「主宰と行く沖縄への旅」が二〇〇八年より二回にわたって行われた。観光だけではなく、いろいろな歴史を学ぶ
こともでき、とても心に残った旅であった。
海光や零れて白き花月桃 やすし(『海光』所収)
月桃はショウガ科の常緑多年草。四月から七月にかけて白くきれいな花を咲かせる。蕾は白い先にほんのり赤く房
状で、開いた花の中は、オレンジ色に赤い模様があり、夢のようなとても美しい花である。青い海、明るい空、花月
桃の花、ああ沖縄へ来たと実感できたひと時であった。
芭蕉布の里への小径花福木 やすし
人間国宝の平良さんにお会いできた。物静かな小柄な方であった。近くの作業所では、地べたの上に胡坐座になって、
芭蕉布を織るための芭蕉の葉を、細く割いて作業している女性たちがいた。軍手は濡れて真っ黒になり、作業の大変さ
を物語っていた。
糸数壕アブチラガマ
蜥蜴這ふ砲火に焦げし洞窟(ガマ)の口 やすし
やすし先生たちと、ヘルメットをかぶり懐中電灯を手に洞窟の中へ入った。
ガマの中は二百七十メートルもあるが、真っ暗で一寸先も見えない。日本軍の陣地壕や倉庫として使用され、戦場が
南下するにつれて南風原陸軍病院の分室となり、軍医、看護婦、ひめゆり学徒隊が配属された。ガマの中は六百人以上
の負傷兵で埋め尽くされた。八月二十二日の米軍の投降勧告によって解放された。
南西端の喜屋武(きゃん)岬は断崖絶壁であるが、米軍に追われたおびただしい数の住民が、海へ身を投じたという。
穏やかに光る美しい海を見ながら、平和への思いが胸にこみ上げてきた。
先生の句
〈海光や零れて白き花月桃〉は、優しく美しい句であるが、その中に沖縄戦でのすべての思いが、
込められているように思う。
(了)
文中写真「人間国宝の平良敏子さん」 国枝�髏カ撮影