トップページへ戻る
TOPページへ戻る HP俳句会 投句フォーム 投句一覧 選句結果
選句結果
     
第294回目 (2024年3月) HP俳句会 選句結果
【  関根切子 選 】
  特選 機嫌よき嬰の喃語や山笑ふ 筆致俳句(岐阜市)
   再会を約しハグして卒業す (熊本県)
   唐門を入れば芽吹きの大銀杏      康(東京)
   きのふけふものの芽動く気配かな みのる(大阪)
   春疾風ビルの狭間をまつすぐに 直樹(埼玉県)
   春昼のまぶた重たき読書かな 筆致俳句(岐阜市)
   静寂の里を貫く雉子の声 重明(長野市)
   マカロンのほろほろ崩れ春の色 ようこ(神奈川県)
   ラッパ水仙下校児童の弾む声 佐藤けい(神奈川県)
   愚痴言える親友がいて桜餅 佐藤けい(神奈川県)
【  松井徒歩 選 】
  特選 一と月のたつき見られし雛仕舞ふ 惠啓(三鷹市)
   初蝶のメビウスの輪抜け来たり 康(東京)
   啓蟄や子が送りきし集音機      福山三歩(栃木県)
   春光やきらりと妻の糸切り歯 みのる(大阪)
   啓蟄や首を廻せばこきと鳴る まこと(さいたま市)
   北望む外人墓地や鳥帰る 惠啓(三鷹市)
   瞳なき雛人形やほのと笑む 伊藤順女(船場市)
   天城山霞の海へなだれけり 伊藤順女(船場市)
   賑わひのカフェの窓辺や花ミモザ 蝶子(福岡県)
   春光の淡き耳なし芳一堂 蝶子(福岡県)
【  国枝隆生 選 】
  特選 深々と音を埋めたり今朝の雪 素風(岩手県)
   啓蟄や縄文土器の掘り出さる 水鏡(岐阜県)
   春の水波に光を遊ばする      田中由美(愛知県)
   春疾風下校チャイムの途切れがち 雪絵(前橋市)
   きのふけふものの芽動く気配かな みのる(大阪)
   退院の妻の微笑み花ミモザ 直樹(埼玉県)
   機嫌よき嬰の喃語や山笑ふ 筆致俳句(岐阜市)
   愚痴言える親友がいて桜餅 佐藤けい(神奈川県)
   早春の光返して川流る 小豆(和歌山市)
   賑わひのカフェの窓辺や花ミモザ 蝶子(福岡県)
【  玉井美智子 選 】
  特選 啓蟄や縄文土器の掘り出さる 水鏡(岐阜県)
   母の所作真似てお澄まし雛の客 (熊本県)
   花冷や柱時計は遅れだし      百合乃(滋賀県)
   唐門を入れば芽吹きの大銀杏 康(東京)
   春疾風下校チャイムの途切れがち 雪絵(前橋市)
   退院の妻の微笑み花ミモザ 直樹(埼玉県)
   機嫌よき嬰の喃語や山笑ふ 筆致俳句(岐阜市)
   マカロンのほろほろ崩れ春の色 ようこ(神奈川県)
   春宵の二人を分つ列車ドア 櫻井 泰(千葉県)
   愚痴言える親友がいて桜餅 佐藤けい(神奈川県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、筆致俳句さん(岐阜市)でした。「伊吹嶺」3月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2024年3月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

一月の講評は体調不良のため休んでしまいました。今年もよろしくお願いいたします。

1	百千鳥人間界にSNS

鳥の囀り人間の囀りと、やや理屈を感じました

(国枝評)鳥の声と「SNS」のチャットの類似感を詠んだのでしょうか。一寸考えすぎ
の比喩だと思いました。

2	啓蟄や縄文土器の掘り出さる

「啓蟄」は地虫などが穴から出てくることなので、土器が掘り出されることと、意味が
近いのですが、気分はよく分ります。

玉井美智子氏評===============================

暖かくなって土の中で眠っていた虫が顔を出すころ千三百年も眠っていた縄文土器も
出現。取り合わせがいいと思います。

======================================

國枝隆生氏評===============================

今でも縄文時代の土器が発掘される。そのニュースが「啓蟄」とよく合っている。

======================================

3	亀鳴くの聞こえ泥舟自民党

亀が自民党を笑っているようですね。

4	寒戻る等圧線の密にかな

<等圧線の密>は冬型の気圧配置ですね。「寒戻る」の答えのように感じました。

(国枝評)「かな」は本来、名詞や用言の連体形につながります。「にかな」は本当は
おかしいと思います。ただ高浜虚子が「白粉の花落ち横に縦にかな」などと詠んだこと
から流行したようです。でも基本に忠実に行きたいと思います。

5	母の所作真似てお澄まし雛の客

<お澄まし>は歌にも出てきますし、決まり文句のような気がしますが可愛いですね。

玉井美智子氏評===============================

おしゃまな女の子でしょうね。かわいいですね。

======================================

6	再会を約しハグして卒業す

動詞が三つもあるのが気になりましたが、卒業式の雰囲気は出ていますね

7	眉墨を薄く伸ばして菜種梅雨

この句は中七に切れを入れるともっと良くなると思いました。

(国枝評)私は男性のため、化粧するときの心情はよく分からないが、何となく屈託の
ある感じがよく出ている。

8	花冷や柱時計は遅れだし

助詞の<は>は<の>の方が良いような気がします。

(国枝評)「遅れだし」と時間経過を言うより、「遅れがち」と現在の情景を詠む方が
よい句となったと思いました。遅れがちの雰囲気と「花冷」の季語がよくマッチしてい
る。

玉井美智子氏評===============================

時計が遅れるのは花冷とは無関係ですが、何となく納得しますね。

======================================

9	春の水波に光を遊ばする

感覚を効かした写生ですね。

國枝隆生氏評===============================

「水」と「波」のダブり感はあるが、「春の水」をよく観察している。

======================================

10	夕闇やふらここ揺れて楽しさう

<楽しさう>と言われても、楽しそうな景色が見えてこないのですが・・・。

11	旅立ちや猫の見あぐる桃の花

旅立つ人の姿が見えてこないのですが、猫の旅立ちですか?

12	初蝶のメビウスの輪抜け来たり

幻想的な不思議な句ですね。こういう現実的ではない句は普通は頂かないのですが、今
回は頂いてしまいました。

13	唐門を入れば芽吹きの大銀杏

上五の <ば>が説明を誘うような気がしますが、景はしっかりと見えますね。

玉井美智子氏評===============================

大銀杏の黄緑色の芽が吹きだして大銀杏の勢いが感じられます。

======================================

14	夕雨に弟は濡れて雛納め

嘱目としても雨に濡れたことがどれだけ掲句の中で効いているのかどうか?

15	春疾風下校チャイムの途切れがち

私にはやや消化不良でしたが、中七以降の屈託が季語に託されていますね。

玉井美智子氏評===============================

足をとられそうな春疾風、大荒れの下校でしたね。

======================================

國枝隆生氏評===============================

学校のチャイムにはいろいろある。強風で途切れがちに聞こえたと丁寧に観察している。

======================================

16	しわしわと風渡りけり蜷の池

<しわしわと>がどんな実感なのかよく分りませんでした。

17	夏みかん剥きながら聞く悩みごと

<剥きながら聞く>を推敲して誰の悩み事か分かるようにしてはどうでしょうか。

18	カップめんすする主に紋黄蝶

<すする主>は省略して「カップめんに紋黄蝶」ぐらいでも良いと思いました。

19	啓蟄や子が送りきし集音機

親孝行のお子さんですね。

20	菜の花の中に隻手の水車跡

<隻手の水車跡>がよく分かりませんでした。

21	きのふけふものの芽動く気配かな

少しずつ進む春の気配を<きのふけふ>と表現したのですね。

國枝隆生氏評===============================

一日ごとにものの芽が動き出す気配が「きのうけふ」によく出ている。

======================================

22	春光やきらりと妻の糸切り歯

「春光」と<きらり>が即きすぎかもしれませんが、目の付け所が良いですね。

23	水照りの山葵田はしる音澄めり

 景がは良く見えますね。

24	荒小田に風紋のこる薄氷

「薄氷」をよく観察しましたね。

25	春疾風ビルの狭間をまつすぐに

「春疾風」を真っすぐと感じたことはないのですが、ビルの狭間は真っすぐですので感
じはよく分ります。

26	退院の妻の微笑み花ミモザ

<微笑み>と「花ミモザ」が良く合っていますね。

玉井美智子氏評===============================

花ミモザの明るさにお元気になられた奥さんの笑顔が見えてきます。

======================================

國枝隆生氏評===============================

退院した奥様を「花ミモザ」のような明るさで捉えたところがよかった。

======================================

27	機嫌よき嬰の喃語や山笑ふ

喃語が面白いですね。

玉井美智子氏評===============================

春の訪れを表す「山笑ふ」が、喃語を話しているご機嫌な赤ちゃんとよく合っている
と思いました。

======================================

國枝隆生氏評===============================

お孫さんだろうか。本人とともにご機嫌のように見える。

======================================

28	春昼のまぶた重たき読書かな

春眠を誘う読書ですね。。

29	深々と音を埋めたり今朝の雪

静逸な朝の雪景色を感覚的に表現。

國枝隆生氏評===============================

雪は音を吸収します。特に大雪となると町中の雪でしんとする。それを「音を埋めた
り」と詠むことにより、思いの深い句となりました。

======================================

30	欠席を知らず机上の桜餅

内容の意味は分かりますが、俳句は意味の伝達ではなくイメージの伝達ですので頂くの
は難しいです。

31	席題の鶯餅を鳴かせけり
  
前句と同じ感想です。

32	咲き初むる小さき花の名犬ふぐり

素直にできた句ですが、「犬ふぐり」の説明になっているように思いいます。

(国枝評)「小さき花の名」がまさに「犬ふぐり」の説明だと思いました。

33	悩ましい記事の多さや春炬燵

形の整った句ですが<悩ましい>と<多さ>が説明の言葉のように思います。

34	燦として蝶は空へと吾残し

<吾残し>が主観的で、読者には共感できない言葉のように感じました。

35	春日影生き存へて八十路かな

「春日影」は日陰のことではないのでこれで良いのですが、中七にもう少し作者が見え
てくるような描写が欲しいです。

36	白子丼箸の忙しき反抗期

忙しいのと反抗期が同関連するのかがよく分かりませんでした。言うことを聞かずさっ
さと食べてしまったということかもしれませんが、「白子丼」も季語として効いている
かどうか・・・。

37	静寂の里を貫く雉子の声

YouTubeで確認しましたが相当の声ですね。

38	うららかに犬を連れ立て万歩計

正にうららかなのですが、中七下五が報告気味のように感じました。

39	爭はず咲く梅襄の漢詩のまま

新島襄の漢詩のことでしょうか?ネットで検索しましたが内容までは分からなかったの
で解釈に苦しみました。下六のため散文調の調べも気になりました。

40	背丈まで擦れて散るや枝垂れ梅

地面まで垂れているということでしょうか。背丈というと上の方を意識しますのでどう
でしょうか?

41	春めきて会話となりしホ句の道

<ホ句>は発句のことでしたら漢字の方が良いのでは。それにしても中七下五の句意が
分かりませんでした。

42	春よこいしぼむ垣根の雀かな

<しぼむ>は多分雀に掛かるのだとおもいますが、垣根に掛かるようにも読めます。し
ぼむ雀も?でした。

43	花時や離郷の朝の一張羅

物で表現しているのは良いのですが、どういう事情の離郷なのか想像できませんでした。

44	神馬舎へ仔馬見送る母馬よ

最後の<よ>が句を弱くしているような気がしました。

45	膝ぼんを並べて昼餉母子草

膝盆を並べているのが母子でしたら季語で答えを出しているわけで、句の魅力が半減す
ると思います。そうでないとすると情報がやや足らないような気がして悩ましいですね。

46	笹起きる噂話をするやうに

中七下五の見立てが共感を得られるかどうか?

(国枝評)「笹起きる」がよく分かりませんでした。

47	目映かる春の怒濤や花と散る

堂々とした叙景句ですね。<花と散る>の表現に読者の好みが別れるように思いました

48	鳥雲に木曾の御嶽そばえ降る

この文脈ですと御嶽で切れているように思えます。とすると三段切れですが・・・。

(国枝評)雰囲気のある句ですが、「木曽」と「御嶽」がダブっています。民謡にはあ
りますが、単に「御嶽」だけでよいと思います。

49	菜の花の黄映やす雨となりにけり

<黄映やす>が菜の花の説明のような気がします。

50	咲き誇る白木蓮の散りざまむさし

下七ですか?<むさし>は<むなし>の打ち間違いですか?

(国枝評)下五の「散りざまむさし」がよく分かりませんでした。入力ミスでしょうか。

51	啓蟄や首を廻せばこきと鳴る

「啓蟄」の説明になっていないところがよいですね。さりげない動作に俳味を感じまし
た。

52	陽炎や待ちゐるバスは橋の上

<待ちゐる>は必要がないように見えますが、深読みするとこのバスには大事な人が乗っ
ているのかもしれないというようなことも思いました。

53	無言なる部屋に座しけり春の雨

一人なのか、複数の人がいるのかが見えてきませんでした。

54	けふの色きのふと違ふ春暖炉

何の色でしょうか?主観が強すぎると思います。

55	北望む外人墓地や鳥帰る

墓石が帰る鳥を見ているようですね。

56	一と月のたつき見られし雛仕舞ふ

雛人形に見られていたとは面白い視点ですね。

57	マカロンのほろほろ崩れ春の色

 できている句ですね。

玉井美智子氏評===============================

マカロンカラーは淡くて春を感じますね。

======================================

(国枝評)「春の色」はマカロンのことだと思うが、「ほろほろ崩れ」が面白い。

58	路地裏のふらここ一人漕ぐ夜更け

 路地裏に味があるかもしれませんが、報告気味の句のように思います。

59	地団駄を覚え泣く子や花ミモザ

 <地団駄を覚え>が説明のように思います。

60	猫柳三毛猫の掌とツーショット

 <掌とツーショット>がよく分かりませんでした。猫の二度使いも気になりました。

61	四姉妹田楽囲み幾年や

 そこそこの歳で四姉妹揃うと思う所多々でしょうね。

62	木曽路入る四方八方山笑う

「木曽路は山の中」ですね。

(国枝評)木曽路に入ると春らしさを実感することがよく分かる。ただ「木曽路入る」
と助詞がないと分かりづらいと思いました。単に「木曽に入る」だけで分かると思いま
した。

63	春宵の二人を分つ列車ドア

<列車ドア>は言葉としてこなれていないように思いましたが、イルカの歌「なごり雪」
のような景でしょうか。

玉井美智子氏評===============================

「春宵」 の季語から純愛を感じます。

======================================

64	春愁の猿の引きずる尻尾かな

 「春愁」よりもむしろ俳諧味を感じました。

65	瞳なき雛人形やほのと笑む

<ほのと笑む>が説明のような感もありますが<瞳なき>の写生から続く良い雰囲気
が保たれていると思いました。

66	天城山霞の海へなだれけり

大景を無理なく読まれていますね。

67	ラッパ水仙下校児童の弾む声

 元気でよろしいのですが、上六が気になりました。

(国枝評)「下校児童」と「ラッパ水仙」の取り合わせだと思いますが、上七は避けた
い。
よく上5五はいくら長くても構わないとおっしゃる方がいますが、可能な限り上5に収め
たいと思います。この句では「黄水仙」などでも取り合わせの雰囲気は変わらないと思
います。

68	愚痴言える親友がいて桜餅

こういう句は季語が命ですね。

玉井美智子氏評==============================

「桜餅」は丸っこくてかわいらしいですので、安心して愚痴をこぼせる友人なんでしょ
うね。

======================================

國枝隆生氏評===============================

類句がありそうだが、こういう友達は大事ですね。

======================================

69	早春の光返して川流る

 実直な写生句ですね。

國枝隆生氏評===============================

「光返して」に類想感があるが、明るい川が見えてよかったと思います。

======================================

70	紅梅や茶会の亭主指白し

上五で強く切れていますので下五は終止形は避けた方が良いと思いました、。

71	賑わひのカフェの窓辺や花ミモザ

そつなくできた句ですね。季語も良い感じです。<賑わひ>は<賑はひ>ですね。

國枝隆生氏評===============================

カフェの窓から見える「花ミモザ」に明るさが見え、親しまれるカフェだということ
が分かる。

======================================

72	春光の淡き耳なし芳一堂

静かで良い感じの句ですね。

73	満々と飛び立つ構へ杉花粉

見立てがやや大袈裟だと思いました。

74	残雪の鳥海讃へ立ち話

景色を称えた後の立ち話という脱力感にがっかりしました。

75	子の嫁ぎエンドウの花真白なり

<エンドウ>は平仮名か漢字にしてください。

(国枝評)お孫さんが嫁いでいる屈折した感情を「真白」とまぶしさで詠んだことが不
思議とマッチする。


76	啓蟄や孫と蒔きたり花の種

 <や>で強く切れて、<蒔きたり>の終止形で切れて、三段切れです。

(国枝評)典型的な三段切れだと思いました。中七を「孫と蒔きたる」で3段切れはな
くせると思います。

77	湧水のひかりの玉や揚げ雲雀

<ひかりの玉や>と切れ字を使って注視させているので、「揚げ雲雀」と視点を上げて
しまうのはどうかなあと思いました。

78	わさび田で奏でる鳶の声のどか

わさび田の春を鳶の声で表現。

(国枝評)「わさび田」の上を飛んでいる鳶からいかにものどけさを感じる。ただ「奏
でる」と「鳶の声」にダブり感があるので、「わさび田の高みに鳶の声のどか」とした
方がよいと思いました。

79	托鉢はキックボードで花吹雪

キックボードの托鉢では誰もお布施を入れないような気がしますが・・・。

80	長き愚痴聞き入る炬燵変わり玉

変わり玉は飴玉のことですか?


第293回目 (2024年2月) HP俳句会 選句結果
【  武藤光晴 選 】
  特選 倒壊の黒き瓦に雪椿 佐藤けい(神奈川県)
   スキップでいつも通る子山笑ふ 大原女(京都)
   家家の屋根白き朝寒椿      みぃすてぃ(神奈川県)
   春立つや鼬の筆の跳ね強く 鷲津誠次(岐阜県)
   春立ちぬ木槌の音の高らかに ようこ(神奈川県)
   妻炙る海苔の香仄と朝厨 筆致俳句(岐阜市)
   カフェラテの似顔そつくり春隣 麻里代(和歌山市)
   岬より望む端島や水仙花 蝶子(福岡県)
   対岸と手話の語らひ春の川 惠啓(三鷹市)
   うすらひに透けて見えたり鯉の緋 野津洋子(瀬戸市)
【  酒井とし子 選 】
  特選 スキップでいつも通る子山笑ふ 大原女(京都)
   竹林に光一条春立つ日 康(東京)
   春立つや鼬の筆の跳ね強く      鷲津誠次(岐阜県)
   春立ちぬ木槌の音の高らかに ようこ(神奈川県)
   天平の匂ひを今に梅の花 後藤允孝(三重県)
   ヒマラヤの塩の桃色春浅し 伊藤順女(船橋市)
   真青なる空を賜り寒ひと日 りきお(秋田県)
   対岸と手話の語らひ春の川 惠啓(三鷹市)
   辰の字の大凧宙を席巻す 惠啓(三鷹市)
   太陽のかけら鏤め蜜柑山 小林土璃(神奈川県)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 妻炙る海苔の香仄と朝厨 筆致俳句(岐阜市)
   竹林に光一条春立つ日 康(東京)
   カーテンを透けくる光り朝寝覚め      梦二(神奈川県)
   吊橋は谷の揺り籠冬日和 みのる(大阪)
   二ン月や「早春賦」弾く駅ピアノ 筆致俳句(岐阜市)
   朝刊のポストはみ出す初日かな 奥村僚一(甲賀市)
   カフェラテの似顔そつくり春隣 麻里代(和歌山市)
   春うらら朝ドラの唄口元に 隆昭(北名古屋市)
   ヒマラヤの塩の桃色春浅し 伊藤順女(船橋市)
   立春の音なきままの夜の雨 郁乎(〒834-0047 八女市)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 竹林に光一条春立つ日 康(東京)
   スキップでいつも通る子山笑ふ 大原女(京都)
   風花や故郷の友の遺品来る      直樹(341-0018 埼玉県)
   カフェラテの似顔そつくり春隣 麻里代(和歌山市)
   水際の鳥の足跡春寒し 正憲(浜松市)
   保護犬の目玉黒ぐろ春の風 伊藤順女(船橋市)
   ヒマラヤの塩の桃色春浅し 伊藤順女(船橋市)
   倒壊の黒き瓦に雪椿 佐藤けい(神奈川県)
   カントリーダンスジーパンきめて春兆す 佐藤けい(神奈川県)
   岬より望む端島や水仙花 蝶子(福岡県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、大原女さん(京都)、康さん(東京)でした。「伊吹嶺」2月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2024年2月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

1	懸崖に鳶が波濤と戯れぬ

 季語は鳶でしょうか?

2	日永なる獣の声の遠くから

 「日永なる獣の声」がよくわかりませんでした。上五を「日永なり」と切ると、取り
合わせの句として鑑賞できます。

3	ネット中暫し微睡む四温かな

 ネット中は、インターネットを使って何かしている間という意味かと思いますが、詩
語として少々無理を感じました。また、温かいから→眠くなるという因果関係・理屈が
感じられます。

4	抱く児の素足やわらか春萌す

 上五中七が感覚的で良いと思いましたが、「春萌す」という季語があるのでしょう
か? ここは「春兆す」で良いように思います。

5	スキップでいつも通る子山笑ふ

 春らしい明るさ、軽快さが感じられますね。

 酒井とし子氏評===============================

<いつも走る子>なので近所の子供なのでしょう。元気な子の様子を微笑ましく見てい
る作者が見えます。

 ======================================

6	メモの数増ゆ如月のカレンダー

 何故、二月はカレンダーにメモを書き込むことが多くなるのか? よくわかりません
でした。

7	予後の身の春一番によろめけり

 「予後の身」というのが、日本語として正しいのかどうか疑問に思いました。「予後」
は広辞苑には次のように載っています。
(1)〔医〕(Prognose ドイツ) 罹病した場合、その病気のたどる経過についての医学上の見通し。(2)俗に、病後の経過。「―不良」

8	まんさく咲く見晴台にパンの屑

 「まんさく咲く」は「まんさくや」で良いですね。通常、花は「咲く」と言わなくて
も、その名前を言うだけで咲いていることになります。

9	春寒の天日にぬくと大いちょう

 春寒は春が立った後に残る寒さ、天日は太陽の光や熱のことですので、暖かいのか寒
いのかよくわかりませんでした。

10	あの空は隣の国や鳥帰る

 島国日本では、よほど領海ぎりぎりまで行かないと、隣国の空は見えないと思います。

11	家家の屋根白き朝寒椿

 屋根が白いのは、雪が積もっているということでしょうか? そうだとすると、季重
なりを避けたいのはわかりますが、回りくどい謎かけのように感じられます。「家々に
雪積む朝や寒椿」とすると、主季語の寒椿の色彩が際立つと思います。

12	竹林に光一条春立つ日

 竹林に射しこんだ光に春の訪れを感じたのですね。静かに湧き上がる喜びが感じられ
ます。

 酒井とし子氏評===============================

竹林のすがすがしさが<光一条>により際立っている。

 ======================================

 奥山ひろ子氏評===============================

 「光一条」の措辞が「竹林」と合っていて美しいと思いました。

 ======================================

13	飴舐めて無口な人と梅見かな

 飴を舐めているのは作者でしょうか?無口な人でしょうか?

14	春立つや鼬の筆の跳ね強く

 イタチの毛の筆は弾力があり、穂先が良くまとまるそうですね。春らしい力強い字が
書けそうです。

15	やはらかに丸餅まろくふくれけり

 餅を焼いている景が浮かびますが、やわらかいのも丸く膨れるのも餅として当たり前
に思いました。

16	カーテンを透けくる光り朝寝覚め

 光りが射して明るくなった→目が覚めたという理屈が感じられます。

 奥山ひろ子氏評===============================

 春日の眩しさと、まだ眠い春の朝の取り合わせが面白いです。

 ======================================

17	このままに国危うきや大雪崩

 句意がわかりませんでしが。本当の雪崩のことを言っているのか?世相を比喩的に
言っているのか?

18	吊橋は谷の揺り籠冬日和

 揺れるという点で吊り橋を揺り籠に喩えたのだと思いますが、同じ揺れるのでも、揺
り籠は心地よい揺れ、吊り橋はどちらかというと恐怖を感じますので、あまりうまい喩
えとは思えませんでした。

 奥山ひろ子氏評===============================

 「谷の揺り籠」に作者の個性と工夫を感じます。

 ======================================

19	冬鴎波は埠頭に絶へ間なく

 冬鴎と波は似合いますが、波の形容として「埠頭に絶へ間なく」は陳腐に感じました。

20	風花や故郷の友の遺品来る

 形見分けの品が送られて来たのでしょうか? 風花が美しくも悲しいですね。

21	いつの間に梅見となりし散歩かな

 「探梅」という季語を使いたいと思いました。「探梅の心携ふ散歩かな」等。

22	春立ちぬ木槌の音の高らかに

 春らしさを感じますね。上五は「春立つや」と詠嘆を感じられるようにしたいところ
です。ただ、立春と槌音というのは、類句が多いように思いました。

23	二ン月や「早春賦」弾く駅ピアノ

 二月と早春賦は付きすぎに感じました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 春を感じる代表的な曲ですね。「駅ピアノ」で現代の俳句という感じです。

 ======================================

24	妻炙る海苔の香仄と朝厨

 焼き海苔は日本の朝食の定番ですね。かなり強い芳香がするので、「仄」という形容
にちょっと違和感を覚えました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 日常句を味わい深く詠まれました。「海苔の香」が鼻に漂うようです。平和な朝のありがたさを痛感し、特選といたしました。

 ======================================

25	青びかる薄氷の面ほまち田に

 「ほまち田」を使った俳句を時折見かけますが、ほまち田かどうかは見た目ではわか
らず、田んぼは田んぼです。ほまち田であるということが重要な意味を持つ場合以外は、
注意して使った方が良いと思います。

26	ほまち田に薄紙ほどの薄氷

 「薄紙ほどの」は、薄氷の形容としてほとんど無意味に感じました。

27	朝刊のポストはみ出す初日かな

 元日の朝刊は分厚く、ポストに入りきらないのですね。中七に切れがあります。

 奥山ひろ子氏評===============================

 広告や記事が多い元旦の新聞。「ポストはみ出す」が具体的でいいと思います。

 ======================================

28	大根の次に竹輪のおでん鍋

 大根も竹輪もおでん種では人気の品ですね。句としては、季語の説明です。

29	カフェラテの似顔そつくり春隣

 ラテアートですね。似顔絵なのでそっくりなのは当たり前ですから、もう一工夫ある
と良いと思いました。むしろ、「カフェラテの似てない似顔春隣」等の方が俳諧味があ
ると思います。

 奥山ひろ子氏評===============================

 句材が新鮮で、季語がわくわくした気持ちを表しています。

 ======================================

30	歩き出す時期はそれぞれ春よ来い

 「春よ来い」は季語になりません。

31	太陽のかけら鏤め蜜柑山

 「太陽のかけら鏤め」の意味がよくわかりませんでした。蜜柑を太陽のかけらに喩え
ているのでしょうか?

32	黒塗りの門閉ざしあり春の塵

 句意がよくわかりませんでした。春の塵や埃が入らないように、門を閉ざしていると
いうことでしたら、説明的な句となります。

33	水際の鳥の足跡春寒し

 ふとした物に季節を感じることがありますね。感覚の鋭い句と思いました。

34	公園のキリンの遊具春待てり

 春を待っているのは作者?遊具?

35	旅帰り水注す吐息室の花

 意味がわかりませんでした。旅帰りの心に水を差すような吐息を誰かがついたので
しょうか?

36	雛の家上がり框や黒光り

 黒光りしているのは上がり框だと思いますので、中七は「や」で切らない方が良いで
すね。

37	眼に凍つるなゐといくさの連写かな

 「眼に凍つる」は一種の比喩表現と思いますが、これが季語となるかどうか、疑問に
思いました。また、「連写」は写真を連続して撮ることで、TV等で連続して何かが映る
ことではありません。

38	ブロッコリーこの木なんの木亜星の木

 ブロッコリーが、日立のCMのモンキーポッドの木に似ているということでしょうか?
 あの曲の作曲家は小林亜星ですが、それを言う必要があるか疑問に思いました。むし
ろ、日立の樹と言った方が分かりやすいと思います。

39	あなた食べる?皮つき林檎口元へ

 セリフをそのまま句に取り入れた冒険的な句ですね。でも、皮を剥いていない丸ごと
の林檎を口元に突き付けられても、ぎょっとしてしまうのではないかと思ってしまいま
した。

40	春うらら朝ドラの唄口元に

 思わず歌を口ずさんでしまうような麗らかな陽気なのでしょうね。残念ながら私は朝
ドラを見ておらず、主題歌がどんなものなのか知りませんでした。

 奥山ひろ子氏評===============================

 スズ子のブギでしょうか?元気な一日の始まりで、こちらも明るい気分になります。

 ======================================

41	如月の怒涛巌に綺羅まとふ

 「怒涛巌に綺羅まとふ」は、怒涛が巌のところで綺羅(美しい衣装)を纏うという意味
なのか、怒涛が巌に綺羅を纏わせるという意味なのかわかりませんでした。どちらにし
ても、不自然に感じます。

42	鈴鹿嶺の蒼き冠雪誓子の忌

 誓子忌は3月26日で、鈴鹿の峰々にはまだ雪が残っているのでしょうね。「蒼き」
は具体的描写ですが、作者の心理描写にもなっていると思いました。

43	春来る盆栽松の目覚めかな

 「盆栽松の目覚め」とはどのようなことでしょう? 新芽が出たということでした
ら、「若緑」や「緑立つ」として、それ自体季語になります。

44	天平の匂ひを今に梅の花

 格調を感じる句ですが、作者の主観による季語の説明的にも感じました。

 酒井とし子氏評===============================

<天平>という時代と「梅の花」がマッチしています

 ======================================

45	雪激し能登の天気を思ひけり

 作者の窓の外に降る雪を見て、地震の被災地に思いを馳せ、案じているのでしょうね。

46	丹頂の番啼き合ふ息白し

 鶴が息を吐いた瞬間の映像・音が浮かんできます。丹頂も冬の季語ですが、主季語は
息白しですね。

47	保護犬の目玉黒ぐろ春の風

 目のくりっとした仔犬でしょうか? 保護犬を見守る作者の優しい眼差しが見えて来
ます。

48	ヒマラヤの塩の桃色春浅し

 ピンクの岩塩には独特の硬質さが感じられます。季語からそれが伺えますね。

 酒井とし子氏評===============================

「春浅し」の季語が効いている。

 ======================================

 奥山ひろ子氏評===============================

 「ヒマラヤ」の地名が思い切った感じでいいですね。「桃色」という色も具体的でい
いと思いました。

 ======================================

49	リンクなき指の現れたる春手套

 リンクはリング(指輪)でしょうか?

50	立春の音なきままの夜の雨

 立春の音とは何でしょうか?

 奥山ひろ子氏評===============================

 春の雨の静かな情景が浮かびます。静かな春の味わいを感じました。

 ======================================

51	木の根明く内緒話を聴くやうに

 「内緒話を聴くやうに」の直喩がぴんときませんでした。

52	雪解けて後ろ歩きに見る未来

 申し訳ありませんが、句意がまったくわかりませんでした

53	残雪や能登の仮設にまだらなる

 上五が「や」で強く切れているにもかかわらず、中七下五で残雪の説明をしています
ので、上五の切れが意味を成していません。また、まだらな残雪は斑雪(はだれゆき)
と言い、それ自体季語になっています。

55	余寒なり雨冷やしゆく畑の土

 余寒であればもともと土は冷たくて、雨が降ったからといってそれ以上冷えることは
無いのでは?・・と思ってしまいました。

56	恋猫の木戸にちんまり朝帰り

 「ちんまり」で、猫が帰って来なくて一晩中案じていた作者の安堵感と拍子抜けした
感じが伝わります。

57	延々とメタセコイアの冬並木

 冬並木という季語があるでしょうか? また、「延々と」と「並木」の重複感が気に
なりました。

58	倒壊の黒き瓦に雪椿

 能登の地震の句と思います。 中七を「や」で切れば、取り合わせの句として、情景
が浮かんできます。

 武藤光リ氏評================================

  「瓦に」を「瓦や」となおさせて頂き、特選とします。
能登地震で倒れた家屋の能登瓦を「や」で強調したい。
能登瓦の家並は、黒く光って真に美しかった。それが今は砕けて
地に散乱している。能登にも多い雪椿は健気にも赤い花を付けて
今年も咲いている。早い復興を祈るばかりだ。

 ======================================

59	カントリーダンスジーパンきめて春兆す

 普段は履かないジーパンを、ダンスのために履いてみた作者。姿見に写った自分の姿
にときめいている作者の気持ちが伝わります。

60	岬より望む端島や水仙花

 端島はいわゆる軍艦島ですね。島の威容と水仙の花の対比が鮮やかです。

61	海峡を五分の渡船春の色

 季語が動くように思いました。「海峡」と「渡船」の重複感も気になりました。

62	水仙や媚びるとこなし清々し

 主観的で、季語の説明です。

63	ときめきも何事もなしバレンタインデー

 報告・説明的な句と感じました。字余りも気になります。

64	真青なる空を賜り寒ひと日

 句意は分かりますが、「寒晴」という一語の季語で済んでしまうと思いました。

65	見えぬ風地吹雪と化す広野かな

 風は見えないのが当たり前、それが雪を巻き上げると地吹雪となって見えてくるとい
うことですね。全体的に「地吹雪」の説明という感じを受けました。

66	対岸と手話の語らひ春の川

 暖かい感じは伝わりますが、どういうシチュエーションなのでしょう?

 酒井とし子氏評===============================

「春の川」の季語により楽しい会話なのだろうと察します。

 ======================================

67	辰の字の大凧宙を席巻す

 席巻は、「圧倒的に自分の勢力範囲に収めること。」とあります。大空を舞っている
凧にこの表現は無理があると思ってしまいました。

68	うすらひに透けて見えたり鯉の緋

 氷の下でも魚は生きているんですね。「鯉の緋」は「こいのあか」と読ませるのでしょうか?

69	幾筋も雪花のチェーン蜘蛛の囲に

 雪花と蜘蛛の囲の季重なりです。

70	うつ田姫わずかにゆるむ樹々の先

 珍しい季語に挑戦されました。いわゆるキセル俳句になっており、わずかにゆるむの
が、うつ田姫なのか樹々の先なのか、わかり難くなっています。

71	葉隠れの空を虚ろに落椿

 句意がわかり難く思いましたが、椿が落ちた跡に見える空が虚ろに思えるということ
でしょうか?

72	幾千の星の瞬き春隣

 星が鮮明に見えるのは冬で、春の星はにじんだ風情があるものとされています。そう
すると、季語が今一つ噛みあわない気がします。

73	春夕鞄にしまうチョコレート

 バレンタインデーでしょうね。中七を工夫して、もっと物語が感じられると良いです
ね。
copyright(c)2003-2007 IBUKINE All Right Reserved.