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選句結果
     
【 第321回目 (2026年9月) HP俳句会 選句結果】
【  松井徒歩 選 】
  特選: かなかなや井戸に供ふる塩と酒 田村幸之助(和歌山県)
   芋の露二つ転げて一粒に みのる(大阪)
   魚籠軽き太公望や秋没日      ()
   鳥渡る翳りの伸びる摩天楼 みぃすてぃ(神奈川県)
   かなかなや父の残せし小引出し よりこ(名古屋市)
   蜩や庭に畠の武家屋敷 直樹(埼玉県)
   乱切りの刃先に残る胡瓜の香 正憲(浜松市)
   笠影に紅のかがよふ風の盆 土璃(神奈川県)
   持ち替ふる両手にずしり稲の束 戸口のふっこ(静岡県)
   知恵の輪の外れぬままに秋に入る 石塚彩楓(1-5-2埼玉県)
【  関根切子 選 】
  特選: 笠影に紅のかがよふ風の盆 土璃(神奈川県)
   かなかなや井戸に供ふる塩と酒 田村幸之助(和歌山県)
   秋の灯やゼンマイ固くオルゴール      百合乃(滋賀県)
   秋晴や孫殿を力走す みのる(大阪)
   路地の子の不意打ちにあふ水鉄砲 後藤允孝(三重県)
   ひもすがら納戸の隅の虫の声 岩田  勇(名古屋市)
   魚籠軽き太公望や秋没日 ()
   かなかなや父の残せし小引出し よりこ(名古屋市)
   青胡桃土偶の並ぶ郷土館 直樹(埼玉県)
   蜩や庭に畠の武家屋敷 直樹(埼玉県)
【  玉井美智子 選 】
  特選: 仰向けの蝉の骸や被爆像 正憲(浜松市)
   秋の灯やゼンマイ固くオルゴール 百合乃(滋賀県)
   無花果や宝珠となりし手の窪み      山びこ(名古屋市)
   箒目の波なぞりゆく秋の風 山びこ(名古屋市)
   鳥渡る翳りの伸びる摩天楼 みぃすてぃ(神奈川県)
   血縁の途絶えたる地や彼岸花 よりこ(名古屋市)
   兵として死なぬ国にや菊日和 原洋一(岡山県)
   夜長の灯助詞の一文字選びをり 吉沢美佐枝(千葉県)
   艫の波細く消えゆく今朝の月 井立美智乃(四日市)
   分校は山懐や群とんぼ 蝶子(福岡県)
【  国枝隆生 選 】
  特選: 曼殊沙華園児の声の届く畔 蝶子(福岡県)
   かなかなや井戸に供ふる塩と酒 田村幸之助(和歌山県)
   芋の露二つ転げて一粒に      みのる(大阪)
   路地の子の不意打ちにあふ水鉄砲 後藤允孝(三重県)
   鳥渡る翳りの伸びる摩天楼 みぃすてぃ(神奈川県)
   かなかなや父の残せし小引出し よりこ(名古屋市)
   大花野どこへ迷ふも花の中 原洋一(岡山県)
   月明かり風の奏でる手風琴 水夢(春日部市)
   夜長の灯助詞の一文字選びをり 吉沢美佐枝(千葉県)
   知恵の輪の外れぬままに秋に入る 石塚彩楓(1-5-2埼玉県)

※(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、田村幸之助さん(和歌山県)でした。「伊吹嶺」九月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


     2026年9月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

沢山の御投句ありがとうございました。

1	   日の丸は白地に赤き敗戦記

「赤き」は「赤し」と終止形にして敗戦記の前に切れを入れた方が良いと思います。
「敗戦記」は「敗戦忌」の変換ミスでしょうか?

2   名刹の古きトイレで蚊に刺され

川柳と俳句の違いは俳句には「切れ」があることです。「名刹の古きトイレや蚊に刺さ
れ」とすれば「蚊に刺され」の前に切れが生じます。

3      稲刈りをするも気になる米相場

  理屈を感じました。

4      光る羽根田んぼに蒔きし蜻蛉かな

「蒔きし」は「撒きし」の誤記かと思います。田圃に蜻蛉が集まるのはよく見かける光
景ですが、光る羽根を蜻蛉が撒いた、という表現が作者の閃きですね。

(国枝評)この蜻蛉は眼前に飛んでいる蜻蛉でしょうか。もしそうなら、「はね」は
「羽」または「翅」を使います。「羽根」は死んだあとや人工の羽根に使います。ここ
では「翅」を使うと便利でしょう。

5     夕月や胃薬を買ふ占い師

 深読みをすれば、この占い師は深く感情移入する性格で、悪い相の人を見続けてスト
レスがたまり、胃薬を買いに来た。なんていう想像をしました。

6       かなかなや井戸に供ふる塩と酒

井戸を清め、いつまでも質の良い水を汲み続けたいという思いが伝わってきます。蜩の
鳴く初秋の風情も良いですね。

国枝隆生氏特選================================

何かのいわれのある井戸でしょうか。「井戸」と「かなかな」の取り合わせが何となく
しっくりときました。かなかなも祈りを捧げているようです。

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7   秋暑しカツのラベルの油染み

気分は分かりますが、救いがなくて鑑賞が重くなります。

8   桟橋の板の隙間や秋夕焼

「板の隙間」ですが、もう少し先に進んだ写生が欲しいです。

9      秋の蝶何か急かるる肩あたり

(国枝評)秋ともなると何かにつけて急かされる心地がするのでしょう。ただ秋の蝶が
飛んでくるだけで感じたのでしょう。

10	    秋の灯やゼンマイ固くオルゴール

「固く」は「固き」の方が自然だと思います。

(国枝評)秋の夜にオルゴールを聴くのもしみじみとした感慨がありますね。この句は
主題はオルゴールでしょうから、上五は「や」で強く切らないで、「秋灯下」と和らげ
て、オルゴールを強調した方がよいでしょう。

11	     秋晴や孫殿を力走す

悪くはないですが、愛情溢れる孫俳句の典型でしょうか。

12   芋の露二つ転げて一粒に

芋の葉の上で、二つの露の玉が転がり、出会った瞬間に合体して大きな一粒になる。そ
の一連の動的な光景を、主観を交えずに捉えた、視線のしっかりとした写生句です。

国枝隆生氏選================================

瞬間の面白さを捉えています。芋の露は確かにこの通りで、露は次々と一粒になって
膨らんでいきます。

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13   朝顔や文士の貌は遠のいて

作者あるいはだ誰かが若いころは文士の顔をしていたのでしょうか。

14   炎昼や航跡曲げて漁港かな

上五で「や」を使っているので下五で「かな」は使わない方が良いと思います。切れ字
は一句の中で一つが原則です。

(国枝評)この句の主題は「炎昼」でしょうか、「漁港」でしょうか。どちらにも切れ
字があると、言いたいことが分散します。

15   祭り果て軒の風鈴余情かな

「余情」は読者が読み取るものですから、「余情かな」と言われても困ります。

16   汗腺を全開にして子等遊ぶ

言い尽くしてしまっているので、余情が欲しいです。

17   路地の子の不意打ちにあふ水鉄砲

 下町の郷愁を誘う光景ですね。

18   無花果や宝珠となりし手の窪み

無花果を掌で包むように受けている姿を想像しましたが、言葉の運びが手の窪みへ集中
していますので。上手く読み取れませんでした。

(国枝評)「無花果や」と強く切りますと、意味的に断絶して詠みます。ここは「無花
果の」と続けた方が分かり易いでしょう。

19   箒目の波なぞりゆく秋の風

 「なぞりゆく」が言葉の発見ですね。

(国枝評)庭園の砂でしょうか。そんな箒目にも秋を感じたことでしょう。擬人化が効
いていると思いました。

20   秋雨や濡れて歯医者の台の上

秋雨と「濡れて」が即きすぎのように思います。

21   秋日傘行基菩薩に会釈礼

上五と下五が共に名詞ですので窮屈な感じです。

22   朝夕に白粉花の淑女かな

「白粉花の淑女」が分かりません。

23     南瓜煮る病気知らずの母自慢

健康で丈夫なお母さんなのですね。南瓜も美味しいことでしょう。

24   ひもすがら納戸の隅の虫の声

納戸という今どき珍しい言葉から想像するに、古い日本家屋の物置や奥まった部屋でしょ
うか。「ひもすがら」とあるので、作者も一日中ほぼそこに留まっているのでしょう。
静寂を超えた寂寥感を覚えました。

25   晩酌の供にさんまの夢の夢

 さんまが高くなったということであれば理屈のように感じます。

(国枝評)「夢の夢」と重ねたことにどんな意味あるのか分かりませんでした。

26	魚籠軽き太公望や秋没日

 秋の日の沈む早さと「魚籠軽き」という描写の取り合わせに、味わい深い俳味を感じ
ます。

27	秋めくや日矢さす湖の漁舟

 そつなくできた叙景句ですね。

28	月上る歯形の残る積木かな

 「歯形の残る積木」が実景としても、どう感じたらよいのか戸惑いました。

29	鳥渡る翳りの伸びる摩天楼

 暮れゆく都市の風景と、はるばる時間をかけて渡ってきた鳥たちの姿が交差する、ド
ラマチックな光景です。

国枝隆生氏選================================

摩天楼の」影に見た渡り鳥の季節を感じたのでしょう。大景を詠んだ爽やかな景色で
す。「渡り鳥みるみるわれの小さくなり 上田五千石」を思い出しました。 

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30	ごろりんと歪な梨のかほるごと

「かほるごと」がよく分かりません。

31	ちちろ虫眠れぬ脳の重きこと 

 なかなか眠れないにしても、表現がやや大げさだと思います。

32	血縁の途絶えたる地や彼岸花

 切ない句で共感しますが、中七の調べを今少し改善すればもっと良くなると思います。

33	かなかなや父の残せし小引出し

 小さな引き出しには、亡き父親の思い出が静かに宿っています。蜩の声に包まれなが
ら、心の中で父と対話する作者の姿が目に浮かぶようです。

国枝隆生氏選================================

かなかなは郷愁を誘うようですね。蜩を聞いていると、父を思い出したのでしょう。

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34	青胡桃土偶の並ぶ郷土館

 物ばかりなので、季語は物以外のほうが良いと思いました。

35	蜩や庭に畠の武家屋敷

武家屋敷がまとう歴史の重みと、その庭にある畑という素朴な生活感。ふたつの対比が
映し出す時の流れを、物悲しい蜩の鳴き声が優しく包み込んでいます。

36	兵として死なぬ国にや菊日和

 意味は分かりますが「国にや」で良いのかどうか?

(国枝評)上五、中七、と抽象的な願いを言われても俳句には短すぎると思いました。

37	大花野どこへ迷ふも花の中

 迷うことを楽しんでいる姿が目に浮かびます。

国枝隆生氏選================================

花野を歩いていると、道が分からなくなったのでしょう。いつまでも花野を抜けられ
ないのがほほえましく感じました。

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38	月明かり風の奏でる手風琴

 月光と爽涼な風の音のコラボレーション。

国枝隆生氏選================================

今どき手風琴は見当たらないでしょう。月を見ていると回想に駆られたのでしょうか。

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39	シーラカンス潜む深海星月夜

 なかなか面白い取り合わせですね。ただ、シーラカンスは深海に生息するものですか
ら、上五中七が常識でしょうか。

40	落日の影絵に宿る秋思かな

(国枝評)秋は何にでも秋思を感じるのですね。夕日に写った影にことさらしみじみと
した感慨を受けたことなのでしょう。

41	夜長の灯助詞の一文字選びをり

 こちらの句はよく分かりますね。私も助詞の一文字には悩みます。

国枝隆生氏選================================

トリビアなことに執着するのも夜長のせいでしょうか。

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42	雅なる名前授かり式部の実

 季語が良い雰囲気を出していますが、「雅なる」では名前を授かった感動が伝わらな
いと思います。

(国枝評)上五、中七、は「式部の実」の説明のように聞こえました。

43	加賀友禅まとふひと日や萩の風

 切れ字の「や」が付いている「ひと日」が句の焦点となります。この句の焦点が「ひ
と日」で良いのかどうか?

44	乱切りの刃先に残る胡瓜の香
 
 視覚と臭覚の繊細な感覚の句ですね。調理の手際の良さも感じます。

45	仰向けの蝉の骸や被爆像

被爆像に昆虫とはいえ骸を配合するのは生々しすぎるように思いました。

46	逝く猫やいじらしく尾の揺るる秋

 死を目前とした猫の「いじらしく」尾を振る仕草が切ないですね。

47	見上ぐればつつゐづつなる月渡る

「つつゐづつ」という古典のロマンを背景にした構成は買いますが、月に連体形でつな
がるのはいかがなものでしょうか。「見上ぐれば」も要らないように思います。
 
48	県道をしるす棒立つ秋出水

「しるす棒」は標識でしょうか? 少し乱暴な言葉のように思いました。

49	桑の実を食べたる舌を見せあへる

 子供たちの観察でしょうか? 和気あいあいと楽しそうですね。
 
50	水煙の天女帰らむ月今宵

 薬師寺東塔の水煙でしょうか。「天女帰らむ」でドラマチックな句となりました。

51	笠影に紅のかがよふ風の盆

 女性の笠の影に、ふと垣間見える口元の紅がなんとも艶やかですね。

52	昏れゆける伊根の舟屋の秋ともし

 素直な写生句ですね。

53	幾山河越えて来たるや渡り鳥

 はるばると渡って来る鳥たちの常識のように感じました。

54	木曽暑し左は江戸の道標(しるべ)

 中山道ですね。 

55	熱帯夜踊るポーズの大統領 

 テレビの映像以上のものが見えてこないので実感に欠けるように思いました。

(国枝評)某国の大統領のパロディでしょうか。

56	雁渡しレギュラー二千円分で

 「雁渡し」と「二千円」は関係ないと思いますが、助詞の「で」で関係があるように
見えてくるのが気になります。

57	幼子のブーケはいつも草の花

 素朴な草の花のブーケの幼子の楽しそうな笑顔が目に浮かびます。

58	意地ひとつ捨つれば楽に鰯雲

 当たり前の人生訓のような気がしました。

59	踊り場に脚ひらく蝉とじる蝉

 踊り場は広義では人生が交差する場所でもあります。そこに転がる、命を閉じようと
する蝉。何かドラマを感じそうではありますが、今一消化不良でした。

60	老蝶や雨傘の柄にすがりをり

 老いているからすがるという理屈を感じました。

(国枝評)「老蝶」という言い方の季語はあるのでしょうか。「秋の蝶」だと十分かと
思いました。

61	百日紅花盗人は手をつけず

 「花盗人」という言葉ををどういう意味で使ったのかよく分かりませんでした。

62	雨に耐え風を堪える木の実かな

 木の実の写生になっていないように思います。

63	残暑めく乗り換え駅のベンチかな

 きちんとできた句ですが、報告気味のように思います。

64	立秋の終着駅に降りて立つ

 前句と同じ感想です。

65	持ち替ふる両手にずしり稲の束

 豊作の様子が伝わってきます。

66	秋濡れて湖に雲間のシアン色

 「秋濡れて」がよく分かりません。

67	朝の風秋を携へ通る窓

 朝の風に秋を感じたということだと思いますが、もっと素直な表現の方が良いと思い
ました。

68	旅の宿夢の叙唱の虫の声

 「夢の叙唱の虫の声」がよく分かりませんでした。

69	八月や歴史の重み忘れまじ

 よく分かる句で良いのですが、教訓はあまり俳句にはなじまないので、目に見える俳
句を望みます。

70	秋暑し迷惑電話詐欺電話

 こちらは目の前の電話が見えますが、入選までは今一歩でしょうか。

71	姉の逝く静かな知らせ十六夜

 切ない句で心に迫るのですが、「静かな」が惜しいです。もっと適切な言葉があるよ
うに思いました。

72	穏やかな寝息たつる子葉月かな

 下五の前で切れていますが、かな止めの場合は中七から下五に繋げた方が良いです。

73	倒木の苔は青丹に秋時雨

 「青丹よし」という枕詞があるので、奈良の風景を思い浮かべました。

74	知恵の輪の外れぬままに秋に入る

 秋の愁いを感じました。

国枝隆生氏選================================

ひとつのことに遊んでいるといつの間にか秋になったと季節感を感じたのでしょう。

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75	艫の波細く消えゆく今朝の月

 消えゆく航跡と明け方の月の風景が良いですね。

76	リキュール瓶の円き線今日の月

 七・五・五のリズムがあまり良くないのが残念です。

77	氷河崩るその先にある地球もや

 「その先に」は未来のことだと思いますが、「ある」で地球へ繋げるのはどうかな
あ?と思いました。もっと適切な言葉があるように思います。

78	黄落や明日の命の地に還る

 命の儚さと「黄落」が近すぎるように思いました。

79	父母の墓訪ぬる背をつくつくし

 「背を」よりも「背に」のほうが良いように思いました。

80	頭垂れ匂ふ稲穂や棚田径

 良く実った稲穂の説明のように感じました。

81	綿菓子も飛行機雲も秋の空

 空の雲が綿菓子のようだということでしょうか。よく分かりませんでした。

82	朝顔のつる登りゆく団地かな

 報告のような句だと思いました。

83	分校は山懐や群とんぼ

 蜻蛉が群れ飛ぶ山間の生徒も少ないでしょうが、元気に走り回っている学校が目に浮
かびます。

84	曼殊沙華園児の声の届く畔

 曼殊沙華の咲く畔の近くに幼稚園があるのですね。元気な声が聞こえてきます。

国枝隆生氏選================================

曼珠沙華の畦を歩いていると、園児の遊んでいる声に郷愁を誘うようです。

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85	ふみ切の待つ間日暮れの白粉花

 白粉花は夕方ごろから咲く花なので、「日暮れの」は言わずもがなのような気がしました。

86	八十余年歩み続けて鰯雲

 自分の感慨を述べる句には「鰯雲」は便利な季語ですね。

87	寸の間の雨間でくるり赤蜻蛉

 長雨の少しの止み間に赤とんぼを見つけて気が晴れたのですね。

88	虫の音や爪痕残る雨上がり

 水害の傷跡の残る静寂の中で凛と鳴く虫の声に、自然の生命力と再生を感じます。

(国枝評)何の「爪痕」でしょうか。「虫の音や」と強く切っているので、虫とも思え
ませんし。


【 第320回目 (2026年8月) HP俳句会 選句結果】
【  奥山ひろ子 選 】
  特選: 作業着の汗の重さを脱ぎ捨てる みのる(大阪)
   打水や下駄の鼻緒の色深し 山びこ(名古屋市)
   相撲部屋去りし土俵に蝉時雨      政秀(愛知県)
   白髪の深き黙祷原爆忌 みのる(大阪)
   寛解の友の毒舌ビアガーデン 鷲津誠次(岐阜県)
   トンネルを出でて真白き夏の道 直樹(埼玉県)
   目で合はす祭囃子の音はじめ 後藤允孝(三重県)
   式典に弾除けの玻璃原爆忌 近江菫花(滋賀県)
   蜩や湖畔の宿の露天風呂 ようこ(神奈川県)
   列なして衣擦れ涼し修道女 土璃(神奈川県)
【  酒井とし子 選 】
  特選: 白髪の深き黙祷原爆忌 みのる(大阪)
   まだ似合ふ若き日のこの夏帽子 伊藤順女(船橋市)
   三叉路を渡れば母校夏季講座      田村幸之助(和歌山県)
   一湾へ胸を開けば遠花火 山びこ(名古屋市)
   寛解の友の毒舌ビアガーデン 鷲津誠次(岐阜県)
   裏路地や遊郭跡の夕化粧 吉沢美佐枝(千葉県)
   列なして衣擦れ涼し修道女 土璃(神奈川県)
   涼しさや富士山頂より来るメール よりこ(名古屋市)
   このバスに乗れば故郷柿熟るる よりこ(名古屋市)
   滝しぶき浴び仄暗き札所径 蝶子(福岡県)
【  武藤光�リ 選 】
  特選: 瀧一字流るる軸や夏座敷 土璃(神奈川県)
   黒猫の金の眼や木下闇 伊藤順女(船橋市)
   打水や下駄の鼻緒の色深し      山びこ(名古屋市)
   作業着の汗の重さを脱ぎ捨てる みのる(大阪)
   寛解の友の毒舌ビアガーデン 鷲津誠次(岐阜県)
   室外機うなる小路や蟻の塔 吉沢美佐枝(千葉県)
   目で合はす祭囃子の音はじめ 後藤允孝(三重県)
   改札の鳴る電子音駅残暑 筆致俳句(岐阜市)
   蜩や湖畔の宿の露天風呂 ようこ(神奈川県)
   一病はあれどかくしゃく生身魂 惠啓(三鷹市)
【  渡辺慢房 選 】
  特選: 作業着の汗の重さを脱ぎ捨てる みのる(大阪)
   浅葱色母の匂いの一重帯 佐藤けい(神奈川県)
   黒猫の金の眼や木下闇      伊藤順女(船橋市)
   明け易し南国行きの機内食 ゆきえ(和歌山市)
   寛解の友の毒舌ビアガーデン 鷲津誠次(岐阜県)
   列なして衣擦れ涼し修道女 土璃(神奈川県)
   涼しさや富士山頂より来るメール よりこ(名古屋市)
   このバスに乗れば故郷柿熟るる よりこ(名古屋市)
   走り抜け渡すバトンや夏の雲 石塚彩楓(埼玉県)
   夏空へ全てのシーツ預けけり 戸口のふっこ(静岡県)

※(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、みのるさん(大阪)、次点は鷲津誠次さん(岐阜県)でした。
「伊吹嶺」8月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


        2026年8月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

 前回(六月)は「主観を直接述べない」ことについて触れました。今回は、「理屈を
詠まない」ということについて書きたいと思います。

 理屈とは因果関係、つまり原因と結果のことです。「○○だから××」という形にな
る句は理屈の句と言えます。こうした句は、「詩」よりも「報告」や「説明」になって
しまい、読者が想像を広げる余白がありません。

 例を述べましょう。「音たてて犬が水呑む大暑かな」は、大暑で暑い。「だから」犬
が水を飲む。という因果関係・理屈が感じられます。

 もう一つ、「悴むやコンビニで買ふカプチーノ」は、寒くて手が悴んだ。「だから」
コンビニで温かいカプチーノを買った。という報告になります。

 作句の際は、句が理屈を述べていないか? 報告や説明になっていないか?をよく考
えてみてください。それでは、個々の句を鑑賞します。




1	浅葱色母の匂いの一重帯

 お母様の遺愛の夏帯でしょうか? 愛用されていた香水の移り香を懐かしく愛おしく
感じているのでしょうね。浅葱色が涼し気です。

2	川沿いの小橋渡りて夏の海

 「川沿いの小橋」がよくわかりませんでした。橋は川の上に架かっているのではない
のでしょうか?

3	黒猫の金の眼や木下闇

 暑い日、黒猫は涼しい木陰に逃げ込んでいるのでしょう。金色に光る瞳が印象的です。

4	まだ似合ふ若き日のこの夏帽子

 「この」が、字数合わせのために無理やり付けたような感じを受けました。

5	鯉はねて山は燃ゆるなり名刹の池

 季語は「燃ゆ」でしょうか? 俳句では通常「炎ゆ」と書き、真夏の太陽によるすべて
のものが焼けるような熱気のことを言います。「山は燃ゆる」ですと、山火事になって
しまいます。中七、下五の字余りも解消して欲しいと思いました。

6	河またぐ通学列車篠の雨

 季語が何なのかわかりませんでした。無季の句を否定はしませんが、季語に相当する
重みがある題材でないと、単なる五七五の文字列になってしまいます。「篠の雨」は
「篠突く雨」のことかと思いますが、こうした慣用句はそのまま使わないと意味が通じ
ません。

7	きゅうり漬け冷たい味や朝の飯

 「きゅうり漬け」は、きゅうりの漬物の意味なのか、「きゅうりを漬けて」という意
味なのか、解釈に戸惑いました。「冷たい味」は工夫した表現かと思いましたが、ちょっ
と無理な感じを受けました。「瓜漬のよく冷えている朝餉かな」等とすると、整うと思
います。

8	藤寝椅子細き老体すくいおり

 「すくいおり」が主観的に感じました。藤寝椅子に寝ている様子などを写生すること
により、救われていると感じていることが読者に伝わるようにしましょう。

9	よろづ屋の葭簀の陰にメロンパン

 よろづ屋、葭簀と懐かしい景が来て、そこにメロンパンという大袈裟でない意外性が
ちょっと面白いと思いました。

10	三叉路を渡れば母校夏季講座

 母校は、出身校という意味で、卒業生が使うのが普通だと思います。夏季講座は、夏
期講座と書かれることが多く、歳時記でも夏期講座となっています。

11	死ぬ死ぬと蝉が鳴くねと吾子の言ふ

 セミの鳴き声は、地上での短い生を謳歌しているように思っていましたが、そういう
捉え方もあるのですね。

12	夏暁や雲ほのぼのと紅染むる

 夏暁は、寒暁、春暁、秋暁等でも良いように思いました。その中でも、「ほのぼのと」
には春暁が一番似合うと思います。

13	打水や下駄の鼻緒の色深し

 鼻緒に水がかかって色が深まったように見えたのでしょうか? そうだとすると、鼻
緒と言えば下駄か草履だということはわかりますので、「濡れし鼻緒の」等とすると景
がはっきりすると思います。

 奥山ひろ子氏評===============================

 打水をして鼻緒を濡らしてしまったのでしょう。鼻緒の色が濃くなり深まったのだと
拝察しました。情緒のある景を想像しました。

 ======================================

14	一湾へ胸を開けば遠花火

 「一湾」の意味が分かりませんでした。更に、「一湾へ胸を開く」というのも分かり
ませんでした。「胸を開く」をネットで検索したら体を反らすようなストレッチのポー
ズが出ましたが、それではないと思います。

15	清めらる土俵踏み締む相撲取

 「清めらる」は「清めらるる」または「清められし」だと思います。また、「踏み締
む」は終止形で切れますので、ここは「踏み締むる」と連体形にすべきだと思います。
土俵を清めるのも、力士が土俵を踏むのも当然のことですので、句材としては弱いよう
に感じました。

16	意固地なる補聴器嫌ひ生身魂

 ありそうな景ですね。「意固地」はやや相手を見下しているようなニュアンスもあり
ます。「頑固」の方が一徹で高潔な人柄が感じられるのではないでしょうか?

17	炎天や鳶悠々と港町

 季語が動くように思いました。ぎらぎらと太陽が照っている空は、あまり見上げたく
ありません。

18	相撲部屋去りし土俵に蝉時雨

 興行に来ていた相撲部屋が引き上げたという意味かと思います。中七は「や」で切っ
た方が、断然句が引き締まります。

 奥山ひろ子氏評===============================

 相撲部屋の稽古場になっていた土俵。部屋が去った後には「蝉時雨」がにぎやかに鳴
いていて、物寂しさを埋め合わせているようです。「蝉」は旧字体でいただきました。

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19	白髪の深き黙祷原爆忌

 想いが感じられますが、原爆忌と黙祷は即き過ぎに思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 「白髪」ということは高齢の方の黙祷だと思います。「深き黙祷」から、深く頭を下
げ真剣に黙祷なさる真摯な姿が浮かびました。

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20	作業着の汗の重さを脱ぎ捨てる

 仕事をして汗で濡れた作業着を脱ぐ一瞬を捉えた句。ぐっしょりと濡れた重さと、そ
れを脱いだ瞬間の解放感や爽快感、安堵感が湧き上がってきます。

 奥山ひろ子氏評===============================

 仕事が終わったのでしょう。「汗の重さ」を「脱ぎ捨て」たとの措辞に実感がこもっ
ています。それだけ汗を沢山かいていらしたということで、酷暑の厳しさを感じました。

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21	明け易し南国行きの機内食

 ハワイ便などは朝到着が多く、到着前に軽食が出ますね。面白い季語の使い方だと思
いました。

22	夏休み叔父の車のクラクション

 叔父さんが車で迎えに来てくれたのでしょうか? 状況がいまいちよくわかりません
でした。

23	ああ阿蘇の釈迦涅槃像や夏の天

 阿蘇五岳は、釈迦の涅槃像のように見えるのですね。ネットで写真を見ましたが、確
かにそのように見えました。ただ、それを言うだけでは、説明的な句になってしまいま
す。

24	生ビール涙出る時笑う時

 観念的な句に感じました。格言、人生訓、倫理観、警句などに寄ると、独りよがりの
句になりがちです。

25	噴水のバサッと落ちて正午かな

 正午になると止まる噴水でしょうか? 急に噴水が止まって、真昼の太陽が一際強く
感じられたのだと思います。

26	この暑さひと日カラスの声もなく

 あまりに暑い「だから」烏も活動しない。という理屈(因果関係)が感じられます。

27	寛解の友の毒舌ビアガーデン

 また懐かしい毒舌が聞けた嬉しさですね。下五の字余りが惜しいです。ビヤホール、
生ビール、黒ビール等、五音に収めたいところです。

 奥山ひろ子氏評===============================

 ご友人が寛解されたとのこと、良かったですね。思わずうれしさから「毒舌」にもなったのでしょうか。「寛解」と「毒舌」の取り合わせに俳諧味があるように感じました。

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28	裏路地や遊郭跡の夕化粧

 季語の夕化粧(白粉花)がダブルミーニング的に使われている点に、作者の技巧を感じ
ました。

29	室外機うなる小路や蟻の塔

 エアコンの室外機ですね。炎天下、人間は室内にこもらざるを得ませんが、蟻は黙々
と活動しているのですね。

30	ゲルニカの消されし拳ひでり星

 ピカソのゲルニカは、初期の習作版では兵士が突き上げた拳が描かれていましたが、
完成版ではそれが消されていました。その理由について、ピカソは何も語っていないそ
うです。この句は、そのもやもや感が、うまく季語に投影されていると思います。

31	億年の羽ばたき止むる琥珀の蚊

 映画ジュラシックパークでは、琥珀に封じ込められた蚊の血液から恐竜のDNAを蘇ら
せたのでしたね。この句、上五・中七はほとんど意味がなく、「琥珀の蚊」だけと感じ
ました。

32	トンネルを出でて真白き夏の道

 暗いところから夏の光の中に出たので、道が白々と見えたのですね。ちょっと理屈っ
ぽくも感じましたが、高速道路を走っているような疾走感を覚えました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 真夏の炎天下、トンネルを抜けるとその眩しさから「真白」の世界に感じてしまうこ
とがあると思います。夏日のまぶしさを色で表していると思いました。

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33	湯上がりや白磁の皿の夏料理

 温泉宿でしょうか? 白磁の皿が涼し気です。

34	ひとつ家に寝息の増える帰省かな

 誰かが帰省した。「だから」その人の分の寝息が増える。という理屈の句と感じられ
ました。

35	目で合はす祭囃子の音はじめ

 様子が目に浮かびます。「音はじめ」は言わなくてもわかりますので、「目で合はす
祭囃子や」と中七で切って、下五を一工夫しては如何でしょうか?

 奥山ひろ子氏評===============================

 練習して臨んだ祭囃子。「目で合はす」が具体的で、懸命さが出ていると思いました。
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36	夏野原カブスカウトの歌笑う

 意味がつかめませんでした。夏野原がカブスカウトの歌を笑ったのか?夏野原でカブ
スカウトが歌った歌が笑ったのか? 作者が夏野原でカブスカウトの歌を聴いて笑った
のか?

37	式典に弾除けの玻璃原爆忌

 広島平和記念式典で壇上に設置された防弾ガラスが、ネットなどでいろいろと言われ
ていますね。それを句材として取り上げたということは、作者はこれに批判的なのでしょ
うが、そうした意見を述べたければ俳句という形ではなく、然るべき場所・方法を選ば
れた方が良いと思います。俳句は、主義主張、意見、批判などを述べるのには向いてい
ません。

 奥山ひろ子氏評===============================

 平和を宣言する式典であるのに、「弾除け」が必要な不穏な現代を捉えていると感じ
ました。原爆忌の残念な実情を捉えた作品。

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38	クーポンに膨らむ財布螽斯

 財布を膨らませるのがお札でなく、クーポンというのが侘しいですね。

39	富士の山仰ぐ八月十五日

 特別な日は、特別な山を仰ぎたくなるのでしょう。

40	校庭の陽欲しいままに向日葵立つ

 「欲しいままに」は「恣に」ですね。

41	地蔵盆見知らぬ顔の子もゐたり

 私は地蔵盆というものを経験したことがないのですが、子供の守り神である地蔵菩薩
に導かれて、亡くなった子供も遊びに来ているのかな?と思いました。

42	改札の鳴る電子音駅残暑

 電子音と言えば「鳴る」は不要ですね。

43	野分あと反物のごと草うねる

 台風の後「だから」草がうねっているいう理屈を感じました。「反物のごと」の比喩
も、巻いてある反物を連想してしまい、草がうねっている様子は浮かびませんでした。

44	蜩や湖畔の宿の露天風呂

 静かな雰囲気を感じる良い句ですが、「湖畔の宿」は有名な曲のタイトルなので、つ
い、安易に言葉を選んだような感じを受けてしまいました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 とてものんびりした気持ちのよい作品。湖を見ながらの露天風呂で蜩を聞くなんて、
よい夏休みですね。

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45	台風裡考える人身じろがず

 考える人は、有名なロダンの彫刻かと思います。そうすると、身じろがないのは当然
ですね。

46	小学生の歌声しみる原爆忌

 子供の歌声と原爆忌の句材は良いと思いますが、上五の字余りと、「しみる」が主観
的なのが気になりました。「XXXXX子等の歌声原爆忌」のような感じで推敲されると、
良い句に仕上がると思います。

47	大花野駆けて来る子の手が翼

 のびのびと花野で遊ぶ子の元気な姿。漫画Dr.スランプのアラレちゃんの「キーン」
のポーズが浮かびました。

48	庭履きの一歩の湿り今朝の秋

 まさに「小さい秋」ですね。

49	土用波テトラポットをなほ白く

 「テトラポット」は「テトラポッド(tetra pod)」ですね。「なほ白く」とあります
が、コンクリートは濡れると色が濃く見えるのではないでしょうか?

50	盆用意最年長となりにけり

 生身魂ですね。

51	瀧一字流るる軸や夏座敷

 「瀧直下三千丈」の掛け軸でしょうか? だとすると、夏の茶席の定番で、夏座敷と
はちょっと即き過ぎに思いました。

 武藤光�リ氏評================================

   象形文字のように書かれているのだろう。いかにも涼しげで夏座敷に相応しい。

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52	列なして衣擦れ涼し修道女

 背筋を伸ばして無言で歩くシスター達の様子が浮かびました。音も確かに涼しげです
ね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 列をなす修道女とは海外詠でしょうか。「衣擦れ」が「涼し」との措辞から、修道女
の清廉さを感じました。

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53	中元の礼を兼ねるや残暑見舞

 句の中に詩情が感じられず、単なる報告と感じてしまいました。

54	盆踊り地元議員の行脚の輪

 世俗的なことを報告的に述べた句と感じました。

55	涼しさや富士山頂より来るメール

 今は富士山頂でもインターネットが使えるそうですから、登頂記念にメールやLINEを
送る人も多いでしょうね。山頂の涼しさも伝わりそうです。

56	このバスに乗れば故郷柿熟るる

 鉄道で故郷の最寄り駅まで行き、そこからはバスを乗り継いで行くのでしょう。柿が
故郷の懐かしさを感じさせます。

57	寝返りに金の産毛や明け易し

 幼子と添い寝しているのでしょう。薄明の中で産毛が金色に見えたのですね。

58	飲み干して麦茶の硝子置くからり

 「置くからり」の意味が分からず、何度か読み返しましたが、おそらくグラスの中に
残った氷の音ですね。硝子とグラスは語源が同じですが、グラス(コップ)のことを硝子
とは言わないと思います。「麦茶の切子」などとするのも良いのではないでしょうか?

59	茄子の馬友の御霊も乗りて来よ

 一般的には、きゅうりの馬、茄子の牛と言われていますが、歳時記には茄子の馬、茄
子の牛どちらも載っていますね。それはさておき、御友人の御霊は御友人の家族の待つ
家に帰るものと思いますが、作者の自宅の方にお誘いするのも有りなのでしょうか?

60	節々の螺子やや弛む昼寝かな

 関節が弛緩してぎくしゃくしたのでしょう。昼寝の後の気怠さが伝わります。

61	生き急ぐ如く夕べの蝉しぐれ(原句では蝉は旧字)

 蝉は短命(地上では)「だから」生き急いで鳴くというのは、説明的で、ありがちな発
想だと感じました。

62	露天湯やほつほつと目に初時雨

 情緒を感じる句ですが、秋が立ったと言ってもまだまだ暑い時期の句会に冬の句を出
すのは、あまり得策とは思えません。当句会は「当季の句に限る」というルールはあり
ませんが、やはり季節外れの句は読者の共感を得られにくいと思います。

63	老二人昼餉は今日も冷さうめん

 状況はわかりますが、ありがちなことを五七五にしただけの句と感じました。この句
の中のどの部分に「詩」があるのかを考えて戴きたいと思います。余談ですが、私は索
麺を冷水とお茶漬けの素で戴くのが好きです。

64	海の日や夜の浜辺のバーべキュー

 海の日と浜辺のバーベキューが即き過ぎに思いました。

65	朝顔や江戸紫に身を染めし

 江戸紫は朝顔の典型的な色の一つで、「江戸紫」という名の品種もあるようです。当
句会の四月の講評で「季語の説明をしない」ということについて書きましたが、この句
は中七下五が、上五の季語の説明になっています。

66	お手玉に小豆とこはぜ母歌ふ

 お手玉には小豆を入れるのが普通だと思っていましたが、こはぜ(鞐)を入れることも
あるようですね。ただ、それはお手玉の説明なので、言う必要があるのか疑問でした。
「母歌ふ」はお手玉歌だと思いますが、こちらもお手玉と言えば自然に浮かぶイメージ
です。また、季語は「小豆」かと思いますが、お手玉に入っている小豆には季感は感じ
られないと思います。

67	逝く夏や無言のままの無精髭

 無精髭の人物と作者の関係や、無言のままの理由などが読み取れず、状況がわかりま
せんでした。穿った見方をすれば、どなたかのご臨終のシーンかとも思いますが、勝手
にそのように解釈するのも失礼なようで気が引けました。

68	少女らの出でゆく街の灼けてをり

 少女らが街から出てゆくのか?街へ出てゆくのか?

69	夕焼を払ひて上ぐる暖簾かな

 「夕焼を払う」の意味がわかりませんでした。どのような仕草をするのでしょうか?
また、「上ぐる」も悩みました。暖簾の布を手で上げてその下を潜って店に入ったとい
うことでしょうか?

70	とんとんと葦をつつくや赤蜻蛉

 「つつく」とは何かの先端で繰り返し他の物を突くということですが、蜻蛉は嘴など
のとがったものは無いので、葦にとまろうとしているところでしょうか? 「とんとん」
は擬音でしょうが、葦をどのように突いてもそういう音はしませんので、不自然に感じ
ました。

71	裏庭を虫に返して夏終る 

 表現を工夫されていると思いましたが、夏が終わった「だから」裏庭で虫が鳴きだし
たという理屈を感じました。虫は秋の季語ですので、季語として虫を使えば、夏が終わっ
たことは自明です。

72	背の高きオランダ人を打つ驟雨

 オランダ人の平均身長は世界一で、男性184cm、女性170cmだそうです。ただそれと、
驟雨がどのように絡むのかがわかりませんでした。背が高いから一番先に雨粒に当たる
という意味ではないと思いますが…。

73	走り抜け渡すバトンや夏の雲

 夏空の下の陸上リレーの練習ですね。「走り抜け」でバトンを渡すまでスピードを緩めず走る様子が浮かびまs。

74	広島や夾竹桃の咲き競ふ

 夾竹桃は原爆後の焦土の広島に最初に咲いた花と言われており、広島市の花になって
います。それだけに、広島と夾竹桃だけでは即き過ぎで、もう一工夫欲しいと思いまし
た。
75	登山靴汚れに疲れ滲みをり

 「汚れに疲れ滲みをり」は作者の主観です。そこまで言ってしまうと、読者の連想を
喚起する余地が無くなってしまいます。

76	滝しぶき浴び仄暗き札所径

 景が目に浮かびます。「浴び」の動詞が余計な感じがしますので、例えば「仄暗き径
の札所や滝しぶき」のようにすると一層句が締まると思います。

77	鰻重を待つ間の無聊スマホ繰る

 老舗の鰻屋は、注文を受けてから鰻を割いて焼くので、提供までに時間がかかります
ね。でもそこは、スマホを弄るのではなく、御新香などで酒でも飲みながらゆっくりお
待ちください。俳句をひねるのも良いと思います。

78	一病はあれどかくしゃく生身魂

 無病息災と言われますが、一病位あって医者にかかっていた方が、大病を見逃すこと
が無くなって良いとも言われますね。

79	夏空へ全てのシーツ預けけり

 景が大きく、爽快な句ですね。「全てのシーツ」という大胆な誇張を夏空が受け止め
ています。

80	盆過ぎの家具を戻せば吾ひとり

 子や孫が帰った後の寂しさですね。「吾ひとり」まで言ってしまうと主観が出すぎて
俳句の底が浅くなりますので、そう言わずにその寂しさがそこはかとなく読者に伝わる
ようにできると良いですね。

81	白鷺や稲間に伸びる潜望鏡

 「稲間に伸びる潜望鏡」は、白鷺の首が稲の上に出ていることを言っているのだと思
いますが、上五を「や」で切って中七下五で上五のことを言うと、「や」の切れが活き
ません。また、比喩や見立てはよほど上手に使わないと、作者の自己満足に終わるケー
スがほとんどです。

82	午後七時残る夕焼け飛行機雲

 経度によっては午後七時まで夕焼けが残るところもあり、それは特に珍しいことでは
ないのではないでしょうか? 


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