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【
第315回目
(2026年3月)
HP俳句会 選句結果】
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| 【
松井徒歩
選 】 |
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| 特選:
蒲公英の花起き上がる轍跡
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雪絵(前橋市)
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早春のマーマレードのほろ苦さ
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直樹(埼玉県)
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春炬燵白寿の伯母の独り言
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直樹(埼玉県)
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母の爪切る縁側の日永かな
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原洋一(岡山県)
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薬屋の古き看板猫の恋
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ゆきえ(和歌山市)
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春愁岸を離るる櫂の音
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石塚彩楓(埼玉県)
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声援は歓声になり木の芽風
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ようこ(神奈川県)
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道三の城真向かひに卒業す
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よりこ(名古屋市)
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靴紐の解けし午後や涅槃西風
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淳平(八女市)
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夕餉まで少しうたた寝春炬燵
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小豆(和歌山市)
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| 【
関根切子
選 】 |
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| 特選:
蒲公英の花起き上がる轍跡
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雪絵(前橋市)
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海峡の送電塔や春の雪
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田村幸之助(和歌山県)
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青い目の人形もいる雛の宿
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岩田 勇(名古屋市)
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駅弁に卵とでんぶ春の旅
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別役昌子(滋賀県)
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言葉数日々増ゆる子や山笑ふ
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大原女(京都)
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城郭の万朶の梅の白さかな
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吉沢美佐枝(千葉県)
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春炬燵白寿の伯母の独り言
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直樹(埼玉県)
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片栗の花五箇山に水の音
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正憲(浜松市)
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先生の笛に集ふ児つくしんぼ
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貝田ひでを(大阪)
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跳び箱の五段跳ぶ児に風光る
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後藤允孝(三重県)
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| 【
国枝隆生
選 】 |
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| 特選:
声援は歓声になり木の芽風
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ようこ(神奈川県)
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春の土スキップで行くスニーカー
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梦二(神奈川県)
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言葉数日々増ゆる子や山笑ふ
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大原女(京都)
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城郭の万朶の梅の白さかな
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吉沢美佐枝(千葉県)
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春炬燵白寿の伯母の独り言
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直樹(埼玉県)
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母の爪切る縁側の日永かな
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原洋一(岡山県)
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道三の城真向かひに卒業す
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よりこ(名古屋市)
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永き日の使はぬままの置き薬
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淳平(八女市)
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春霞川面に揺るる橋の影
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清水ぽっぽ(東京)
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柔らかき日差し吸い込む黄水仙
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美由紀(長野県)
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| 【
玉井美智子
選 】 |
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| 特選:
春炬燵白寿の伯母の独り言
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直樹(埼玉県)
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(春まだ浅き奥州にて藤原氏を偲ぶ)落人を隠す晩霞や猊鼻渓(げいびけい)
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光雲2(千葉県)
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六尺の陶の狸や別れ霜
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ゆきえ(和歌山市)
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ジョギングの折り返し点揚げひばり
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貝田ひでを(大阪)
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春愁岸を離るる櫂の音
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石塚彩楓(埼玉県)
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声援は歓声になり木の芽風
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ようこ(神奈川県)
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春彼岸手桶の水の柔らかし
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ようこ(神奈川県)
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春炬燵開いたままの年金便
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比良山(大阪)
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仄暗き白秋生家雛巡り
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蝶子(福岡県)
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道三の城真向かひに卒業す
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よりこ(名古屋市)
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※(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)
今月の最高得点者は、直樹さん(埼玉県)でした。「伊吹嶺」三月号をお贈りいたします。おめでとうございます!
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【講評】
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2026年3月伊吹嶺HP句会講評 松井徒歩
沢山の御投句ありがとうございました。
1 三冬尽くペンギン舎への列長し
「冬尽きぬ」ではなく「三冬尽く」に長い冬が終わったという感慨が良く伝わってきま
す。のんびりとしたペンギンの列に春の予兆を感じる作者。
2 凍星やくるくる回す天球儀
面白い句ですが「くるくる」と「回す」に意味の重複を感じます。
3 取り敢へず餌を「吾輩」の子猫かな
「取りあへず」がほぼ無意味の言葉のように感じました。
4 春の土スキップで行くスニーカー
春らしい浮き浮きとした気分が伝わってきます。
国枝隆生氏特選===============================
春泥のついたスニーカーでのスキップ、「春の土」がますます楽しくさせています。
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5 晴天へ伸びるクレーン寒明くる
早春に相応しい句ですね。
6 カーテンに壁に見知らぬ春の虫
「に」の繰り返しに「春の虫」の存在感を感じました。
7 雪女位牌に知らぬ名ばかり
季語が離れすぎているように思います。
8 春立つや四十五年平社員
今年も春が来たが、万年平社員という壮大な自虐が面白いですね。
9 海峡の送電塔や春の雪
硬質な鉄塔と、淡く消えゆく雪の対比が、景色の奥行きを深めています。
10 鳥雲に紀ノ川口の船溜まり
「紀ノ川」の地理的背景と有吉佐和子の小説も想起され、味わい深い句。
11 たんぽぽや土手のひかりを集めたる
春爛漫の生命力あふれる景色が目に浮かびます。
(国枝評)たんぽぽは土手が似合います。土手一面の光を吸い込んだいかにもあたたか
い写生です。なお上五の「たんぽぽや」は強く切って場面展開させる切れ字ですから、
ここは「たんぽぽの」などと中七に続けるところだと思います。
12 思ひ切り天地ひらくや初燕
「思ひ切り」が主観的で、「天地ひらく」の飾り言葉のようになっていると思います。
13 青い目の人形もいる雛の宿
「人形も」の「も」は、「の」の方が印象が強くなるように思いました。。
14 終日の濃尾総なめ春嵐
「終日」がどこに掛かっているのか分かりにくいのが気になりました。
15 蓬餅無冠の夫へ供へけり
飾り気のない「蓬餅」が、平穏な人生を歩まれたご主人の佇まいに、よく似合っていま
すね。
16 サッチモを聴くや窓辺に喇叭水仙
下五の字余りが気になります。
17 華やかに進水の船春の海
「華やかに」と言わずに、華やかな様子を具体的に描写してほしいです。
18 駅弁に卵とでんぶ春の旅
卵とでんぶの春らしい彩りに、駅弁ならではの旅の楽しさが加わって、心浮き立ちます
ね。
19 上靴を置く手に乾く春の泥
菜園で土に触れていたのでしょうか。上靴を置こうとした手に、乾き始めた春の泥を見
つける。没頭していた時間の充実感が、その手の乾きから伝わってきます。
20 春風や落ち花数ふる杖二本
中七の字余りは極力避けてください。
21 遊ぶ子のみんな小走り山笑ふ
山が春らしくなって子供たちも元気に走り回ている。「小走り」にまだ早春の気配を感
じました。
22 言葉数日々増ゆる子や山笑ふ
日々増えていく幼い言葉に、春の訪れと同じような生命の輝きと喜びを感じます。
国枝隆生氏選================================
子どもの成長は早いですね。成長の早さを「山笑ふ」が応援しているようです。
======================================
23 日の絡むまんさくのはな撚り甘し
花の「撚り」に光が「絡む」。その言葉選びの機微に、春を感じて楽しくなります。
24 城郭の万朶の梅の白さかな
梅の香りが漂ってきます。
国枝隆生氏選================================
城にある梅、「万朶の白さ」が城を明るくさせています。
======================================
25 百態を演じ去り行く春の雲
刻々と形を変える雲の姿を、「百態を演じ」と捉えた表現が見事ですね。
26 蒲公英の花起き上がる轍跡
踏まれてもなお起き上がる蒲公英の逞しい生命力を、確かな写生眼で捉えた佳句です。
27 老僧の和顔愛語や春日差
人の様子が四文字熟語では物足らない思いがします。
28 木洩れ日の雑木林や花片子
「木洩れ日の雑木林」は当たり前すぎる描写ですので、もう少しきめ細かい写生が必要
だと思います。
(国枝評)「花片子」はいろいろ調べてみましたが、よく分かりませんでした。
29 (春まだ浅き奥州にて藤原氏を偲ぶ)落人を隠す晩霞や猊鼻渓(げいびけい)
趣があって良いのですが。「隠す」が直情的なのでこのあたりは抑えたほうが良いよう
に思いました。
30 瞳なきモディリアーニや春の闇
瞳がないので闇という理屈を連想するところが弱いと思いました。
31 春立つ日始発電車の乗車券
「立春」という新しい季節の始まりに、「始発電車」という設定がよく響き合っていま
す。そこに「乗車券」という具体的な質感を伴うモノを提示したことで情景がより鮮明
になりました。
32 漢検の行李が書けず2月尽
2は変換ミスかもしれませんが漢字にしたいですね。
33 早春のマーマレードのほろ苦さ
マーマレードの甘さの中に潜むほろ苦さに、瑞々しい早春の空気を感じました。
34 春炬燵白寿の伯母の独り言
障子から差し込む春の日差しに微睡む白寿の女性。その白い髪が光を湛えている姿が目
に浮かびました。
国枝隆生氏選================================
白寿とはまだお元気なのですね。炬燵で独り言をつぶやいている伯母が逆に可愛く見
えているようです。
======================================
35 工人の心根出づる雛の顔
「工人」は広辞苑には、「中国の労働者」との記述がありました。
36 春江や銀砂子鏤めて往く
「春江」が長江を思わせてスケールの大きさを感じました。
37 碧空へ蝋梅の黄の極みけり
「碧空」、「極み」と力みが勝っているように感じました。
38 平安を諭す石庭京の冬
「諭す」をどう捉えたら良いのかよく分かりませんので、石庭の写生をしたほうが良い
ように思いました。
39 天窓のやわき春光ヘッドスパ
天窓から差し込む光の下、身も心も癒されるヘッドスパですね。
40 母の爪切る縁側の日永かな
親子それぞれの心情は直接語られていませんが、縁側の明るさと春の長い午後という設
定が、二人の親密な空気感を伝えています。
41 下戸もつい端麗甘口雛の酒
俳味のある句ですが中七にまとめてほしいです。
(国枝評)端麗」は「淡麗」の変換ミスですか。
42 六尺の陶の狸や別れ霜
去り行く冬の日を浴びて立ち尽くす大きな陶狸。寂しげにも見えますが、微笑ましさも
感じます。春はもうすぐそこですね。
43 薬屋の古き看板猫の恋
昔ながらの古い商店街と、恋に浮き立つ猫の対比が面白いですね。この猫、薬屋の看板
猫かも。
44 風光る若葉マークの助手席に
春風に輝く季節のドライブ。快適ですが初心者の運転に、助手席の作者は心穏やかでは
ないという俳味のある作品。
45 片栗の花五箇山に水の音
片栗の花が咲く五箇山の静寂に、雪解水の音が重なる光景ですね。
(国枝評)五箇山の水音が聞こえる岸辺に片栗の花と合わせてみると、山奥の春がよく
伝わってきます。
46 五箇山に鬨の声上ぐつくしんぼ
「鬨の声」がよく分かりませんでした。地名も効いていないように思います。
47 雑踏に春秋といふ隙間かな
季語が無いようですが・・・。「春秋といふ隙間」も分かりません。
(国枝評)「春秋といふ隙間」は何か思いがあるようですが、意味するところが分かり
ませんでした。
48 逃げ水の大地蹴飛ばす散歩犬
「大地蹴飛ばす」が大袈裟な感じがしました。
49 王手して破願の翁春闌ける
「破願」は「破顔」の変換ミスだと思いますが、が春に似合っていますね。
50 うやうやしく囲碁打つ媼春障子
上五の字余りを修正してください。
51 呼べば猫ニヤァと顔出す春炬燵
春の炬燵猫ですね。
52 春泥にまみれ帰宅のスニーカー
句には書かれていませんが、野遊びの帰りと推察しました。
53 先生の笛に集ふ児つくしんぼ
元気に駆け寄る子供たちと、春を盛りの土筆の姿が、調和しています。
(国枝評)児とあるので幼稚園児でしょうか。先生の笛の合図に集まってくる児、そし
て「つくしんぼ」の取り合わせに和やかな明るさが見えてきます。
54 ジョギングの折り返し点揚げひばり
折り返し地点で出会った「揚げひばり」に、残りの道のりを走り抜く元気を分けても
らったようですね。
55 春愁岸を離るる櫂の音
岸の方で何か心に掛かることでもあったのでしょうか。その愁いを岸を離れる「櫂の
音」に託している。
56 初蝶来ひかりの鈴を鳴らしては
「ひかりの鈴」が分かりませんでした。
(国枝評)何か叙情のある句のように見えますが、どんな情景なのでしょうか。
57 朝霞紀泉の山の遠く見ゆ
地名があまり効いていないように思いました。
58 ものの芽をさがす花壇に朝陽射す
報告気味のように感じました。
59 取りあへず餌を吾輩の子猫かな
60 春泥やスキップで行くスニーカー
61 声援は歓声になり木の芽風
スポーツの試合でしょうか。熱がこもるにつれて、一人ひとりの声援が大きな歓声へ
と変わっていく様子が目に浮かびます。季語の「木の芽風」が、その熱気を穏やかに包
み込んでいるようです。
国枝隆生氏選================================
「声援」から「歓声」に変わった表現がよいですね。「木の芽晴」と言うから、野外
の野球かサッカーのスポーツでしょうか。「声援」「歓声」が明るくさせています。
======================================
62 春彼岸手桶の水の柔らかし
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われる通り、ようやく気候も和らぎ、手桶に汲んだ水の感
触もどこか角が取れて、穏やかになったのですね。
63 ひとり居の病あまたの余寒かな
事実としてももう少し明るい句のほうが良いと思います。季語を変えるだけでも気分
が変わると思います。
64 春炬燵開いたままの年金便
主観のない客観写生に惹かれました。
65 水郷に花嫁舟や春の色
上五中七が良いだけに、もっとはっきりとした季語のほうが良いと思います。
(国枝評)柳川の花嫁舟でしょうか。春にふさわしいですね。ただ「春の色」は一寸あ
いまいに感じました。「春の色」など「春の○○は季語としての力があるかどうか難し
いところです。具体的な春の季語だったらよかったと思います。
66 仄暗き白秋生家雛巡り
柳川の雛祭りですね。「雛巡り」の華やかさに安易に流れず、予定調和を排した表現に
なっている点に惹かれました。
67 道三の城真向かひに卒業す
下剋上で名を馳せた斎藤道三のように、自分も立身出世するぞという卒業生の意志を
感じました。
国枝隆生氏選================================
「道三の城」と言えば岐阜城のことでしょうか。毎日見上げている岐阜城が日々の励
ましになり、改めて卒業に感慨を深くさせているようです。
======================================
68 しゃぼん玉しゃがみて子等の眼の高さ
子供たちの視線に合わせ、しゃがんでしゃぼん玉を吹いているのですね。「眼の高さ
は」言わずもがなかもしれません。
69 鶏(とり)遊ぶ谷戸の茅葺き陽炎へり
長閑な風景で良いのですが、鶏か茅葺かどちらが主題なのか目移りして迷いました。
70 故郷の潮をまとうて栄螺着く
栄螺の潮の香りに、遠い故郷への思慕の情が重なります。
71 靴紐の解けし午後や涅槃西風
靴紐の解けに気づいた瞬間、一日の流れがふっと止まる。その一瞬に、涅槃西風を感
じたのでしょう。紐を締め直し、再び歩き出すとき、そこにはまた穏やかな日常の午後
が始まる。
72 永き日の使はぬままの置き薬
使われない薬は保険と同じで、出番がないことこそが幸せの証拠。「永き日」という
季語が、そんな平穏な一日を象徴しています。
国枝隆生氏選================================
富山の置き薬はすべて使い切る訳ではないのでしょう。薬が残ってしまったという惜
しい気持ちと、使わないで済んだという安堵感が交錯した気持ちが「永き日」に託さ
れているようです。
======================================
73 春風や情は人のためもある
教訓のような言葉は俳句に向いていません。
74 号泣のファミリーマラソン吾子の春
中七の字余りは避けてください。マラソンとお子さんとがどう関連しているのかも分
かりませんでした。
75 木の芽晴しづくに光る紅つぼみ
何の「しづく」なのでしょうか?
76 春霞川面に揺るる橋の影
春霞の川面の影の揺るぎが幻想的ですね。
国枝隆生氏選================================
「霞」は春の季語ですから、「春」はダブり表現になっていますが、川面に写って、
橋の影が焦点の合わないぼんやりとした霞を強調しているようです。
======================================
77 花菜漬歯触の良き箸休め
歯触りで春の喜びを実感するひと時ですね、
78 ざんばら髪春場所に立ち夢を立て
春場所という舞台が、初土俵にふさわしく感じられますね。
79 煮凝やのつぺり剥がれ鍋ひかり
報告気味に見えます。
80 受験期や中吊りエール追ふ瞳
季語が効いていないように思えます。
81 出揃いし蕗味噌作り夕餉待つ
動詞が三つもあるので「こうしてああしてこうした」という報告になっています。
82 地図広げWBC観る卒寿
この句も報告気味ですが、「地図広げ」に試合の現場に心を寄せる気持ちが伝わって
きました。
83 夕餉まで少しうたた寝春炬燵
夕餉を待つ間の、贅沢なうたた寝。誰に気兼ねすることもない、静かで自由な暮らしの
情景が浮かびます。
84 二次試験さあ会場へ雪解道
足元の悪い雪解道をも厭わず、二次試験へ向かう受験生の、意気込みが伝わってきま
す。
85 日の影に零るる匂ひ黄水仙
「日の影」が曖昧で?でした。
86 跳び箱の五段跳ぶ児に風光る
中七ですが「に」ではなく切れをいれたいです。
87 民の声届かぬ戦渦冴えかえる
形よくできている句ですが、ニュースの感想のような感じを受けました。
88 柔らかき日差し吸い込む黄水仙
黄水仙が呼吸をしているような生命力を感じました。
国枝隆生氏選================================
春の日を吸い込んだ黄水仙を丁寧に写生しています。穏やかな春の午後を想像しまし
た。
======================================
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【
第314回目
(2026年2月)
HP俳句会 選句結果】
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| 【
酒井とし子
選 】 |
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| 特選:
筆先の割れる写経や余寒なほ
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ようこ(神奈川県)
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島国の湖に島あり霞立つ。
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大原女(京都)
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ささくれの指に残れり寒さかな
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たまえ(京都)
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春近き部屋パソコンの起動音
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直樹(埼玉県)
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小流れの音より春の立ちにけり
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筆致俳句(岐阜市)
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春めくや赤フレームの眼鏡買ふ
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如月庵(岐阜県)
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老梅や旧家に残るつるべ井戸
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安楽(岐阜県)
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みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
|
水鏡(岐阜県)
|
|
二月や期限切れなる備蓄水
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石塚彩楓(埼玉県)
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|
突堤に並ぶ釣り人鳥帰る
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惠啓(三鷹市)
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| 【
武藤光リ
選 】 |
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| 特選:
御手水に小さき青空梅三分
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蝶子(福岡県)
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|
寒夕焼指切りをして転校す
|
鷲津誠次(岐阜県)
|
|
出航の船に日矢差す菜の花忌
|
よりこ(名古屋市)
|
|
小流れの音より春の立ちにけり
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筆致俳句(岐阜市)
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|
華厳寺の戒壇めぐり余寒なほ
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筆致俳句(岐阜市)
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湯に放つ若布の緑目に沁むる
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ようこ(神奈川県)
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老梅や旧家に残るつるべ井戸
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安楽(岐阜県)
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みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
|
水鏡(岐阜県)
|
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二月や期限切れなる備蓄水
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石塚彩楓(埼玉県)
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日向ぼこ夫と二人のティータイム
|
小豆(和歌山市)
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| 【
奥山ひろ子
選 】 |
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| 特選:
ほろ酔いの父が読み手のかるた取り
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飴子(名古屋市)
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紅梅のぽつと弾ける日差しかな
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雪絵(前橋市)
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畔を焼く野良着の匂ふ兜太の忌
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久保田山蛾(栃木県)
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「よっしゃー」と拳突き上げ合格す
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貝田ひでを(大阪)
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寒夕焼指切りをして転校す
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鷲津誠次(岐阜県)
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うつすらと海の蒼吐く蜆汁
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原洋一(岡山県)
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筆先の割れる写経や余寒なほ
|
ようこ(神奈川県)
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淡雪や少年野球の卒部式
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蝶子(福岡県)
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おぼろ夜や枕元にはランドセル
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鷲津誠次(岐阜県)
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日向ぼこ夫と二人のティータイム
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小豆(和歌山市)
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| 【
渡辺慢房
選 】 |
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| 特選:
出航の船に日矢差す菜の花忌
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よりこ(名古屋市)
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唐梅や撫で牛少し微睡みぬ
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みぃすてぃ(神奈川県)
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寒夕焼指切りをして転校す
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鷲津誠次(岐阜県)
|
|
小流れの音より春の立ちにけり
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筆致俳句(岐阜市)
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筆先の割れる写経や余寒なほ
|
ようこ(神奈川県)
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|
老梅や旧家に残るつるべ井戸
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安楽(岐阜県)
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みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
|
水鏡(岐阜県)
|
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遠くまであおぞら薄紅の冬芽
|
石塚彩楓(埼玉県)
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御手水に小さき青空梅三分
|
蝶子(福岡県)
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|
淡雪や少年野球の卒部式
|
蝶子(福岡県)
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※(各選者の特選は2点・並選を1点として計算し、最高点の方を最多入選賞といたします。
同点が3名以上の場合は該当者無しとさせて頂きます)
今月の最高得点者は、ようこさん(神奈川県)でした。「伊吹嶺」二月号をお贈りいたします。おめでとうございます!
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【講評】
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2026年2月伊吹嶺HP句会講評 渡辺慢房
1 ほろ酔いの父が読み手のかるた取り
微笑ましいお正月の風景ですね。下五は「歌留多かな」とすると句が締まると思いま
す。
奥山ひろ子氏評===============================
「ほろ酔いの父」がいいですね。お父様にとって幸せな時間で、ご家族のほのぼのとし
た雰囲気が感じられました。「ほろ酔ひ」でいただきました。
======================================
2 冬空に楓の実殻の揺れやまず
冬空を背景に楓(ふう)の実が寂しげに揺れている様子が浮かびます。
3 隠沼の無明を破る鴨の水脈
格調を感じる句ですが、隠沼(こもりぬ)の水脈が見えるという点に矛盾を感じてしま
いました。
4 雪かぶり黙して立てる地蔵かな
写生句ですが、「黙して立てる」は地蔵の描写としては当たり前のように感じました。
5 寒風に吹かれ山茶花いと強し
寒風と山茶花の季重なりです。また、「いと強し」と作者の主観をそのまま言わない
で、その強さが読者に伝わるようにしたいですね。
6 盆梅の老樹いまだに精気あり
「いまだに精気あり」は作者の主観で、報告的です。精気を感じた点を具体的に写生
して欲しいと思いました。
7 善哉忌環状線の駅メロディー
織田作之助の忌日ですから、この環状線は大阪でしょうね。ネットで調べたところ、
19の駅にそれぞれ違うメロディーがあるとのことですが、それが善哉忌とどう響くの
かがよくわかりませんでした。
8 鬼やらひ神社の下を電車過ぐ
事実・実景だと思いますが、それを作者がどう感じたのかが伝わって来ませんでした。
9 焼畑の里の猟夫の清め酒
景が見えるようで、なかなか見えて来ませんでした。焼畑の里より、焼畑と言った方
が具体的な景が見えると思います。清め酒も、猟夫が飲んでいるのか、銃や罠に振りか
けたりしているのか?
10 軽便の駅長室の冬帽子
この句も、状況がよくわかりませんでした。この帽子は、駅長が被る制帽で、冬用の
ものがあるのでしょうか? 帽子の主は駅長だと思いますが、帽子を置いてどこへ行っ
たのでしょうか? 作者はなぜ駅長室にいるのでしょうか?
11 唐梅や撫で牛少し微睡みぬ
撫で牛の傍に蝋梅が咲き、その香が漂っています。作り物の牛がまどろむなどという
ことは無いのですが、なんとなくそんな気にさせられます。
12 虎落笛今夜は月夜動く影
三段切れで、上五と下五が名詞で入れ替えても句が成り立つ、いわゆる「観音開き」
ですね。虎落笛(冬)と月夜(秋)の季重なりでもあります。
13 日向ぼこ日本は海に寝ころんで
雄大でユニークな発想ですね。
14 島国の湖に島あり霞立つ。
春の湖の景ですね。海(湖)と島の入子構造が面白いです。最後の「。」は打ち間違い
でしょうか。
15 ささくれの指に残れり寒さかな
中七「残れり」だとここで切れて、「ささくれが指に残った。寒い!」という意味に
なります。「残りし」とすると、「ささくれのある指に寒さが残った」という意味にな
ります。
16 電車止め飛行機を止め春一番
春の訪れを告げる嬉しい風のようですが、そういう実害もあるのですね。
17 春寒や信号無視の猫過る
逆に、信号を守る猫がいるのか?と思ってしまいました。
18 紅梅のぽつと弾ける日差しかな
「ぽつと弾ける」がいかにも春らしいですね。日差しの温かさが伝わります。
奥山ひろ子氏評===============================
作者は開花の瞬間をごらんになったのでしょう。「弾ける」は「弾くる」で瞬間を捉
えた措辞の生き生きした表現がいいと思いました。
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19 料峭や風雷神の鋭き眼
春先の風はまだまだ冷たく感じます。風神雷神の眼光の鋭さに通じるものがあります
ね。
20 春兆す鬼怒の瀬音よ風音よ
鬼怒川は栃木を流れる清流で、茨城で利根川に合流します。作者はこの川の瀬音、風
音に春を感じたのですね。
21 早梅を愛でて里山振り返る
俳句では、「早梅や」と書けば、愛でている気持ち、様子が十分に伝わります。
22 脳天を突きて寒水素通りす
句意がわかりませんでした。何が脳天を突いて、寒水がどこを素通りするのでしょう
か?
23 寒風に哭く千年の大欅
大欅を吹き渡る風の音を、「欅が哭く」と表現されました。作者にはそのように聞こ
えたのでしょう。大欅だけで、樹齢の長い古木の様子が浮かびますので、「千年の」と
いう説明的な措辞は無くても良いように思いました。
24 春近き部屋パソコンの起動音
PCの起動音に春の気配を感じられたのですね。私には無い感性で、感心しました。
25 野焼なる消防団の煤け顔
「なる」は多様な意味・用法がある日本語ですが、この場合の意味がよくわかりませ
んでした。「野焼きである」という意味でしょうか? また、「消防団の煤け顔」を詠
むことで、作者は何を伝えたかったのでしょう? 滑稽? 慰労? 不快? 読者により解
釈が異なるような気がしました。
26 畔を焼く野良着の匂ふ兜太の忌
畔焼と兜太忌の季重なりです。
奥山ひろ子氏評===============================
「匂ひ」は畔焼の匂いと拝察しましたが、農業にも取り組んだ兜太を念頭に詠まれ、作
者の兜太への敬慕を感じました。「匂ひ」で切れを入れてもいいかと思いました。
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27 陸海空のダイヤを乱す春一番
16番の句と同じ句意ですね。こちらはやや説明的に感じました。
28 「よっしゃー」と拳突き上げ合格す
合格を季語としている歳時記もあるようですが、入学試験以外の各種試験の合格もあ
りますので、はっきりとした春の季語を入れたいところです。例:春光に拳突き上げ合
格す
奥山ひろ子氏評===============================
合格を知った瞬間そのままを切り取られた印象で、うれしさが伝わってきました。
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29 寒夕焼指切りをして転校す
再会を約す指切りでしょうね。冬の夕焼けが淋しく奇麗です。
奥山ひろ子氏評===============================
転校は切ないもの。その気持ちが「寒夕焼」の季語によく投影されています。
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30 萌黄さすほつほつふふむ蕗のたう
蕗の薹の説明的に感じました。
31 うつすらと海の蒼吐く蜆汁
確かに蜆汁は青みがかりますが、蜆は海ではなく淡水または汽水に棲みますので、
「海の蒼」が気になりました。
奥山ひろ子氏評===============================
そうなんです。蜆汁は少し青味がかります。なるほど、「海の蒼」なのですね。詩的
表現がいいですね。
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32 湖畔には万羽の鶴や宙鳴らし
「宙鳴らし」の意味がわかりませんでした。
33 上七軒幽けき路地へ牡丹雪
上七軒は、京都の古い花街とのことですね。「幽けき路地」は細い路地というような
意味でしょうか? 情景の見える句ですが、中七を「や」で切ると更に句が締まると思
いました。
34 冴返る皿取り落としたたく床
意味がよくわかりませんでした。床を叩いたのは、作者が取り落とした皿でしょうか?
作者でしょうか?
35 浮寝鳥時に柵越える夢
浮寝鳥が、時々は柵(しがらみ)を越える夢を見ているだろう・・という句意でしょう
か? 浮寝鳥は空を飛べますので、いつでも自由に柵を越えられると思います。
36 新調の車椅子にて老いの冬
「にて」とありますので、作者はこの車椅子に乗られているのだと思います。「老い
の冬」という淋しさがにじむ語句がありつつも、車椅子を新調されて快適になった静か
な嬉しさも伝わります。
37 大雪に村埋れんとしていたり
雪国では、年に何度もこういう景を見るのでしょう。
38 野遊びや母置き去りに掛けまはり
元気の良い子供ですね。「掛け」は「駆け」ですね。
39 出航の船に日矢差す菜の花忌
司馬遼太郎と言えば、歴史小説や紀行文学の大家で、上五中七がよく似合っています
ね。
40 春風のやうにタッチの駅ピアノ
「春風のやうにタッチの」の意味がわかりませんでした。「春風のやうなタッチの」
でしたら、ピアノの鍵盤のタッチの比喩表現かと思えるのですが…。ただし、この場合
でも春風は季語としては働かないと思います。
41 スマホ消え本の電車に受験生
「スマホ消え本の電車」の意味がわかりませんでした。
42 小流れの音より春の立ちにけり
水の音は、春を感じる音の代表格ですね。
43 華厳寺の戒壇めぐり余寒なほ
寒さの残る中での戒壇めぐりですね。引き締まった空気が感じられます。
44 筆先の割れる写経や余寒なほ
余寒の句が続きます。こちらは、筆先が割れて掠れた文字に寒さを感じたのですね。
奥山ひろ子氏評===============================
「筆先の割れる」がいい写生。文語は「割るる」ですね。季語と共鳴していると感じ
入りました。
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45 湯に放つ若布の緑目に沁むる
生の若布は褐色で、熱湯に入れると瞬時に鮮やかな緑色に変わります。それは感動的
と言っても良いと思いますが、「目に沁むる」と主観を語らないで、作者の感じた感動
が読者に伝わるようにしたいですね。
46 絵らふそく雪の三寺参りかな
状況はわかりますが、「三寺参り」というがちょっと説明的に感じました。これを言
わずに、蝋燭と雪を具体的に描写して、三寺参りの様子を読者に伝えることができると
もっと良くなると思います。意味や状況が伝わらない句も困りますが、あれこれと説明
しすぎるのも良くありません。俳句では、読者の句を解釈する力を信じることも大切で
す。
47 新雪にあらたなる雪十日町
十日町は豪雪地帯で、積雪の被害も出ているようですね。「新雪にあらたなる雪」は
工夫がうかがえますが、やはり言葉の矛盾を感じてしまいました。
48 世の中へ目を剥く仁王冬木立
仁王像と冬木立の対比が良いと思いますが、「世の中へ目を剥く」が仁王の描写とし
ては浅いように感じました。
49 梅が香の伝へておりし風の向
きれいな句ですが、梅の香りが風に乗ってきたというだけでは、句材としてちょっと
弱いと思いました。
50 春めくや赤フレームの眼鏡買ふ
春と赤がやや「即き過ぎ」に感じました。
51 枝垂梅降り注ぐ如いのち咲き
「降り注ぐ如」は枝垂梅の形容だと思いますが、「いのち咲き」の意味がわかりませ
んでした。梅の花をいのちに喩えたのでしょうか?
52 まだ白き伊吹の嶺や春寒し
山頂にまだ雪が残っている=寒いという理屈を感じました。
53 老梅や旧家に残るつるべ井戸
できている句ですが、中七下五の描写で梅の木も老木であることはわかりますので、
上五にもう一工夫あると更に良くなると思いました。
54 秒針の音なき校舎浅き春
「秒針の音なき校舎」がよくわかりませんでした。逆に、常に時計の秒針の音が聞こ
える校舎というのがあるのでしょうか?
55 街は今蒼き沈黙冴え返る
「街は今蒼き沈黙」がわかりませんでした。どういう状況なのでしょうか?
56 鳥帰る遅延を告ぐる時刻表
時刻表は、定時運行の時刻が載っており、遅延の情報は書かれていない(事前には書
けない)と思います。
57 みどりごのかそけき寝息冬萌ゆる
これから成長が加速して行くことを予感させますね。
58 咳の子に昔話をして共寝(ともね)
風邪がうつらないようにしてください。
59 春だねと犬の呟く散歩かな
犬が人語を話すはずはありませんので、作者にはそう聞こえたということかと思いま
すが、ちょっと突飛な感じがしました。
60 濁りたるオリーブ油の香冴返る
オリーブ油は、冷蔵庫や寒い部屋などに置くと白く濁ったり固形化したりしますね。
ただ、その状態での香りを作者がどう感じたか、この句からは読み取れませんでした。
61 沁み渡る濯ぐ歯磨き余寒なほ
「沁み渡る濯ぐ歯磨」が良くわかりませんでした。歯を濯ぐときの冷たい水が歯に沁
みるということでしょうか?
62 遠くまであおぞら薄紅の冬芽
「遠くまであおぞら」という措辞はちょっと不思議な感じがしましたが、冬の澄んだ
空気が感じられます。空の色と冬芽の対比が良く、中七下五の句またがりも効果的に働
いていると思います。
63 二月や期限切れなる備蓄水
三月十一日が近づきますね。ローリングストックなどを上手に行って、備蓄品が期限
切れにならないようにしてください。
64 息詰めて舞う飛ぶ走る冬五輪
冬五輪が季語になるか気になりました。また、「舞う飛ぶ走る」選手が息を詰めるの
は無理があると思います。しかし、それは置いておいて、全体的に俳句というよりオリ
ンピックのスローガンかキャッチフレーズのように感じました。どれかの競技に着目し
て、感動した一瞬を切り取ってみては如何でしょうか?
65 サンドウィッチレタスで挟む蕗の味噌
蕗味噌は大好物で毎年自分で作りますが、サンドイッチに使うという発想は無く、驚
きました。今度勇気を出してやってみます。クリームチーズなども合いそうですね。
66 突堤に並ぶ釣り人鳥帰る
釣り人たちと鳥の関係が弱いように思いました。釣りをする人たちは、竿先や浮きな
どに注意を向けており、渡り鳥を気にする人は少ないような気がします。
67 眼と耳の老化の愁ひ蜆汁
上五中七は、個人的に非常に共感しますが、下五の季語がいまいちはまらず、いわゆ
る「季語が動く」ように感じました。
68 拝殿の太鼓どどんと春兆す
拝殿の太鼓は一年中同じ音で鳴ると思います。その中でどう春を感じられたのかが伝
わると良いと思いました。
69 傘に少し入れくれたる春ショール
春ショールを纏った人が、作者を傘に入れてくれたということでしょうか? 「少し」
とありますので、あまり雨が防げず、濡れてしまったのでしょうか?
70 梅まつり所々に投句箱
「所々に投句箱」は、写生というより報告に感じました。それを作者がどう感じたか
が、読者に伝わるようにして欲しいと思います。
71 もやもやの心に灯る黄水仙
心に思った想像上の黄水仙でしょうか? それは季語として機能しないと思います。
72 冬ざれや床屋裏口の手拭い
「床屋裏口の手拭い」の景が浮かびませんでした。何のために、裏口のどこにどのよ
うに置かれて(吊るされて?)いる手拭いなのでしょうか?
73 左手を離れる兄よその手に弟
状況がわかりませんでした。作者が兄弟の兄と左手を繋いでいて、その手を放して今
度は弟と手をつないだということでしょうか?
74 御手水に小さき青空梅三分
「小さき青空」と「梅三分」が良いですね。細かい部分ですが、上五の助詞は「に」
以外にも使えるものがあります。どの助詞がベストか、よく検討したいですね。(にが
ダメと言っているわけではありません。)
武藤光リ氏評================================
映像がしっかりしている。
梅三分と小さき空が響き合い、肌寒い早春の神社が表出された。
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75 淡雪や少年野球の卒部式
春の雪降る中でのラストゲームでしょうか。中八が残念ですね。
奥山ひろ子氏評===============================
「卒部式」というのがあるのですね。「淡雪」の季語がやさしく卒部する球児を包ん
でいるように思いました。
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76 おぼろ夜や枕元にはランドセル
屋外の景と屋内の景が混ざっている点が気になりました。
奥山ひろ子氏評===============================
新入生あるあるですが、「おぼろ夜」という季語で夢やわくわくする気持ち、もやも
やする不安まで感じました。季語の力です。
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77 節分を佳き日と嫁ぎはや幾年
「節分に嫁いだ」という事実を回想している句ですので、桜の絵の桜が季語にならな
いのと同様、この場合の節分は季語になりません。
78 日向ぼこ夫と二人のティータイム
微笑ましいですね。上五と下五を入れ替えても成り立つ、いわゆる「観音開き」なの
が残念です。
奥山ひろ子氏評===============================
仲良しご夫婦を写生すると、このような御句になるのですね。素敵です。
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79 集金の近道険し笹子鳴く
状況がよくわかりませんでした。何の集金に、なぜ険しい道を歩いているのでしょう
か?
80 生姜湯の碗撫す吾の余生まだ)
余生はまだ来ない? 余生はまだ続く?
81 焼き芋を二個ふところに友見舞ふ
あまり深刻ではない怪我や病気なのでしょう。気の置けない友人と、一個ずつですね。
82 寒明けを待たずいそいそ鍬手入れ
いそいそに、早く畑に出たい気持ちが表れていますね。ただ、いそいそと言わずにそ
の気持ちがわかるようにすると、さらに良くなると思います。
83 待春の木曽馬砂浴び豪快
中七下五の破調が気になりました。豪快というのは作者がそう感じたということです
が、そうした主観を言わずにその気持ちを読者に伝えると良いと思います。
84 父の香は上の抽斗室の花
句の意味がわかりませんでした。温室の上段の引き出しに、お父様が愛用されている
(されていた?)コロンでも入っているのでしょうか?
85 凍てし朝いざ出陣と受験生
凍てる(冬)と受験生(春)の季重なりです。「いざ出陣」も受験生の描写として新鮮味
を感じませんでした。
86 朝焼けや一輪開く梅の花
朝焼け(夏)と梅(春)の季重なりです。「一輪開く」も梅の描写としてありきたりに感
じます。
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