わない印象を受けました。

69  両の手に買い物袋青葉風  

 買い物は一年を通してするものですから、買ったものを具体的に示すなどして、下五
の季語ともっと響きあうようにすると良いと思います。

70  筍の地表を破り角伸ばす  

 季語「筍」の説明です。

71  蔵町を人力車行く春が行く  

 春が行くことを、目に見えるもので言えると良いですね。

72  時の鐘見上ぐる人に春の風  

 「時の鐘」は、普通その音のことを言います。

73  初ひばり鍬の手止めて深呼吸  

 様子がよくわかりますが、「深呼吸」まで言わなくても良いのではないでしょうか?
その代わりに、この人物像や周囲の光景などを写生するともっと良くなると思います。

74  皺の手で牡丹餅作るお中日  

 牡丹餅と言えば、お中日(彼岸)は言わなくても良いですね。言うとかえって説明・
理屈になってしまいます。

75  御園座のこけら落しや風光る  

 名古屋の御園座のこけら落としが四月にありましたね。喜び・嬉しさの満ちた句です
が、屋内演劇に対しての、「風光る」いう季語が若干気になりました。

76  江ノ電の揺れにまかせる目借時  

 句には具体的に詠まれていませんが、車窓外の光景や車内の様子、作者の姿までもが
目に浮かびます。さり気ないですが、お上手な句と思いました。

77  花冷えの苑に禽鳥しき鳴きぬ  

 一本調子で報告的な句と感じました。

78  爛漫の御苑に春を惜しみけり  

 内容に目新しさや発見は感じられませんが、衒いの無い素直な詠み方の句と思いまし
た。

79  岬への道は一すじ金盞花  

 中七、「道は一すじ」だと説明的になります。「一筋の道」とすると景がはっきと見
えてきます。

80  孫の摘む苺の今朝は二つ三つ  

 毎回のように書きますが、子や孫を句材にして、佳い句を作るのは難しいです。子孫
俳句がいけないとは言いませんが、難しさを覚悟して挑戦する必要があります。

81  大木をゆたゆたゆらし百千鳥  

 「ゆたゆた」というオノマトペと、大木が揺れる様が結び付きませんでした。

82  春光をちらし女生徒ペダル漕ぐ  

 「春光をちらし」は、自転車の金属部に光が反射している様子でしょうか? 全体的
に一本調子で報告的ですので、上五を「春光や」と切って推敲してみてはいかがでしょ
うか?

83  O. 風光る部員募集の文芸部  

 新学期の光景ですね。下五は、別の部活動でも収まってしまうような気がしました。

84  O. 桃色のちびた鉛筆鳥の恋  

 上五中七と、下五の季語がかみ合っていないように感じました。「ちびた」は「禿び
た」と表記された方が良いと思います。

85  庭石の隙をくねらせ春の草  

 「隙をくねらせる」という言葉の意味が分かりませんでした。

86  すずめ来て花を丸ごと落としをり  

 「花を丸ごと」とは、どういうことなのかよくわかりませんでした。一輪丸ごと?
 一本の木の花を丸ごと? 「落としをり」とありますので、ずっとその動作を続けて
いるのでしょうか?

87  号外とあるスーパーの苺買ふ  

 俳句というより、報告的な散文という印象を受けました。

88  タクシーもバスも通らぬ昼蛙  

 中七の切れが弱いので、上五中七が、下五の昼蛙を修飾しているように読めました。

89  春休み駐輪場にヘルメット  

 最近の子(大人も)は、自転車用のヘルメットを使うことが多いので、駐輪場にヘル
メットがあるのは珍しいことではなく、春休みに限らないのでは?と思いました。

90  青空や水面に揺るる花の影  

 きれいな句ですね。句の形も良いです。

91  寄する波返えす刹那やさくら貝  

 引く波の下から桜貝が現れた瞬間を詠まれたのですね。上五は冗長で無くても良いよ
うに感じました。「返えす」の送り仮名は「返す」です。

92  園児描くゆがむ笑顔のゴム風船  

 幼稚園児が、風船に顔を描いたのですね? ちょっと言葉がごちゃごちゃしている感
じを受けました。言葉を整理して推敲されてはいかがでしょうか。

93  黒板の文語文法目借時  

 良くわかりますが、季語が付き過ぎに思いました。

94  背ナの子の握りしめたるゴム風船  

 おんぶされた子が風船の紐を握っているというのはよくある光景で、目新しさに欠け
るように思いました。

95  瓦斯灯の蒼き鉄柱八重桜  

 色彩が美しいですね。夜桜である点が、また良いと思います。

96  夏隣スワンボートの屋根ひらく  

 夏が近いから→屋根を開いたという理屈が感じられるのが気になりました。「屋根開
きしスワンボートや夏隣」のように語順を変えると、理屈っぽさが気にならなくなりま
す。

97  花屑を分けて浮上の鯉に餌  

 切れが無く一本調子で、散文的です。

98  木蓮の花びら踏んで行く径  

 径は「こみち」と読むのでしょうか? 「踏む」「行く」「道」は、言葉が整理できる
のではないかと思いました。

99  さざ波の子守歌聞く桜貝  

 上五中七の比喩が、よくある言い回しで、うわべの綺麗ごとのように感じました。

100  腕広げ一輪車の子蝶の昼  

 景が良く見える明るい句ですね。ただ、「腕を広げて一輪車」は、非常に多い類句が
あります。

101  見下ろせば蔵王堂まで花の竜  

 「蔵王堂まで」と言っても、読者には遠いのか近いのかわかりませんので、花の様子
がいま一つイメージしにくいと思います。

102  春光や豆苗百本Sの字に  

 豆苗の一本一本がSの字なのか、百本の豆苗が全体としてSの字になっているのかがわ
かりませんでした。

103  満開の桜花かこめる過疎の村  

 桜花が囲むのか、桜花を囲むのかがわかりませんでした。「満開の桜花」は「花」と
言えば十分です。

104  枝ごとに揃えつ木の芽生い始る  

 「枝ごとに揃えつ」の意味がわかりませんでしたが、全体として季語「木の芽」の説
明的な印象を受けました。

105  葉桜や生徒を浚ふ始業ベル  

 この句については、選者の伊藤範子氏から戴いたコメントを掲載しますj。

−−−−−−−−−−−−
 学校にも慣れてきた葉桜の季節、ベルの音によって児童が教室へサッと戻る情景が目
に浮かぶようです。
−−−−−−−−−−−−

106  少年に還る漢の半仙戯  

 ブランコで童心に返るというのは、類想が多いと思います。また、漢はおとこと読ま
せるのだと思いますが、娘を「こ」、女を「ひと」と読ませるのと同じように、本来無
い漢字の読み方をさせるのは、句の品格を下げるように思います。

107  清水の舞台を覗く春の月  

 月が舞台を覗くというのは、舞台の下から月が顔を出すように上ってくる様なのかと
思います。ただ、そういう景が見られる時間に、清水寺に入れるのか?という、無粋な
疑問を感じてしまいました。

108  春の宵そぞろに歩く京の街  

 中七下五が、上五の季語に合っていると思います。全体としてぼんやりした景で、具
体的なものが見えてきませんが、それもまた春の宵に似合っているのでしょう。

109  読経の風ゆきわたる村のどか  

 読経の声とせず、読経の風としたところに、作者の力量を感じます。ただ、読経は普通はのどかなものではないので、それをのどかと感じさせるもう一工夫がきっとできると思いました。

110  石垣に響く水音老柳  

 城または城跡のお堀の景かと思いましたが、普通お堀の水は響くような音を立てて流
れたりはしないと思いますので、景がイメージできなくなりました。

111   春風や猫は眼を閉じてをり  

 猫も気持ちよさそうですね。「猫は眼を閉じてをり」を「猫眠る」とすれば、あと七
音使えますね。

112   麦青む背丈の伸びて五年生  

 子供はあっという間に大きくなりますね。毎日見ていると気が付きませんが、新学期
になってふと改めて見ると、ずいぶん大きくなったと感じます。小学校の上級生と呼ば
れる年でも、まだ最年長の六年生でないところが良いですね。

113  溝浚え水を待つかな苗代田  

 溝浚えと苗代田の季重なりになってしまいました。

114  片目閉じ日にかざしてや桜貝  

 具体的な動作が詠まれており、作者の横顔が見えるようです。中七の「や」の使い方
が、かなりの手練れであると感じました。

115  金婚の青春切符山笑ふ  

 まずは、おめでとうございます。青春18切符は、その名称からも学生などの貧乏旅
行のイメージがありますが、こういう使い方も良いですね。ローカル線のレトロな列車
で、冷凍蜜柑など向いているお二人の姿が浮かびました。省略の良く利いた句です。

116  初蝶にしばし手の止む庭掃除  

 長閑な景ですね。初蝶に気が付いたので→掃除の手を止めた という因果関係がやや
気になりました。

117  野遊びの手作りプリン初デート  

 若々しい句ですが、「初デート」まで言うと説明になってしまいます。それを言わず
にその様子・気持ちを表すのが俳句です。

118  夜半の春灯火漏るる夫の部屋  

 夜半の春というややなまめかしい季語に対し、それぞれ別に過ごしているらしい夫婦
の様子が、ちょっとアンバランスに感じました。

119  菜の花や島より島を眺めをる  

 島と島の間には、当然春の海があるわけで、その青色と菜の花の色が鮮やかです。

120  山水に口湿らせば花菫  

 山歩きの途中だと思います。ほっとした瞬間がうまく切り取られていますね。山水
は、山清水や岩清水と同義だと思いますので、季重なりにならないかな?と思いまし
たが、この句では花菫が主季語であることが明確ですから、問題ないでしょうね。

121  虎杖をぽくぽく折つて集金す  

 下五に意外性があって、面白い句と思いました。「ぽくぽく折つて」の表現に、決し
て面白いとは言えない集金作業に勤しむ気持ちが表れています。

122  流す湯の湯気こそにほふ蓬かな  

 実感でしょうね。蓬を茹でた湯を捨てたときに、蓬の匂いが台所中に広がったので
しょう。私も匂いが感じられるような気がしました。

123  春蘭や松の根方に根付きたり  

 上五と下五に切れがあるので、句がばらばらになっている印象を受けました。

124  新学期兄が手を引く下校道  

 微笑ましいですが、類想の多い句と思いました。

125  会話には遠慮の無くて蓬餅  

 上五中七が観念的なことなので、下五の季語が動くように思います。桜餅、心太、
チューリップ・・・。

126  見なかった事にしやうかサイネリア  

 この句も上と同じです。俳句は「物に托して心情を述べる」ということを、再認識し
てください。

127  雨水の走る山路や花筏  

 濡れた山道の土の色と、その上を流れる花びらの色の対比が鮮やかです。

128  富士山に尻向けてゐる潮干狩  

 作者は、少し離れたところから潮干狩りの様子を見ているのだと思います。広い干潟
の彼方に富士が見える、雄大な光景ですね。

129  篝火の照らす小路の花見かな  

 「花篝」という季語だけで、この句のような景が見えてきます。小路の様子などが写
生できると良いですね。

130  春霖や胃カメラ待てる胃の辺り  

 春霖が、胃のあたりに降っているという意味でしょうか? 句の意味が良くわかりま
せんでした。

131  停車する駅の朧へ人降ろす  

 人を降ろすのは何でしょうか? 句の意味が良くわかりませんでした。

132  春泥の子山羊の蹄乾きゐる  

 春泥が乾いているということを言いたいのだと思いますが、この句では、乾いている
のは泥ではなくて蹄のように読めます。

133  春の日や弾ける笑顔とランドセル  

 明るさに満ちた句ですが、「弾ける笑顔」のような決まりきった言い回しは、安易に
使わないようにした方が良いと思います。

134  月明り浮かぶ枝垂れの花かんざし  

 花簪は、仲春の季語になっている植物ですが、枝垂れはしないと思います。髪に挿す
花簪は造花などをあしらった簪で、季語にはなっていないと思います。

135  破れ目のひとつふたつや春障子  

 春障子は、春の日差しをいっぱいに浴びた明るい障子のことで、単に障子に春という
季節をかぶせたものではありません。そういう気持ちで、破れ目から漏れる光などを詠
んでみると、生き生きとした句になると思います。

136  落ち椿拾うことなき掃除ロボ  

 屋外用の掃除ロボットができたのか?それとも室内に飾った椿の花が落ちたのか、今
一つ景が浮かびませんでした。室内の掃除ロボットでしたら、椿の花を拾う(吸い込む?)
のは無理のような気がしますね。


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