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選句結果
     
第313回目 (2026年1月) HP俳句会 選句結果
【  松井徒歩 選 】
  特選 冬ざれや煙となりし恋の文 みぃすてぃ(神奈川県)
   元日や母八度目の年女 田村幸之助(和歌山県)
   玄関に熊の剥製榾明り      水鏡(岐阜県)
   筆圧の衰えぬ師の年賀状 鷲津誠次(岐阜県)
   獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子 安楽(岐阜県)
   折鶴に初春の息吹き込めり  雪絵(前橋市)
   幼子に羽子板市の手締めかな 雪絵(前橋市)
   算盤の一玉重し夜半の冬 蝶子(福岡県)
   廃校の錆びし鉄棒冬の草 蝶子(福岡県)
   白色の紫色へ菊枯るる まこと(さいたま市)
【  国枝隆生 選 】
  特選 折鶴に初春の息吹き込めり  雪絵(前橋市)
   去年今年二分遅れの掛時計 水鏡(岐阜県)
   筆圧の衰えぬ師の年賀状      鷲津誠次(岐阜県)
   獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子 安楽(岐阜県)
   初山河夕日の中へ消え去りぬ 福山三歩(栃木県)
   友とゐて言葉途切れて浮寝鳥 直樹(埼玉県)
   人日や薬膳スープほの甘し 正憲(浜松市)
   ごまめ噛むほど良き苦味これもよし *町子(北名古屋市)
   やり残すこと多かりし去年今年 佐藤けい(神奈川県)
   日向ぼこ卒寿の友と解くパズル かよ子(和歌山市)
【  玉井美智子 選 】
  特選 算盤の一玉重し夜半の冬 蝶子(福岡県)
   折鶴に初春の息吹き込めり  雪絵(前橋市)
   友とゐて言葉途切れて浮寝鳥      直樹(埼玉県)
   病床の心耳に届く除夜の鐘 後藤允孝(三重県)
   人日や薬膳スープほの甘し 正憲(浜松市)
   楪や終の棲家と決めし村 原洋一(岡山県)
   白猫の鈴の音透ける霜夜かな 櫻井 泰(館山市)
   ドローンの風切る羽音初大師 梦二(神奈川県)
   風神の袋緩むや虎落笛 美由紀(長野県)
   日向ぼこ卒寿の友と解くパズル かよ子(和歌山市)
【  関根切子 選 】
  特選 初夢や七福神と酌み交す 惠啓(三鷹市)
   蒙古船沈む港や浮寝鳥 田村幸之助(和歌山県)
   元日や母八度目の年女      田村幸之助(和歌山県)
   霜晴や旧陸軍の格納庫 ゆきえ(和歌山市)
   獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子 安楽(岐阜県)
   負けん気が身を乗り出してカルタ取り 大原女(京都)
   折鶴に初春の息吹き込めり  雪絵(前橋市)
   幼子に羽子板市の手締めかな 雪絵(前橋市)
   正論は少し退屈福笑 久保田晋一(栃木県)
   冬ざれや煙となりし恋の文 みぃすてぃ(神奈川県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、雪絵さん(前橋市)でした。「伊吹嶺」一月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


       2026年1月伊吹嶺HP句会講評        松井徒歩

沢山の御投句ありがとうございました。

1	冬晴れや俳句手ほどき探しおり

具体的に何をしているのか分からないのが残念です。

2	紺碧の色無き風に柿たわわ

紺碧は空の色でしょうか? 省略のし過ぎだと思います。

(国枝評)「色なき風」「柿たわわ」のどちらも強い季語で季重なりが気になりました。

3	燦燦と自然を囃す冬の朝

具体的な景色が見えないのが残念です。

4	近道のなき人生や老いが世ぞ

若い人に何か言いたいのか、自分に言い聞かせているのか? 教訓めいた文は俳句には
向いていないと思います。

(国枝評)人生訓として見れば,このとおりですね。でも季語は何でしょうか。「老い
が世」は季語でないと思いますが。下五は「老いの春」でもよかったと思います。

5	そこかしこ聖樹眩き夜警かな

クリスマスの光の裏側で、黙々と務めを果たす夜警の寒さ。一刻も早く我が家の暖かさ
に触れたいという気持ちが伝わってきます。

6	髭剃りて顎一撫での去年今年

う〜ん?季語が効いているのか効いていないのか自信がないです。

7	蒙古船沈む港や浮寝鳥

魅力的な句ですが、「沈む」は過去形の方が良いように思いました。

8	元日や母八度目の年女

元日の清々しい空気の中で、九十六歳という高齢を迎えた母の命の輝きを讃える句です
ね。

9	去年今年二分遅れの掛時計

 いつも二分遅れている掛時計。この前時間を合わせたばかりなのに、テレビが新年の
訪れを告げた瞬間、ふと壁を見るとやはり二分遅れている。そんな時計のマイペースに、
可笑しみを感じます。

国枝隆生氏選================================

二分遅れたままの時計が、年末年始にまたがっていったという発見が面白い。

======================================

10	玄関に熊の剥製榾明り

日常の照明では味わえない原始的な灯りによって、熊の剥製がいっそう際立って見えま
す。

11	霜晴や旧陸軍の格納庫

かつての軍事施設という歴史背景が、「霜晴」の空気感と重なることで、静謐な平和へ
の祈りを感じました。

12	数へ日や仮退院の足で灸

慌ただしい年の瀬の仮退院。まずは灸で身体を整え、少しでも楽になりたいと願う作者
の、切実な実感が伝わってきます。

13	筆圧の衰えぬ師の年賀状

 衰えぬ筆圧に託された師の矜持。それに応えるように、安堵の中にも居住まいを正す
弟子の尊敬の念が伺えます。

国枝隆生氏選================================

毎年師と年賀状のやり取りをしているのだろう。毎年師の筆圧を確認して,師が元気
なことを確認しているのだろうという安堵感をうまく表現している。

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14	獅子舞に噛まれ笑う子泣出す子

二句目で旧仮名使いですので、一言・・・「笑う子」は「笑ふ子」ですね。

国枝隆生氏選================================

よく獅子舞に頭をかまれるという句を見かけるが、この句の「笑う子」「泣出す子」
と対比したのが面白い。

======================================

15	ため口をけふは改め門礼者

 当たり前かもしれませんが、そう言われてみればみなそうですね。正月独特の空気で
しょうか。

16	故郷は初松籟の城下町@豊後竹田市

「故郷」は「城下町」に直接繋げたほうが良いように思います。

17	若菜野や宿場町なほみどり濃し@五十三次石部宿

みどりが濃いのは「若菜野」なのか?宿場町の他の何かなのか?「なほ」が分かりにく
いです。

18	年新た打ち捨てられし鉢実る  

 捨てられた鉢に何かの植物が育っているのだと思いますが、「鉢実る」は少々乱暴な
言葉だと思いました。

19	古都の春日本語聞かぬ街歩き

オーバーツーリズムですね。よく分かる句です。

20	年玉に手刀切る子あどけなや

手刀があどけないかなあ?と思いました。むしろませているような感じがしました。

21	負けん気が身を乗り出してカルタ取り

 「身を乗り出して」という具体的な描写から負けん気の強さが伝わってきます。

22	焼芋を友に手提げの昼下がり

昼下がりという気ままな時間に、温かな友の存在がなんとも心強いですね。友人のとこ
ろへ行くのだと思いますが焼き芋が作者の友とも感じられました。

23	ほんのりと灯る自販機冬夕焼

冬夕焼の儚さと自販機の孤独な光。そこに作者の心情が映し出されているように感じら
れました。

24	折鶴に初春の息吹き込めり 

祈りの象徴である折鶴に、一年の始まりを告げる清らかな空気を吹き込む作者。その一
息は、折鶴に命を宿らせるかのようで、作者の凛とした矜持が伝わってきます。

国枝隆生氏特選================================

正月に飾るため、折り鶴を作ってどこかへ飾ろうと思ったのでしょう。そのために息を
吹き込んだ。その息が今年初めての息だったとの気づきがよかったと思います。「初春
の息」が息づいています。

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25	幼子に羽子板市の手締めかな

幼子が目を丸くしている様子が目に浮かびました。

26	童(わっぱ)とのほどよき距離や寒鴉

「ほどよき距離」にどういう共感を見出せばよいのか分かりませんでした。

27	     窓辺にはモルゲンロート前穂高

前穂高岳ですと上高地から涸沢辺りの山小屋でしょうか。感動的な光景ですね。でも
モルゲンロートは季語でしようか?

28	  初山河夕日の中へ消え去りぬ

「夕日の中へ」という感覚が独特。。

国枝隆生氏選================================

今年初めて見る山河の景色が夕日に消えた。はや元日の1日が終わったと作者は感慨
に浸っているのだろう。

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29	  初晴や瞳を光に慣れさせる

晴れていて光が強いから、という因果関係を感じました。

(国枝評)中八を何とかしたいと思いました。このままで中七にするなら「初晴やまぶ
しさを目に慣れさせて」となるのでしょうか。

30	  鍬始寡黙の父に似る晩年

かつては親に反目したかもしれない人生ですが、晩年の「鍬始」が父と子を深く結びつ
けたのですね。

31	  友とゐて言葉途切れて浮寝鳥
 
「浮寝鳥」の前に切れがあればもっと良くなったと思います。

国枝隆生氏選================================

ともに寡黙な友達なのだろう。話が途切れたひととき、ともに浮寝鳥を見ている情景
が黙っていても二人の心が通っているのが見える。

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32	  吾子に酒注ぐ嬉しさや新障子

父親の幸せな気持ちと、新しい障子から差し込む明るい冬の光が、調和しています。

33	  交番の出入りの多き去年今年

交番の出入りが多いのはどちらかと言えば年末ではないでしょうか。

34	  病床の心耳に届く除夜の鐘

病に臥せっていると、目を開けていても視線は漂うばかりですが、その分、耳は研ぎ澄
まされ敏感になります。そこに響く除夜の鐘の音は、心に寄り添い、慰めてくれるかの
ようです。

35	  パパ目掛け土手駆け降りる冬帽子

 「パパ」は父あるいは親の方が良いようにも思いますが。パパのほうが親子の親近感
が伝わるかもしれませんね。

36	  雪催ショートパンツが颯爽と

ショートパンツの人は男女どちらかは示されていませんが、女性の方が絵になりますね。

37	  若水の薬効を浴ぶ臓腑かな

 「浴ぶ」は終止形なのでここで切れてしまいかな止めに繋がりません。連体形にして
「薬効浴ぶる臓腑かな」でどうでしょうか。

(国枝評)下五を「かな」で止めるなら、「若水の薬効浴ぶる臓腑かな」と中七は連体
形にしたいところです。

38	  正論は少し退屈福笑

季語が離れすぎているように思います。

39	  初春の光へ子らは手をつなぎ 

 手をつなぎ何をしようとしているかよく分かりませんでした。

40	  滝凍る今生の時止めては

滝が凍り、轟音が消えた無音の世界。作者の意識は、現実の時間を超え、静止画の中に
没入しているかのようです。

41	  寒月や灯らぬ家に帰る道

誰もいない家へと向かう心細さが、凍てつくような「寒月」の光に照らし出され、寂し
さがより一層際立ちますね。

42	  冬ざれや煙となりし恋の文

形として残る灰ではなく、消えゆく「煙」として描かれたことで、恋が完全に終わった
という切なさが際立ちます。

43	  山始巨岩を祀る幣白し

悪くない句ですが、「幣白し」は常套すぎると思いました。

44	  人日や薬膳スープほの甘し

人日にちなんで、七種の素材を贅沢に使ったスープの情景が目に浮かびます。

国枝隆生氏選================================

「人日」の時候の季語と事柄を取り合わせるのは難しい。この句は松の内も終わろう
としている日に飲んだ薬膳スープとの取り合わせが成功した。

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45	  煤逃や盤の王将歩に突かる

大掃除の喧騒を逃れ、せっかく将棋に興じているものの、盤上では王将が歩に突かれる
という皮肉な窮地に立たされているのですね。

46	  唄うてやなほ唄つてや忘年会

皆で夜を徹して楽しんでいるような、賑やかで熱気あふれる一幕ですね

47	  名にし負ふ三寺まいり寒の月

「名にし負ふ」ではなく三寺まいりが目に見える描写をしてほしいです。

(国枝評)上五の「名にし負ふ」は写生というより慣用語の印象を受けました。

48	  蹲踞を透ける朽葉や蝉氷

「蹲踞を」ではなく「蹲踞の」のほうが良いように思います。

49	  若水や喝入るるごと喉過ぐる

 若水という、神聖な水に喝を入れられた作者。喉元を過ぎる冷たさに、心身が瞬時に
引き締まるような緊張感が伝わってきます

50	  竹刀持つ握りこぶしや淑気満つ

 新春の清らかな淑気が満ちる中、竹刀を握りしめる拳に、新しい年に懸ける並々なら
ぬ決意を感じました。

(国枝評)元気のある新年の句となりました。

51	  新年会おはこの唄を唄はれて

 自分の十八番の唄を、先に誰かに歌われてしまった。そんな残念な気持ちを抱えつつ
も、ここはめでたい新年会の席。無念さを抑えて、さて、代わりに何を歌おうかと思案
する。そんな心の余裕と微かな悔しさが混ざり合う俳味のある句ですね。

52	  母と来し宮に元旦子を連れて

「元旦」は上五に持ってきて作り直したほうが良いように思いました。原句では事実
の報告のような感じです。

53	  渇筆の墨の掠れの淑気かな

「渇筆」は「掠れ」の説明ですので省略したほうがよいように思います。

54	  楪や終の棲家と決めし村

 「終」という言葉を使いながらも、そこには新たな人生への希望が満ちています。
「楪」という再生の季語が、この地で新しく生きていく作者の決意を引き立てていま
す。

(国枝評)新年に楪を飾り、改めて今の家が終いの住処と決めたのでしょう。ただ
「村」はなくても分かると思いました。

55	  初鏡ですねと笑う美容室

きっと気心の知れた馴染みの美容師さんとの会話なのでしょう。美容室の大きな鏡を
「初鏡」と捉えた、作者の遊び心が良いです。

56	  早起きの鳥が見つける初氷

一茶の俳句に通じるものを感じました。
 
57	  冬の日に追はれ少年帰りけり

 「冬の日に追はれ」は主観が強すぎてよく分かりませんでした。

58	  手の甲にコメと書かれし水つ洟

買い物のメモでしょうか。「水つ洟」という意外な季語が面白いですね。

59	  朽ち雨戸硝子戸鳴らす寒波来る

 戸が二つ登場するのが気になりました。

(国枝評)三段切れの句ですが、こういう場合、リズム感が切れ切れになるような印象
になると思います。

60	  オイルヒーターに触れ指折る句作

 十七音に収まってはいますが散文調の調べが気になりました。

61	  ごまめ噛むほど良き苦味これもよし

しみじみとした句。

国枝隆生氏選================================

正月のごまめを食べながら、自分で肯っているのが面白い。

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62	  ロゼワイン笑顔を添へて女正月

 ロゼワインがこの句の中でどう効いているのかよく分かりませんでした。

63	  柔らかき雪の縁取る緋の欄干

素直に詠っていますが、やや報告気味でしょうか。

64	  静寂や雪しんしんと禅の庭

 「静寂」と「しんしん」に意味の重なりがあると思います。

65	  テールランプの奔流に乗る師走かな

 推敲の努力をして上五に収めてほしいです。「乗る」は省略できるので語順を入れ替
えれば定型に収まると思います。

66	  白猫の鈴の音透ける霜夜かな

 「鈴の音透ける」がよく分からないので、読者の共感を得るような描写をしてほしい
です。

67	  算盤の一玉重し夜半の冬

 「一玉重し」という表現に、人生の歩みの一コマが重なるようですね。

68	  廃校の錆びし鉄棒冬の草

 「錆びし鉄棒」は、人の去った廃校の孤独を象徴しているようです。その一方で、足
元に広がる冬の草には、なお続いていく自然の逞しさが感じられます。

(国枝評)冬草がはびこっている校庭の内鉄棒に着目したのがよかったと思いました。

69	  大吉の神籤転び来初詣

 「転び来」がよく分かりません。転がり込むというようなことでしょうか。

70	  鯛焼や身をくねりつつ参拝路

 鯛焼を手に持って人ごみを避けつつ行く初詣でしょうか。「身をくねりつつ」が面白
いですね。

71	  雪帽子被(ひ)されしおはよ庭木達

 「ひ」という読み方が疑問でした。「被さりし朝」ではどうでしょうか。

72	  寒波来て置きみやげして銀世界

 助詞の「て」が二つあると「何々してこうなった」という説目になりがちですから、
一つだけにしたほうが良いと思います。

73	  寒中の風呂追焚の二度三度

 中七は「風呂の追炊き」のほうが調べもよく、切れも生じて良いように思いました。

74	  白色の紫色へ菊枯るる

 純白だった菊が、枯れゆく過程で淡い紫色を帯びていく。その微妙な色彩の移ろいに、
生命が尽き果てる静かな美しさを感じました。

75	  数へ日の会報作り揃はぬ稿

 「揃はぬ稿」がよく分かりません。なかなか届かない原稿があるということでしょう
か?

76	  買初はセールの俳句中古本

 「俳句中古本」では本の姿が見えてきませんでした。

77	  寒の宵運ぶ水桶人の影

 三段切れのように思えます。

78	  ドローンの風切る羽音初大師

 初大師の撮影にドローンが飛んでいたのでしょうか。いかにも現代の句ですね。

79	  手本なき老後を生きる大旦

 年が改まっても世情が不安で老後も心配ですね。

80	  武者凧を吾子へと抱え風の町

 「風の町」のイメージが湧きませんでした。

81	  初夢や七福神と酌み交す

 七福神がまるで友達のようで面白いですね。作者の身近に七福神の誰かに似た友人が
いるのかもしれないと想像が膨らみます。

82	  初明り考妣の額に合掌す

 元日の夜明けの中、亡き父母の遺影に静かに手を合わせる姿に、感銘を受けました。

83	  やり残すこと多かりし去年今年

 身に沁みました。

国枝隆生氏選================================

一年を振り返って,反省しつつ新年を迎えたのであろう。

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84	  大根切る煮物を好む齢となり

 ありのままの自分を肯い、慈しむような姿に心惹かれました。

85	  元日の薄暮の白き月仰ぐ
 
「元日や手を洗ひをる夕ごころ」に通じるものを感じました。

86	  寒夜覚め妖怪のごと庭木の影

 語順を変えたりして下五の字余りを解消してください。

87	  指先の温みに融ける薄氷

 「温み」は氷が融ける理屈になりますから省略したほうが良いと思います。

88	  湯上りの柔き踵にひび薬

柔らかい踵でしたらひび薬はいらないように思いました。

89	  茜空老父母揃い初詣

 「揃い」ですと軽い切れが生じますので、「揃う」のほうが良いように思います。

90	  風神の袋緩むや虎落笛

 「虎落笛」がどう効いているのかよく分かりませんでした。
 
91	  日向ぼこ卒寿の友と解くパズル

 共に歳を取った良き友。かくありたい。

国枝隆生氏選================================

友と言うことは作者も卒寿に近いのであろう。ともに老いながらパズルに興じている。
年を取ってもいつでも友達であることがほほえましい。

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92	  日溜まりやふくら雀の並ぶ岸

 報告気味の句のように感じました。



第312回目 (2025年12月) HP俳句会 選句結果
【  酒井とし子 選 】
  特選 母と児のしりとり続く冬の道 花虻(滋賀県)
   民宿は元武家屋敷冬の雨 ゆきえ(和歌山市)
   図書館に馴染みの席の冬帽子      鷲津誠次(岐阜県)
   砂浜に網干す漁師冬うらら 筆致俳句(岐阜市)
   枯蓮や陽を撥ね返す水の黙 原洋一(岡山県)
   学校のチャイムかすかに夕枯野 素風(岩手県)
   縁側の猫のあくびや漱石忌 ようこ(神奈川県)
   雪しまく辯天堂の赤格子 康(東京)
   山眠る古城の庭のワイン樽 康(東京)
   回覧に至急の朱書き年の暮 惠啓(三鷹市)
【  武藤光リ 選 】
  特選 枯蓮や陽を撥ね返す水の黙 原洋一(岡山県)
   山茶花や婦人科病棟北五階 百合乃(滋賀県)
   粕汁や競輪場の安食堂      田村幸之助(和歌山県)
   向き合うて絵本読む子や冬うらら 大原女(京都)
   冬星やすとんと暮れし鳰の湖 みのる(大阪)
   入山の禁止立札山眠る 筆致俳句(岐阜市)
   打たせ湯の風の揺らめき神の旅 正憲(浜松市)
   家計簿に憂さの積もりて十二月 よりこ(名古屋市)
   縁側の猫のあくびや漱石忌 ようこ(神奈川県)
   短日や大橋くぐる小さき水脈 近江菫花(滋賀県)
【  奥山ひろ子 選 】
  特選 石庭の波に漕ぎ出す朴落葉 雪絵(前橋市)
   蒼天やダム湖をわたる鷹の声 野津洋子(愛知県)
   粕汁や競輪場の安食堂      田村幸之助(和歌山県)
   皺多き手をしみじみと去年今年 垣内孝雄(栃木県)
   民宿は元武家屋敷冬の雨 ゆきえ(和歌山市)
   向き合うて絵本読む子や冬うらら 大原女(京都)
   冬晴やプールに河馬の耳目鼻 まこと(さいたま市)
   水を切る鮭の背鰭や月の川 素風(岩手県)
   チェロの音のホールに満ちて冬ぬくし 佐藤けい(神奈川県)
   凍てし夜や鉄橋渡る音遠し 美由紀(長野県)
【  渡辺慢房 選 】
  特選 母と児のしりとり続く冬の道 花虻(滋賀県)
   粕汁や競輪場の安食堂 田村幸之助(和歌山県)
   石庭の波に漕ぎ出す朴落葉      雪絵(前橋市)
   冬晴やプールに河馬の耳目鼻 まこと(さいたま市)
   砂浜に網干す漁師冬うらら 筆致俳句(岐阜市)
   打たせ湯の風の揺らめき神の旅 正憲(浜松市)
   銀杏散りやまず緩和ケア棟の窓 よりこ(名古屋市)
   水を切る鮭の背鰭や月の川 素風(岩手県)
   短日や大橋くぐる小さき水脈 近江菫花(滋賀県)
   着ぶくれて鏡に映るあなた誰 美由紀(長野県)

(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)

今月の最高得点者は、花虻さん(滋賀県)でした。「伊吹嶺」12月号をお贈りいたします。おめでとうございます!

【講評】


        2025年12月伊吹嶺HP句会講評        渡辺慢房

1	片方の補聴器外し神の旅

 神様が補聴器を外して旅立ったように思えてしまいました。

2	奥付に見つくる先師暮の秋

 著者の一人に亡くなった師の名前が載っていたのですね。過ぎゆく秋が一層寂しさ、
懐かしさを募らせます。

3	孫抱きて自治会の来し敬老の日

 自治会の役員か何かの係の人が来たという意味かと思いますが、省略の仕方にちょっ
と無理があるように思いました。下五は「敬老日」として字余りを解消した方が良いと
思います。

4	完成と思える俳句秋の空

 この俳句がそれでしょうか?

5	山茶花や婦人科病棟北五階

 山茶花は、病棟に飾られた切り花でしょうか? 婦人科病棟と言うだけで状況がわか
りますので、南北や階数を言う必要は無いように感じました。

6	末枯の中にすがれし花ニ輪

 末枯とすがれ(末枯れ)は同じ意味です。

7	装ひのなほ留まりぬ秋の山

 秋の山を形容する「山装う」という季語を説明したように感じました。

8	車停め連山眺め秋思ふと

 何か、順序が逆のような感じがしてしまいました。秋思が湧いたために車を停め、山
を眺めたのではないでしょうか?

9	粕汁や競輪場の安食堂

 競輪場に行ったことが無いので勝手な想像ですが、赤鉛筆を耳に挟んだ人たちが、粕
汁を啜りつつワンカップや缶ビールを飲んでいるイメージが湧きました。私もそういう
ところで飲むのが好きです。

 奥山ひろ子氏評===============================

 生活感あふれる作品。「粕汁」と「安食堂」が雑多な雰囲気を捉えていると思いまし
た。

 ======================================

10	古団地押しくら饅頭せし公園

 子供の頃に住んでいた団地でしょうか? 思い出の公園でいろいろな遊びをしたので
しょうが、冬はやはり押しくらまんじゅうですね。

11	冬麗や今朝も一輪遊女の墓

 今も毎日花を供える人がいるのでしょうか? 下五が字余りなのが残念です。

12	足元の落葉に夕日さす木の間

 様子はなんとなくわかりますが、落葉、夕日、木の間のどこに焦点があるのかわかり
ませんでした。

13	皺多き手をしみじみと去年今年

 手をしみじみと「見ている」のでしょうね。多くの歳を重ねてきた感慨ですね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 石川啄木を彷彿とさせますね。「去年今年」の季語により、今年一年を振り返る作者
の思いに共感しました。

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14	前篭に食パン二斤落葉道

 自転車の前籠でしょうね。「食パン二斤落葉道」からは、作者の気持ちが読み取れま
せんでした。大好きなパンを買ってうきうきしているようにも、米が高くて仕方なく好
きでもないパンを買ったようにも取れました。

15	民宿は元武家屋敷冬の雨

 冬の雨はうら寂しい感じがします。作者は、かつて武家屋敷だった家屋が今は民宿に
なっていることを嘆いているのでしょうか?

 奥山ひろ子氏評===============================

 「民宿」と言っても立派な建物なのでしょう。元武家屋敷という歴史的資産をうまく
利用しているのですね。

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16	向き合うて絵本読む子や冬うらら

 向き合っていては同じ本は読めませんので、それぞれ別の本を読んでいるのでしょう
ね。「肩並べ」等、一緒に同じ本を読んでいる景の方が、より季語が活きると思いまし
た。
 奥山ひろ子氏評===============================

 「向き合うて」がポイントで、仲の良い様子が伝わりました。音便も効いていると思
います。

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17	冬ざれや尾にも塩振る焼肴 

 焼魚ではなく焼肴とされたところにこだわりを感じ、化粧塩をされた、会席などの格
式ある料理が浮かんできます。冬ざれは、歳時記によると「見渡す限り冬の景で、荒れ
さびた感じをいう。」とあり、中七・下五と合うか疑問に感じました。

18	芋煮会京の瀬音に集い来る

 私は東北の出身なので、芋煮会は子供のころから身近ですが、京都の方でも楽しまれ
ているのですね。 瀬音や集うは、芋煮会のイメージに含まれるように思いました。

19	図書館に馴染みの席の冬帽子

 なんとなく、わかるようなわからないような・・・という感じがしました。図書館に
馴染みの席があるのは作者なのか第三者なのか? 冬帽子は誰かが被っているのか?そ
れとも席に置いてあるのか・・・?

20	寒鮒の心得顔に釣られけり

 魚に表情があるの??と思いましたが、同時にそこに俳味を感じました。

21	冬星やすとんと暮れし鳰の湖

 すとんが、冬の日暮れの早さを表しています。冬星と鳰の季重なりが気になりました。

22	除夜の鐘うつつもゆめも胸に染む

 除夜の鐘を聞きながら、行く年来る年に思いを馳せているのですね。「うつつもゆめ
も胸に染む」は主観的・観念的ですので、もっとモノに託して気持ちが伝えられると良
いと思いました。また、染むは沁むの字を当てた方が良いと思います。

23	待ちわびるポインセチアを飾る窓

 待ちわびるのは作者なのか、ポインセチアなのか、窓なのか、よくわかりませんでし
た。

24	小夜時雨路地の奥にはジヤズ喫茶

 雰囲気のある句ですね。「路地の奥には」が説明的ですので、「路地の奥なる」とさ
れては如何でしょうか?

25	冬空は日暮れて暫し湖のあを

 切れが無く、時間の経過を詠まれていることもあって、散文的に感じました。「空が
日暮れる」は重複感のある言い方ですので、「空が暮れる」で良いと思います。

26	能面へ神を宿して舞ふ神楽

 冬の季語の神楽を説明した印象ですが、神楽面と能面は似ていますが別のものですし、
面に神を宿すというのも疑問に感じました。

27	冬の雷睨みし能登のゴジラ岩

 冬の日本海に轟く雷と、それを睨むゴジラ岩、迫力のあるシーンを目撃されましたね。

28	冬青空古きお堂に深き闇

 冬空の明るさと、堂の中の闇との対比ですね。

29	母と児のしりとり続く冬の道

 手をつなぎ、白い息を吐いてしりとりをしながら冬の道を帰る母子が見えてきます。
小さな子供ということを強調するために「児」の字が使われることが良くありますが、
この句の場合は「母と子」として親子関係を強調した方が、より温かみが出るように思
いました。

30	難渋のスマホに焦る冬の暮

 スマートフォンの操作が良くわからなくて焦っておられるのだと思います。「難渋」
と「焦る」に重複を感じました。

31	暮早し杖と手押しの飯支度

 手押しは、手押し車のことでしょうか?

32	石庭の波に漕ぎ出す朴落葉

 枯山水の庭でしょうか。朴の葉は大きいので、船に見立てるのもしっくりきますね。

 奥山ひろ子氏評===============================

 「漕ぎ出す」の措辞が面白い表現。朴落葉ならまさに小舟のような形ですね。落葉に
意思があるような表現が独創的で、落葉でありながら命を感じるという点で、特選にい
ただきました。

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33	枯蔓の生きざま見たり牧の柵

 作者の主観を述べるのではなく、実景を写生して感動を読者に伝えましょう。また、
「枯蔓の生きざま」という言葉に矛盾を感じました。

34	凩や文机の灯のもの寂し

 「もの寂し」と作者の感じたことをそのまま言うのではなく、物を写生することでそ
の気持ちを読者に伝えられると良いですね。

35	凡庸に八十路の坂や年の暮

 この坂は上るのか?下るのか?などということを、ふと考えてしまいました。いずれ
にしても、凡庸なのが一番良いような気がします。

36	日短ノルマンディーの兵の墓

 「ノルマンディー上陸作戦」という古い戦争映画を思い出しました。第二次世界大戦
の激戦地ですね。暮れ行く墓地の向こうには、モン・サン・ミシェルが見えそうな気が
します。

37	冬晴やプールに河馬の耳目鼻

 河馬といえば、坪内稔典氏が浮かびますが、こちらは素直な写生句です。厳密に言え
ばプールは夏の季語ですが、ここでは気になりません。

 奥山ひろ子氏評===============================

 河馬の耳と目鼻だけが水面上に表れているのですね。河馬ののんびりした様子が伝わ
りました。

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38	行く年や小さき干支の逢ひ上がる

 「小さき干支の逢ひ上がる」の意味がわかりませんでした。「縫ひ上がる」の誤記で
しょうか?

39	鉄瓶の沸く音たかし寒の夜

 寒は、寒の入(小寒)から節分前までの約30日間を言います。寒い夜の意味でしたら、
「冬の夜」や「寒夜(かんや)」「夜半の冬」などの季語があります。

40	木枯らしや毒吐く口の寄り難し

 「毒吐く口」は、「毒のある言葉を吐く口」の意味でしょうか? 木枯らしが吹かな
くても、そういう人にはあまり関わりあいたくないですね。

41	入山の禁止立札山眠る

 納得できる句ですが、ちょっと理屈っぽく感じました。

42	砂浜に網干す漁師冬うらら

 景がよくわかり、季語も合っていると思います。欲を言えば、網干すで砂浜の景は見
えて来ますので、漁師の動作を写生するなどすると、さらに良くなるように思います。

43	木の葉また落ちゆく木曽の深さかな

 「夜明け前」の冒頭が浮かんできました。

44	打たせ湯の風の揺らめき神の旅

 風が吹いたので、打たせ湯が揺れたということですね。季語がうまいと思いました。

45	家計簿に憂さの積もりて十二月

 作者の主観がそのまま出ており、俳句というより、川柳として読むと味わいがあると
思いました。

46	銀杏散りやまず緩和ケア棟の窓

 この句の場合は、字余りや句跨りの破調が、良い味になっていると思いました。

47	海境へ漕ぎ出す漁船鰤起し

 海境(うなさか)は、神々の世界(常世)と人間の世界を隔てる海の果て。鰤起しは豊
漁の前触れ。勇壮な船出が目に浮かびます。

48	煤逃もかなはぬ二人暮らしかな

 俳味がありますね。以前に作った拙句「早く逃げよと妻の云ふ煤払ひ」を思い出しま
した。

49	枯葉降る茶屋の抹茶や掌にほのか

 掌にほのか(に温かい)は、抹茶のことを言っているのだと思いますので、中七は「や」
で切らない方が良いと思います。「枯葉降る茶屋の抹茶の温みかな」等。

50	大名の園に御座舟秋の水

 神戸の相楽園でしょうか? 舟と水がやや即き過ぎの感じを受けました。

51	枯蓮や陽を撥ね返す水の黙

 冬の陽光の静けさ、透明感が伝わります。「水の黙」がちょっと観念的に感じました。

 武藤光リ氏評================================

  ふと、猿の惑星を感じたのではなかろうか。突然に過った終末への予感。
  17文字の詩となった。

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52	柚子浮かべ旅の叶はぬ母癒す

 温かい気持ちが伝わります。「柚子浮かべ」は、風呂のことだと思いますので、はっ
きりと柚子湯または柚子風呂とした方が良いと思いました。また、「癒す」は言わずに、
読者に察してもらうようにした方が、句に奥行きが出ると思います。

53	学校のチャイムかすかに夕枯野

 遠くから聞こえるチャイムが、夕暮れの枯野の寂しさ、懐かしさを膨らませますね。

54	水を切る鮭の背鰭や月の川

 月明かりの中の鮭の遡上ですね。見たことがありませんが、想像するに印象的な景と
思います。

 奥山ひろ子氏評===============================

 北海道の鮭の遡上なのでしょう。力強い野性味を感じ、同時に美しい月も出ており素
晴らしい景だと思いました。

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55	ブナノキの落ち葉掃く人召し使ひ

 ぶなの落葉を掃いている人が召し使いであるという事実に、どんな感慨が込められて
いるのかが読み取れませんでした。現在、召し使いという職業・身分の人が存在するの
か?という点も疑問に感じました。

56	手押し車の散歩の婆を見ぬ師走

 心配されているのでしょうか?上五の字余りはなんとかしたいところです。

57	烏瓜十五六個も空き家軒

 烏瓜がはびこるほど長い間放置された空き家なのでしょう。下五が寸詰まりの感じを
うけました。

58	金目鯛釣り好き婿の手のぬくみ

 状況がよくわかりませんでした。婿殿(娘の夫)が金目鯛を釣って来て、作者は婿殿の
手に触れているのでしょうか? それとも、渡された金目鯛に、婿殿の手の温みが残っ
ていたということでしょうか?

 【註】投句は「手のむくみ」でしたが、作者より、「むくみ」は「ぬくみ」の打ち間
違いであるとの御連絡を戴きました。HP句会は、投句された句を自動処理でホームペー
ジに掲載しているため、投句一覧の句の訂正はできませんが、講評の方は訂正して掲載
致しました。

59	縁側の猫のあくびや漱石忌

 漱石と猫は即き過ぎに感じました。

60	親父似の達磨抱へる年の市

 頑固親父だったのでしょうか?俳味があります。

61	寒旱槌音高く響きけり

 私は上五の季語にネガティブなイメージを感じるため、中七下五とバランスが悪いよ
うに思えてしまいました。

62	息白く始発電車の二番線

 早朝のホームですね。「二番線」にどういう思いが込められているのかが読み取れま
せんでした。

63	指折らず足し算できてクリスマス

 季語がしっくり来ないように感じました。

64	吾子の問ふ蜜柑のすじは取る取らぬ

 お子さんに蜜柑の皮を剥いてもらっているのでしょうか? 状況がよくわかりません
でした。

65	十四日過ぎていそがし年の暮

 年の暮れは忙しいものです。十四日になにか特別な意味があるのかと考えてみました
が、よくわかりませんでした。

66	枯野原ひねもす遊ぼう鳥と星

 ひねもすは、朝から夕方までという意味ですが、昼間に星が出ているのでしょうか?

67	一茶忌の雀と遊びたき日より

 小春日に、ふと今日は一茶忌だと気づいたのですね。そうすると、雀が頭に浮かぶの
は自然ですね。

68	艶やかに黒豆仕上げ年用意

 破れや皺無く上手に煮あがったのですね。年用意の一景。

69	青空へ百年聳ゆ大銀杏

 季語がありません。

70	干し上げしタオルに縋る冬の蠅

 「縋る」に冬の蠅らしさが出ていますが、蠅が干したタオルにとまるのは珍しいこと
ではありませんので、もう一工夫欲しいと思いました。

71	雪しまく辯天堂の赤格子

 上野の不忍池の辯天堂を想像しました。雪が舞う中の朱色が印象的ですね。

72	山眠る古城の庭のワイン樽

 庭にワイン樽がある城というと、欧州等の海外でしょうか? 山中にひっそりと立つ
洋風の城を想像しました。

73	冬川の尽きたる流れ樹々の影

 「尽きたる流れ」は冬の川の説明に感じました。

74	冬晴の豊かな波をふたりして

 句の意味や状況がよくわかりませんでした。二人でサーフィンをしているのでしょう
か?

75	回覧に至急の朱書き年の暮

 年の暮れの慌ただしさがこんなところにも感じられます。

76	眠らざる熊ふところに山眠る

 熊も人里に出ず、山懐にいてくれれば良いのですが…。

77	向かひ席の皆マスクして昼電車

 句材として取り上げるほどの面白い景とは感じませんでした。

78	ビル解体美しく開ける冬夕焼

 美しく開けるのは冬夕焼けでしょうか? 夕焼けが開けるとはあまり言わないと思い
ますが・・。読み方も分かりませんでした。「うつくしくあける」では字余りですので、
「うましくあける」?「はしくひらける」?

79	日向ぼこ笑まふ園児の箱車

 日向ぼこをしているのは作者なのか園児なのかわかりませんでした。また、笑まうの
は箱車のように思えてしまいました。

80	チェロの音のホールに満ちて冬ぬくし

 チェロの音が体に満ちて心も満たされてゆく感じです。中七は「満つるホールや」と切りたいと思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 いいですね、チェロの音色は。体全体に響く感じです。「ホールに満ちて」が奏者と
観客が一体となって音楽を味わっているようで、いいと思いました。

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81	短日や大橋くぐる小さき水脈

 夕日を浴びながら帰帆を急ぐ小舟の景が浮かびます。舟と言わず水脈を詠んで舟を見
せるところが巧みだと思いました。

82	三毛丸む床暖房の貴賓席

 「丸む」は「丸める」の文語です。この句の場合は「丸まる」とすべきと思います。

83	骸骨がセーター着るごと我が末期

 「骸骨がセーター着るごと」の比喩表現がよくわかりませんでした。セーターを着た
ご自身が骸骨のように痩せているという意味でしょうか?

84	子連れ熊山を下りて撃たれたり

 報道された事実を述べただけの報告に感じました。

85	磨かれし洋館の窓冬の薔薇

 透明な窓の冷たさと、孤高な冬薔薇の清澄さがマッチしています。

86	灯台の急な階段冬日和

 季語が動くように感じました。

87	赤のれん愚痴を吐き出す年の暮

 赤のれんが何かわかりませんでした。居酒屋や一膳飯屋的な店を縄暖簾とは言います
が・・・・。

88	泥試合終はつたやうな蓮根掘

 蓮根掘りは深い泥田に入って作業をしますが、それを「泥試合終はつたやうな」とは、
どういう意味かよくわかりませんでした。

89	大北風や秋葉権現様の旗

 秋葉権現は火伏の神様で、大北風とはやや即き過ぎな印象を受けました。

90	欲張って五年日記を買いにけり

 報告的に感じます。また、「欲張って」は説明的です。

91	蒼天やダム湖をわたる鷹の声

 鳶の鳴き声は聴いたことがありますが、鷹の声は聴いたことが無いので、どんな声な
のか聴いてみたいと思いました。

 奥山ひろ子氏評===============================

 清々しい空を行く鷹。静かなダム湖を眼下に飛んで行く鷹の姿が力強く感じました。

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92	能面の澄みし眼ざし冬日さす

 能面にもいろいろな種類がありますが、澄んだ眼差しを持つ面はどれか?と考えてし
まいました。

93	凍てし夜や鉄橋渡る音遠し

 空気が澄んで、遠くの音も良く聞こえる夜ですね。微かな列車の音に郷愁を感じます。

 奥山ひろ子氏評===============================

 夜汽車の鉄橋を渡るリズム感ある音を想像しました。空気がピンと張りつめている様
子も感じました。

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94	着ぶくれて鏡に映るあなた誰

 心の声がそのまま句になりました。

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