TOPページへ戻る 購読について
TOPページへ戻る
2026年2月号 俳日和(97)
 
  「既視感」問題
                              河原地英武

 月刊『俳句界』1月号が「〝既視感〟から脱却せよ!」と題する特集を組み、依田善朗氏(「磁石」主宰)を筆頭に8名の俳人が論考を寄せている。「既視感とは何か」「何が既視感を招くのか」「どうすれば既視感から脱却できるのか」といったテーマを中心に、各論者が自分の体験に即してそれぞれ有益な提言を行っている。そのなかから「巻頭論」を寄せている依田氏の見解をすこし紹介してみたい。既視感とは前にどこかで見たことがあるぞという感覚で、だれにも心当たりがあるだろう。「類句・類想」がその典型だが、自分の過去の句との類似(無意識のうちにうっかりやってしまう「自己模倣」)なども含まれる。

 依田氏はある句会で鴉とハンガーを取合せた句を出したところ(鴉の巣作り場面だ)、類句の存在を指摘された由。先行句はハンガーの色に着目していたが、自作のほうはハンガーの形状を詠んだものだったから、関心の在り処は異なる。「確かに句材にハンガーを使ったのは一緒だが、その句材をどう描くかに俳句の命があるのではないか」と依田氏は述べ、これを類句とする考えを退けている。同感である。

 「自己模倣」に関する依田氏の見解も興味深い。「人は自然に自分の親しんだ型で作る。楽なのである。しかし時を経て読み直すと、すべての句がワンパターンで、各句の個性がないのである。こうなると創作は停滞してしまう。」このワンパターンからどう脱すればよいのか。同じ季語や句材の取合せを避ければよいのか。依田氏はこう述べる。「1つの脱出方法は、同じ季語でいくつも句を作ってみることである。……すべて詠み尽くした気になって、もはや詠めないのではないかと思うのだが、それでも同じ場所に出かけて、1日に何句も詠む。」そうすると新たな観点が見出せるというのだ。この際自分の「俳句工房」に腰を据え、徹底して1つの対象と向き合うことが、新しい句境を切り開き、新鮮な句を得るためには有効な方法なのかもしれない。